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Yua's factoryコミュのFinal Destiny 4-10

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ぼとり――――と、ドニスの首が地面に落ちる。

「……終わっ……た?」

ミラが口を開く。

「ああ……どうやら」
「終わったみたいね」

ニコルもソニアもその場で漸く尻をついて座り込む。

ワーー!という歓声が方々から上がった。
人々に笑顔がもたらされる。

「…晴明殿に御報告せねば」

サスケは静かにそう言うと身を翻して(ひるがえして)、歩き出す。
蓮花はルーアに擦り寄り、ルーアも蓮花の頭を撫でる。

「我らが戦車の力を思いしったか?」
「あたしらの魔術があったからよ」
「なに!?」
「なによ!」

ティグリスとトゥレラはつまらない口喧嘩を始める。

「さあ、俺達の勝利を、、主役と共に祝おうかね」

ニコルは立ち上がり歩き出す。

「ええ……」

ソニアも立ち上がり、軽く尻を叩いて土を払うと、二人揃ってシェリルの亡骸の元へ向かった。




※※※※※※※※※※※


「……ここにあったか」
『これが?』
「そうだ。“邪気の翡翠(ひすい)”」
『素敵な色……』
「吸い込まれそうであろう?しかしお前には荷が重い。ドニスでも使いきれなかったのだからな。…いや、使い方を知らなかったか。或いはこれの存在さえも知らなかったのか」
『いつ“仕込んだ”の?』
「前国王に魔王討伐の祝いの品として送ったのだ。玉座に埋め込むとは…なかなか気に入ったのかもしれぬなぁ」
『それで、どうなされるのかしら?シリウス様』
「知れたこと」

シリウスは玉座に埋め込まれた宝玉を取り出し、それを飲み込んだ。

「余が、邪王となる。妲己、貴様も余と共に来るがいい」
『…ええ、仰せの通りに』

妲己と呼ばれた女は艶やかな(つややかな)笑みで答えた。


※※※※※※※※※※※




ニコルはシェリルの亡骸を抱き上げる。

「勝ったぜ、シェリル…」

瞳を閉じたまま、シェリルは体温が無く反応も無く。

「お前が立ち上がらなかったら、皆が力を合わせることもなかったなあ…」

それでもニコルは語らずにはいられなかった。ソニアも清んだ瞳に涙を浮かべる。

「シェリル様…」

ミストも、ルーアも、ミラも、蓮花も、それぞれがシェリルの元へ集まる。
シェリルは安らかな顔で眠っている。

「シェリルよぉ…起きろよ」
「シェリル様…」
「シェリル殿」
「魔王様…」

――――と、突然レキアス城が爆発した。

「な、なんだ!?」

城は崩れ去り、その上空には艶かしい(なまめかしい)女一人と、シリウス王が浮いている。

「…お、王!?」

ソニアが驚嘆の声を上げるが、シリウスはただ笑みを浮かべながら妲己と共に地面に降り立った。

「ソニア、その他の者共もよく奮戦してくれた。礼を言う」

シリウスの言葉には圧力があった。皆、シリウスの言葉に出来ない圧力に気圧される。

「礼って…」
「いや、貴公らの働きで邪王がどれほどの力を持ち、貴公らがどれほどの力を持っているのかがよく分かったのでな」
「お、王?何を仰って」
「しかしシェリルを失ったのは痛手だ。この女は余の愛玩具としようと画策していたのでな」
「王!」
「いや、勇者を一人滅することが出来たのは幸いと捉えるべきか」
「王!」
「ソニア、お前も我が妾(めかけ)となるか?」

違う。
この男はもうソニアの知る王ではない。そう判断する前にニコルがシェリルを抱えたままに蹴りを放った。
――――が、妲己に足を掴まれ、シェリル共々投げられる。
ニコルは宙空で回転しながら着地すると、シリウスと妲己を睨み付けた。

