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陰陽師@二次創作小説コミュの深山路に稀客来りて 2

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『深山路に稀客来りて1』の続きです。
今回は比叡天狗と王子天狗のターン。

■深山路に稀客来りて1はコチラから↓
http://mixi.jp/view_bbs.pl?id=68326716


では、はじまります。
ーーーーーーーーーーーーーーー

『深山路に稀客来りて 2』



 実は、一番はじめにそれを認知していたのは王子天狗と比叡天狗だった。

 王子天狗は山の維持管理を一手に担う天狗である。山の状態へは常に神経をとがらせているし、一方、比叡天狗はこの山に棲む妖の長であるので、山の情報はいち早く彼へもたらされる。よって彼らが一番であるのは当然と言えば当然だった。

「もう山に入ったみたいだよ」

 彼は目の前に広がった絵図を目でさして、傍らに立つ比叡天狗に告げる。
 この絵図は彼らがいる山を模したものだ。ただ、普通の絵図と違うのはその至る所で様々な色の小さな光が淡く輝き、動いていることだろう。これは山に在る妖が今現在いるところを光点で示す、特殊な品物なのである。ちょうど今、ひときわ強く輝いているのは王子天狗と比叡天狗のいる山奥の箇所であり、そして三つ程見慣れた光も絵図に散らばっている。王子天狗が示したのは、そのどれでもない、もう一つの大きな光点であった。

「しばらく妖気を隠しておられたみたいだけど、今はやめたみたい」

 最初に絵図へ浮かんだ時よりもひときわ輝く光点を確認しつつ、ふむ、と比叡天狗は唸る。

「早いな。昨日文を貰ったばかりなのに」
「こちらに向かう途中で出したのかも知れないね」
「……あの御仁だからな」

 諸々の噂を思い出し、比叡天狗も同意した。

「強引なところがある、と聞くね」
「そしてそれを押し通してしまえる力もお持ちなのだ。良い御仁ではあると思うのだがな」

 どこか呆れたような苦笑を浮かべる様に王子天狗は笑ったが、ふと彼の顔をまじまじと見つめ、おい、と声を発した。

「隈、出来てない?」
「ん、そうか?最近忙しいせいかもな」

 寝る暇もないとまではいっておらんのだが、と困ったように眉尻を下げる比叡天狗。
しかし、王子天狗は目を細めたままだ。

「あの陰陽師のせいだろ、あいつ最近戦いすぎなんだよ」

 むっとした表情で言い始めた彼に、比叡天狗は苦笑した。
 比叡天狗を含め、この山の一部の妖達はある過去の一件以来、一人の陰陽師と式神の契約を結んでいた。式神契約というのは人間である陰陽師の剣となり盾となることを妖が約すること。元々妖として存在していた彼らが式神となるにはその契約を結ぶのが定石であり、通常契約を結んだ式神は陰陽師の側にいるものだ。しかし、かの陰陽師は変わり者であった。なんと契約を結んだ後、これまでと同じく山で暮らしてはどうか、という提案をしたのである。これは比叡天狗達にとってかなり寛大な処置であった。そう、あまりにも彼らにとって意外過ぎて、告げられた際にものの見事な間抜け面を比叡天狗が浮かべたことを、今でも陰陽師にからかわれたりする程に。

 当時、驚いたのは王子天狗も同様であった。彼もまた厳罰を覚悟していた。しかし、まだ山に住むことが出来ると知り、そう提案した陰陽師を好意的に見ていた筈である。とはいっても、この言いざまではどうやら気に入らないところがあるようだ。加えて比叡天狗が、最近とみに陰陽師から都へ戦いの為に呼び出されることが不満なのだろう。己が山を空ける所為で増えた仕事に苛々しているのだな、と比叡天狗は見当をつけた。

 そして同時にちらりと、己が山を空けてまで助力する戦いを思いおこす。かの陰陽師の指揮はかつて相対した時よりも更に緻密で、堅実になっていた。普段の温和でフワフワとした様からは思いつかない、恐ろしい程の厳格さをたたえて始めていた。

