ログインしてさらにmixiを楽しもう

コメントを投稿して情報交換!
更新通知を受け取って、最新情報をゲット!

かこむを囲む会コミュの【 三銃士 】 〜 第四章 忠誠(前編) 〜

  • mixiチェック
  • このエントリーをはてなブックマークに追加
 「第三章 街と人」より
 http://mixi.jp/view_bbs.pl?id=65814697&comm_id=5582528
☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆

剣と共に生き、その技や力のみを磨いてきた者にとって苦手とするもの、それが病人の看病。
戦地で傷ついた兵士は何百と見てきたので傷の手当ては慣れてはいる。しかし、目の前で息を荒くしてうなされる者を前にしては無力だった。

『くそっ、私はどうしたら・・・』

暗い森の中の空き家に2人。
息を荒くして横になる者と、その手を握り神に祈る者。

2人で森をどれくらい逃げたかは覚えていない。
雨に打たれ、野犬に絡まれ、さ迷いながらも偶然この空き家見つけ逃げ込んだ。
しかし、連れが倒れたのはその直後だった。

『街に戻るか・・・しかし、戻れれば・・・』
小さな手を握り締めながら苦悩する。
するとその小さな手は、荒い息と共に小さくつぶやいた。

『大丈夫・・・だから。』

精一杯の笑顔だった。
その笑顔は揺れる心を、決心するには十分だった。

『明るくなったら、街へ戻りましょう。』
『でも・・・』
『大丈夫です。何かあっても決してお守りいたします。』

荒い息の中、その守るべき小さな手は笑顔で静かにうなずいた。


───────
───
──


何も収穫が無いまま状況も特に進展せず2〜3日が過ぎ、カムシーの朝は今日も穏やかで、静かに明けていった。

『ふぁ〜〜!』
オーイスは寝起きの顔をこすりながら外に出た。朝の風は涼しく気持ちが良かった。ここ最近パワフルな女主人にこき使われすぎた体をオーイスは思い切り伸ばした。
イマムリオンも後に続き、井戸の水をくみ上げ顔を洗った。
『イマムリオン、今日はお前も手伝えよなぁ。いつも逃げやがって・・・』
オーイスも井戸の水で目を覚ましながらブツブツ言っている。
『わかったわかった。そう根に持つな。』
イマムリオンは笑いながらオーイスの肩をたたいた。
『大体お前は・・・ん?どした?』
オーイスがさらに言いかけようとしたが、森の方角をじっと見つめているイマムリオンに気づき言葉が止まる。
『誰か来る』
『んー?』
オーイスも細い目をさらに細めて見つめた。
すると確かにこちらにゆっくりと向かう人影。よく見ると誰かを背負っているように見える。
『オーイス、マツウラトスを呼んで来てくれ!』
そういうと、イマムリオンはその人影に向かって走り出した。
『お、おう。』オーイスも宿に戻る。

イマムリオンが駆けつけると、剣士と思しき者が1人を背負っていた。かなり疲労しているようだったが、イマムリオンを見ると背中を目で指し言った。
『頼む!!』
『一体どうされた?貴方は・・・!?』
イマムリオンの尋ねに、疲弊した体は背中の者を託すので精一杯のようだった。
背中の者ををおろす。かなり息も荒く意識は朦朧としている様子。
体もかなり熱く感じた。

そこにマツウラトスもかけつける。
『どうした、どうした??』
イマムリオンはすぐに、マツウラトスに指示した。
『この者を宿へ連れてってやれ!そしてムラターニャさんに!』
『あいよ』
マツウラトスはひょいと持ち上げると宿へ戻っていった。

イマムリオンは残った疲弊剣士に声をかける。
『大丈夫かい?』
『私は大丈夫だ・・・問題ない。』
そう言いながらも険しい表情は疲れきっていた。


ムラターニャの指示で“運ばれ人”は奥の部屋に運ばれた。
『まぁまぁ、すごい熱だねこりゃ。』
ムラターニャも朝から慌しい出来事に臨機に対応する。タニアイリスにお湯を持ってこさせ奥の部屋に入っていった。

