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FINAL OKINAWA FANTASYコミュの9

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9




終わらない悪夢



ヘイオス散る。仲間のため、ウォキナワのため、世界のために、ヘイオスは死んだ。世界が救われたはずなのに、五人の胸中には悲しみしか残らない。
「良い奴だったよな。」ヤラキがヘイオスを思い出す。
「うん。」フィロヤは泣いている。
「俺、誰と喧嘩すれば良いんだ?馬鹿にしてくれよ、ヘイオス。」サクーンが悲しむ。
深い悲しみに暮れる五人。だが、それも一瞬で吹き飛ぶ。
ぷぅ〜という音によって。
「今何か聞こえたよね?」マサーはみんなに尋ねる。
「それに、この臭い。」トゥーマコは鼻をつまむ。
「おい、そういえば、誰か心臓の音とか聞いたか?」サクーンは涙を拭う。
「いや。でもまさか?」ヤラキが動揺する。
「有り得る。全然有り得るよ。」フィロヤの顔にはもう、悲しみなど残ってはいない。
「よく考えてみろ。こいつならやりかねない。死んだふりーってな。」サクーンは呆れる。
「おい。おい!起きろ。」トゥーマコは不機嫌そうにヘイオスを起こす。
「バレた?」それまで穏やかな死に顔だったヘイオスがニヤッと笑う。
「ヘイオス!」みんなから、声があがる。
「もっと良いタイミングで、起きようと思ってたのに、腹に残った屁が出てもうた。くっさ!」ヘイオスは顔をしかめる。五人も臭さに顔をしかめる。
「ど、どういうこと?」ヤラキはまだわからない。
「屁をこいた本人が、自分の屁で死ぬなんて、そんなことはないだろ。」トゥーマコが解説する。
「アホかトゥーマコ!俺だって、死にそうなぐらい臭かったんやぞ。予想以上の出来栄えにびっくりしたわ!ま、自分の屁で死ぬなんて、格好悪いこと俺がするわけないやろ。てか、さっき泣いてたよなサクーン?」ヘイオスは満足そうに笑う。
「馬鹿野郎。こっちは本気で心配したんだぞ。」いつものサクーンに戻る。
「でも、なんで死んだふりまでしたの?」マサーは疑問に思う。
「こいつはずる賢いんだよ。どうせ、みんなに自分がどう思われてるのかが気になって、死んだふりして本音を聞き出そうって魂胆だろ。」トゥーマコは呆れ果てている。
「だって、気になるやん!けど、僕ってみんなに好かれてたんやな〜って思って、感動したんやで。」ヘイオスは感動している。
「俺たちは本気で悲しんだんだぞ。この馬鹿!」サクーンはヘイオスにメーゴーサを入れる。今日のはスーパーメーゴーサだ。
「痛っ!」ヘイオスは痛がる。
「なんかヘイオスのこと凄い奴だと思ったけど、結局器の大きさは、ファットバギーと変わらなかったね。」フィロヤが良いことを言う。
「たしかにね。」マサーが笑う。
「悪魔のような男だな。」ヤラキも突っ込みを入れる。
「それは言い過ぎやろ!」ヘイオスがショックを受ける。
六人はなんだかんだ言いながらも仲が良い。

「うぅぅぅ。」
突然、誰かのうめき声が聞こえる。黒い巨体が徐々に立ち上がる。

「まじかよ。」サクーンは唖然とする。
「あれを喰らって生きているなんて。」マサーの顔にも悲壮感が漂う。
「おのれ。おのれ貴様ら。よくも俺様に屁なんて喰らわせてくれたな。まだ内臓がズキズキしているぞ。」ファットバギーは生きていた。恐るべき生命力だ。

「どうする?」ヘイオスがトゥーマコに聞く。
「やるしかない。やつもダメージを受けているはずだ。今なら攻撃が通じるかもしれないし。」トゥーマコは答える。だが、その言葉に自信はない。
「伝説の武具は石になったまま。俺達で何とかするしかないな。」サクーンは剣を握る。
「諦めません!勝つまでは!!」フィロヤが勇ましい。