「っ、てめぇ!」
「まあそう騒ぐな。いずれにしても貴公らはすぐに死ぬことになる」
「何だと!?」

そこへティグリスとトゥレラが駆け付けた。

「シリウス王!一体何が」
「おお、ティグリス王とトゥレラ女王。いやはや、これより魔の魔による統治を始めようと思いましてな」
「ちょっと…何言ってるのよ」
「余が邪王となるのですよ、トゥレラ女王。何なら貴女を妃に迎えてやりましょうか?ふはははははは!」
「…そんなポンポンと簡単に邪王なんかが生まれるものじゃ」

トゥレラが言い終える前に、シリウスは口から宝玉を取り出して見せた。

「これは“邪気の翡翠”と言いましてな。これのおかげでドニスは《邪王もどき》になれたわけだ」
「も、もどき…?」

ソニアの顔が青く染まる。

「そう。《もどき》だ、ソニア。これの使い方を知らなかったのか、これの存在自体知らなかったのか…定かではないがな」

言ってシリウスはまたゴクリと翡翠を呑み込む。

「邪王と魔王の力の差が分からなかったのもあってな。この邪気の翡翠は人の邪悪な心につけこみ、簡易的な魔の力を得ることが可能であることは分かっていた。そこで邪悪な性根を持つ前レキアス国王を利用しようとしたのだが、ドニスに討たれた。まあ、結果は同じだったがな」
「ま、待てシリウス王」
「何か?ティグリス王」
「そ、それじゃあ貴様は最初からこうなることを」
「“こうなる”とは何を指してるのか分からないが…いずれ邪王の力が拙い(つたない)ものであれば、それは取るに足らないものであったであろうと放置していたであろうな。しかし、たかが《もどき》の力でも勇者複数を翻弄できるほどの力を持つとなれば……」

クックッと、シリウスは邪悪な笑みを零す。



「余がこの世を支配する」



シリウスが言うと同時にソニア、ミスト、ルーアが一斉にシリウスへ向かう。

「邪王様に仇(あだ)なす者は許さない」

シリウスの前に妲己が躍り出て瞬時に結界を張ると、それにぶつかったソニア達は吹き飛ばされる。

「ぐうっ!?」

妲己の力もまた、生半可なものではなかった。

「邪王様のお手を煩わせる(わずらわせる)までもない。私がお相手しましょう」
「あ、あんたは何なのよ!」
「…妲己……」
「だっき?」

ソニアの問いに苦い顔で蓮花が答える。

「仙界の仙女。……悪女として有名」
「仙女、なの?」
「うん……一応。体を使って男に取り入る。その色香で男をたぶらかし、国をも滅ぼす魔性の女」
「最悪ね。女の風上にもおけないわ」
「わ、妾(わらわ)とは違うぞ?妾は男の精気だけが目的だぞ?」

