連帯オール沖縄・東北北海道コミュの芝田進午の人類絶滅装置体系との闘争

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　櫻井　智志
　芝田氏は１９７６年度から広島大学に招聘され、総合科学部で核廃絶問題を重点として研究を積み重ねた。一方、文化論の見地から、反核文化を幅広い領域にわたって実証的に論じている。反原爆文学、反原爆芸術などかなりの掘り起こしを推進した。声楽家のご夫人芝田貞子さんの尽力も得て、反原爆音楽の発掘もおこなった。東京と広島で、１９８０年から十年間ノーモア・ヒロシマ・コンサートを毎年８月６日前後に開催し続けた。１９９５年には被爆５０年目にあたって、広島と東京でコンサートを開催された。
　
　核廃絶についてのテーマの研究の代表的著書としては、『現代の課題　Ⅰ　核廃絶のために』(1978年）と『核時代　Ⅰ／思想と展望』『核時代　Ⅱ／文化と芸術』（ともに１９８７年）とがある。この時期、約十年間は、アメリカによってヨーロッパに戦略核兵器が配備されたことに対抗して、ヨーロッパから始まり世界的に反核運動が燎原の火のように広がった時代であった。

　芝田氏は、核兵器は単なる兵器ではなく、「人類絶滅装置体系」と呼ぶべきであると主張して言葉のマジックを批判し、言語を通じて事態の正しい認識をめざすように言語論の見地からも問題を提起した。

　歴史論からも、核兵器問題が歴史を画すると認識し、ヒロシマ、ナガサキに原爆が投下された１９４５年を境目とする「ヒロシマ紀元」を提唱した。歴史家や社会科学者との生産的論争を通じて、やがて「核時代」概念を使用するようになった。
　また、「ひばくしゃ」を「被爆者」にとどまらず「被曝者」、さらには全人類としての「ヒバクシャ」「ＨＩＢＡＫＵＳＴＡ」と位置付けていった。このような社会的存在論としても芝田氏は理論を創造的に発展させていった。

　このような理論の創造性は、たとえば『核時代Ⅰ／思想と展望』の目次構成を見ると、よくわかる。

　　　　　　第１部　核兵器廃絶とマルクス主義
　　　　　　第２部　核時代の新しい哲学
　　　　　　第３部　核時代の歴史哲学
　　　　　　第４部　核時代と人類生存のための運動
　　　　　　第５部　核時代の対話の発展のために
となっている。
　ここで注目すべきことは、核時代に核兵器を廃絶しなければ、すべての思想も思想家も哲学者も、すべての文化と生存とが、生に対する〈死〉でさえもない絶滅にいたる危険な現実を指摘している。核を廃絶する哲学こそが新しい哲学であるし、そのような哲学としての与件をマルクス主義哲学が備えるように自己変革する必要性を力説している。
　このような人類生存のための運動や、このような核時代に人類が存続するための理性的対話について、多岐にわたって論じている。