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陰陽師@二次創作小説コミュの【天狗二十二】

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【風精獣】
風をまとう能力を持つ獣。
怒った際にはより強力な風をまとい、武器や炎を寄せ付けない。


【天狗二十二】
深手を負いながらもただ一匹火の陣のなかから風精獣の待つ闇の中へと出て行った赤目でありました。
低くうなりながら牙をむく風精獣にいまに食われてしまうのではとはらはらしながら見守っておりましたが、やがて傷ついた若い風精獣が一匹こちらへ近づいてきました。
よく見れば後ろ足の肉に石弓の矢尻が突き刺さり、中に入ってしまっているようでありました。

赤目「こいつはある陰陽師から弓で攻撃を受けたらしい。
それでこいつ等はまた陰陽師が危害を加えにきたと思ってるんだ。
ただ、矢を引き抜こうとしたときに柄と矢尻が抜けてどうにも困っているらしい」

私「助けましょう。お願いできますか、薬師殿」

薬師「ええ、もちろんですとも」

横たえた風精獣に薬師が治療にあたろうとするのですが、手術を行う刃物の先が風精獣の毛の起こす風で、わずかに左右にぶれてしまうようでありました。

薬師「…く、なるほど。少し手応えのある相手のようですな」

火男「大丈夫か、薬師」

ぐるる…と唸りながら群の中で一際大きな風精獣が近づいてじいっと様子を伺います。
しくじれば一斉に襲いかかるつもりなのでしょう。
薬師はふぅ。と息をつき、しばし考え込むと何かを思いついたようにふと顔を上げました。

薬師「場所を変えましょう。近くに小川の音が聞こえます。そこで水を浴び、全身を清めていただきたい」

突然の薬師の申し出に少々驚いた我々でありましたが、身を清めれば必ず手術はできると自信ありげに言い切る薬師に気圧されて、皆小川のほとりへと移動したのでありました。

薬師「さぁ、早く」

ざぶり。と脚を怪我した風精獣が川の水に身を浸し、岸へと上がって再び横になれば、確かにあの風はぴたりととまっておりました。

薬師「さて、腕の見せ所とゆきましょうか」

と、風精獣に麻酔をかけ、時折火男に灯りを頼みながら、矢尻が取り出され、傷口は跡形もないようにきっちりと縫いつけてゆく様子は見事という他ありません。

薬師「ふぅ、終わりました。これで元気になるはずですよ」

という薬師に他の風精獣も安心したようでありました。

火男「すごいぞ、薬師。一体どんな術を使って風精獣の風をとめたんだ」

薬師「術じゃないさ。風精獣は毛の間に空気をためて、冬は空気をあたためて体温を保ち、夏は暑くなった空気を逃がすことで暑気を払い、威嚇をするときには風をそよがせて相手の攻撃を防ぐ非常に理にかなった仕組みをしていた。
それを可能にしているのはすべて毛の中に含まれる空気が関係しているのだから、水の中に入らすことでこの空気を一度全て抜いてみたんだ。
それより、手術の代金として、風精獣の長にもひとつ頼みごとをしないとな」

と、薬師がいうと、群の中からひときわ大きな風精獣がゆっくりと薬師の方へ歩んできました。

薬師「あなたがこの群の長ですか。あなたがたの仲間の治療は無事に終わりました。あと3日ほど安静にしておけばすぐに元のように歩けるようになるでしょう。
ですが、ひとつ長殿にお頼み申したい。この山に足を踏み入れる陰陽師はいずれも腕に覚えのあるものばかり。下手に手を出せば山の式神達にさらに危険が及びます。
長殿の力をお借りしてどうか無用な争いは避けるよう、山の妖達に伝えていただきたいのです」

そう薬師がいうと、長は尻尾をばさりとひとふりし、ふん。と鼻を鳴らしました。

私「いかが申されているのですか、赤目」

赤目「承知した。けど、最近この比叡の山には本来の妖の他に、悪しき気配をまとった似て非なる式神がいくつか姿を現している。従来の式神なら話は聞いてくれるやもしれぬが、その似て非なるもの達には話は通じぬかもしれぬ。って言ってるぜ」

私「似て非なるもの…いわば亜種といったところでしょうか」

薬師「わかりました。それだけでも十分です。長殿、お頼み申します」

そう薬師がいうと、風精獣の長がうぉう。と小さく吠えて、群れは闇の中へと姿を消してゆきました。

コメント(1)

【天狗・二十三】
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