私はアメリカの農村医療の実態を見る機会を数回もったが、 アメリカのように高度の技術が発達し、しかも自由競争のさかんなこの国では、 専門技術主義に陥っているものとばかり思っていた。 ところが、案に相違して、プライマリー・ケアの普及に力を入れていたのである。 周知のように、これを行なう第一線医を「家庭医」(family physician) と呼ぶのであるが、卒後の特別研修3年を経てから受けねばならぬ American Board of Family Practice の資格試験の問題集を見せて貰って たいへん感動した。 非常にpractical な問題ばかりで、個々のcase についての応急処置から、 社会的行動を考えてのアドバイスやカウンセリングなど、具体的なものばかり。 general な、そして、comprehensive な知識が要求される質問であった。 かつてのgeneral practioner に求めたものとは質的に違うようである。 Medicine というよりはHealth といった方がいいようなワイドな医学の内容であった。 しかも、この資格試験は7年に1回ごとに改めて行われるという。 ところが、この資格をもった医者が、すでに一万人も、アメリカ各地域の 第一線で実際に活躍していると聞いて、驚かざるをえなかった。