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陰陽師@二次創作小説コミュの狼の訪れ

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*去年の神無月・演武会イベントで書き始めたのがずっと放置だったSSです。
天狼が書きたかったただそれだけですが…。



―――――――――――――――――――――――――――――――――









深みのある群青の広大な天蓋。


空に広がる無数の煌めき。
その中で佇んでいたものは薄物で頭を覆い、幾重にも重ねた衣をまとった一人の男だった。
男の周囲に星とは違う輝きが無数に散らばっていた。

薄物の下の表情は穏やかなようにも憂いているようにも見える。
見る人に様々な印象を与えつつも、常に変わらぬ空気をその身に纏う星の神の名は昴。

彼の手に小さな輝きが百、千と集うたび、その手を通じて天へと昇り――
星に変わる。
それらは様々な理由で、形で、命を落とした生き物達の命の塊であり、昴はそれを星に変え、今なお命の在り方を空の彼方から見守る神であった。
やがて、輝きが全て天蓋へ吸い込まれ、星に変わっていくのを見届けると、ふうと一息ついた。

「さて―――もう神無月か。もうじき出雲へ神々が赴く頃になるが…」

誰に言うまでもなく呟く。


神無月は神去月(かみさりづき)――神の去る月。
年に一度のこの月、神々が地方から集まり、出雲でこれからの一年を話し合う重要な時であった。
少し前、都で騒ぎがあったため、都を守る神々がやむなくとどまったという前代未聞の事態があったが、それを除けば事態がやっと静まった頃に都からの神々も足を運べるようになった。
当然昴もこの席に出席する。
いつもは、傍に仕える二人の供を連れていくのだが―――

「…天狼に少し暇をやる、か」

そう呟いた。







主が一時を下で過ごすと言ったのは、ちょうど神無月の時だった。
その時の俺は、主が出雲へ赴くということで下準備を行っていた。
…まさか、俺に暇を出すなどと主が言いだすとは、思ってもいなかった。




「天狼、そなたたまには帰郷をせぬか?」

そう言い、主は笑いかけた。
いつも主は柔和だ、滅多なことでは怒りを露わにしない。
だが主が怒りを露わにすれば恐ろしいことも俺は知っている。

「それは…思ってもみなかった事。だが、主の供は?」
「案ずるな、雲雀がいる。あれもこの間暇をやったばかりだからな、そなたにもそろそろ暇が必要であろう」
「雲雀か…」


見慣れた淡い灰褐色の羽毛がはらはらと頭上に降りかかり、半鳥半女の妖が舞い降りてきた
もう一人の守護者――雲雀。
雲雀は俺と主の間に降り立ち静かに頭を垂れた。

「昴様、天狼殿、出雲の神々に通達を致し戻りました」
「大儀だ、雲雀よ。これから出雲に赴くが、此の度の会議は雲雀のみ供として参じる」
「は…天狼殿はよろしいのですか?」
「それは俺も思っていた事だ、雲雀殿」

互いに顔を合わせる俺と雲雀に、主は笑いかけた。

「そなたが故郷を離れて百と十年…少しは恋しくもなろう。…思わぬか?」
「…思ってもみなかった、主」


そこは、俺がかつて主…昴に仕える以前にいた場所。
その頃の俺は、荒ぶる妖だった。
今は俺の存在を伝える者など当にいないだろう…。
荒ぶるままに殺生を重ねた俺は主に諌められ、悔い改めて妖としての生から昴とその星の守護者としての生を選んでいたのだから。






その里は今もまだ静かで、時として健やかな人の営みを絶やしていなかった。
かつてこの里に現れ、人々を恐れさせた荒ぶる妖の話を知る者はごくわずかである。
今は10月。
この里の紅葉も鮮やかな色をいよいよ浮き立たせ、落ち葉を散らしていた。


素足で落ち葉や土を踏み、一人の若い娘が歩んでいた。
透けるような白い肌をした17、8歳ほどの娘で地味な色合いの麻の服に身を包み、左脇に小さな笊を抱えている。
この時期山では栗や茸が豊富に採れる。
子供たちも遊びにいくたび山ブドウやアケビを採ることを楽しみにしているが、山には物怪も多く住むため家は厳しく山へ行かせまいとしていた。


