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陰陽師@二次創作小説コミュの深山路に稀客来りて 3

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『深山路に稀客来りて2』の続きです。
今回は柴天狗と謎(笑)の男のターン。
そして柴天狗ごめん。ほんとごめん。

■深山路に稀客来りて1はコチラから↓
http://mixi.jp/view_bbs.pl?id=68326716
■深山路に稀客来りて2はコチラから↓
http://mixi.jp/view_bbs.pl?id=68378386


では、はじまります。
ーーーーーーーーーーーーーーー

『深山路に稀客来りて 3』



「どこいく気なの、おじさん」
「…おや、可愛らしい童がでてきたの」

 出会って開口一番、そんなやり取りをかわした。
 一方は木の枝に立ち、一方はそれを見上げる形で。

 柴天狗が出会ったその者は、自分たち天狗と同じ修験者のような格好をしていた。その背に一対の翼が生えているのも一緒。つまりは妖であった。しかし、彼らと大きく違うところがある。その頭部が人のものではなく、鳥類のものであったのだ。その黒光りする嘴から、老成した低い男性の声が発せられる。

「天狗ではあろうが…いやはや、お主、変わった色みをしているの」

 唐突に声をかけて動揺を誘ったつもりだが、相手は気安い友人にでもあったかのように全く落ち着いた様子でこちらを見上げてきた。しかもその髪は地毛か?とこちらを無視してのんびりと続け、柴天狗は目を細める。

「川の方を思い出す色みよ、もしやあの一族か?」
「…ねぇ、答えない気なの?」

 彼の中に苛立ちがつのる。それは実のところ、彼自身が子供の姿をしていること、天狗の中では珍しい髪色をしていることへのコンプレックスが燃料ともなっているのだが、これに彼は気づいていなかった。つまり、この男は柴天狗も自覚のしていない地雷を見事に踏み抜いていたのだが、勿論気づく筈もなくマイペースに話しかける。

「その様子ではちがうな、とすればお主が柴とやらか」
「な、」
「やはりか、儂の記憶力もまだまだ捨てたものじゃないのう」

 からからと笑う妖に、柴天狗は更に顔をしかめた。自分の知らぬことをこの男は知っている、それが無性に胸の内をざわつかせた。しかし、その無意識に感じ取ったものを苛立ちへと変換して、柴天狗は挑発するように無理矢理口角を上げた。

「子供と思って馬鹿にしないでよね、痛い目見るよ、おじさん」
「ほほぅ?どうするつもりなのだ、柴よ」

 このとき、初めて男はにやりと意地の悪そうな笑みを浮かべた。鳥の頭という本来表情の変化に乏しい姿をしているはずなのだが、柴天狗にはっきりと伝わった。

「侵入者には容赦しなくて良いってお許しが出ているんだ」
「ふむ?」
「最初っから全力でいくよ。後悔しても遅いからねっ!」

 その言葉と同時に、ぶわりと柴のまわりの空気が歪む。彼を中心に渦巻く風が生まれた。

「ほう!?」

 感嘆の声を漏らす男の前で、柴天狗の姿が変わる。特徴的な水色の髪が、風になぶられる内に赤紫に染まっていき、目の色が煌煌と光る紅へと変貌する。

「行くよっ」

 そのまま枝から飛び上がり、瞬時に片手に火の玉を生み出す。それはただの火ではなく、黒炎と呼ばれる特殊な火で練られたもの。彼はその肌を焼くような熱に笑みを浮かべながら、驚きの表情を浮かべたままの男にすかさず投げつけた。

「ふぬっ!」

 轟々と空気を焼きながら火球が男目指して飛んでいく。我にかえって、とっさに後ずさり距離をとろうとした男だったが、それを柴天狗が逃す訳がない。火の玉が真っ直ぐ飛ぶなど誰が決めたのだ。男が飛び退いたせいで地面にぶつかりそうになった火の玉は、彼が念じた通りに突然軌道を九十度曲げて男の懐を目指す。一瞬男が目を見開いた気がした。着弾したとたん、烈しい爆発音と共にもうもうと砂煙が立ち上がる。

 煙に囲まれて、柴天狗は羽ばたきつつその様を予断なく眺めていた。そして、だんだんと訝しげに眉根を寄せていき、ついには小首をかしげた。なぜなら彼が思っていたより、あっさり命中してしまったからだ。確かに避けられないような工夫はしていたけれど、もっと、こう激しい抵抗があるものだと思ったのだ。彼が最初に男を見つけた時の感触では、かなりの実力者だと…

