仏教コミュの禅宗

禅の始祖は520年に中国に来た南インドの菩提達磨であるとされているが、達磨の行跡
そのものがあまり明らかではない。

禅宗では達磨を天竺の二十八祖と称し、不法蔵経に載せられているところの迦葉尊者（かしょうそんじゃ）に至る
二十四人に婆舎斯多（ばしゃしった）、不如密多（ふにょみった）、般若多羅（はんやたら）、の三人を加え、その次に達磨を置いてインドにおける第二十八祖の禅宗の開祖としているのである。

そして中国における禅は、第二祖の慧可（えか）、僧燦（そうさん）、道信（どうしん）、弘忍（こうにん）へと伝わったとされる。

日本においては、嵯峨天皇（さがてんのう）の代に、義空（ぎくう）が初めて日本に禅宗を日本に伝えたが、
当時、伝教大師の日本の天台宗が広く流布していたため、受け入れられなかった。
その後、鎌倉時代の僧・栄西（ようせい）が中国（栄）に渡って禅宗を学び、建久二年（1192年）,
日本に臨済宗（りんざいしゅう）を伝えたのが始まりである。

こんにちの曹洞宗（そうどうしゅう）を広めたのが、道元である。
道元は幼児に父母を失い、十三歳で比叡山に登ったが、後になって、当時、名を高くしていた栄西の門流・建仁寺に入門した。

そして、本格的に禅の法門を学ぼうとして入栄した道元は、坐禅（ざぜん）修行中に豁念（かつねん）と悟りを開いたと称して、安貞（あんじょう）元年（1227年）帰国して曹洞宗を開創した。

教義と本尊
禅宗においては、教化別伝（きょうけべつでん）・不流文字（ふりゅうもんじ）をことさらに標榜する。
というのは、粘華微笑（ねんびみしょう）という説
釈尊が両住.霊鷲山（りょうじゅせん）において、ただ黙然として一本の華を捻って弟子達に示したが、誰も
その暗示を理解するものがいなかった。その時、摩訶迦葉（まかかしょう）が唯一人、微笑みを浮かべて釈尊の真実を悟ったという説。

禅宗では、釈尊の真意である禅の法門が、まったく経典に依らず、釈尊から迦葉へと以心伝心（いしんでんしん）をもって伝授されたと主張するのである。
それ故、禅宗においては釈尊の一代聖教には真実が顕されていない、真実の法は迦葉一人に不立文字（文字を立てず）で教化別伝（教えの外に別に伝える）されたのであるから、釈尊の経典や文字には依らず、坐禅を組んで静かに観念（かんねん）を凝らすところに、自力による解脱（げだつ）が得られるとしていっる。
解脱とは悟りの意味。

経典は月（己心に仏性を具えていることを月に例えた）を指し示す指のようなものであり、月が分かってしまえば指は何の値打ちもない、として経典を捨て去り、これに対して禅宗は直指人心（じきしにんしん）・見性成仏（けしょうじょうぶつ）であると説いている。

つまり、教理分析などしなくても坐禅修行はただちに己心を指すもの（直指人心）であり、我が己心に仏性を具えていることを知覚（見性成仏）できる、とするのである。

以上、教化別伝・不立文字・直指人心・見性成仏等の教義を立てる禅宗においては、元来、経典は一切用いないはずであるが、楞伽経（りょうがきょう）・諸法無常経（しょほうむじょうきょう）・円覚経（えんがくきょう）・首楞厳昧経（しゅりょうごんまいきょう）・金剛般若経（こんごうはんにゃきょう）等の経典を依経として用いて、一応本尊としては釈迦を立てているようである。

禅宗の起源とされる粘華微笑（ねんびみしょう）の説であるが、これは
「大梵天王問仏決疑経（だいぼんてんのうもんぶつけつぎきょう）」の
「梵王（ぼんのう）、霊山会上（りょうぜんかいじょう）に至り、金色沙羅華（こんじきさらけ）を献（けん）ずるを以って、仏に郡生（ぐんじょう）の為に説法せんことを請う（こう）。

世尊、座に登り華を粘って衆に示し、青連（しょうれん）の目瞬き（まばた）、天人百万悉く皆措（お）くこと罔（な）し、独り金色頭陀（ずだ）（摩訶迦葉のこと）のみ破顔微笑（はがんみしょう）す。
世尊の云く、吾に正法眼蔵（しょうほうがんぞう）・涅槃の妙心・実相無相の微妙の法門有り、文字を立てず、教外に別伝し、摩訶迦葉に付属（ふぞく）す」の等に文に依るものである。