「てて様が言っていた山菜…確かこの辺りに」

そう呟きながら、娘は苔むした岩の上をよじ登り始めた。
急な斜面であるため、足を踏み外せば転倒しかねない。
よじ登った先で岩に挟まれるように生えた目当てのそれへ手を伸ばした。
緑も鮮やかな葉を上へと伸ばし育つ山菜―――

「あったわ…」


そこの娘――――


山菜に指先が触れて、一瞬だけ耳を言葉がかすめた。
…気のせいだろうか、少し前から、生臭い臭いが鼻をつく。
それに妙に生温かい。


「そこの娘、何をしている!逃げろ!!」
「え?―――」

どこからともなくかかる声に振り向いたところで、娘の体は硬直した。


ふぅぅぅぅっ…
ふううううぅぅっ

目と鼻の先にある鼻面と涎を垂らした大きな顎、鋭い牙。
深紅の毛並みに覆われた堂々たる体躯は、娘の身長を遥かに超えるものであり、その鋭い爪を備えた腕は娘の腰より二周り太い。
血生臭い吐息を娘にかけ、そのあまりにも巨大な獣――鬼熊と呼ばれる熊の物怪は、山菜に気を取られていた娘の前にそびえ立っていた。
同族すら殺し合うことを厭わないという凶暴な物怪は、腹をすかせていた。


グルルルルルルル…!

「ひっ…!」

鬼熊の気魄に打たれて身体が動かない。
その腕が娘を狙って振りあげられようとした時である。
その顎から恐ろしい叫び声が迸った。

ゴアアアアアッ!!



「!?」

娘は鬼熊の胸から突き出た物を見た。
冷たい光を放ちながら、鬼熊を貫いているそれが剣であると知るのに時間がかかった。

「…悪いが、貴様に食わせるには忍びないな」

先程と同じ声。
低く落ち着いた声が今伴っているのはかすかな殺気。
鬼熊が猛り狂い、闖入者の方を振り向こうと暴れるも、剣は抜ける様子もなくびくともしない。

「殺戒を犯すのは主の好まぬところだが、いた仕方ない。―――散れ!」


ぐおぉぉおああああっ!!

鬼熊の声が断末魔の響きを持って山中に響く。
剣は切っ先すら動くことなく、鬼熊の巨体は文字通り弾け散った。
――血肉を娘に浴びせることもなく。


「あ……」

唇が強張る。
背中を土に押しつけたまま、目の前で何が起きていたのかわからないまま前を見ていた。
鬼熊がいた所を闇が包んでいた。
覗きこめば吸い込まれそうな、闇が。



「――怪我はないか?」

闇の向こうから声が語りかける。
闇は薄れて影となり、消えようとする。

「…は、はい」
「俺はお前の命を救ったが、人ではない。俺の姿を見ても、声を上げてくれるな」

闇が消え、向こう側にいるものの姿を露わす。
その姿を見た娘は、思わず息を呑んだ。

薄墨色の下地に紅の文様を刻んだ上衣と朽ち葉色の袴。
腰に刀剣を帯びた姿は、一見人と変わりない。
だが、その頭は青灰色の毛並みと浅黄色の髪を備えた狼の頭部であり、その腰の後ろに下がっているものは同じ青灰色の狼の尾であった。

