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GRACE小説部コミュの マイファミリー

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 扉は嘆くような音を立てて開いた。
「ただいま」父の静かな低い声が吹き抜けの玄関に響く。
「お帰りなさい」私と妹はバラバラに短く答えた。

私はリビングのソファーで「soup」を膝の上に乗せてめくりながらポテトチップスをかじり、妹はリビング脇の和室の壁であぐらをかいてDSをしていた。
廊下から発するスリッパの音が、リビングのドアの前で止まった。

「カナ。風呂は?」父は力なく聞いた。
「沸いてるよ。」私は雑誌の「30日間着まわし術」に目を向けたまま答えた。
「風呂から上がったら二人に話がある。」の言葉に反応して私と妹が顔を上げると、父はすでに浴室へ行ってしまっていた。
浴室の軽いドアが閉まったのが壁の振動で聞こえた。


 妹があぐらを崩して私に少し笑って言った。
「見つかったのかな?」
「見つかったんならもっとテンション高いし慌ててるでしょ?」
私はポテトチップスの袋をたたんでゴミ箱に捨てた。

私は台所に向かい、冷蔵庫からビール缶を2本取り出し冷凍庫に移した。
ひじきときんぴらを鍋からおたまですくって小皿に盛り、おぼんに乗せて、台所の電気スイッチをひじで消した。
妹がいる6帖の和室中央、約1帖半あるテーブルにひじきときんぴらを置いて、リビングの壁掛け時計に目をやった。20時48分。
リビングのソファーに乗ってる雑誌をつかんで、リビングの電気を消した。
和室の押入れにもたれかかって、座り込んだ。
さっき読んでいたページをペラペラめくって探したが、ため息をついて、雑誌を畳の上に放った。

「ねえ。」妹に問いかける。
(ピコピコピコピコピコピコピコピコ)
「うん?」妹はDSから目を離さない。
(ピコピコピコピコピコピコピコピコ)

「戻ってくると思う?」
(ピコピコピコピコピコピコピコピコ)

「っさぁ?」
(ピコピコピコピコピコピコピコピコ)

「あの夜、あんた起きてた?」
(ピコピコピコピコピコピコピコピコ)

「・・・・・起きてたよ。」妹はDSから、目を、離さない。



いつも父が風呂から出るまで、後40分。




















母が出て行って3ヶ月が経った。

5月下旬の夜中、一階の和室で父と母が何やら言い争っていたせいで、私は不快な気持ちで目が覚めた。
互いの尖った声が吹き抜けの玄関から廊下、二階にまで振動する。

大きな音にびびりながら私は息を殺して階段から和室を覗き込んだ。
母は「勝手にしろ!」と言って玄関ドアを壊れる位に閉め叩いた。
車のエンジンがなる音。乱暴に運転する音が深夜の道路にこだました。

私は4歳のころ、夜中に母に起こされて、手を引かれ二人で出て行ったことを思い出した。
その時は1日で帰ってきて会話も普通にしていた。
私が物心つく前から、二人は喧嘩が耐えなかったので、今回も母は明日には帰ってくるだろうと予想していた。そう思うとまた睡魔が来て、二階に上がった。

ところがその後一週間しても母が戻ってこない。

コメント(5)


娘が不安がらないようになのか、父は私達姉妹を和室に呼んで並んで座らせた。


父の話では、母が帰って来ないのは、父が浮気していると勘違いしているからだと言う。
父はショートホープをくわえた。

父はそんな事は絶対ないを繰り返し、煙草をテーブルの灰皿に置いた。
鉛筆でひたすら書き回していた稚拙な説明図は「母」と言う○が徐々に濃くなっていく。

父が深刻な表情で紙を見つめていたので、私はわざとらしい位心配した顔つきを父に向けたが、内心は下らないつまらない情けないと呆れていた。
夫婦喧嘩を報告されても返答に困る。


ふと、目線を妹にやった。
私と似た心境を隠そうとせず態度に表していた。
「で、どうすんの?」
妹は我慢しないで父に聞いた。

「母さんから連絡が来るかも知れない。お前たち電話やメールには注意しておいてくれ。」


母から連絡が来ることを想像出来ない私は「解りました」とだけ答えた。






カチッ。

浴室ドアの空く音がした。

21時16分。

「早いな」
私は妹の隣に座ろうと腰を上げたが、テーブルに箸がないことに気付いて、上げた腰を台所へ向けた。

食器洗い場の箸差しから焦茶色に塗られた18センチ位の箸を抜き取り、和室のテーブルに置いて、妹の右側で体育座りをした。


廊下に目をやると、暗闇から橙の浴室ライトの明かりがボゥと浮かび、父の体は糸遊を纏ってゆっくり歩いていた。

妹は父を一瞥したが、すぐ顔をDSに向けた。


「ああ、ありがとう。」
父はテーブルを見て言った。

私は、今日職場で重要じゃなくなった書類を、仕方なく受け取った時の上司の声を思い出した。

「真弓、音消して。二人ともきちんと座りなさい。」

妹は肩でため息をしてDSの閉めた。
私は体育座りから正座になおした。

父は箸を取ってひじきを口に運んだ。


























暫く、ひじきが擦れる音が続いた。

キーーーーーーィン…







耳鳴りを感じた時、父は「お母さんから連絡あったか?」
と聞いた。


私と妹と、どちらに聞いてるかわからなかったので、私達は互いに目を泳がせて「来てない。」と私が返した。


「そうか。…………お母さんが戻る前にここを出ないと行けないかもしれない。」
父は唸るように小さく言った。


「………えっ?何で?」
私は、引っ越し(?)の4文字が頭に浮かんだ。



妹と顔を向かい合わせた。




父は今後は、ゆっくりと言った。
「家を………追い出されるから」

「は?」
妹は眉をひそめた。


「何それ?どういう事?」
妹はつっけんどんに聞いた。


父はきんぴらをつまみながらポツリポツリ話始めた。

「この家は他の人の物になるかもしれない。」
「は?何で?」

「銀行から家を売るように提案されたから」
「話が見えないんですけど!」

父の話に妹はすぐさま疑問混じりに不安を投げつけた。



父は建売建築会社の課長だった。
家は会社の社販で購入。


およそ100坪はあろう敷地に、モデルルームの建築をそのまま乗せたような家が完成した。

記憶では、家を見て母は有頂天に弾み、何時間も部屋を行き来していたはず。
父は「大袈裟な」と言いながら嬉しさ余って口元をゆがませていた。






「この家を建てる時に費用がかなりかかったよ。ローン借入出来たから」

私は聞いた。
「いくらかかったの?」

「5千万」

私と妹が答える前に父は続けた。

「家のローンが前から払えない日が続いた。このままだと銀行から前から競売にかけられる話があった。ただ銀行から提案があってこの家を売ることを薦められてたんだ。」


妹は親指と人差し指で耳たぶを触りながら「そうゆう話って分かんない。」とため息をついた。

私も分からない。


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