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Yua's factoryコミュの【ST】 ナナ 〜完全版〜

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ご主人様ご主人様!


今日もご主人様は起き抜けに私の小屋へと来てくれる。
尻尾を振って出迎えると、ご主人様は頭を撫でてくれる。

「ナナ、今日はどこまで行こうか?」

たっぷりの笑顔で私にリードを付けるご主人様。

「わふっ!」

元気よく返事する私。
どこでもいいよ!ご主人様と一緒なら私どこでもいいよ!

「わふわふっ!」
「ぷははっ、こら、そんなベロベロ舐めるな」

ご主人様ご主人様っ!





やっぱり今日もいつもの土手に来た。
河原の前の広場でご主人様はボールを投げる。
私の大好きなボール遊び。急いで転がるボールを追いかけて口に咥えるとご主人様の元へ走る。ご主人様はボールを受け取ると「よしよし」と言って頭を撫でてくれる。
とても幸せ。
早くご主人様の望みを叶えてあげなきゃ。
こうしてご主人様に喜んでもらえればきっと叶う。
早く。
一日も早く私は――






※※※※※




「お前はナナの生まれ変わりなんだな、きっと」

雨の中震える私を抱えて家に連れ帰ってくれた人。その人が大きなタオルで私の体を拭いてくれた。

「ナナ…」

涙を流してまだ体の小さな私を抱き締めて、嗚咽を漏らす。
私はピスピスと鼻を鳴らして彼の頬を舐めて慰めた。

「はは…ありがとう。お前も捨てられたんだね」
「クゥン…」
「お互い独り身だな」
「ミィ…ミィ…」
「腹減ったか?ぬるいミルクでいいかな?」

彼はスポイトを使って私にミルクを飲ませてくれた。

「可愛いなぁ。これからはずっと一緒だぞ、ナナ」

美味しい。
温かい。

これがご主人様との出逢い。
私はナナの生まれ変わり。





※※※※※





「今日は豪華な飯だぞぉ?」
「わふっ!」

ボール遊びとお散歩も終わりお家へ帰る。
お日様も暮れて、ご主人様が持ってきてくれたのは私が好きな骨付きのお肉。
もう匂いで分かってた私は尻尾を沢山振ってご主人様に飛びつく。

「分かった分かった、慌てるなって」
「わふっわふっ!」

美味しいお肉。
がつがつと勢いよく食べる。
骨は小屋の裏に埋めるんだ。

「今喰えよ」

ご主人様は笑いながら私の頭をくしゃくしゃと撫でる。
嬉しくって私もご主人様の顔をべろんべろんに舐める。
ご主人様大好き。
ずっと一緒に居たい。
だから早くご主人様の願いを叶えなきゃ。

一日も早く私は――





※※※※※





『お前が死ねば良かったんだよ!』

ガラス越しにご主人様が女の人に怒られている。
窓が少し空いているから声もよく聞こえる。
男の人も居てご主人様を睨んでいる。
トウサンとカアサンという人らしい。でもあまりお家に居ない。
ご主人様の敵なのだろうか?
そう思っていたらトウサンという男がご主人様の顔をぶった。

『勝手に犬まで拾ってきてどういうつもりだ!しかも小屋まで用意して!』
「…一年も帰ってこないで今更かよ…。俺が面倒みてんだから関係ねぇだろ…」
『そういう事を言ってるんじゃない!』
「今更父親面してんじゃねぇよ!!」

「グルルル…わふっわふっ!!」

私も一緒に戦う。ご主人様を守る。

『それにしても汚い犬ね!捨ててらっしゃいよ!』
「そうやって…あんたらが勝手なことばっか言うからアイツは…ナナは…」

ご主人様、泣かないで。ナナはここに居るよ。
大丈夫だよ。そばにずっと、一緒に居るよ。
泣かないで。





※※※※※





「惜しい人を亡くしました」

黒服の人達がご主人様を連れて行った。

「若かったのにねぇ…」
「犬と暮らしてたみたいよ――」
「母親も父親もまともに家に帰ってなかったから――」
「妹さんを亡くしてから家庭が壊れて――」

何を言ってるかよく分からない。
ご主人様はどこ?

「わふわふっ!」

お散歩は?
ご飯は?
ご主人様は?

「わふわふっ!」

何度も何度も呼ぶのにご主人様が来ない。
ナナだよ。ナナはここに居るよ。ご主人様。

「わふわふっ!」
「うるさいバカ犬!」
「キャンッ!」

黒服のカアサンに棒でぶたれた。
痛い痛い。

「キャンッ!」
「忌々しい犬!何が《ナナ》なの!死んだ妹の名前なんか付けてあの子もそうとうイカレてたわね!」

黒服のカアサンが叩く。何度も何度も私を叩く。ご主人様の言葉が頭をよぎる。





――お前はナナだよ。俺の妹だよ――


「キャンッ!」
「バカ犬!バカ犬!」




――ナナ、生まれ変わりってあるのかな?早く人間に戻れよナナ――


「キャンッキャンッ!」
「あー!汚らしい!あんたも死になさいよ!」





ナナだよ。
ご主人様助けて。
痛いの。
人間になるから。
早く人間になるから。


ご主人様。
骨付きのお肉食べたいよ。
ねぇ、ちょうだい。
それで頭撫でて。
「よしよし」って、良い子良い子して。


ご主人様。
いつもの土手に連れてって。
ボール遊びしよ。
私どこまででも取ってこれるよ。
ご褒美で頭撫でて。
ご主人様、いつもみたいに笑って。
私に優しく頬笑みかけて。

痛い。

早く人間になるから。

痛いよ。


――あ…。
やっと、ガラス越しにご主人様が見えた。


ご主人様と一緒なら…私…



綺麗な花に囲まれたご主人様の写真は

私が好きなご主人様の笑顔で…




――ナナ、今日はどこまで行こうか?――




はい…ご主人様…

どこでも…
ナナ、ご主人様と一緒ならどこでも……










コメント(14)

おっと、こみやんから評価いただきましたぁ!
ありがとございます♪
あれぇ!?
トナカイさんもこのコミュにいたの!?
そうなの!?
うれしいですなぁ…ファン?(←図に乗りすぎ)
この世で一緒になれぬなら、せめてあの世で……?
悲しいね(T ^ T)

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