その狼の頭を持つ妖が、ゆっくりと歩み寄ってきた。
ますます身を強張らせる娘に、少しだけ肩を落とす仕草を見せる。

「そんなに俺が、恐いか」
「……ええ」
「俺のこの頭がか」
「…」

無言でうなずく。
山は狼の住みかだし、娘も何度か狼の姿を見ている。
しかし、目の前にいる狼の頭に備わった紅い双眼には、理性の伴う優しげな光が灯っていた。

「心配はしなくとも取って食いはしない。ただ、この山の中で一体何をしている?」
「て、てて様が病気で…、それで山菜を食べさせたいの…」

娘の言葉についと視線がその後ろへ向く。
目当ての山菜は、まだその根を抜き取られることのないまま茂っている。

「あれをか。俺が採ってやろうか?」

娘は――動かない。
まだ硬直が解けていないとわかって、深く溜息をつき近づく。

「少しそこをどいていろ」

言われてハッとしたように、娘がそろそろと足場を降りた。
それに代わって山菜の前まで一気に上がると、一株摘み取るや娘にそれを差し伸べた。


「これで良いか?」
「ありがとうございます。…あの…」
「何だ?」

山菜の周囲の土を元に戻し、狼頭の妖がゆっくりと降りてくる。
それを見ながら、娘は先程より落ち着いた表情で、山菜を笊へと入れながら、おずおず尋ねた。


「あなたは…何の、物怪なのですか?」
「俺か。古老なら俺の事を知っているだろう」
「え…?」
「俺に遭った事はあまり話してくれるな。…俺は天狼という」

てん、ろう…

娘がその名を反芻する間に、狼頭の妖は木々をかき分けいなくなっていた。






「…相変わらずだな、この山も」

天狼は少し離れたところから娘を見送り、ようやく周りを見回した。
相変わらず山は彼がいた頃と同じく静かで、穏やかで、暗い。
そして、鬼熊や野守虫など物怪が闊歩するのも相変わらずである。
陰陽師でも豪胆な武将でもなき人間から見れば、脅威の存在である獰猛な物怪達。

厚いフェルトの靴が草や枯れた枝の間を踏みわけ進んだ。

「まだ残っていれば、この辺りのはずなんだが…ああ、あれだ」

足を止めた前にあるのは、長い間人の手の入っていないまま朽ち果てた祠だった。
自分が住む以前、ここには道祖神が祀られ人の足もそれほど遠のいたものでなかった。
今は自分が拠点にして暴れていた場所ということもあり、また物怪の数も増えてきた為に人の足は絶えている。


「……もう、だいぶ朽ちているな」

祠の前まで来て天狼は呟いた。
もうだいぶ陽も落ち、火の光に頼らなければ数歩歩くこともかなわない。
しかし、天狼は星の化身。
じんわりと彼を包む光が周囲を照らした。


「おや」
「!? 誰だ」
「あんただったかい。久しぶりだねえ、ここ最近顔見なかったからどうしたかと思ったよ」

後ろからの声に振り向いた先には、紫を基調とする装束を纏う一人の少女がいた。
一見すると人間のようだが、やや尖った耳が人との一線を画すものにしていた。
少女は装束と同じ色合いの紫の髪を指でもてあそびながら、天狼に向かってくすりと微笑んでいる。


「お前は…葛か」

記憶をたどり、知っているその名を天狼は口にした。
七草のひとつにして、他の植物を枯らしてしまう程に強い生命力を持つ葛の精霊。
葛の生える所ならばどこにでも存在するため、葛の精霊は一人だけではない。
それでも、目の前にいる葛とは、知己の間柄だった。


「軽く百年経ってもまだ枯れてなかったか」
「失礼だねぇ。あんたの居場所誰が見てると思ってんだよ。百年以上も留守にしといて、どこ行ってたんだい?」
「昴の元で遣いを任ぜられていたから、しばらく戻っていなかったのだ」

天狼の言葉に葛が目を見開いた。

「昴っていやあ、星の神じゃないかい!?あんた、そんな大層な方のとこへ行ってたんじゃそりゃ、帰るのも遅いわけだ」
「神無月だが暇を出されたのでな、それで少しの間ここへ骨休めに来た」
「暇、ねぇ。あんたが戻ってくる前からここはだいぶ静かになってるけどさ、その様子見る限りかつてのあんたの面影はまだ消えてなさげだねえ」

言いながら葛が天狼の目を覗きこむ。
見返す天狼に悪戯っぽい笑顔を送った時、その顔が真剣な眼差しに変わった。

「どうした?」

遠くへ鋭い視線を向けた葛へ問いかける。
低く葛の唇が動いた。

「火…!」
「何?」
「火の臭いがする。方向はこの近くの村の方」
「!」

天狼が葛の指差す方を向き直った。
かすかに赤く染まった空に不吉な予感が通り過ぎる。

「…」
「勢いが増すかもしれないね。河童神さんの爺に頼むから、あんた様子見て来てくれない?」
「言わずとも」

相変わらず使いの荒い奴と苦笑いするも、その脚はすでに村の方へと向かっていた。




火が家という家の屋根をはいずりまわる。
悲鳴が周囲に響き渡り交差して逃げ惑っていた。
それに混じる怒号が、空気を強くかき乱していた。
拾い上げた薄汚い布で頭部を隠し、天狼は片腕で軽く火の粉を払った。