部屋の外では4人が待っている。
『さて、お連れの方はムラターニャさんとタニアイリスに任せておこう。』
イマムリオンが話し始める。
『貴殿はその腰の立派な長物からするに兵士か何かかとお見受けするが、どこから来たんだい?』
『・・・・・』
『そして、お連れの方とはどういう関係なんだい?』
『・・・・・』
壁にもたれかかり、地を見つめたまま何も語らない剣士。
『たく、助けてやったのにだんまりかよ〜!』
オーイスが突っ込む。それをなだめながら、イマムリオンは続けた。
『何かあるなら話してくれないかい?我々は今はこの宿に身を置いてはいるが旅の者。何か力になれるなら手をかしてやりたい。』
『・・・・・・』
イマムリオンはここまで言うと、近くの椅子に腰をかけた。
しばらく沈黙が続き、その沈黙を破ったのは意外にも剣士だった。
『・・・・弟だ。』
『弟?』イマムリオンは聞き返す。
『ああ。今介抱されているのは私の弟だ・・・』
剣士は淡々とつづけた。
『私はムカイヤマンと言う。弟はイヌドリアン。我々は二人で旅をしていたのだが急に弟の具合が悪くなったのだ・・・』
『なるほど、旅ねぇ・・・その割には身軽なようだが。』
イマムリオンはムカイヤマンと名乗る者の持ってきた荷物を見つめた。
『も、森へ馬と一緒に置いて来たのだ・・・』
『馬だと目立ってしまう・・・』
『ん、なんだって?』
小さく最後に呟いた言葉をイマムリオンは聞き返したが、ムカイヤマンは何も言わなかった。

そこへ奥からムラターニャが出てくる。
ムカイヤマンは立ち上がりムラターニャに容態を確認する。
『まぁ、落ち着きなよ。体が冷えたことと疲れが溜まってたんだろう。薬飲んで今眠ってるよ。タニアイリスが側で見てやっているさ。』

それを聞いたムカイヤマンは初めて険しい表情から安堵に変わり、床にひざをつけた。
『それよりもあの子・・・』
ムラターニャが言いかけたときムカイヤマンが慌てて遮る。
『女将!すこしコチラへ・・・』

ムカイヤマンはムラターニャを離れた場所へ連れて行き、何やら話しているようだった。

しばらくして、ムカイヤマンとムラターニャが戻ってくる。
『ムカイヤマンさんもさぞお疲れだろう。部屋用意するから休みな。』
『感謝する・・・』ムカイヤマンはムラターニャに頭を下げる。

さぁ、3人は今日も働いてもらうよ!
オーイスは不満の声をもらす。

ムラターニャはムカイヤマンを部屋に案内しに去っていった。
そのムカイヤマンの後姿を見ながらイマムリオンは2人につぶやいた。
『気づいたか?』
『あぁ。』ずっと後で腕を組んでいたマツウラトスが静かに返事する。
オーイスは理解していないようで2人を交互に見つめた。

『あのムカイヤマンと名乗る者・・・“嘘”をついている。』

イマムリオンはムカイヤマンを見つめ呟いた。
『何が嘘なんだ??なぁ?』オーイスは未だ解らずに尋ねる。
そんなオーイスを横にイマムリオンとマツウラトスは静かにムカイヤマンを見つめていた。
『もっと、ゆっくり話を聞いてみる必要がありそうだな。』
『だな・・・』
『???』