「…やれやれ、困った」

 はっと、顔を上げる。その目線の先に、砂煙の中に立つ男の影が見えた。

「砂がついてしまったわ、気に入りの衣であったのだがな」

 そういって、何事もなかったかのようにぽんぽんと服をはたく。しかし、先ほどとは大いに違う点があった。どこから取り出したのか、片手に団扇を持っていたのだ。八手の葉で作られたそれは、自分たちが持つ物と良く似ているがかなり大振りだ。それで先ほどの火の玉を受け止めたのだろうか。

「ちっ」

 舌打ちしながらも、柴天狗は自然に口角があがっていた。やはり、こうでなくっちゃ面白くない。再び片手に火の玉を生み出し、更に今度はもう片方の手の平にも同じく火を生み出した。

「じゃあ、これどう受け止める?」
「うむ、お主と遊びたいのはやまやまだが……いかねばならぬようだ。あれがこちらに気づいたようだしな」

 ちらりと空に視線をやっていた男は、困ったような笑みを浮かべて答えた。そのいかにも頑是ない子供をあしらうような言葉に、柴天狗がカチンと来たのは言うまでもない。

「そんなの聞き入れる訳ないでしょっ」

 問答無用とばかりに両手の火球を投げつける。そして、直ぐさま再び生み出し、投げつけ。

「やれ、素直に通してくれぬのか」

 男は慌てることもなく団扇を一仰ぎした。眼前まで迫った火球は暴風にかき消される。そして突如、ごおっと耳を打つ轟音と共に風が吹き荒れ。次の瞬間、柴天狗の目の前がひっくり返った。

「え!」

 身体が逆さまになっている、と気づいたのは悲鳴をあげた後だった。強い風がまるで意志を持ったかのようにうねり、柴天狗の自由を見事に奪っていた。

「あわわっっっ!!」

 逆さまになった景色に、男が更に団扇を一仰ぎしたのがちらりとかする。するとそれにあわせて身体が一回転した。

「わっ」
「ほぅほぅ、紙風船のようなものよな。ほれ、くるりくるりと」

 楽しげに言う声にあわせて、くるくると柴天狗が回転する。暴風に巻き込まれるまま回転していたので、それは決してくるりなどという可愛らしい擬音の似合う光景ではなかったのだが。仮にもし、柴天狗が乾燥機というものを知っていれば、正にそこに放り込まれて、もみくちゃにされる服と自分を重ねただろう。何度も上下反転させられ、めちゃくちゃに揺すぶられる。同時に体内をかき混ぜられるひどい気持ち悪さ。しだいに速さが増していく中で、うっ、と呻いて柴天狗は口を押さえた。しかし止めることは出来なかった。

 そうして、何度もみくちゃにされただろうか。幾度も頭をゆすられ、柴天狗は次第に理性を外していた。これでも最初男にちょっかい出しかけた時には、遠慮があったのだ。死なない程度に焼けこげにするぐらいにしよう、という髪の毛一本分ぐらいであったのだが。だが、めちゃくちゃにされて、冷静な判断というものを失っていた。ずるずると口を覆っていた手を懐に伸ばし、そして。

「これくらいにしておこうかの……お?」

 団扇を止めようとしたところに、一瞬、バチッと閃光が走るのを男は認めた。
 続けざま、バチ、バチッと音が鳴る。段々と数が多くなり、空を走る光も長くなっていく。

「電撃、とは」

 今や男の前に、バチバチと雷をまとう竜巻が現れていた。中心には先ほどまで彼が自身の技で捕らえていた柴天狗がちらちらと見える。男は驚きの表情を浮かべてつつ、自然と団扇を持つ手を下ろしていた。とっくに男が作っていた風は消えている。よって、目の前で展開する暴風と電撃は、男の操る風の中で柴天狗が生み出したものだった。

「これはこれは…」

 男の顔に初めて焦りのようなものが浮かんだ。改めて団扇を構え直し、軽く両足を開く。じり、と地面を踏みしめた。

「…どうくる」
「はああああああっっ!!!」

 間をおかず柴天狗が絶叫する。男は瞠目した。
 なんと、そのままこちらに向かってきたのだ。つまり、なんの細工もないシンプルな体当たり。それはただ、柴天狗になにか策を図るほどの理性と余裕がなかっただけなのだが、その分、男にはどう受け流すか考える猶予も与えなかった。