ファットバギーは、生きていた。まだ悪夢は終わらない。



真の力



空気が変わる。国際通りは、張りつめた緊張感に縛られる。それは、ファットバギー・クリストファーが本気になったことを意味した。
「小細工はもう使うなよ。すぐに殺してやる。」ファットバギーは怒っている。
「あの目、やばいね。」マサーが緊張をあらわにする。
「あいつの攻撃は大振りだ。当たらなければ、何とかなる。」ヘイオスは動じない。
「もう一度、一斉攻撃をしかけよう。」フィロヤが提案する。
「わかった。やつの正面に、みんなの攻撃を集中しよう。」トゥーマコが五人に声をかける。
「だが、やつにはタレパンダがあるんだぞ。正面から行っても、弾き返されるんじゃないか?」サクーンがトゥーマコに尋ねる。
「タレパンダは確かに硬い。だが、それを支えるのも、やつ自身だ。ヘイオスの屁で受けたダメージに加え、外から衝撃を加えれば、ファットバギーを内側から倒すことが出来るかもしれない。」トゥーマコが説明する。
「そういうことか。けど、これがダメだったら、今度こそ打つ手なしだね。」フィロヤが弱気だ。
「その時は、その時だ。次の手を考えれば良い。」ヤラキが、フィロヤの肩をポンと叩く。
「諦めなければ、きっと勝てる。だろ?」マサーがフィロヤの真似をする。
「違う、違う。諦めません、勝つまでは!だよ。」サクーンがフィロヤの代わりに言う。
「俺のを取るな〜!」フィロヤが焦る。
「良い雰囲気なってきたやんけ。この調子で、あの黒デブをやっつけようぜ。」ヘイオスはこの雰囲気が心地よい。

6人が作戦を立てていると、ファットバギーは深呼吸を始めた。何かやるつもりだ。
「俺の攻撃は直接攻撃しかないと思っているだろ。馬鹿どもめ。俺の奥の手を味わいやがれ。」ファットバギーは不気味な笑みを浮かべる。
「来るぞ!何かする気だ。みんな気をつけろ!」トゥーマコが注意をする。
「無駄だ。」そういうと、ファットバギーは大声で叫んだ。
ファットバギーの大声が、国際通りに響き渡る。あまりの大音量に、六人は耳を塞ぐ。
だが、ファットバギーの大声は耳を塞いでも、直接脳を刺激する。
六人は、その場に膝をつく。三半規管を刺激され、立つことが困難なのだ。だが、大声の影響はそれだけではおさまらない。
「うわっ。気持ち悪い。吐き気がする。」フィロヤが異常を訴える。
「俺もや。それに悪寒もする。」ヘイオスは悪寒まで訴える。
トゥーマコ、サクーン、ヤラキ、マサーも、体に異常を訴える。
「これは、これはただの大声じゃない。」トゥーマコが原因に気づく。
「大声を出しているかのように思わせて、やつはそれ以上の音、超音波を発していたんやな。」ヘイオスも原因に気づいた。
「そうか。人間の聴覚が感じ取れる部分までは、声として聞こえるが、やつはそれ以上の高い音を出していたってことか。聞こえなくても、音波自体は体を伝わる。この体の異変は、普段聞くことのない、超音波を聞いたからか。」マサーが分析する。
「正解だ。物理攻撃であり、幻術でもある、この攻撃。ファットバギー・クリストファーとなった俺は最強の武器と防具を持っているのさ。」ファットバギーが笑う。
「幻術?どういうことだ?」トゥーマコが疑問を感じる。
「うわぁ、助けてくれ!助けてくれ!」突然、サクーンが怯えだす。
「どうしたんだサクーン?」マサーが突然怯えだしたサクーンに驚く。
「そういうことか!痛いけど、我慢しいやサクーン!」ヘイオスはサクーンが怯えだした原因がわかったようだ。ここぞとばかりに、サクーンの頬を思いっきりぶん殴る。
「いてっ!…、あれ、俺、何してたんだ?」サクーンが正気に戻る。
「あいつの超音波を喰らったせいで、脳を刺激され、幻覚を見てたんや!」ヘイオスがサクーンに教える。
「そうだったのか。そういえば、何か怖い夢を見てた気がする。背が小さくて、太った女に追い回されるっていう、怖い夢だ。」サクーンは変な汗をかく。
「人は心の中に、絶対に誰しもが恐怖心を持つ。それを特殊な音波で刺激してやるのさ。そうすると恐怖は増大し、受けた奴の心は、恐怖で埋め尽くされる。いつでも悪夢を見れるぞ。はっはっはっは!」ファットバギーは高らかに笑う。

