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連帯オール沖縄・東北北海道コミュの「世界」(2012年5月号)編集後記岡本厚

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 昨年暮れに64歳で亡くなった韓国の政治家・金槿泰(キムグンテ)氏は、1970〜80年代、軍事独裁と激しく闘った学生運動の闘士であった。指名手配、逮捕、拷問の後、長期間にわたって投獄された。民主化後、国会議員となり、盧武鉉(ノムヒョン)政権では保健福祉部長官、ウリ党党首を務め、一時は大統領候補にも擬せられた人である。
 その金氏に、私はソウルで2回会っている。氏は、二度とも私の手を固く握り、「『世界』は韓国の民主化に大きな役割を果たしました。私たちは決して忘れません」と語ってくれた。
 また2002年、光州を訪ねたとき、軍政時代の70年代に無実の夫を処刑された高齢の女性から、「私は『世界』の1974年×月号に出ました」と感謝の言葉をかけられたこともある。当時、「世界」を手に取ることもできなかった (軍政時代、「世界」は韓国では禁書だった) 人々の脳裏に、「世界」の名が刻まれ、しかも30年近くも記憶されていたことに、驚きと感動を覚えずにはいられなかった。
 こうした隣国の人びとの「世界」に対する信頼は、二度と戦争を引き起こさないという決意と、かつて侵略したアジアの人びととの和解と対等な関係を希求した、いわば〈戦後〉の精神の最善の部分を継承しようとした、吉野源三郎以下の「世界」編集部の半世紀以上に及ぶ“持続する志”が築いてきたものだ。
 先日、ニューヨークで開かれた非公開セミナーに参加した折も、パーティで話した北朝鮮の外交官 (6者協議代表) は、「世界」の存在をよく知っていた。
 自慢して言うのではない。月刊誌という、テレビや新聞と比べ、小さいと思われるメディアでも、志次第では、なお大きな役割を果たしうると言いたいのである。「世界」は、朝鮮半島との関係を大切にしてきた。それは日本自身のためにそれが重要なことだと考えてきたからだ。
 韓国の野党の政治家・金大中(キムデジュン)氏と友情で結ばれ、一方で北の金日成(キムイルソン)主席からも信頼を得ていた故 安江良介・元「世界」編集長は、よくこう言っていた。「朝鮮半島の問題に関わるのは、朝鮮半島の人びとのためにではない。日本自らの内に正義を取り戻すためだ」と。
 朝鮮半島との関係を問うことは、即ち日本の近代のあり方を問うことである。日本社会に染み付いた強固な帝国意識、冷戦意識を問い、それと闘うことである。同じことは沖縄、福島についても言える。
 こうした志を受け継いで、私も編集長として、16年間、走り続けてきたが、本号をもって交代することになった。読者、著者の皆様に心からの感謝と至らなかったことへのお詫びを申し上げたい。
「世界」は思われているより、存在として大きい。しかし、日本社会の帝国意識、冷戦意識を克服するためには、まだあまりにも小さいのかもしれない。
 本誌に97年8月号から始めた「ドキュメント・激動の南北朝鮮」は、日朝国交正常化がなされたら終了しようと考えていた。当時の金大中政権の対北政策もあり、せいぜい数年と考えていたが、とんでもない、マラソン交渉といわれた日韓交渉でも正常化まで16年だったのに、20年以上が経って、未だに見通しすら立っていない。これは極めて異常なことであり、それが異常なことだという自覚すらない日本社会はさらに異常である。
 本誌の課題はなお大きい。“持続する志”を継いでくれるのは、これまで副編集長として私を支えてくれた清宮美稚子。本誌初めての女性編集長である。

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