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こみや'S創作長編物語集コミュの12,絵里の父への感謝と愛

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「ただいまぁ」

「おかえりなさい!」

絵里ちゃんが満面の笑みを浮かべて僕に抱き付いた。

「な!?何!?どうしたの!?」

「哲弥君!出来たよ!出来たよ!やっと出来たよ赤ちゃんが!!」

う!嘘っ!?

「やったあああ!」

アハハと2人抱き合って笑った。

結婚三年目。待ちに待った妻絵里ちゃんの妊娠だった。

「でも…」

ふと絵里ちゃんが寂しげに語る。

「私の家も哲弥君の家も父子家庭…私…里帰りして出産に備える場所がないよ…」

「何言ってるの!いるじゃないか僕らには!」

真っ先に電話をかけたのは勿論

お姉ちゃん。


「おぉ〜良かったじゃねえかよ!三年目にして待望の赤ん坊だな!よし!今すぐ簡単に荷物をまとめて家に来い!」

お姉ちゃんは心から喜んでくれた…

三駅離れたお姉ちゃんの家に2人で向かう。

「よし。出産まで私がばっちり面倒をみてやる!哲弥!お前は当面独り暮らしだ!カップ麺でも死にゃあしねぇだろ!私は絵里の体の事だけを考える!お前の面倒まで見切れねぇ!哲哉と隆治もしばらく哲哉の実家に預けるよ。私と二人の方が気が楽だろ?」

「お姉さん…そこまでしていただかなくても…申し訳ないで…」

「家族じゃねえか!なぁ哲哉文句ねぇだろ?」

お義兄さんは答える。

「ああ!絵里ちゃんは誰かさんと違って気〜使いだからな。大丈夫。母さんも隆治にぞっこんだからむしろ喜ぶよ。」

「お義兄さん…」

「なぁ隆治。しばらくばあちゃんちで構わねぇよな?」

「うん!おじいちゃんとおばあちゃん大好き!全然構わないよ!絵里お姉ちゃん、元気な赤ちゃん産んでね!」

「隆治君…ありがとう…ありがとう…」

絵里ちゃんはポロポロ泣いた…


それから寂しい独り暮らしが始まった。

今日は徹夜で仕事。帰ったのは朝方9時だった。

ふと見ると電話がチカチカしている。

留守電だ。

ボタンを押した。

お姉ちゃんからだった。

「絵里が出血した!今すぐ家に来い!」

え!!

僕は慌てて駅に走った。

「絵里ちゃん!」

バタンとお姉ちゃんの家のドアを開けた。

「シー!静かに!今寝たところなんだから!」

お姉ちゃんが顔をしかめる。

「お姉ちゃん…絵里ちゃんは…赤ちゃんは…もしかして…」

「切迫流産だったよ。しばらく絶対安静だ。大丈夫。赤ん坊はまだ腹の中で動いてるよ」

良かった…

ほっとした瞬間に睡魔が襲ってきた。

「お姉ちゃん…今日夜勤明けなんだ…布団で少し眠らせてもらえないかな?」

「じき父さんになる大切な体だ。休め休め。」

お姉ちゃんは布団をしいてくれた…


何時間眠ったのだろう…気付けば夜の8時だった。

絵里ちゃんとお姉ちゃんの会話が隣のふすまから聞こえた。

「お姉さん…赤ちゃんは…」

「大丈夫だよ。トイレ以外では絶対に動くな。私に任せろ、必ず元気な赤ん坊を抱かせてやる!」

「ありがとうございます…何から何まで…」

「ところでよ…」

お姉ちゃんは急に真面目な顔になった。

「いつか聞きたいと思ってたんだけど…お前の家には…どうして母さんが居ないんだ?」

あ…それは…

絵里ちゃんから聞いていた。

母親が男を作り蒸発したと…

絵里ちゃんは答えた。

「母親が男を作り蒸発したんです。」

ああ…

「そ…そうか…それは悪い事聞いちまった…ごめん…」

「と、哲弥君には話してあります。」

え。

「どういう意味だ?」

お姉ちゃんが突っ込む。

次の瞬間…

「本当は…」

頭が…

「父親の浮気が原因なんです。お姉さんだけに話します。」

真っ白になった…

「高校生の時に真実を聞きました。父は浮気のつもりでした。しかし相手は本気だった。自宅に乗り込んで来たそうです。赤ん坊の私を置いて母は離婚届けを出して家を去りました。私は母に捨てられたんです。だけど!それ以降父は変わりました!赤ん坊の私を懸命に育ててくれた!もういいんです。時効です。父には感謝の気持ちしかありません。哲弥君に父を軽蔑して欲しくない…だから真実は墓場まで持ち込みます。お願いですお姉さん…お姉さんだから本当の事を話しました…どうか哲弥君には黙っていて下さい…父を…許してやって下さい…」