デブの肺活量を生かした、超音波攻撃。最硬絶対防御のタレパンダ。そして、持ち前の怪力。ファットバギーはついに、その恐ろしい本性をあらわした。



最大の危機



ついに本性をあらわした、ファットバギー。その力で、六人を圧倒する。六人はファットバギーの能力に手も足も出せない。
「さっきは何をこそこそ話していたんだ?作戦があるなら、さっさと実行しろ。俺はいつでも止めをさせるぞ。それとも、怖気づいたか?」ファットバギーは六人を挑発する。
「この野郎っ!」ヤラキはファットバギーを攻撃しようとする。だが、三歩目で転ぶ。足元にはつまずくようなものはない。
「ふん。俺も超音波攻撃は何回も連発できない。だが、一度超音波攻撃を喰らったやつは、三半規管を刺激され、しばらくの間まともに動けないんだよ。つまり、超音波攻撃を喰らった時点で、もう終わりなんだよ。」余裕のファットバギーは種明かしをする。
「もっと面白い話を聞くか?フルパワーで叫んで超音波を出すと、何が起きるでしょう?」ファットバギーが問題を出す。
「う〜ん、わかんない!」素直にフィロヤが答える。
「何だ?何なんだ?」サクーンも全然わかんない。
「まさか。そんなことまで出来ると言うのか…。」マサーは答えがわかったようだ。
「あかんやろ。そんなん。」ヘイオスも理解する。
「音波…、空気中を伝わった振動は、さらに、ぶつかったものを震わす。そして、波は徐々に大きくなっていく。その、最悪の可能性。それは津波だな?」トゥーマコがファットバギーに聞く。
「大正解!ブラボー!凄いじゃないか。最近出来るようになったんだけどさ〜。」ファットバギーはおどける。
「ムカついたから、やっちゃったぜ。ワイハを。アケボーノとか言うからさ。あれは凄かったな〜!大津波が島全体を飲み込んだからな。あれは絶対、全滅だなっ!あっ、でも生き残りがいたか。惜っしい〜。」ファットバギーが思い出し笑いをする。
「ムカつく野郎だぜ。反吐が出る。」ヘイオスが怒りをあらわにする。
「ズッケラン…。」トゥーマコは、故郷を失ったズッケランを思う。どれだけ悲しかったことか。どれだけ悔しかったことか。
「こいつだけは、差し違えてでも、絶対に倒す。」マサーが斬り掛かろうとする。だが、上手く走れないで、倒れる。
「マサー!」フィロヤが、マサーを支える。
「ちくしょう。ちくしょう!伝説の武具さえ、伝説の武具さえあれば。」ヤラキの悔し涙が、石となったガリオンの盾に落ちる。だが、何の変化も起きない。
「伝説の武具を手に入れることも考えて、ウォキナワに津波は起こさなかったが、もう伝説の武具には興味はない。伝説の武具があれば、もっと強力な力を手にすることが出来たが、今のままでも俺は最強だ。唯一の脅威も無くなった。石となった伝説の武具とともに、海の底に沈むが良い。俺はタレパンダを浮き輪代わりに海水浴を楽しませてもらうぜ。今から船に乗っても、もう間に合わないぞ。北部や中部のやつらは、津波が来ることなんか知らずに死んでいくんだから、可哀想だな!」ファットバギーはウォキナワに津波を起こすことを想像して、ニヤける。
「おっとぅ。おっかぁ。みんな…。」サクーンの脳裏を故郷がよぎる。
「俺の兄弟たちが…。」マサーも不安を隠せない。
「こうなったら、捨て身であいつにぶつかるしかないよ!」フィロヤが特攻を訴える。
「この足じゃ、無理だ。腕にも力が入らない。」ヤラキは下を向く。まだ、超音波攻撃の影響が体から消えない。
「ヤラキ!諦めるな!」トゥーマコが声をかける。
「今のままじゃ、間違いなく俺たちは無駄死にだ。だけど、俺たちには、それしか残ってない!」ヘイオスは、ファットバギーがウォキナワを沈めたあと、カンサーイを襲うことを想像した。今、ファットバギーを倒さなければ、故郷もめちゃくちゃになる。

