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かこむを囲む会コミュの【 三銃士 】 〜 第四章 忠誠(後編) 〜

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 「第四章 忠誠(前編)」より
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──────数週間前。

母の亡骸の前でただ茫然と立ち尽くす2人の姉妹。
昨日までの笑顔の母は今は冷たく、花で飾られた大理石の祭壇に静かに横たわっていた。

『お母様!!』

フジドーシャスは亡骸にしがみつき泣き出す。しかし、イヌドーシャスは涙を流さなかった。
悲しくないわけではない。悔しくないわけではない。でも今はただ妹の肩を優しく抱きしめてやることしか出来なかった。

『ホント、貴女たちを遺して逝くなんてさぞ未練でしょうねぇ・・・』

そこへコンドリーザが娘フカダールと従者ヨシカワージャを連れてやってきた。
コンドリーザは2人のもとへ寄るとフジドーシャスに手を添えた。
『さぞ悲しいでしょう。これからは私を頼ってくれていいのよ・・・?』

しかしフジドーシャスはその手をパッと弾くと、キッとコンドリーザを睨んだ。
『何をぬけぬけと!お母様を殺したくせに!!』
『フジドーシャス・・・』イヌドーシャスは娘の体を抑えた。

コンドリーザはスっと2人から離れると驚いたように言った。
『なんてこと言うのかしら!とても侵害だわ・・・!』
しかし、また落ち着いた声で続けた。
『まぁでも、きっと突然のことで混乱しているだけよ。そんな事を思ってしまうのも無理ないわ。ふふ。』
コンドリーザは静かにそう言うと、静かに去っていった。

『・・・・・・これ。』

涙のフジドーシャスに差し伸べられたハンカチ。フカダールだった。
しかし、フジドーシャスはそのハンカチを払った。
『放っておいて。どうせあなたもあの魔女の味方なんでしょ。』
『・・・・・・・。』
フカダールは表情一つ変えずに落ちたハンカチを静かに拾った。

『ごめんなさいフカダール。今はそっとしてあげて。』
イヌドーシャスが言う。

『・・・・・うん。』
フカダールもコンドリーザの後を追うように静かに去っていった。

イヌドーシャスは泣き続ける妹を後からそっと抱きしめた。
『でも、もし“あの女が”お母様を殺したのだとすれば、次はお姉さまが狙われるわ・・・』
フジドーシャスが嗚咽しながら不安そうに言う。
『大丈夫よフジドーシャス。私はあなたを一人にしないわ。決して・・・』
妹を抱きしめる力が少し強くなる。
『それに、お母様の死の真相が叔母さま仕業だとしても、今は証拠も何も無いし何もできない。』
『でも、きっとあの女・・・』
フジドーシャスが振り返るがイヌドーシャスはそっと妹の口を指で押さえると話を続けた。
『わかってる。でも、今は耐えるの。明日からは凛とした態度でいましょう。』
『うん。』フジドーシャスは頷いた。
『あともう一つ、私にもし何か起こったりしても決して動じちゃダメよ。私は大丈夫だから…。そして、もし私が貴女の側から居なくなる事があったとしても、必ずすぐに戻ってくる。だから信じて待っていて欲しい。』
『でも・・・』
フジドーシャスは不安そうに見つめる。イヌドーシャスは妹の手を強く握り締めた。

『さっきも言ったけど、決して私はあなたを一人にはしない。お母様の前で誓うわ。』
フジドーシャスはしばらく黙っていたが、涙を拭うと力強く頷いた。


イヌドーシャスの身に事件が起きたのは、それから数日してからだった。


食事の席でのこと。
イヌドーシャスはあまり食欲がなく食事開始してまもなく席を立った。その時だった、イヌドーシャスの目の前にシャンデリアが落ちてきたのである。
シャンデリアは大テーブルに落ちると豪快な音を立て飛び散った。
イヌドーシャスは何が起こったのか一瞬分からず停止する。しかし、破片がかすめた頬には一筋の赤い線が伝い、我に返る。
その場に居た者は驚き叫ぶ。
落ちた場所から少し離れた位置にいたフジドーシャスも叫ぶ。
『きゃあああ、お姉様!』
そして、あわてて駆け寄り姉の頬の血を抑えた。
『大丈夫よ、大丈夫。』イヌドーシャスも冷静に応える。

『危なかったわねぇ・・・もう少し席を立つのが遅かったら下敷きになっていたわね。』
コンドリーザが慌てたように話す。
フジドーシャスが震えている。恐怖ではないことはイヌドーシャスはすぐにわかった。
イヌドーシャスはそっと妹に『大丈夫』と諭すように妹の頬に優しく手を添えた。

『大丈夫です叔母さま、私、“運”だけは強いのよ。』
イヌドーシャスは気丈に、且つ笑顔で答えるとフジドーシャスと共に去っていった。


しかし、部屋に戻るとイヌドーシャスは急に恐ろしくなった。
そんな時、ふと窓から外を見下ろすと城の中庭が広がり、その先には傭兵達の訓練場も見える。
この遅い時間に訓練をしているものなどいないはずのその場所で、一人の人影。ムカイヤマンである。