「陰陽師殿の参加されておる演武会がまだ終わっていないからな。だが、幸いにも我が陰陽師殿も指名されそうだ」
「指名?」

 演武会というのは都の陰陽師達がその技を競い合う催しである。陰陽師同士が式神を指揮して戦い、期間中の勝利数を競うものだ。確かに、その技の優秀なものには報償があるとか王子天狗は聞いたことはあるが、指名、という言葉は似合わない気がする。その戸惑いを察したのだろう、比叡天狗は説明をはじめた。

「先日、都にて変事があったのを覚えているか」
「1日中陽が落ちなかったり、かと思えば暴風雨が続いたことかい」

 これは結局、白虹というたぐいまれなる声を持つ妖が、他の妖をも巻き込んで起こした変事であったと後に分ったのであるが、当時都全体が大混乱に陥った。比叡天狗も山から妖を派遣し、助けに力を割いていた。そして、これ以上被害が広がると山にまで類が及ぶのではと危ぶまれた頃、ようやくおかしな天候は納まったのである。この時、元凶とされている白虹の行方を探している最中であった。

「それだ。その変事は陰陽師殿らが無事納められたがな。今年のこのような変事が続かぬようにと、一年の厄払いを大々的に行うことになったのだという」
「厄払いねぇ」
「うむ。その厄払いの儀でな、一部の陰陽師らが民の前でその技を披露することが決まったのだというのだが」
「まさか、その選抜の為の演武会?」
「そうだ」
「…のんきな」

 思わず漏らした言葉に、はははっ、と比叡天狗が声をたてて笑った。

「確かにな」
「でも、そんな用事だったのなら、君が山空ける程のことでもなかったんじゃないの」

 あの陰陽師、他にも多く式神従えているだろうにと詰るが、比叡天狗は全く気にもかけない様子でからりと答える。

「是非に、と言われたものでな」
「ふーん」
「それに、演武会に私が加わることはこの山の護りにも繋がる」
「どういう意味?」
「私が力を振るい、敵を倒せば倒す程、私が守るこの山に手を出そうと考える馬鹿者は減るであろう?」

 しれっと言う様に、王子天狗は呆れた。確かに、彼が言外に誇るように比叡天狗は強い。並の妖では傷を負わすことさえ出来ないだろう。しかし、世の中にはとんでもない力を持つ妖だって勿論いる。今、山にやってきているあの客のように。だから、演武会に参加して…あのような直接彼の益になるかわからないようなものに参加して、大怪我をしないとは限らないのに。
 自分が負けたりすることは考えないのか、この長は。

「まぁ、お前には苦労をかけるがな」
「自覚あるならやめて欲しいよ、まったく」

 全く反省の色を見せない彼に王子天狗が溜め息をついて、にじり落ちた眼鏡を押し上げる。もしも仮に心配だ、やめてくれと飾らず告げたとしても少し困った顔をするだけで、おそらく彼はやめないだろう。ならば、言う必要もない。彼を無駄に困らせるだけだ。と、絵図の一点に目が奪われた。

「あ」
「どうした」

 唐突に漏らした驚きの声に、比叡天狗も声を低くした。

「ほら、これ」

 王子天狗が指差した先には、水色の光。

「柴、か?」
「この色は、そうだね…」

 水色にぼうっと光る点は徐々に移動し、大きな光へと向かっている。自分たちがいる山奥ではなく、現在客がいる場所を示す光の点へ、だ。
 そこで、何やら思い出したのか比叡天狗の表情が固まった。

「…ま、まずい」
「どうしたの、急に」

 よくよくみれば、青ざめてさえいる。そのまま、恐れに震える声で驚くべき事実を明かした。

「かの御仁が来られること、まだ皆のものに告げておらんかった…」
「うそ、ほんと!?」

 思わず悲鳴のような声が出た。しかし、比叡天狗はこくりと頷く。

「…まだ当分来られぬだろうと思っておったのだ」
「じゃあ、柴君がこんなに急いで向かっているのって…」
「侵入者と勘違いしたのかも知れん」
「間違っても攻撃なんて、しないよね…?」
「う、うぬ…」