『目を覚ましたみたい!』
タニアイリスが叫ぶ。

イヌドリアンが目を覚ましたのはその日の夜だった。
1日休息し先に目覚めてたムカイヤマンは真っ先にイヌドリアンの部屋に駆けつける。

イヌドリアンは自分の状況があまり理解できないようで、まだうつろな眼をキョロキョロさせていた。
ムカイヤマンは今までの経緯をイヌドリアンに話して聞かせた。

『そう・・・ありがとうございます。』
イヌドリアンは小さく呟く。

『熱も下がったみたいだし、このまま朝までもう少し休めば大丈夫だろう。』
ムラターニャもイヌドリアンの顔色を伺いながら言った。

『本当に、感謝する・・・』
ムカイヤマンは深々と頭を下げた。

そしてムカイヤマンは周囲の人間を見直し続けた。
『イヌドリアンと話がしたい。少し2人にしてくれないだろうか?』

『さぁ、みんな出た出た。』
ムラターニャはそれを聞くとみんなを追い出すように部屋の外へ出した。

数分後、ムカイヤマンが一人、皆の集まる場所へ戻ってくる。

『イヌドリアンは?』タニアイリスが尋ねる。
『ああ、また眠ったよ。』
ムカイヤマンは笑顔で応える。そしてまた、皆を見ながら話し始めた。

『本当に今日は感謝している。何もお礼は出来ないのだが許して欲しい。』

『何言ってるの。お礼だなんて。普通のことをしただけさ。』
ムラターニャが笑って言う。それに軽く頭を下げムカイヤマンが続けた。

『明日、我々はここを発つ。』

いきなりの事に、ムラターニャも驚いたようで、もう少しいれば良いと話す。

『いや、少し急ぐ身ゆえ・・・』
ムカイヤマンの表情が少し暗くなった気がした。
沈黙が流れる。

『そうか。わかった。』その沈黙の中イマムリオンが静かに口を開き続けた。

『ただ、1つだけここを出て行く前に聞かせてもらえないか?』
ムカイヤマンはイマムリオンの方を向く。

『今日、君たちがここに来たときに、兄弟で旅をしているという話だったね。』
イマムリオンの問いにムカイヤマンはうなずく。

『そうか・・・・じゃあ、聞くが・・・。』
イマムリオンは一息おいて尋ねた。

『なぜ君の剣にはイービス王国の紋章が刻まれているんだい?』

『あっ!』オーイスもやっと気づいたようで声を上げる。
マツウラトスはただ黙って2人のやり取りを聞いている。

『あれは・・・・』
ムカイヤマンは何も応えず黙り込む。しかし動揺を隠しきれていない様子だった。
『ここからは私の推測だが、ムカイヤマン、君は城の者だね?恐らく君の“弟”も一緒じゃないのかな?』
いまだムカイヤマンは黙り込んだままだった。

『あの“弟”、そして君は一体何者なんだい?どうして城から逃げるようにしている?森からここまで馬で来なかったのは、目立つことを恐れたからだろう?』

イマムリオンはふとムラターニャを見る。
『ムラターニャさんも、何か知っているんじゃないかい?』

ムラターニャは急に振られた話に焦った様子で応える。
『い、いや、別に知っているってもんじゃないんだけどさ・・・その・・・』

ムラターニャはチラッとムカイヤマンを見ると、少し考え込み、続けた。

『あの“弟”くん・・・女の子なんだよ。』

これにはオーイスとマツウラトスも少し驚いた様子だった。そして、イマムリオンも例外ではなかった。
『いや、ムカイヤマンさんが黙ってて欲しいって言うもんだからさ。』
ムラターニャもなんともバツが悪そうだった。

『なるほど、“女の子”だったとは・・・。ならばますます何かありそうだな。城の者が女を連れて城から逃げ回るとは。』
イマムリオンは改めてムカイヤマンに尋ねた。

『お姫様でもさらってきたとか?』
オーイスが冗談半分に発したその言葉に、ムカイヤマンが今までに無い反応を示す。
『そうなのか?』イマムリオンが静かに尋ねた。

長い沈黙のあと、ムカイヤマンが重い口を開いた。
『あの方は・・・今は亡きマンターリシャス女王の第一子女、イヌドーシャス様だ。』

『!?』
皆、一斉に驚きを隠せずたじろいだ。特にムラターニャは動揺が大きいようでタニアイリスと目を合わせた。
『君は?』イマムリオンが再度尋ねる。

『私はイービス城で、傭兵騎士団隊長を任されていた者だ。』

ムカイヤマンは全てを話す覚悟になったのか、大きく息を吸い込み吐き出した。

『そして、私がイヌドーシャス様を連れ出したのだ。』
ムカイヤマンが語ろうとしたその時だった。

『そこからは私が直接お話します。』

声がした方向へ一同が振り返ると、そこにはイヌドリアン、いや、イヌドーシャスが立っていた。

『イヌドーシャス様!』
ムカイヤマンが慌てて駆け寄りひざまつく。

『大丈夫です・・・。ありがとうムカイヤマン。』
ムカイヤマンの肩へ優しく手をかけ微笑んだ。

ムラターニャはまだ動揺が収まらない様子だが、イヌドーシャスへ恐る恐る椅子を差し出した。
イヌドーシャスはそこにゆっくりと腰を落ち着けるとまた口を開いた。

『先ほど、ムカイヤマンが申しましたとおり、私はイービス国王オーヤマルトゥスの娘マンターリシャスを母に持つ、イヌドーシャスと申します。』
静かに自己紹介をした。
『今回は本当に感謝しています。心から感謝いたします。』
そして、深々と頭を下げる。

『これから、今に至るまでの経緯などを私からお話いたします。あれは、数日前に遡ります・・・』

イヌドーシャスはゆっくりと語り始めた・・・


☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆
 「第四章 忠誠(後編)」に続く
 http://mixi.jp/view_bbs.pl?id=66094597&comm_id=5582528

コメント(0)

mixiユーザー
ログインしてコメントしよう!

かこむを囲む会 更新情報

かこむを囲む会のメンバーはこんなコミュニティにも参加しています

星印の数は、共通して参加しているメンバーが多いほど増えます。

人気コミュニティランキング