しかしながら、この「大梵天王問仏決疑経（だいぼんてんのうもんぶつけつぎきょう）」は、経典の二大目録と言われる貞元禄（永年十年、後漢の明帝（めいてい））の時に中国に仏教が渡来してから貞元十六年（８００年）に至るまでの、七百三十四年間に翻訳された大小の経典を勅命によって収録したもの）や開元禄（開元十八年）（７３０年）、唐の玄宗（げんそう）の時に、勅命によって編集された一切経の目録）にも名すら見えず、その上訳者
も訳された時代も共に不詳だることから、古来、偽経として有名である。

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この経が偽経であることから、教化別伝・不立文字とする禅宗の起源すら崩壊してしまうのである。

「件の（くだんの）経は何れの三蔵訳ぞや、貞元・開元の録の中に曽（かつ）て此の経典無し、如何。禅宗答えて云く、此の経は秘経なり。故に文計り天竺より之を渡す云々。問うて云はく、何れの聖人、何れの人師の代に渡りしぞや、跡形（あとかたち）無きなり、此の文は上古の録に載せず、中頃より之を載せす。
此の事禅宗の根源なり、尤も古書に載せすべし、知んぬ偽文なり」

ようするに禅宗は仏教ではないのである。
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　禅宗では、仏の悟りを「月」に、経典を「月を差す指」に譬え、仏の悟り（月）を得た後は、経典（月を指す指）は必要ないとし、その教義は達磨の「教外別伝・不立文字」「直指人心・見性成仏」に代表されます。「教外別伝・不立文字」とは、釈尊の教えの真意は文字などで表現できるものではなく、以心伝心といって、経典とは別に心より心へと伝えられるというものです。直指人心・見性成仏とは、教経を用いずに坐禅の修行によって自分の心を見つめ、自己の本性が仏そのものであると知ることをいいます。
　禅宗では「教外別伝・不立文字」と主張しているにもかかわらず、本尊と所依の経典を定めています。本尊は、釈迦牟尼仏・大日如来・薬師如来・観世音菩薩を中心として、宗派によってそれぞれ異なったものを立て、一定していません。

　釈尊はまた、権大乗から実大乗の法華経へ導くためにも、権大乗教を強く破折している。すなわち、法華経の開経である無量義経で、権大乗の諸経を破して「四十余年には末だ真実を顕さず」と決判したのである。
　また法華経方便品第二では「若し小乗を以って、乃至一人をも化せば、我則ち慳貪に堕せん。此の事は為めて不可なり」とも説かれている。

また、所依の経典も『金剛般若経』『楞厳呪』『観音経』等で、宗派によって様々であります。

　禅宗では、釈尊の一代聖教には真実を顕さず、真実の法は釈尊が迦葉一人に、一代の教えのほかに別に伝えたといいます。しかし、釈尊の涅槃のときには、迦葉はその場にいなかったのであります。ゆえに、釈尊が華を拈んで迦葉尊者一人が笑みを浮かべたという事実はなく、禅宗でよく言う「拈華微笑」とは、まったく根拠のない作り話であります。
　また「教外別伝・不立文字」と説き、仏の真意は文字を立てず心から心へ伝わるというが、「教外別伝・不立文字」と仏が説いたこと自体が教えであり、言葉であり、文字として残っているではないでしょうか。不立文字とは文字を立てないことでありますから、当然、経典等は用いないことになりますのに、その根拠を『大梵天王問仏決疑経』の経文に依るとは自語相違でありましょう。
　しかも依経としている『大梵天王問仏決疑経』は、大蔵経の古録である『貞元釈教録』『開元釈教録』にもその存在はなく、古来より偽経として扱われているのであります。
　また、達磨は『楞伽経』を註釈した書物を作り、第二祖慧可に禅の法を伝えたとしていますが、これもまた「不立文字・以心伝心」の禅宗の教えに自語相違しています。
　　一代聖教を誹謗し、経典を捨て去り、教外別伝・不立文字を立てる禅宗は、『涅槃経』の、「若し仏の所説に随わざる者あらば、是れ魔の眷属なり」と説かれるように天魔の所業といわざるをえません。
　さらに「直指人心・見性成仏」といい、教経を用いず、坐禅によって見る自己の本性が仏性であり、仏そのものとします。

たしかに衆生はすべて仏ともいえますが、それは単なる理論上の仏であって実際の仏ではありません。三毒強盛の凡夫の心は所詮、迷いの心であって、その心をいかに見つめても仏心を観ずることはできません。だからこそ釈尊は『涅槃経』に、「願って心の師と作るとも心を師とせざれ」と説かれ、人の心は迷いの心であって、その心を師匠とすべきでない、と誡められているのであります。完全無欠の仏を蔑ろにし、「是心即仏・即身是仏」などと凡夫の愚癡無慚の心をもって、「我が心を観じることによって仏となる」という禅宗の教えは、随分と増上慢な教えと言えましょう。