ボロボロ泣く絵里ちゃんをお姉ちゃんは抱き締めた。

「辛かったな。女同士だ。分かったよ。お前の気持ちはよく分かった。二人の秘密にしよう。な?」

「お姉さん…!」

ウワァと絵里ちゃんは泣き崩れた…

次の日。

「いやぁ〜よく寝た!お姉ちゃん絵里ちゃん頼むね!僕は仕事に戻るから!」

「おお!任せとけ!」

僕は走った。

絵里ちゃんの実家へと。

「失礼します。」

いつになく真剣な表情にお義父さんはキョトンとしていた。

「哲弥君?どうしたんだいこんな時間に」

「絵里から聞きました。」

「え?」

「貴方の奥様が家を出た本当の理由を!」

お義父さんの顔色が変わる。

「絵里は姉にだけ話しました。僕には一生告げるつもりはないそうです。軽蔑して欲しくないから!僕に貴方を軽蔑して欲しくないから!」

「哲弥君…」

「お願いです。」

「な…何だね?」

「一発殴らせて下さい。」

言うや否や僕は思いきりお義父さんを殴った。

「あんた最低だよ!あんたの不貞のせいで!絵里はしなくてもいい苦労を強いられたんだ!受けなくてもいい苛めを受けたんだ!!」

ウワァとお義父さんは泣き崩れた。

「君の…言う通りだよ…私は…最低の父親だ!絵里は…苛めを受けていたのかい?」

「ええ!毎日同じ服だという理由で!」

「そんな…そんな酷い…」

ハッと我に帰る。

「絵里は貴方に感謝の気持ちしか持っていません。そして皮肉にもその苛めが原因で僕らは結ばれた。絵里が僕に貴方を守るため真実を伏せるなら僕達もその気持ちに答えましょう。今日の事は忘れて下さい。思いきり殴ってしまいすみませんでした!」

頭を下げる僕にお義父さんは泣きながら謝り続けた…


数ヶ月後…

「お父さん、抱いてみて」

無事に産まれたのは可愛い男の子。

「哲弥君と話し合って決めたんだけどね」

絵里ちゃんが続ける。

「この子の名前、お父さんの誠一から誠にしようと思うの」

「え…!?」

お義父さんは動揺を隠せなかった。

「て…哲弥君…絵里…」

僕は答えた。

「字数もいいんですよ。僕も賛成です。なぁ誠?」

誠はニコリと笑った。

「ほら、誠も気に入ったみたいね」

絵里ちゃんが笑う。

お義父さんは泣き崩れ叫んだ。

「絵里…哲弥君…ありがとう!こんな私を…許…」

「お義父さん!!!」

僕は叫んで人差し指を口に当てた。

「哲弥君…!」

お義父さんはいつまでもその場にへたりこみ誠を抱いて泣き続けた。

「もうお父さん、オーバーよ!」

何も知らない絵里ちゃんは一人笑っていた…


「おじいちゃん!」

「誠〜!」

誠をお義父さんは本当に可愛がってくれている。

お義父さん。殴ったのはやりすぎましたか?でも絵里を懸命に育ててくれた事、僕も本当に感謝しています。ありがとう…。

コメント(6)

久々に鳥肌と涙が泣き顔 お父さんか。。。うちも同じような理由で離婚しましたがあせあせ(飛び散る汗) こんなお父さんなら許せるなわーい(嬉しい顔)

哲弥くん、絵里さん、まこっちゃんぴかぴか(新しい) お幸せに桜 哲弥くんカッコイイわーい(嬉しい顔)
チャゲアスチルドレンさんへ
受け入れられない話を書いてしまったと思っていましたが絵里の父を許して頂きありがとうございますほっとした顔幸せになると思いますほっとした顔ぴかぴか(新しい)
結婚秘話以来全くの不明だった哲弥あせあせ
その後話気になってましたむふっ子供が出来たんですね手(パー)これはまだ広がり続けますね指でOK

万里様と哲弥の親父の話も出来るのかなウッシッシ
炸子鶏@魔王さんへ
いやはやご覧の通り私が全くスランプでして全然更新できてませんわーい(嬉しい顔)あせあせ(飛び散る汗)枝分かれしてどんどん話は作りたいなと思いますわーい(嬉しい顔)あせあせ(飛び散る汗)
プッチ神父さんへ
はい、すみません!←代わりに謝っておきました。えらい内容にしてしまいちとやっちまった感のある物語ですわーい(嬉しい顔)あせあせ(飛び散る汗)

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