「で、来るのか?来ないのか?けっ、つまんないな。だが、お前らは、俺の大切な弟、部下たちを、やってくれた。津波で死ぬより、俺様直々に殺した方が、やつらも報われるだろう。仇はとらせてもらう。俺様の鉄拳で、ぺちゃんこにしてやるよ。」ファットバギーは、肩の袖をもう一回しっかりと捲り直す。

恐怖の大王が、一歩、また一歩と近づいてくる。

六人は死力を振り絞って、特攻をかけたい。だが、まだ体が思うように動かない。

逃れないようのない、確実な死が近づいてくる。

しかし、その時。一筋の光明が六人を差すのだった。



切り札



ファットバギーに苦戦する六人に、二人の男の影が迫る。
「なんだお前らは?そいつらの仲間か?」ファットバギーが二人に話しかける。
「そうだ!」一人が威勢よく返事をする。
「ほう。まだ少しは楽しめそうだ。作戦でも、何でも立てるが良い。命拾いしたな。」ファットバギーは、そう言うと、その場で立ち止まった。
二人の男が、六人に駆け寄る。
「大丈夫か!?」片方の男はスドウだ。頭に包帯を巻いているが、血が滲み痛々しい。もう片方の男は六人が知らない人物だ。髪が茶髪で、体は痩せ細っていて、煙草を吸っている。
「スドウ先生!」六人はスドウが駆けつけたことに驚く。
「怪我は大丈夫なんですか?」トゥーマコがスドウに声をかける。
「今は僕の怪我を気にしている場合ではない。この戦いには世界の命運が懸かっているんだ。」スドウの瞳には強い決意が宿っている。スドウは、その場を見渡し、状況を把握する。視界には、倒れているセイゴン、石になった伝説の武具が入る。一瞬、スドウは無念の表情を見せるが、すぐに気持ちを切り替える。
「君たちが飛びだしたあと、僕も伝説の武具について更なる研究を進めたんだ。そして、ついに分かったんだ。ナデューサの三線についての全てを。」スドウは六人が戦っている間に、怪我を押して研究を進めていた。
「で、何がわかったんすか?時間がないから、手短にお願いします!」ヘイオスがスドウにお願いする。
「僕が解読した最後の一行に書かれていたこと。それはナデューサの三線が石にしてしまった伝説の武具は、一流の奏者によってもう一度弾かれることによって、その光を取り戻す。ということだ。」スドウが落ち着いて話し出す。
「どういうこと?」サクーンは鈍い。
「そ、それって。」フィロヤの表情が明るくなる。
「伝説の武具を元通りに戻すことが出来るということさ。」スドウが答える。
「なるほど。使えなくするだけではなく、元に戻すのも含めて、初めて真の安全装置だと言えるもんね。」マサーが納得する。
「それで、一流の奏者はどこにいる?」サクーンが辺りを見回す。
「言っとくけど、俺は三線なんか弾けないよ。」トゥーマコが首を振る。
「俺も。俺たちのメンバーにはいないんじゃん。」ヤラキが困る。
