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西瓜糖@阿佐ヶ谷 コミュのカネィギ・ダン / Dan Kanagy 展 Horizons: まなざしの彼方

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驚くべき着実な前進。何事もないかのようにテクテクと歩み進む。この長年東京に暮らす五十代のアメリカ人ほど健康な者を私は知らない。

それはもちろん、頑丈な肉体や強靭な精神を所持しているということではなくて、その生活の仕方、考え方、つまりは在り様を称してのことだけどね。

知り合ってすでに十余年。この間、頻繁に持たれた彼との会話は、今に至るまで私にとって刺激的な時であり続けている。彼の言語能力及び理解力の高さに依存することで心置きなく垂れ流される私の稚拙な言葉の群れは、いつのまにか聞き手によってロジカルに組上げられてゆくんだ。己の言葉が力を得るという錯覚に陶酔して、私は飽くことなく語りに語る。

そう振り返れば、私の口をついた言葉達は語らせられているにすぎないのかもしれず、半分は彼が語っているのだよと言ってもいいのかもしんないな。対話とは元来そうしたものであろうけれども、そうそう相手に巡り会う機会があるわけでもなく、だから彼は私にとって貴重な対話者なんである。

そんな彼の展示も早5回目になるらしい。回を追うごとの絵に描いたような着実な歩みは驚嘆に値するのだけれど、それでもその都度なんだかんだとこちらの要望ばかりぶつけることを繰り返してきたような気がするなあ。しかし今回はもう不満が浮かばない。語弊があるかもしんないけど、作品に成ったという印象なんだ。これまでのが作品ではなかったと言うつもりはないのだけど、それでも敢えてそう言いたい気分なんだな。そのくらいに圧倒的だと思うわけさ。

一見なんでもない風景なのだけれど、観る者にほんの少しの注意深さがあれば、その異様さに気かずにはおれないだろう。それは自律神経を柔らかい布でそっと逆撫でするような、そんな写真だ。鑑賞者は視線を安定させることを許されず、だから近づいたり離れたりキョトキョトと落ち着かない挙動不審へと誘われることになる。

こんな公然と神経症的な何でもない写真の作品化を可能にするのは、健康な目をおいて他は有り得ないだろう。私には作品が彼の健康を裏付けているとさえ思える。

ダン カネィギは、ここに至って己の健康を振りかざすことに成功したんだ。健康の使い方を会得したのかもしれないなあ。

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