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陰陽師@二次創作小説コミュの妖怪小話其之百七十【人柱師・七】

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【人柱師・七】 
冬弥「ここが…俺の村だよ」 

京都から川を渡り、冬弥の住む村へと辿り着いた我々でありました。 

私「初という娘…。まだ大丈夫でしょうか」 

冬弥「そうだ、初!」 

冬弥が村を離れてから、ゆうに三日は過ぎていたはずでございます。 
儀式の支度が整えば、初という娘は人柱になっているやもしれません。 
走り出した冬弥のあとを追ってゆけば、神社の社へとたどり着いたのでありました。 

冬弥「初、初!」 

初「冬弥…。なんで、ここに」 

社(やしろ)の裏手に建てられた離れの一室に、娘が一人座しておりました。 

冬弥「初!あぁ…、よかった。お前を人柱にしなくても良い方法が見つかったんだ。今すぐに此処をでよう」 

初「冬弥…。馬鹿なことを…」 

ガッッ! 

と廊下の柱に石がぶつけられました。 

冬弥「なっ…!?」 

村人「冬弥、お前何してんだ」 

村人「初は人柱になるんだ。あきらめろ」 

村人「その娘は、現世との因果を断ち切らないといけないんだよ。 
いらない情けはかけないでおくれ」 

冬弥「みんな…。聞いてくれ!話があるんだ」 

初「無駄だよ。もう儀式の用意はできちまってる。 
あと一刻後にあたしは人柱として埋められるのさ」 

冬弥「何っ!?」 

初「来てくれただけで十分さ。あんただけだよ…あたしを引き留めてくれたのは。 
嬉しかったよ、冬弥」 

冬弥「諦めるなよ、初!俺は本当に人柱なんかたてなくていい方法を…!!」 

人柱師「なんの、騒ぎですかな」 

集まっていた村人がわかれ、法師がひとり姿を現したのでありました。 
冬弥「聞いてくれ、法師様。 
人柱など建てずとも、丈夫な橋さえ建てられれば、この川は大丈夫だ。 
この安倍晴明の弟子とともに、鬼の男に頼んできた。 
金と馳走と…とりわけ酒は必要だが、強く丈夫な橋になる。 
だから初を、初を人柱にしないでくれ!」 

村人「安倍晴明…あの都で有名な陰陽師か」 

村人「鬼?」 

村人「鬼が橋を架けるのか」 

ざわ、ざわ。と村人達へ動揺の色が走ります。 

人柱師「そうか。それは良い橋大工を見つけだしてくれたものだ」 

冬弥「なら…初は!」 

人柱師「その橋に人柱を建てたなら、さらに立派に強い橋になりましょう」 

冬弥「なんでだよ!なんで、鬼が橋を架けるのに、初が人柱にならなくちゃならないんだ」 

人柱師「鬼と呼ばれるほどの凄腕の橋大工か、はたまた本物の鬼が創るのか…。 
仮に後者であったにせよ、邪(よこしま)なものがつくりし橋では、清める神も必要だ」 

赤目「随分と人柱にこだわるじゃないか、人柱師」 

ふいに、私の肩に乗っていた赤目が口を開きました。 

村人「兎が、言葉を!?」 

人柱師「ほぅ。妖か」 

赤目「お前、最初から人柱を建てるためにこの地を訪れたんだろう。 
いいや。この地だけじゃない。 
いままでどれだけの人間を人柱にたててきたんだ。人柱師」 

人柱師「そこまで見抜くか。流石は安倍晴明の弟子。 
しかし、人柱はただ人の命を奪うのではない。 
人柱になった人間は神となり、永遠の命を手に入れるのだ」 

赤目「それは成功したらの話だろ。 
だが、お前の建てた人柱はいまだひとつとして成功したためしはないだろう」 

人柱師「なにっ…!!」 

赤目「永遠の命が欲しいのは人柱に建てられた人間ではなく、お前だろう。 
なら、なぜお前は人柱になっていない」 

人柱師「この…兎が」 

赤目「ふん。言ってやろうか。お前が建てた人柱は皆ただの実験台だ。 
お前一人が、確実に人柱の神となるためのな!」 

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