ムカイヤマンは静かに息を整えると剣を静かに抜き、横に空を斬る。そしてそのまま、また一つ空を斬る。
月明かりが剣に反射した青白い輝きと、連続して繰り出される剣技はとても美しく、優雅に舞っているのだった。

その美しい舞を眺めていると、イヌドーシャスの心はいつしか落ち着いていた。


ムカイヤマンとは昔から一緒だった。出会いは20年前に遡る。

遠方の戦から帰還した祖父と父が一人の子供を連れてきた。それがムカイヤマンだった。
彼女はいわゆる孤児だった。戦で家族も住家も失い、孤独でいたところを拾われたのだ。
祖父は『この子は女ながらに剣の素質がある。きっといつかお前を守ってくれるだろう。』と言い、実の孫のように同じく愛情を注いだ。

歳はイヌドーシャスよりも少し上。よって、イヌドーシャスにとっては姉が出来たようで嬉しかった。
それからは一緒に学び、よく遊んだ。
しかし、成長につれてお互いの立場を意識するようになり、いつしか遊ぶことも無くなったのである。

それでも2人の絆が消えることは無いと、窓から眺めるだけしか出来なくなってもイヌドーシャスは強く感じていた。


それから、イヌドーシャスの身に起こる危険は続いていき、さすがのイヌドーシャスも精神的、肉体的にも限界が近づいていた。
フジドーシャスはそんな姉を酷く心配したが、妹の前では気丈に振舞い、妹もただ見守るしか無かったのである。

ある夜イヌドーシャスは庭へ出ていた。こんな時間に外を出歩く者などなく静かであった。
月明かりを頼りに、訓練場に向かっていた。

そこにはいつものようにムカイヤマンの姿があった。彼女は静かに月を見上げていた。
そのうしろ姿は、窓のから見る姿よりもいつにまして凛々しく見えた。

『綺麗な月ですね。』
イヌドーシャスの声に、驚き振り返るムカイヤマン。
『イヌドーシャス様!』
ムカイヤマンは慌てて駆け寄ると体を低くした。
『いかがされたのですか?このような場所へ、しかもこんな時間に・・・』
『少し散歩がしたくなったのですよ。』
『散歩・・・・ですか?』
ムカイヤマンなはまた少し驚いたようにイヌドーシャスを見上げた。
『ふふ・・・というのは冗談で、窓からいつもあなたを見ていたら今日は気が付いたらここへ足が向かっていたのです。』
イヌドーシャスは笑う。
『そうでしたか。でも、いつもご覧になっているのは私も存じておりましたよ。』
ムカイヤマンも笑った。
そして、ムカイヤマンは立ち上がるとスッと手を差し伸べた。
『さ、お部屋までお連れ致しましょうか。』

『・・・・・・ムカイヤマン、少しお話しませんか?』
イヌドーシャスはその手をとらずに近くにあった石に腰を下ろした。
『イヌドーシャス様?』
ムカイヤマンは戸惑いながらも、急かされるままに自身も腰を下ろした。

『あなたとこうしてお話しするのなんて何年ぶりかしら?』
『そうですね、どれくらいでしょう・・・』
『昔はよく一緒に遊んだのにね。』
イヌドーシャスは月を見上げながら笑ったが、ムカイヤマンにはその横顔はとても淋しそうに見えた。
『イヌドーシャス様は覚えていらっしゃいますか?昔、イヌドーシャス様がお父上の短剣を持ち出して大層怒られたことを。』
『ああ、あったわね。あれはムカイヤマンがお父様の剣に興味があるみたいだったから見せてあげようと思ったのよ?』
『ふふ・・結局私もお叱りを受けましたけどね。』

2人はしばらくの間昔話に花を咲かせ、話し続けた。

『懐かしいわね・・・あの頃は楽しかった。』
すると、イヌドーシャスの瞳から一粒の雫が頬を伝って落ちた。
『イヌドーシャス様・・・』

『あの頃は、お爺様もお父様もいた。そして、お母様も・・・。』
そしてまた一つ、雫が頬を伝う。

『どうして愛する人はすぐに去っていってしまうの?どうして・・・。お母様・・・』
また一つまた一つ、イヌドーシャスの瞳からどんどん溢れ出してゆく。
母親が死んだときは涙は流れなかった。しかし今、イヌドーシャスのせき止められていた思いが一気に流れ出るのであった。

『私は怖いのですムカイヤマン。このまま愛するもの全て失うのではないかと。そしてきっと私も殺されます!』
『イヌドーシャス様・・・!』
『!?』
ムカイヤマンはイヌドーシャスを抱きしめる。

