こみや'S創作長編物語集コミュの11,お母さんとのお風呂合戦

「えぇ!?優里ちゃんまだお父さんとお風呂に入ってるの!?」

小学四年生。

何気なくお父さんに毎日頭を洗ってもらってると話した時の友達の反応だった。

「え…変なの…？」

みんながバカにしたように口を揃える。

「恥ずかしいよねぇ〜あり得ない」


宮崎優里。お父さんっ子だった。

晩御飯。

いつもお父さんが帰って四人で夕御飯を食べる。

「優里、今日から1人でお風呂に入る」

シィン…

「なんでだ優里〜父さんと毎日風呂ではしゃいでるじゃねぇか」

お母さんが答えた。

「もう四年生だもん。恥ずかしい」

アハハとお母さんは笑う。

「哲哉〜ついに来たなぁこの日が！変わりに私が入ってやろうかぁ？」

お父さんはショックの色を隠せなかったようだった。

「嫌だ！小学生までは一緒に入る！」

「父さんこどもみたいだなぁ。諦めなよ、優里も女の子な歳なんだって」

お兄ちゃんがからかうもお父さんは頑として我を譲らなかった…

「嫌だってば！」

私のお風呂に無理矢理付いてくるお父さんをお母さんは蹴飛ばした。

「往生際が悪いぜ哲哉？今日からお前の背中を洗うのは私だ！」

「嫌だ嫌だぁ！ババァに洗ってもらったって嬉しかねぇんだよぉぉ！優里〜！」

なんだか可哀想になってきた。

「じゃあ今日だけね」

最後のお父さんとのお風呂…

水鉄砲もシャボン玉も全部お父さんに習った。

「優里ぃ〜愛してるぅ！万里の次に！」

お酒の匂いを漂わせながらお父さんは叫んだ。

「おーおー一番は私かい？有り難いねぇ」

お母さんが答える。

「明日からは私と入ろうなぁ〜哲哉！」


次の日は日曜日だった。

お母さんに買い物に誘われる。

訪れたのは…

下着屋さん。

「お前は少し成長が早い。生理もそのうちくるかもな。これもサイズ合わせて付けろ」

スポーツブラだった。

「その体じゃもう父さんと風呂は恥ずかしいわな」

お母さんは笑った。


その日の晩。

1人での初めてのお風呂。


…寂しかった。

お父さんはお母さんとゲラゲラ笑いながらお風呂に入っていた…

なんだ…私とじゃなくても良かったんじゃん。

なんだろうこの気持ち。

本当は恥ずかしかったのは友達にバカにされたから。

本当はお父さんとずっとお風呂に入っていたかった自分に気が付いた。

「優里も入る！」

たまらずお父さんとお母さんの入るお風呂に飛び込んだ。

「優里!?」

お父さんはびっくりして私を見た。

「いいんだよもう。母さんから聞いた。もうブラを付ける娘とは一緒に風呂には入れねぇ。お前も万里のこどもなら筋を通せ。出ていきな。」

見捨てられたような悲しみが襲ってきた…


黙ってパタンと扉を閉めた途端…

「よし万里勝負再開！」

再び騒ぎ始めたお父さんとお母さんに涙がこぼれた…



「優里ちゃんブラつけてる！」

体育の授業の着替えの時だった。

一斉に皆が私を見る。

「うわぁ本当だぁ！すごーい！」

え!?え!?普通じゃないの!?

またしても私は恥をかいた。

ダッシュで家に帰りバァン！とドアを開けた。

「お母さん！ブラなんて誰も付けてないじゃない！お母さんのせいで恥かいたじゃないの！バカ！！」

「はぁ？バカはお前だろ？ちょっと人より成長が早いんだから仕方ねえじゃねぇか。父さんの件もそうだ。聞けばなんだ？友達に言われて恥ずかしい？もっと自分を持て！自分の感情と意思で動ける女になれ！」


目が覚めた。


晩御飯。

「優里小学生の間はお父さんとお風呂に入る」

またしても食卓がざわめく。

「だから優里それは…」

「優里恥ずかしくないもん！一人より二人のが楽しいもん！」

「だめ」

お母さんだった。

「なんで!?筋を通せって言ったのお母さんじゃない！」

「だって母さんも…」

語尾が聞き取れなかった。

お父さんには聞こえたらしい。

にやけながらお父さんはお母さんに尋ねる。

「母さんもなぁに〜？」

「か！母さんも父さんとお風呂に入りたい…」

蚊の鳴くような声でお母さんは見たこともない真っ赤な顔で答えた。

ギャハハとお父さんとお兄ちゃんが笑う。

「万里ぃ〜お前可愛いよぉ！優里すまん！父さんも母さんと入りたい！」

「優里…兄ちゃんと入ろっか」

優しいお兄ちゃんだった。


「へぇ〜それで今お兄ちゃんとお風呂に入ってるんだ？」

もう友達になんて言われても気にしない。

「うん！」