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陰陽師@二次創作小説コミュの【天狗・二十一】

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【天狗・二十一】
此処は比叡の山の奥。
比叡天狗とその前に傷つき、ひざをつくころく天狗の姿がありました。

比叡「ほぅ…。それで陰陽師に三つ目の神器を奪われておめおめと帰ってきただと?ころく天狗」

頭を垂れるころく天狗に静かに近づき、くいっと指で顎を上げさせると、その黒い瞳はいまにも泣き出してしまいそうな不安の色を湛えております。

比叡「人間は殺せ。そう言ったはずだな、ころく天狗」

ころく「…っ!…申し訳ありません…比叡天狗様」

比叡「ふん。人に甘いのはお前の悪い癖だな。
まぁ、いい。済んだことをとやかくいっても埒があかん。柴、姫、ころく。お前達の真の力、解放してやろう」

柴「最初っからそうしてりゃ良かったのにさ。もったいぶっちゃって、だから手間ど…むぐ」

姫「だまりな。柴天狗。あの薬師、今度こそ吹き飛ばしてやるよ」

ころく「比叡様…ありがとうございます」

比叡「ころく」

ころく「はっ」

比叡「お前の健気なまでの忠誠は常に好感が持てるものだ。だが、俺は役に立たない狗に好意をくれてやるほど甘くはない。わかるな、ころく天狗」

ころく「はい、比叡様。このころく天狗、今度こそ命に代えても神器を奪い返してごらんにいれます」

※※※※※※※※※※
なんとかころく天狗を撃退した我々でありましたが、我が式神赤目は甚大な被害を被りました。
すぐに薬師の調合した薬を染み込ませた湿布と包帯を巻いてもらい、今は私の腕の中でただ静かに目を閉じているのでありました。

薬師「最初に放ったあの小石は、実は火薬だったのです。後にころく天狗が油断したところで火男の炎で爆破させる予定でありました。
お弟子殿に小石だと言ったのはそれを聞いたころく天狗にも術をかける為です。いくら集中しているとはいえ、味方に術をかけるとは思わないでしょうからね。
しかし、ころく天狗をも騙せた術も鼻の利く赤目だけは見抜いていたのでありますね。
それにしても、自ら火をつけに行くなど危険極まりないことです。
なんとか一命は取り留めましたが…。よほどお弟子殿の事が大事なのでしょうね」

そういう薬師の言葉によりいっそう赤目に感謝の情を感じ、せめて腕の中で眠る赤目が痛くないようにとできるだけ静かに歩みを進めていったのでありました。
あたりはすっかり日が暮れて、前を歩く式神達の姿もだんだんと闇にまぎれてゆくようでありました。

と、ガサ、ガサとしげみの揺れる音がしたかと思えば、ガァッ!と唸り声をあげて風精獣が飛びかかってきたのでした。

火男「危ない!」

とっさに竹筒で風精獣の牙を受け止めてみれば堅い竹も噛み砕かんばかりの強い力でありました。

火男「離せ!…この!」

竹筒に食らいつく風精獣を離そうとする火男でしたが、風精獣逆立つ毛のあたりで吹き荒れる風のが流れがあまりに速く、まともにふれることすらかないません。
うううう…。と鼻に皺を寄せて唸る風精獣の牙はがっちりと竹筒をくわえたまま離れず、なおも牙を突き立てます。

火男「仕方ない」

食らいつく風精獣の腹に目掛けて火を放てば、キャン。と高く声を上げてざっと後ろへ跳び下がります。

火男「…どうやら、こいつ一匹じゃないようだな」

火男がぼっと地面に輪を描くように火を放てば、前にも、後ろにも、ざっと数えて十頭ほどの風精獣がこちらを取り囲んでいたのでありました。

天空「ちぃ…。この数、厄介だな。おおかたこの兎の血のにおいでも嗅ぎつけてきたんだろう」

燃え盛る火の外で、ぐるるる…と低くうなりながらこちらの様子を見計らっているようでした。

天空「仕方ない。片づけるか」

天空が瞳に好戦的な色を浮かべて、火の輪の外へでようとするのを、火男がぐい。と引き留めます。

火男「待て、天空」

天空「あぁ?」

火男「いままでの闘いから山の妖達は皆陰陽師に不信感を抱いている。いまここで争えば、さらに誤解を招くだけだ」

天空「じゃぁなにか?朝までここで我慢比べをするか、こいつらに食われるかを選べとでもいうのか」

火男「そうじゃない。俺が風精獣ならこんな火を放つ奴は獲物として狙うにはあまりに益が無さすぎる。
だから、餌を狙う以外にきっと何か訳がある。それさえ解れば道は開けるはずだ」

天空「俺には単なる仮説にしか聞こえないな」

きっと睨み合う天空と火男を気にしながらも、必死に目を凝らせば、こちらを伺う風精獣達は何かを庇っているように見えました。
その奥をよく見れば、まだ若い風精獣が一匹さも歩き辛そうにびっこをひいていたのでありました。

私「どうやら、あれのようですね。獣と会話のできる赤目が元気ならよいのですが…」

と腕の中の赤目を見やると、大きな赤い瞳と目が合いました。

赤目「今…起きた。任せろ。おろせ、ご主人」

怪我をした赤目をそっと地におろすと、大儀そうに身体を引きずりながら、火の輪の外へただ一匹出て行ったのでありました。

コメント(1)

【天狗・二十二】
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