 口ごもる身のうちには、『柴だしなぁ』という根拠はないが説得力のある結論が出ていた。それを察し、いや、自らも同じ結論に至ったのか王子天狗がぼそりと彼ならやるかも、と呟く。

「救いは、例え攻撃を仕掛けてしまってもあの御仁ならなんとでもしてしまえるであろうことか…ともかく急いで向かうぞ、ついてこい」
「え、僕も?」
「私ひとりで止めろというのか!?」
「…わかった、行く」

 悲痛な声をあげる比叡天狗に、王子天狗は内心嫌だと思いつつ、了承する。すると表でばさりと大きな鳥が羽ばたくような音がし、すぐに一人の青年が二人のいる部屋へ飛び込んできた。

「ひ、比叡様!!」
「どうしたころく」

 飛び込んできた青年、ころく天狗は比叡天狗配下三天狗の一人である。三天狗というのは比叡天狗配下の中で、特にすぐれた力を持つ三人に送られた称号であり、先ほど話題に上がった柴天狗もその一人である。ただ、好戦的で不遜な態度を子供のなりの内に秘める柴天狗と違って、ころく天狗は礼儀正しい実直な人物だ。その彼が挨拶もせずに飛び込んできたことが、ことの重大さを感じさせる。
 ころく天狗は荒く息をつきながら、切れ切れに言った。

「…先ほど、怪しい妖の気配を感じまして、…それがひどく強く恐ろしいもののようで」
「山裾あたりの者のことか」
「そうです、もうお耳に入っておりましたか」

 少し安心したような様子の彼。それに力強く頷き、比叡天狗は命じた。

「今からそれに会いに行くところだ。心配せずとも良いぞ。
ころく、お前は姫を探せ。あいつが間違ってもそこに攻撃など仕掛けぬように」
「わかりました」

 直ぐさま踵を返し、地を蹴って空へと消える。それを見送って比叡天狗が傍らの王子天狗に言った。

「では、いくぞ王子」
「了解」

 瞬間、彼らの背からぶわりと羽根が広がる。比叡天狗からは生成りで大振りの力強い翼、王子天狗からは赤銅色に黒の紋が入ったすっきりとした翼である。
 二人は羽根を広げ、空を強く打った。


 何事もないことを祈って。



ーーーーーーーーーーーーーーー
つづく

コメント(4)

かっこいいかっこいいー( ´∀`)アニメ塗りで挿し絵を作りたくなったwwと言うより漫画とかで動かしたくなったです!続きが気になるのでピクシブに見に行ってきますww
比叡天狗無鉄砲ww
続きがとても気になります。
そして地図が便利!
王子がちゃんと管理人してて驚きました。
格好いいですハート達(複数ハート)
>尾姫@陰陽師アンソロさん

かっこいいと言って頂いて大変うれしいです♪
そして挿絵を作りたくなった、だなんて、とても嬉しいお言葉!
仮に描いてみようかな、と思って下さったのなら、
そりゃあもう、どんどん好き勝手に描いちゃって下さいw

この続きは現在ピクシブにありますが、それを更に加筆訂正して
こちらにアップさせて頂いておりますので、
ちょっと違ったものがこちらでは見られるかもしれません。
その辺はご容赦をw

>チャックさん

比叡天狗が無鉄砲に動くと王子天狗が被害を受けますw
なんだかんだいって面倒見のいいキャラと決めちゃったせいですな、頑張れ王子w
地図は、イベント時に出てきたあの進行表(地図?)っぽいものをイメージしました。
こういうのがあれば、王子天狗が山奥に引きこもりつつ山の管理が出来るかなぁと思いまして。
いえ、引きこもりにしなくちゃいけない、ってことはないんですけどねw
格好いいといって頂けて幸いです、きっと王子も喜びますw
続き→ 深山路に稀客来りて 3

http://mixi.jp/view_bbs.pl?id=68453992

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