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こみや'S創作長編物語集コミュの母の伝えた命の連鎖

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物心ついた時から私はお肉が大好きだった。唐揚げ…焼肉…ハンバーグ!どれもこれもこどもの大好きなご馳走だ。


ある日のテレビ番組だった。

そこにはお母さんとはぐれた可哀想なヌーという大きな牛みたいなこどもが映っていた。

川を移動する際にお母さんとはぐれてしまったらしい…。

カメラを撮っている人が捕まえてお母さんの元へ届けてあげるのだとばかり思って私はテレビを見ていた。


次の瞬間。


恐ろしい肉食獣が現れた。


ヌーのこどもは必死に逃げるも

肉食獣にあっけなく捕まり倒れ命を落とした…


私は口をポカーンと開けてその映像を見ていた。

悲しい声をあげながら食べられていくヌーのこども…この子はただ…お母さんとはぐれただけなのに…何も悪いことをしていないのに…

カメラを撮っている人は何故助けてやらないんだ!

涙がボロボロ溢れてきた…


それからである。

私はお肉を食べられなくなった。

唐揚げを見てもあぁ…この鶏は何も悪いことをしていないのに殺されたんだ…。少し自分の首を絞めてみる。苦しかった。こんな苦しい思いをさせられたんだ…。

台所にお肉が並ぶ度私は切なくなり全て残すようになった。

少しずつ私の体重は減っていった…当然だ。野菜しか食べていないのだから…。

父も母もさすがに問題視し始めた。

「優子、あなたが名前の通り優しい子に育ってくれたのは嬉しいわ。けれどね、お肉は食べなさい。人はね、たくさんの命の上に生きているの。感謝をしてお肉を食べなさい」

「嫌!どうして何も悪いことをしていない動物が殺されるの?どうして?どうして?牢屋に入っている悪いことをした人間が殺されてお肉になればいいのよ!」

私は頑として我を譲らなかった。


ある日の学校の授業だった。

「今日は命について学びましょう」

先生はそう言うと紙芝居を取り出した。

「僕は鶏。残念ながらもうすぐ死んじゃうんだ。」


教室がざわめいた…


「でも大丈夫!苦しいのはほんの一瞬だから」


「お母さんにおいしい唐揚げに変身させられた僕はそこの女の子に食べてもらうのを待ったよ」


「その子に食べてもらえたら、僕はその子の中で生きられる。その子が僕の命に感謝をしてくれたら、それだけで僕はまた生まれ変われるんだ」

「なのに…」

「その子は僕を食べてくれなかった…。理由は僕が可哀想だから…。違うんだよ」

「本当に可哀想なのは君に食べてもらえず捨てられてしまうことなんだよ…ねぇ、僕は何のために死んだの?何のために苦しい思いをして死んだの?僕の命は…生ゴミになり燃やされた…」

涙が出た…

「君の成長のためなら僕はこの命を捧げるよ。でも忘れないで。僕らへの感謝の気持ちを決して忘れないでね…」


はい、おしまいです。


先生はそう言うと紙芝居をしまった。


私の考えはぐらついていた…私が残した唐揚げや焼肉はどうなっていたのだろう…お母さん…捨てちゃってたのかな…

私…本当は一番に酷いことをしていたんだ!


私は慌てて家に帰ろうと職員室の前を通りかかった。

何故か母の声が聞こえた…

私は聞き耳を立てた。

「本当にありがとうございました。これであの子が少しでもお肉を食べてくれるといいのですが…」

「いえ。良くできた紙芝居でした。優子ちゃんは泣いていましたよ。恐らく気付いたと思います。本当に大切な事に…本当に優しいお子様です」


あの紙芝居……お母さんが作って先生に渡したんだ…


お母さん……


私は家に猛スピードで帰り鍵を開けて台所の生ゴミをあさった。


ごめんね…!私が間違っていたんだ!ごめんね……!


必死に見付けたのは昨日残した唐揚げ…

私は何の躊躇もなくそれを口に入れた。もうひとつ…もうひとつ…

「美味しいよ…ごめんね…美味しいよ…ありがとう…」


涙を流しながら黙々と唐揚げを食べ続けた…。


いつの間にか帰ってきていた母がそんな私を呆然と見つめていた…

「お母さん…紙芝居上手だったよ、ありがとうね…」


母はそっと涙を拭った。


「おかわり!」

ハイハイと母がハンバーグを私に渡す。

母の懸命の紙芝居のお陰で私は大切な事を学んだ。

人はたしかに罪を犯している。罪なき命を殺しているのだから。

けれどそれは宿命。その事を噛み締めて生きていれば彼らは私の体の一部となり生き続けるという事を。彼らに感謝をし毎日を生きなければならないという事を。

コメント(10)

これはいつもと違うパターンだったヤツだぴかぴか(新しい)

でもこみちゃんを尊敬したのを覚えてる(o^∀^o)

子供の頃から命の重みについて考えれた優子ちゃんは、立派な大人になるよね…きっと電球
ayakaちゃんへ
ありがとうほっとした顔この話は私自信が野生動物のドキュメンタリー大好きで小さい頃感じていたんだよねほっとした顔確かコメントが2しかつかなかったという思い出がありますあせあせあせあせ(飛び散る汗)あせあせ(飛び散る汗)
あんぬさんへ
へぇがまん顔そんな番組があるんだ(~_~)〜最近は可愛いペットばかりでサバンナの野生動物を扱う番組が減ったのが悲しい。あれは子供の時に見るべきだ泣き顔
あんぬさんへ
動物奇想天外!なんと懐かしい目がハートみのさんのやつですよね。ワクワク動物ランドも大好きでしたわーい(嬉しい顔)
あんぬさんへ
関口ひろしが司会のやつですわーい(嬉しい顔)この辺でお開きにしますかわーい(嬉しい顔)また物語の感想お待ちしておりますほっとした顔
これを読んだ日から、実はこのお話、何故か今でもたまに思いだすんだ!
>>[9]
ありがとう〜〜(o^^o)思い出してもらえて嬉しいです。私がこどもの頃に感じたことを物語にしました。

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