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こみや'S創作長編物語集コミュの母が俺に伝えた人のあり方

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自慢の母だった。

美人で優しい母が大好きだった。

幼稚園の時だった。今でも覚えている。

「ねぇお母さん!僕と博人君どっちが好き?」

博人君を連れて母に尋ねた。

もちろん実のこどもである俺の方が好きだと答えてくれるとばかり思った。

しかし。

「二人とも好きよ。二人とも可愛いわ。選べない。」

母は答えた。



なんで?

本当のこどもの方が可愛いんじゃねぇのか普通…

母の心中は当時の俺には理解出来なかった。

誕生日の日だった。

俺の家で友達10人くらいが集まりプレゼントを持って来てくれた。

母はケーキやお菓子などを作ってくれた。

嬉しかった。

ケーキを食べてプレゼントを開ける。西野さんのくれたチョッパーのマスコットがめちゃくちゃ可愛くて一番気に入った。

その事を伝えたくて…

「今から気に入った順にプレゼントを並べます!」

俺は叫んだ。

そしてチョッパーのマスコットを掴もうとした瞬間。

パァン!!



母の手が飛んできた。

「止めなさい」

なんで…

静まりかえった空気を母は一転させた。

「さーあ!みんな!デザートを食べましょうか!おばさんのフルーツポンチは美味しいわよ!」

「は…はあい!」

俺は一人打たれた頬を押さえ呆然としていた…

「幸人君ありがと楽しかった!」

「じゃあな幸人!」

皆を見送って二人きりになった。


「幸人」


母が急に真剣な顔になった。

「なぜお母さんが怒ったか分かる?」


「分かんねーよ!!」

俺は思いきりグーで母の足を叩いた。


「俺は西野さんのくれたチョッパーがすごく嬉しかった!だから!だからそれを一番に並べたくて…」


「そう!そうして並べていけば必ず最後になるプレゼントがあるわよね!」



「その子はどう思うかしら!あなたを思い選んだプレゼントが一番気に入られなかったと知ったその子はどう思うのかしらね!あなたならどう思うかしら!友達の誕生日プレゼントを選びそれが一番気に入られなかったと知ったらどう思うのかしら!」


母は泣いていた。


「まだ小さいあなたには想像力が足りない。叩いたのは悪かったわ。けどね。人の痛みの分かる子になりなさい。」

「お母さん…僕が悪かったよ…泣かないで…」

グスングスンと二人で泣いた。

母には色んな事を教わった。

「挨拶は自分からなさい。自分から挨拶のできる子には友達が集まる。友達の集まる子は必ず幸せになれる。家庭は学校での練習場。毎朝お母さんとどっちが先におはようが言えるか競争よ。」

毎朝起きて顔を合わせた瞬間おはよう!と二人で叫び笑っていた。


やはり母にはかなわない。


母のおかげで俺にはたくさんの友達ができた。

「お前の母さんかっこいいよな」

誰からもそう言われた。




25歳。

結婚を決めた彼女を家に連れていった。

「おれはマザコンだぜ。母さんは俺の誇りだ。文句あるか?」

彼女は笑って首をふった。

「幸人。結婚をしたら実佳子さんを一番に想いなさい。お母さんの事など忘れなさい。あなたと一生を過ごすと決めてくれた人を悲しませるような真似は止めなさい。お母さんの事など忘れてしまって構いません。実佳子さん。何か嫌な事があればなんでも言って来なさいね。私が説教に行きます。」

母は最後まで俺を後回しにした。

父から本当は聞いていた。

母が姑に苦労していたことを。



こどもが出来た。


母は嬉しそうに抱いていた。

俺は聞いてみた。

「母さん。この子と俺どっちが好きだ?」

両方好き。選べないと答えると思った。

「何をこどもみたいなことを。この子に決まってるじゃないの。ねぇ?」

笑って赤ん坊に話す母。

「母さんおかしいよ〜」

笑いながら詰めよった。

「あなたはもう大人。本当に大切な事は全て伝えたつもりでいるわ。この子の方が大事と言ってもあなたは傷付かない。でしょ?」




幼稚園の時の疑問が長い時を経て解けた。


「お母さん!僕と博人君どっちが好き?」


この人は俺の方が好きだと言って博人君を傷付けたくなかったのだ


やっぱり母にはかなわない。

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