ソニアと蓮花の間に割るように入り、夢魔であるミラが言い訳染みた抗議をしてみせる。

「あんたのことは別に聞いてないわよ」
「それより早く倒さないと」

蓮花がシリウスを指差す。
シリウスの姿は変わらない。しかし、魔力がどんどん上がっていくのを感じる。

「そうね!こんな女ちゃっちゃと倒すよ!」

ソニアが力を込める。

「ふふ、無駄よ」

妲己が一つ舞うと、ソニアの力がぐんぐんと落ちていく。

「な、なに!?」
「女は私に勝てない。邪王様に身も心も全てを捧げ、尽くせ」

妲己の眼力はソニアとミラを射抜き、二人は虚脱する。

「そう、……貴女達はもう邪王様の僕(しもべ)」
「……」

ソニアとミラは視点の定まらない目でぽーっと呆け、そのままシリウスの元へ歩きだした。
シリウスはソニアを抱き、尻を掴み撫で回す。

「ふはははははは!勇者と言えど女だなぁ、ソニアよ!」

ミラもシリウスの体に寄り、己が体を盛りのついた猫のように擦りつける。

「魔族の女か。くく、なかなか良い体付きではないか」

ミラの乳房はシリウスに力強く掴まれ、ミラは頬を赤く染める。

「てぇめぇぇえええ!」

ミストが上空より剣を振るう。
烈風斬が放たれる。
しかし、シリウスの直前でそれはふっと消え失せた。

「なっ!?」
「まあ、落ち着け。男の嫉妬は見苦しいぞ?」

シリウスは言うと眼力だけでミストを弾き飛ばした。

「ぐがっ!?」

重い。
目に見えない力がミストの内腑を押し潰す。
落下したミストの腹に、追い打ちをかけるようにミラが爪を突き立てる。

「ぐあっ!み、ミラ…!」
「……」

ミラは何も答えず、ただズブズブと爪を突き刺していく。

「エアロ!」

ルーアは呪文を唱えると、鋭い風がミラに向かって吹く。ギリギリのところでミラはそれを避け、シリウスの前に立った。
シリウスの前に立つのは妲己、そしてミラ。そしてシリウスの片手に抱かれ、体をまさぐられているソニアは恍惚の表情を浮かべている。

「女以外は全て死んでよい」
「っの、色ボケじじいが」

シェリルの亡骸をティグリスへ預け、吐き捨てるようにニコルが言う。

「…貴公は北の勇者であったな?」
「ああ」
「安心しろ。トゥレラは余が存分に可愛がってくれる。貴公はここで死ぬことになるがな」
「何が邪王だ。ただのエロオヤジじゃねぇか。そんな奴に負けるかよ」
「そうか?ならばかかってくるがいい」
「言われるまでもねぇよ!」

槍を構えニコルは地面を蹴った。妲己、ミラを槍の柄で弾き飛ばし、振りかぶった槍はシリウスの頭上に降り下ろされる。
が、その槍はソニアに掴まれ阻止される。

「ソニア!馬鹿、離せ!」
「……」

ニコルの言葉はソニアに届かない。
瞬間、ニコルの腹にソニアの拳が突き刺さる。

「ごふっ!」

その力で上空へ飛ばされたニコル。そしてソニア自らも飛び、ニコルの顔面に蹴りを放った。

「ぷがぁっ!?」

その衝撃で地面に急落下するニコル。
――――スタッと何事も無かったかのように着地したソニアは、再びシリウスに抱き寄せられた。

「かははは。どうだ?味方だった者に嬲られる(なぶられる)気分は?余が出るまでも無いなぁ?人間も、魔物も、仙人も、神も、余には敵わぬであろう」

ルーアは絶望の色を浮かべる。
いや、それはティグリスも、トゥレラも兵士らも同様であった。
蓮花だけは、ただくるくると舞っている。死を、受け入れてのことか。
腹から血を流したミストも歯噛みしながら地面を殴る。

「っざけんな!まだ、まだ負けてねえ!」

土煙の中からニコルが立ち上がり叫ぶ。

「ほう、なるほど。勇者は諦めぬと言うが……」

シリウスの言葉にピクリと反応するソニア。

「……ふん」
「あっ…」

シリウスはギュッとソニアの尻を掴むと、ソニアは再びシリウスに凭れる(もたれる)。

「…良かろう。その精神がただの徒労であったと、思い知らせてくれる」

シリウスの目が赤く染まってきていた。









Final Destiny 4-11
http://mixi.jp/view_bbs.pl?comm_id=5718354&id=76756085

コメント(6)

ラスボスを倒したと思わせて実はさらに強大な敵が
…というのはお約束の展開でもあるけど、
これがあるからこそファンタジーは面白い。

この絶望の縁からどのような展開が待っているのか。楽しみに待つよ(^O^)
シリウス王って、ティグリィス王から「頭でっかちで嫌いだから、あいつは別に死んでもいいよ!」と評されてた王だったよね?

むう…。ストーリーはそう進んだか!マザーや安倍晴明氏はこのことも予見していたのだろうか(ーー;)
>>[1]

ファンタジーの鉄板ですw
もうかなり書いちゃってるから、後はチョコチョコと載せていきますね♪
>>[2]

よく覚えてたね♪
マザーと安倍晴明はここまで予期していませんね。
ただ、、、
>>[4]
でも、自分が信じて仕えた王の狂気に気づいた時のソニアのショックたるや、如何ばかりのものかと思うとやり切れませんわい(´;ω;`)

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