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名作を読みませんかコミュの源氏物語  124

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コミュ内全体

 雪のたくさん積もった上になお雪が降っていて、松と竹がおもしろく変わった個性を見せている夕暮れ時で、人の美貌びぼうもことさら光るように思われた。

 「春がよくなったり、秋がよくなったり、始終人の好みの変わる中で、
  私は冬の澄んだ月が雪の上にさした無色の風景が身に沁しんで好きに思われる。
  そんな時にはこの世界のほかの大世界までが想像されて、
  これが人間の感じる極致の境だという気もするのに、
  すさまじいものに冬の月を言ったりする人の浅薄あさはかさが思われる」

 源氏はこんなことを言いながら御簾みすを巻き上げさせた。

 月光が明るく地に落ちてすべての世界が白く見える中に、植え込みの灌木かんぼく類の押しつけられた形だけが哀れに見え、流れの音も咽むせび声になっている。

 池の氷のきらきら光るのもすごかった。

 源氏は童女を庭へおろして雪まろげをさせた。

 美しい姿、頭つきなどが月の光にいっそうよく見えて、やや大きな童女たちが、いろいろな袙あこめを着て、上着は脱いだ結び帯の略装で、もうずっと長くなっていて、裾すその拡ひろがった髪は雪の上で鮮明にきれいに見られるのであった。

 小さい童女は子供らしく喜んで走りまわるうちには扇を落としてしまったりしている。

 ますます大きくしようとしても、もう童女たちの力では雪の球たまが動かされなくなっている。

 童女の半分は東の妻戸の外に集まって、自身たちの出て行けないのを残念がりながら、庭の連中のすることを見て笑っていた。

 「昔中宮ちゅうぐうがお庭に雪の山をお作らせになったことがある。
  だれもすることだけれど、その場合に非常にしっくりと合ったことをなさる方だった。

  どんな時にもあの方がおいでになったらと、残念に思われることが多い。
  私などに対して法のりを越えた御待遇はなさらなかったから、
  細かなことは拝見する機会もなかったが、
  さすがに尊敬している私を信用はしていてくだすった。

  私は何かのことがあると歌などを差し上げたが、文学的に見て優秀なお返事でないが、
  見識があるというよさはおありになって、お言いになることが皆深みのあるものだった。

  あれほど完全な貴女きじょがほかにもあるとは思われない。
  柔らかに弱々しくいらっしゃって、
  気高けだかい品のよさがあの方のものだったのですからね。

  しかしあなただけは血縁の近い女性だけあってあの方によく似ている。
  少しあなたは嫉妬しっとをする点だけが悪いかもしれないね。

  前斎院の性格はまたまったく変わっておいでになる。
  私の寂しい時に手紙などを書く交際相手で敬意の払われる、
  晴れがましい友人としてはあの方だけがまだ残っておいでになると言っていいでしょう」

 と源氏が言った。

 「尚侍(ないし)のかみは貴婦人の資格を十分に備えておいでになる。
  佻けいちょうな気などは少しもお見えにならないような方だのに、
  あんなことのあったのが、私は不思議でならない」

 「そうですよ。
  艶えんな美しい女の例には、今でもむろん引かねばならない人ですよ。
  そんなことを思うと自分のしたことで人をそこなった後悔が起こってきてならない。

  まして多情な生活をしては年が行ったあとでどんなに後悔することが多いだろう。
  人ほど軽率なことはしないでいる男だと思っていた私でさえこうだから」

 源氏は尚侍の話をする時にも涙を少しこぼした。

 「あなたが眼中にも置かないように軽蔑けいべつしている山荘の女は、
  身分以上に貴婦人の資格というものを皆そろえて持った人ですがね、
  思い上がってますますよく見えるのも人によることですから、
  私はその点をその人によけいなもののようにも見ておりますがね。

  私はまだずっと下の階級に属する女性たちを知らないが、
  私の見た範囲でもすぐれた人はなかなかないものですよ。

  東の院に置いてある人の善良さは、若い時から今まで一貫しています。
  愛すべき人ですよ。
  ああはいかないものですよ。

  私たちは青春時代から信じ合った、そしてつつましい恋を続けてきたものです。
  今になって別れ別れになることなどはできませんよ。
  私は深く愛しています」

 こんな話に夜はふけていった。

 月はいよいよ澄んで美しい。

 夫人が、


氷とぢ岩間の水は行き悩み空澄む月の影ぞ流るる


 と言いながら、外を見るために少し傾けた顔が美しかった。

 髪の性質たち、顔だちが恋しい故人の宮にそっくりな気がして、源氏はうれしかった。

 少し外に分けられていた心も取り返されるものと思われた。

 鴛鴦おしどりの鳴いているのを聞いて、源氏は、


かきつめて昔恋しき雪もよに哀れを添ふる鴛鴦をしのうきねか


 と言っていた。

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