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Eggs of story -短編小説広場-コミュの三題噺 【暗条】 同一御題「青リンゴ」「ドクター」「赤点」

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診察室。蛍光灯が照らす部屋の中には女医と男性が向き合って座っていた。
「これ、何か分かりますか?」
白衣を着た女医が患者らしき男性に青リンゴを見せながら、質問を繰り返す。
「リンゴです」
短くペンを走らせる音だけが室内に響く。
「正解。では、このリンゴ赤いんだけど、分かる?」
首を振る男性。再び、ペンを走らせる。
薬指の指輪がペンの動きに合わせて冷たく光る。
「……先日も確認しましたが、病状の説明は私からします」
おねがいします、とだけ言い頭を下げてみせる男性。
内線で看護士を呼び、看護士と打ち合わせを始める女医。
別の看護士に付き添われ、病室へ男性は戻る。



男性の両親が女医からの説明を受けるため、診察室に居た。
「つまり、患者は色を認識できていません。我々は赤点、黄点などと呼びますが、ここの機能が働かないことは非常に稀な症状で……」
「先生」
予期できていた事だったのか、女医は説明を止め、両親の言葉を待つ。
「説明はいい、理解できないですから……それより、いくら頂けるのですか?」
「お子さんを研究のために提供して頂けるのですね」
「ですから!…先日、電話でもお話した通り、説明は要らない。いくらになるんです、アレは!」
父親は立ち上がり、父親の荒げた声は、部屋に反響し、すぐ掻き消える。
患者などが叫び、混乱することは良くあること。何の『異常』も無かったように周りの看護士達は自分達の作業を進める。
「希望金額…に、少しですが上乗せすることが出来ました、
お受け取りください」
机の引き出しの中から、封筒を取り出し、渡すと中身を確認するため、
椅子に腰を落ち着かせる。
母親も一緒になり、封筒の中身を確認。指折り0の数でも数えているのだろう。
いそいそと、浅くお辞儀をしながらも、診察室を後にした両親の姿を見送ると、
女医は窓越しに空を仰いだ。



「俺、ドクターに、医者になりたいんです。貴女みたいな」
分かっていたはずだった。この男性の両親が亡くなり、
自由の身になれば、傍に居る者に憧れるのは当然。
「色が分からないんじゃ、無理」
子供に言い聞かせるように、冷たくあしらう。
薬指の指輪を右手で撫で回す。
「最初のリンゴ……青だったでしょ」
女医はうつむき、両手を顔にあてた。
最初から決められていた二人の約束事。
けど、いつか来ると分かっていても、この生活が続くと思っていた。
「指輪、外さないで居てね……帰ってくるから」
女医の黒い髪をそっと撫でてから、身支度を整える。
押し殺しきれない泣き声。艶っ気も無いけど、今この時だけは。
「いってらっしゃい」
笑顔で彼を見送った。

コメント(4)

嘘を付いて二人でいる時間を増やしたのかな。だとしたら女医さんはなんというツンデレ。

萌えキャラ作成お疲れさまです。
彼の夢を叶えてあげたくて、彼との事前の打ち合わせにより、
彼と両親を引き離しました。

……けど、こういう場合ってフラれませんか?
報われることは無いよ、みたいな。(純愛として見れないw
結局女医にとっては得たいものを得られない選択は・・・うーん純愛?ある意味真の献身?

雰囲気出てていいっすねぇ♪
真の献身ってことで。この女医さんには幸せになって欲しいのです。

けど、起承転結の転部分を抜いたのは、
秘して女を美しく見せたいからだったりします。

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