原因が何かはすぐにわかった。

数人の男達が手当たり次第に家に押し入っては、火をつけていたのだ。
怒号の幾つかも、この男達のようである。


(…相変わらず…)

不快さに紅い目を歪めた。
人間というものは、浅ましい。
欲に深く染まりやすく、力にどこまでも飢えやすい。
それは、自身がただの妖だった頃から変わっていない。
百年千年経とうと不変の存在であり続ける妖怪からすれば、あまりにもくだらない事だった。


それ以上彼が物思いに耽るのを遮るように、娘の絹を裂くような悲鳴が聞こえた。


「いやああああっ!!」
「大人しくしろ!」
「おい、そっちで押さえろ!」

崩れかけた家の中から聞こえるその叫びに馳せつけ…

「!」

足元に引っかかるものを感じ、顔を下に向ければ血に染まったものが転がっていた。
粗末な衣に身を包んだ年老いた男が、背中を斬られ倒れ伏している。
その向こうで、複数の男達が一点に群がっていた。

「!!」

群がりの中からかろうじてはみ出す娘の細い手足。
それを見た時、再びその悲鳴を聞いた時、駆けつけずにはいられなかった。





「ぎゃああ!!」

娘に乗りかかろうとした男が袈裟掛けに斬られてもんどりうった。

「なんだ!?」
「うわあ!」

娘を押さえつけていた者も、娘の衣を強引にはだけていた者も、突然の襲撃者に気づいて振り返った。
赤々と燃える火に照らされた紅眼の狼頭を目の当たりに、一同の顔から血の気が引いた。


「ひ、ひいっ!」
「化け物!!」

「天狼!」

顔を涙に濡らした娘の声に、天狼は血に濡れた刃を振りかざした。
上がる断末魔と悲鳴。
再び血飛沫が壁に飛び散った。



数分後。
燃え盛り、崩れる家の中から天狼が出てきた時には雨が降っていた。
麻布に身をくるませた娘を抱いて、山に向かい走った。

雨は激しさを増し、村全体を打ち付けるように降り注いだ。
水妖怪が降らせる雨は、松脂で燃えた火をも消す力を込められている。
火もまもなく消えるだろう。


「・・・」
「大丈夫か」

体の震えを感じて天狼は胸にしがみつく娘の様子を窺った。
答えが返らないのを認めて深く息を吐く。
仕方ないことだろう。
目の前で父親を殺され、自身も操を奪われかかったのだから。

「この雨はただの雨ではない。村の火も一晩で消える」
「・・・」
「父親の事は残念だが、昴様に奉じられぬ魂はない。空に輝く星の一つとなって、お前を見守るだろう」
「すばる…様?」

沈黙を破ってようやく娘の口が開いた。

「…俺がここにいた妖であった事は聞いたか?」
「おじいさんに、聞こうとしたわ。でも、おじいさんはさっき…」
「…そうか。なら、話して聞かせよう」


天狼は木陰に身を寄せながら、静かに話しだした。


「俺はこの山で数百年生きてきた狼の妖だ。俺は人間も物怪も嫌いだった。奴らを見るたびに牙が疼く。奴らの血で染まるほどに人も物怪も食い殺してきた」
「・・・」
「そんな事を繰り返して今から百十年前の星空がよく見えるある夜に、昴様が降りてきた」
「すばる様?」
「星を見守る神だ。生物が死んだ時その命を星に変えて夜の空を飾る神。その神が俺の前まで降りてきたのだ。そして…な」


命は奪うものでもあるが返すものでもある。
星を見守る神が最初に言った言葉が、今も頭の中に残っている。

「諭された俺は元住んでいたこの地を離れ、昴様の元で従者となった。空には人もいなければ物怪もいない。昴様の手の中にある命が星に変わるのを見守るうちに、自然と人にも妖にも牙が疼くことはなくなったのだ」