『大丈夫ですよ。貴女を守るのが私の使命。このムカイヤマン、命に代えてお守りいたします!』

イヌドーシャスはムカイヤマンの胸でしばらく泣き続けた。まるで赤子のように・・・


────────────・・・

────────・・・

───・・


『ありがとうムカイヤマン・・・。』
『いえ、私もご無礼お許しくださいませ・・・ただ、私は必ずイヌドーシャス様をお守りいたします。必ず。』
イヌドーシャスは笑顔を見せると、何も言わず城へと足を向けた。

『イヌドーシャス様!』
ムカイヤマンが呼び止め、イヌドーシャスは足を止めた。
『私とともに、城から出ましょう・・・』
イヌドーシャスは振り向かずに、ただ黙って立っている。ムカイヤマンは続けた。
『一度、城から出て策を練りましょう。きっと街の民も貴女に味方するものも少なくないはず。共に戦う者を集うのです。』
イヌドーシャスはまだ黙っている。
『ただ、貴女が城から出ればきっとコンドリーザも黙ってはいないでしょう。ですが、そこは私が命に代えても・・・』
『フジドーシャスはどうします・・・?あの子を残して私だけ出ろと・・・?』
イヌドーシャスが口を開いた。
『そ、それは・・・』
ムカイヤマンは黙ってしまった。そしてしばらく沈黙が続いた後イヌドーシャスが振り返る。
『わかりました。あなたに従います。』
『イヌドーシャス様!』
『フジドーシャスは私と違い気の強い子です。きっと大丈夫・・・。私がいなくなっても信じて待つよう約束もしていますし。』
『わかりました。では、明日のこの時間にこの場所で・・・。』
イヌドーシャスは小さくうなずくと城へ戻っていった。



────翌日の夜


イヌドーシャスは人目につかぬよう静かに約束の場所へやってきた。
『イヌドーシャス様こちらです。』
ムカイヤマンが手招く。
『これからどうやって出るのです?門には警備の者もいます。』
『馬を使います・・・付いてきてください。』
2人は見つからぬように馬屋へ移動した。その時だった・・・

『これはこれはムカイヤマンじゃないか。こんな遅くに何をしている?』
ムカイヤマンと同じく、傭兵部隊を率いる隊長ハーラモにムカイヤマンが見つかった。

『こ、これはハーラモ殿。なに、ちょっと鍛錬をしていただけだ・・・。』
『ふぅん・・・。なるほど。ところでその後にいるのは誰だ?』
ハーラモはムカイヤマンの後の物陰で息を潜めるイヌドーシャスにも気づき、物陰に近づき確かめる。
『!??イヌドーシャ・・・がはっ!!』
その瞬間、ハーラモが地面に崩れ落ちた。
『大丈夫、彼には少し眠っててもらっただけです。でも目覚めたら厄介なことになる。さぁ、急ぎましょう。』
ムカイヤマンはイヌドーシャスの手を取り駆け出した。
『でも、そんなに簡単に馬など持ち出せるのでしょうか?』
駆けながらイヌドーシャスは不安そうにムカイヤマンに問う。
『わかりません。でもいざとなったら・・・』
ムカイヤマンは剣を強く握り締めた。

馬屋には一人の人影があった。馬番をしていたコンドックである。
『誰?』
コンドックは2人の気配に気づくと明かりを向けた。
剣を握るムカイヤマンの手に力が入る。
『・・・ムカイヤマン様と、イヌドーシャス様?』
コンドックの呼びかけに2人は驚いたが、ゆっくりと明かりの元へ出た。
『馬を出して欲しい。』
ムカイヤマンは静かに頼んだ。
コンドックは一瞬驚いたが、すぐに馬屋へ駆けていった。
『まずい・・・人を呼ばれたか・・・?』
ムカイヤマンの顔は険しくなる。すると、すぐに馬屋から2頭の馬を連れてコンドックが戻ってくる。
『さぁ、早く・・・』
コンドックは2人に馬を渡す。
『お前・・・どうして?』
ムカイヤマンの驚きにコンドックは何も応えずただ笑顔を見せた。

『こんな事をしたら、あなたもただでは・・・』
イヌドーシャスが馬にまたがりながらコンドックを不安そうに尋ねた。
『私のことはお気になさらず!さぁ急いでください。』
『助かる・・・はぁ!!』
ムカイヤマンとイヌドーシャスは一気に門へ、そして外へ向けて馬を走らせた・・・

『あの者・・・どこかで・・・』
イヌドーシャスはコンドックを気にしながらムカイヤマンと共に城を後にした。

静けと暗がりの中に馬の賭ける音だけが響き渡っていた・・・。


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 「第五章 仲間」に続く
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コメント(2)

upありがとうございます!
この話が世に出れば、イヌドーシャス様とムカイヤマンの絡みの同人誌が出そう(^人^)
舞台は普通の高校とか。。。
ひゃ〜想像するだけで恥ずかしい(;´д`)
気が狂いそうな量だったよ(笑)

たしかに、今回だけ見たらそういう世界かもね!!
はなーよには一番のツボかも(~_~;)
こっからスピンオフとかできそう♪

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