「大丈夫だ。その為の助人は僕が連れてきた。」スドウは胸を張る。そして、スドウと一緒にやってきた男が、前に出る。
「え〜っと、マサカーズって言います。よろしく。」痩せ細った男は、煙草を燻らせながら、無愛想に挨拶をする。
「マサカーズ君は八州のハカータ出身で、ギターという西洋の楽器を弾くのが上手いと、大学で有名なんだ。」スドウはマサカーズを紹介する。
「え、ダメやん。もし弾けんかったらどうするんすか?」ヘイオスが冷静にスドウに突っ込む。
「いや、なんとかなるかな〜っと。」スドウは苦笑いだ。
「いやいや!しかも、うちなんちゅじゃないのに、上手く弾けるんですか?先生っ!」フィロヤがスドウを追い込む。
「……すまない。僕の知り合いに三線を弾ける人がいなくて。」スドウはしょんぼりする。
「ここまで来たら、もうしょうがない。ここはマサカーズさんに賭けよう。奇跡を起こすのは俺たち自身の諦めない心だ。」トゥーマコがみんなに語りかける。
「上手くやらなきゃ、俺の故郷も無くなるんだ。絶対に上手く弾いてみせるさ。」マサカーズがやる気を見せる。
「よし!マサカーズさんに任せよう。」ヤラキが明るく音頭をとる。
ヘイオス、サクーン、マサー、フィロヤも了解する。
「それで、ナデューサの三線は?」スドウがナデューサの三線を探すが、見当たらない。
「もしかして…。」サクーンは目を細めて、ファットバギーの背後を見る。倒れているセイゴンの横に、ナデューサの三線を見つけた。
「最悪の場所にあるね。」フィロヤが唖然とする。
「けど、あれを使わないことには、どうしようもないんや。取りに行くしかないで。」ヘイオスが話す。
「そうだな。誰が取りに行く?」ヤラキが相談しようとした、その時だった。
「もう待てない。お前らは皆殺しだ!」ファットバギーが吠える。ファットバギーが痺れを切らそうとしている。
「もう少しだけ良いから、待ってくれん?」ヘイオスがファットバギーにお願いする。
「ダメだ。俺は退屈するのが苦手なんでな。お前らを殺して、ウォキナワを海に沈める。」ファットバギーは悪どく笑う。
「くそ!時間が無い。」マサーは剣を握る。
「けど、時間稼ぎは出来た。さっきより、体が動くぞ!」サクーンは体に力が入るのを感じる。
「ほんまや!よし、こうなったら、俺とトゥーマコ、ヤラキ、マサーでファットバギーに斬りかかって時間を稼ぐ。サクーンとフィロヤはその隙にナデューサの三線をとってきて、マサカーズさんに渡すんや!」ヘイオスが提案する。
「良いね。乗った!」マサーがヘイオスにナイスアイディアと合図を送る。
「わかった。サクーン、フィロヤ、任せたぞ。」トゥーマコは剣を構えた。
「わかったよ!やってやるぜ!」サクーンが大役を買った。
「俺に任せろ!」フィロヤもやる気満々だ。
「けど、どれだけ時間が稼げるかわからないから、全力で走ってくれよ」ヤラキが二人に声をかける。