がさり、と藪をかき分けて葛が現れた。
娘がその音にびくっと体を震わす。

「河童神さんに頼んできたよ。じいさん、えらく張りきって…おや?誰だい、その子は」

土砂降りにも関わらず衣の裾すら濡れていない様子で、葛は娘をしげしげと見つめた。

「あの村にいた娘だ」

天狼は言葉少なめに紹介してから、ふと娘に聞いた。

「ところで、家はどうするのだ?」
「私は…」


聞けば親戚もなく、父親と二人暮らしだという。
提案に詰まった天狼を見かねて、葛が助け舟を出した。

「あんた、妖怪に抵抗さえなけりゃ、近くに住んでる河童神さんの所で世話になるってのはどうだい?」
「河童神さん…小川の祠に祭られてる、あの?」
「そうさ。あの爺さんなら、人間は好きだし面倒見は良いしさ。あんたみたいなかわいい娘に宿で働けとか夜鷹になれなんて言ったら、こいつが黙っちゃいないだろうからねえ」
「何の事だ、葛」

意味深ににやにやと表情を緩める葛に天狼は胡散臭そうに視線を向けた。
娘も、しばし、思案を巡らせてから細々答えた。

「できるのなら…本当はてて様が星になったのなら私も星になって、そばにいたいのだけど」
「残念だがそれは無理だ。星は一度散らばれば、探すことは難しい。星となった命は限りなく多いのだ」
「だから……私も星になるまでは、てて様がお空から見守ってくれると思って、生きていきます」
「なら、決まりだね」

葛はにこりと笑って娘の肩を軽く叩いた。









「これからの年もまだ乱れが極まる…か」

天狼が骨休めから戻ってくると、神無月の集会から戻ってきた昴と雲雀が向かい合っていた。

「天狼殿、戻られたか」
「うむ。…集会の方はどうだった、雲雀?」

雲雀の言葉にうなずきながら聞いた。

「来年も何やら都の方で乱れが起きるそうだ。その事で、随分話をしていたが一向に打開策が見つからなくてな。昴様も困っておられた」
「乱れ?」
「陰陽師によるものとは別のもののようだが…強力な妖によるものかもしれない。先が見えぬのだ」

雲雀は云いながら主の方を向いた。
昴は再び星を夜へと上げる作業に取り掛かっている。
そこで、天狼は思いついたことを昴に打ち明けることにした。


「主、お願いがあります」
「どうした?」
「今回お暇を戴き、久方ぶりに故郷に降りたのですがそこにあった小さな村で不幸があり多くの人間が命を落としました。…その中に、年老いた病気の男がいるのですが、その男の命に、大きな光を与えて下さりませんか?」
「何か、あったようだな」

昴は静かに両手を差しのべ、天狼の手を取った。


「天狼、星の輝きには生前の善悪も徳も関係はない。死したモノの想いの強さで決まるもの。強く輝けるかどうか、その男次第ということ」
「なら…」

天狼は空を見上げた。
瑠璃色の深い夜空を飾る無数の綺羅星を。

「彼女の事を見守るために、輝いてくれるのか…」
「そなたも変わったな、天狼」

昴は柔らかく微笑んだ。

「この世で変わらぬものはない。それでいいのです」




たとえ下界でどんな騒ぎがあっても、この空だけは変わらない。
そう思いながらも、天狼は空を見据えていた。





コメント(3)

あわわっ!;
感想どうもありがとうございます!


摩耶@流連荒亡さん>
陰陽師の式神でも高スペックな方々は悉くもイケメン揃いなので、カッコよく(小説的にも絵的にも)書ける人ってなかなかいないと思うのです(自分もなんですが

天狼の説明文を見て去年の演武会の内容で書きたくなってざかざか書いてたので、本当に恥ずかしいくらいですが…!
最近綺麗な星空を拝んでないので、ゆるりと眺めたいですね。


ひさりんさん>
私も大図鑑コミュの語らい部屋トピで七夕画像見させていただきました。
歳星が色々とカオスでしたけども(笑)

昴と雲雀は当時都合上悪くて(というより、天狼しか目になかったゆえ)ゲットならずだったんですが、彼らの説明文見て作った性格がアレです(笑)
特に雲雀は秘書というかなんだかんだ使い走りなイメージです。

最初話の内容としては、娘との恋愛的な展開を予定してたんですが流れ的でこんな結末としました。
また何かスピンオフ的なもので出すかもしれません。

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