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眼鏡を外すと線が見える。コミュの蛇の章/29

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 森に広がるのは完全な静の世界。
 動くモノの気配は微塵も感じられない。
 冷たく吹く風が梢を奏でる。
 満ちていくのは確かな殺気。
 そう、森への侵入者である僕たちを狙う確かな殺気だけがこの空間を支配していた。
 今はこちらから仕掛けることはできない。敵の正体が把握できない今は。
 感覚を研ぎ澄ませ、周囲の変化に即座に反応することだけを念頭に置く。
 知らぬ内、僕とみこは互いに背中合わせの状態になっていた。
 手にしているのは昨日蔵で手に入れた黒い棒。
 そして、無限とも思えた静寂の時は唐突に終りを告げた。
 ザザザザ!!
 頭上から、それこそ豪雨のような激しさと共に無数の蛇が落下してきた。
 「よけろ!!」
 僕の怒号にあおられ、みこは前方へと飛び退いた。
 そして、僕は前方に飛び込み回転をしながら手にしていた棒を一気に振り抜く。そこに現れたのは暗い森の中であってもはっきりと見て取れる鉄色の光。神々しいとは言えない。しかし、鈍い光を放つそれがこの場において最も美しいモノの一つであることに変わりはなかった。
 脇差し。そう呼ばれる短めの日本刀を体勢を立て直しながら順手に構えた。
 振り返って見ると、さっきまで僕とみこがいた場所では無数の蛇が蠢きひしめき合いながら巨大な粘土細工のように何かの形を成そうとしていた。
 ぬめる水がまとわりつくような気持ちの悪い音をたてる蛇の向こう側で、みこは生理的な嫌悪感を覚えたのか口に手をあて鋭い目つきで黒い物体を睨みつけていた。
 蛇の群れは次第にその蠢動を緩めていく。
 現れたのは「人」だった。さっきまで蛇の群れでしかなかったソレは今や完全な人の姿をしている。しかし、虚空をさまよう目には光が無い。肌は土気色で死者のそれと変わらない。手足もだらりと垂れ、まるで操り人形のようだ。いや、事実「ソレ」は操り人形だったのだろう。
 虚ろな目をしたままその人型は僕へと突進してきた。
 走るという動きではない。地面を「滑る」ようにして動くそれに一瞬たじろぎ反応が遅れた。
 「司音君!」
 はっとして手にもった脇差を迫り来る敵の頭上めがけて斬りつける。
 ザシュッ!
 確かに手ごたえはあった。
 しかし、目の前の敵は体を左右に両断されたまま勢いを殺すことなく右拳を振り上げ僕へと殴りかかろうとする。
 「起きなさい!咎焼き(とがやき)!!」
 迫り来る人型の向こう側に黒い光を見た。
 「かわして!司音君!」
 みこの声に反応して右側へと思い切り飛びのいた。
 それと同時に僕へと襲い掛かろうとしていた人型の上半身は見事に吹き飛ばされていた。残されたのは人型の下半身だけ。
 呆気にとられて言葉が出ない。今、目撃したばかりの異常な破壊。しかし、それよりも何よりも僕が呆気にとられているのは別の所だ。
 10mほど離れた所にいるみこはその手に巨大な黒い箱のようなものを持っていた。
 いや、もっと的確な表現がある。確かにみこが持っているのは箱だ。それも人一人がすんなり納められるほど大きな箱だ。そして、その箱が本来ならどう扱われるのかも僕は十分に理解している。
 死者を収めるべき聖櫃。棺桶だ。
 映画などに描かれる吸血鬼が眠りにつく際に用いられるような西洋風の黒い棺。漆黒の宝石が中央に埋め込まれた金色の十字架をふたの中心に飾られた巨大な桶をいともたやすく立て掛けて「大丈夫?」という表情を向けてくれる我らが生徒会長。
 想像できるだろうか?目の前にはゴシック&ロリータの服装に身を包んだ小柄な少女が棺桶を持って微笑みかけている。
 一体どこのホラー映画だ。いや、コレはコメディなのか?
 アレがこいつの武器だということは分かる。
分かるんだが・・・いかんせんソレはどうなんでしょうか、蹈鞴さん?
 しかし、そんなこちらの心中を周りの敵は察してくれないようだ。下半身だけが残された人型に蛇が群がり再び人の形を成していく。
 そして、周囲にはそれと同じような人型が19体。
 絶望的な状況であることに間違いはなさそうだ。

コメント(1)

蛇の章/30
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