 ごおおぉぉんという、先ほどとは比べにならない爆風と土煙が起こった。同時にメリメリと嫌な音が聞こえたので、何本か木も巻き込まれて倒れてしまったのだろうが、辺り一帯の視界が奪われているので確認出来ない。
 その中を、ふらふらと柴天狗は浮かんでいた。

「ど、どうだ」

 電撃に火傷を負った腕を押さえながら、擦れ声で言う。他にも装束の端々がこげてしまっている。普段ならば自身の生み出す電撃で怪我を負うなんてことしない。しかし、今回は彼も無我夢中でやってしまったことで、色々と制御が甘かったのだ。痛みに顔をしかめて、なんとも自分らしくない様にちょっと後悔する。

「あー…、怒られる、よね…」

 そして、改めて自身の姿を見直した。ひどい姿だ。だがその結果、あの男を倒すことが出来たのだ。あれだけの技を使えるのだから死んではいないだろうけど、瀕死ぐらいにはした筈だ。これでいい。これだけ痛めつけておけば誰であったとしても楽にあの侵入者へ対応出来るだろうし。

「うぅ、にしても疲れた…」

 男の風でもみくちゃにされたせいか痛めたようで、羽根を動かすのが辛く、関節も痛い。もうここにいる必要はない、帰ろう、そう背を向けようとしたところだった。

「…お主、やりおるのう」

 まさか、と思うと同時に、砂煙の中に人影がちらりと見えて。
 直ぐさま、ひゅんひゅん、という音が鳴って腹に強い衝撃を受けた。

「いっ」

 食いしばる歯の合間から悲鳴が漏れる。だが、衝撃は殺しきれずそのまま地面に墜落してしまった。地に伏せた柴天狗は衝撃に顔を歪めつつ、近寄ってくる男の姿を見つける。しかし、すぐには立ち上がれなかった。彼の頭の中をしめる混乱も、彼が地にもがくのを助長した。なぜ、あの男は立っていられるのか。そしてたった今受けたありえないほどの風の重みは一体。
 混乱する目に映る男は、技をくらったせいか衣服のところどころが裂け、焦げているが、致命傷となるような傷は負っていないように見えた。そして、この時初めて、柴天狗は背筋がひやりと冷えるのを自覚した。
 そのまますぐそばまでやってきた男は、何をするかと思えば、地面に広げ、砂のついた柴天狗の片羽根をいきなり踏みつけた。ぎぁっと喉を締めるような声が山に響く。逆光に浮かぶ男の顔は、先ほどまで見せていた豊かな表情を消して、驚くほど硬質な視線を向けていた。

「これ以上邪魔されても面倒。悪いが、しばらく動けぬようになってもらおう。なに、致命傷にはせんよ」

 見上げる男の手の内で団扇が消え、代わりに錫杖が現れる。錫杖と言っても普通のそれではない。先に白刃が備わっている槍のような業物だった。初めて見るそれに柴天狗は目を大きく見開く。…それを、まさか…やめ…っ!!

「恨まんでくれ」

 声無き悲鳴は男に伝わる筈もなく。男はそれを振りかぶり、勢い良く刃を突き立てようと…




「柴っ!」
「比叡様っ!!」
 二つの叫びが山に木霊した。



ーーーーーーーーーーーーーーー
つづく

※補足
川の方(かた)は、川天狗のことです。
ちなみに川天狗の髪色は灰色っぽい水色だったはず。
そしてこの鳥頭の男性は川天狗と知り合い、ということでよろしくです。

※補足2
柴の髪色がめずらしい云々の話。
ただ単に、この辺りの山に住む天狗の中では珍しいだけです。
そして変わっているなぁという男の指摘はこの地方では珍しいね、という意味。
一方川天狗の住むあたりでは珍しくない、ということです。

コメント(2)

続き→  深山路に稀客来りて 4

http://mixi.jp/view_bbs.pl?id=68802624
うぉおぴかぴか(新しい)柴天狗の戦闘シーンが格好いいです!
また続きがわくわくする展開でおもしろいです(≧∀≦)

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