Yua's factoryコミュのFinal Destiny 12

シェリルは小声でミストに囁く。

「ミスト、使える剣技は烈風斬と他にいくつある？」
「それだけです」
「修行が足りない」
「面目ありません」
「あと何回使える？」
「二回が限界ですね。シェリル殿の剣技に期待しますよ」
「…あの薬、私の力を弱めるだけでなく、マジカルポイントも無くなるような効果があったようだ」
「つまり…」
「私も剣技が使えない」
「うわぁ、いよいよ心中ですか」
「誰が死ぬもんか。こんなピンチなど魔界ではしょっちゅうあったよ」
「じゃあ何とかして下さいよぉ」
「お前助太刀に来たんじゃないのか！」

城兵達がより輪を縮める。

「し、痺れは？」
「随分取れた。いいかミスト、１、２の３で私に烈風斬を放て」
「え！？だってそんなことしちゃ」
「もう喋ってる時間は無い！私に放った後は私が吹き飛ぶ方へダッシュだ！」
「分かりました！」
「…巻き込んですまない。お前の言う通り、来なければ良かったよ」
「いや、これで祖父の謎が解けましたから…良しとします。後は…後でシェリル殿のおっぱい触らせてくれれば許します」
「ははは、んなことしたら超絶剣技で殺す。行くぞ！」
「はい！」
「１、２の…３！」
「烈風斬！」

鎌鼬がシェリルの腹部を一文字に斬り吹き飛ばす。鎧が無い分ダメージは大きい。

――が、シェリルは歯を食いしばり、吹き飛ばされた勢いを利用して空中を回転しながら城兵達を切り刻む。
ミストはその空いた道を駆け抜ける。
シェリルは膝を付き着地するとミストの手を掴む。

「逃げるぞ！」
「はい！」

二人は城内へと駆け込む。

『いかん！いかん！』
「逃がすな！追え！」

王とドニスの怒号が背中越し響く。

「はははっ、やべー！俺お尋ね者だぁ～」
「ミスト、家族は！？」
「お袋いたんすけどね、病気で死んじゃって…今は天涯孤独っす！」
「そうか、悪かったな…だがそれなら安心！」

目の前に別の城兵達が現れた。

「ミスト、使え！」
「ええ！？最後っすよ！？温存しないんすか！」
「そういう場合じゃない！後のことは後で考えるんだよ！」
「うわぁ、とんだおてんば勇者だよ…烈風斬！」
鎌鼬が兵士達を吹き飛ばす。

「もうカラッカラっすよ」
「大丈夫！」
「ダメでしょ、流れ的に」

弱音を吐くミストの尻をひっぱたきながら、シェリルは廊下を駆け抜ける。

続
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