「さぁ、これで終わりだ!」ファットバギーが六人に向かって歩を進める。

「よし、行くぞ!!」トゥーマコの掛け声で、全員一斉に走りだす。

命運をかけた最後の作戦に、六人が挑む。



忍耐



トゥーマコ、ヘイオス、ヤラキ、マサーは、ファットバギーに向かって走りだす。サクーンとフィロヤもそれに続いて駆け出そうとした。しかし、スドウに呼び止められる。
「待ってくれ。闇雲に行っても、この作戦がファットバギーにバレたら、全てが終わりだ。四人のためにも、回り道になってしまうが、ここの路地から回り込んで取りに行ってくれないか?そうすれば、ファットバギーの視界に、君たちの姿は映らない。」スドウは回り道をサクーンとフィロヤに教える。
「はっきり言って、見つかったときに逃げる自身ないんで、そのほうが全然良いです。」サクーンは大賛成だ。
「俺も自信無し。ここは確実に取りに行こう。」フィロヤも賛成だ。
「先生、道を教えてください。」サクーンがスドウに回り道を教えてもらう。
「よし、行こう。」フィロヤがサクーンに声をかける。
二人は四越の裏を抜けて、ファットバギーの背後に回り込む。
一方、四人は囮となり、ファットバギーに斬り掛かる。だが、刄はタレパンダに弾かれてしまう。
「馬鹿が。そんなもの、俺に効かないのがわからないのか?」ファットバギーは弱いものいじめを楽しんでいる。
「この野郎っ!」ヘイオスは大きく剣を振りかぶり、ファットバギーに叩きつける。だが、剣は凄まじい音を起てて、折れてしまった。
「なっ!?」ヘイオスは驚いて、声が出ない。
「お前はもう死ね。」ファットバギーは頬を膨らます。何でも溶かすヨダレを、ヘイオスに至近距離から掛ける気だ。
「やらせるかっ!」マサーがファットバギーに後ろからタックルを喰らわす。
「うぉっ!」ファットバギーはよろめき、ヨダレを外した。
「大丈夫か、ヘイオス?」ヤラキはヘイオスに肩を貸す。
「手がまだ痺れとる。なんちゅう硬さや。」ヘイオスはタレパンダの硬さを、改めて実感する。
「まだまだこれからさ!」トゥーマコがファットバギーに斬り掛かる。しかし、ファットバギーに腕で剣を弾かれる。トゥーマコが吹っ飛ぶ。
「なんていう拳圧なんだ。直接当たっていないのに、ここまで吹っ飛ばされるなんて。」トゥーマコはファットバギーのパワーに舌を巻く。
「お前らには失望した。あれだけ時間を与えてやったのに。」ファットバギーは残念がる。
「俺たちだって、そう簡単にはやられないぞ!」マサーがファットバギーに返す。
その時だった、ファットバギーの後ろに回り込んだサクーンとフィロヤが、無事にナデューサの三線を回収する。
二人は無言で、ファットバギーにバレないように、回収成功のジェスチャーを送る。

四人が笑顔になる。
「あと、もう少しだ。」ヤラキがつぶやく。
「あぁ、あと少しの辛抱やで。」ヘイオスが笑う。
「絶対負けられないね。」マサーも笑う。
「な、なんだ?いきなり笑いだして。ついに頭がおかしくなったか。なら、そろそろ引導を渡してやろう。」ファットバギーは事態が理解できていない。

トゥーマコは、親指を立てて、右手で了解の合図をサクーンとフィロヤに送る。二人はトゥーマコの合図を確認し、再び裏道を疾走する。

「なんのつもりだ?」ファットバギーは、ナデューサの三線回収に成功した二人に合図を送るトゥーマコに尋ねる。
すると、トゥーマコは立てた親指を半転させ、下に向ける。
「散々俺たちにやってくれたが、死ぬのはお前だファットバギー。」トゥーマコが宣戦布告する。
「調子に乗りやがってっ!」ファットバギーは頭に血が昇る。
ファットバギーは怒りを四人にぶつける。
四人は、ファットバギーの猛攻から必死に耐えた。
サクーンとフィロヤが、スドウとマサカーズのもとに辿り着く、わずか数分が、とてつもなく長く感じた。ファットバギーの攻撃は、全て一撃必殺の威力だ。両腕から振るわれる怪力、何でも溶かすヨダレ。攻撃自体は大振りだが、疲弊した四人はぎりぎりで避けるのが精一杯だった。

「こいつら…!当たれ!当たりやがれっ!!」ファットバギーがイライラする。

だが、反撃の時は来た。四人を称えるように、一筋だった光は、まばゆく輝く大いなる光に変わる。

サクーンとフィロヤが、ナデューサの三線を持ち、無事にスドウとマサカーズのもとに辿り着く。

「マサカーズさん…、これを…。」マサカーズにナデューサの三線を手渡すと、サクーンはその場に倒れる。こんなに一生懸命走ったことはないからだ。呼吸が上手く出来ない。
「もうダメだ〜。動けない。」フィロヤもその場に倒れこむ。
二人は必死に自分たちの役目をやりきった。
「よし、あとは任せた。」スドウはマサカーズに託す。
「わかりました。自己流っすけど、一生懸命弾きます。」マサカーズは銜えていた煙草の火を消す。そして目を瞑り、一呼吸おいて、ナデューサの三線を弾き始めた。

国際通りに、美しい音色が響き渡るのだった。



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