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経済読書会−東京経済政策研究会コミュの有識者討論会 尾崎弘之氏「環境ビジネスの現在と未来」 活動報告

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東京経済政策研究会(有識者との討論会)2011年11月20日(日)開催の活動報告です


テーマ:環境ビジネスの現在と未来

参加人数:37人
主な参加者属性、職業:国家公務員、金融機関、ウェブ会社経営、会社役員、IT会社、シンクタンク勤務、メーカー勤務、金融機関勤務、大学教員、学生、ジャーナリストetc

流れ:
・司会役の岩本から、尾崎弘之先生のご経歴と研究会の趣旨を紹介(5分)。
・尾崎弘之先生より、テーマ:環境ビジネスの現在と未来について講演(70分)
・尾崎弘之先生と質疑応答(5分)
・休憩、名刺交換(5分)
・5グループに別れ、事前に用意した論点に沿って、尾崎先生も交えて討論(50分)
・各グループのファシリテーターより討論の結果を発表(5分)
・尾崎弘之先生より講評(5分)
・懇親会


尾崎弘之先生の講演概要:

1.米国と中国の環境ビジネスの現状
・米国のシェールガス革命、中国の第20次5カ年計画などに絡めて、両国の環境ビジネスの現状の紹介があった

2.環境ビジネスの全体像
・昔の環境ビジネスはコストを意識する必要がなかった(全額公的補助)が、最近の環境ビジネスではリターンとコストを意識する必要が出てきた。公的資金は依然投入されているが、黎明期のテイクオフのための一時的な資金という位置づけ。
・グリッドパリティという概念が重要となっている。
・環境ビジネスは次のとおり分類される(90年代にOECDが整理)。
 エネルギー/リサイクル/空気浄化/農業/素材/物流/水・下水
 このうち、旧世代型の環境ビジネスは、リサイクルと空気浄化。現在の環境ビジネスは全てに広がっている。
・特に、エネルギー価格の高騰が、エネルギー関連の環境ビジネスの拡大のきっかけに(2000年前後の原油価格は13ドル/バレルと今から考えると驚く安さだった)

3.次世代環境ビジネスの全体像
・「エネルギー生産→貯蔵運搬→エネルギー消費」の流れの中で、上流(生産)と下流(消費)とが相互作用するようになってきたのが近年の特徴。上流と下流をつなぐものとしてスマートグリッドが位置づけられる。
・スマグリはIT、家電、住宅など複数の産業にまたがる分野。大きなビジネスチャンスがある分野として注目を集めている。
・グーグルが小型の電力会社を買収するなど、IT企業が下流側に降りてきているのが近年の特徴。

4.自然エネルギーについて
・太陽光のコストは46円/kwh。原子力の5‐6円、LNGの6‐7円に比べると圧倒的に高い。
・現在電力のベースロードを担っているのは原子力。その上でピーク需要を火力で調整している。出力が不安定な自然エネルギーではベースロードを担うことは不可能。今後、原発をなくす場合には、火力がベースロードを担うことになるが、現実的には困難。
・結論として、原発を自然エネルギーに代替するのは、様々な困難を伴う。

5.電気自動車について
・日本でもプラグイン電気自動車が販売され始めているが、電気自動車は分散型の電力システムとの相性がいいものなので、有効活用するためには現在の電力インフラを抜本的に変える必要がある。
・充電に手間がかかる、走行距離が短いなど、ユーザーへのメリットが少ない点も問題。
・昨年から量産車が販売されている(日産リーフ、GMシボレーボルト)。いよいよ社会実験が始まったという印象。
・中国では小型EVの普及が始まっている(農民車として利用)。また、タクシーやバスなど商業車への導入も進んでいる。

6.太陽光発電のバリューチェーン
・日本メーカーはセル(部品)の生産の部分に強みがあったが、近年急速にコモディティ化してしまった。その結果、中国のサンテックなどが、市場を席巻してしまっている。
・今後儲かるのは下流のプロジェクト開発の部分。この部分を担うのはゼネコン、工務店などになる。

7.バイオ燃料
・残さの廃棄が問題。ライフサイクルアセスメントでトータルの環境負荷を分析することが重要。
・ある研究結果によれば、LCAによりトータルとして環境負荷が小さいと判断されるものはブラジルのサトウキビだけ(廃棄物を発電に有効活用)。ほとんどのバイオ燃料はトータルでみると環境負荷が大きい。

8.スモールスマートシティ
・海外への輸出の可能性がある。
・今後は、原発輸出なみに、国際間での競争が激化するだろう。
・輸出を進めるためには、情報収集を行うゲートキーパーの存在が不可欠。ここを誰が担うかが問題。


議論:

ポイント1:そもそも環境を「ビジネス」として捉えることは適切であるのか。環境保護活動は、経済活動と対立するものではないのか。

(時間の都合上、議論は割愛させていただきました。)
 

ポイント2:電気自動車をどの分野で導入していくべきか

【岩本チーム】
・バス、電車など公共交通機関で導入を進めていくべき。
・都心では今後カーシェアが広がっていくと考えられるため、カーシェアで電気自動車の導入を進めてはどうか。
・日本のメーカーも小型EVを開発・販売し、過疎地の高齢者向けの車として供給してはどうか。

【高橋チーム】
・地方公共団体の公用車や企業での社用車で利用すべき。
・郵便局などは電動バイクなどを利用すべき。(エアコンの問題もない。)
・地方ではセカンドカーとしての利用はありえる。

【石渡チーム】
・大きなショッピングモールや病院での一人用の自動車や救急車などでの活用、ガソリンスタンドが充実していない地方での市場開拓が提案される一方で、緊急性をもった救急車に走行距離に不安を持ったEVは適切ではないかもしれないという指摘もあった。
・電気自動車がニッチな市場ではなく、国民全体を据えた市場に対応していくためには、消費者にとって電気自動車のメリットが見えづらいという意見があった。
・尾崎さんより、大量生産化によるコスト削減の恩恵を享受するためには数万から十数万台規模の生産が必要であり、EVの導入が進むカリフォルニアではハリウッド俳優を使ったプロモーションによって、消費者の購買意欲を高めることに成功したという話があった。

【戸辺チーム】
・JRが廃線になって公共交通機関の便が悪くなったところなど、地域内近距離移動に適している。
 (議論終了後に、ファシリテータから、「群馬大学工学部が中心となって、桐生市、館林市で一人乗りEVの社会実験が行われている」と紹介があった。)
・震災で忘れられている気配もあるが、CO2削減目標は依然として残っている。
 産業界のCO2削減は行き渡りつつあり、次は、家庭への削減が求められる。その気運が高まってくると、家庭ユースも広がる。
・[論点とは関係ないが] 充電時間を削減するために、電池モジュールを規格化すべき。そうすれば、電池モジュールを交換するだけで済む。

【槙野チーム】
・まずは小さなコミュニティで実験的に導入してみるのがよいのではないか。充電スタンドなどのインフラ投資も集中して行えるため。
・登場した当初の自動車は「馬無し馬車」と呼ばれていた。いま電気自動車にはまだ「自動車」という名前がついている。これでは自動車の利用方法に思考が縛られてしまうので、もっと自由な発想で使い方を考えたらどうか。
・原油高に伴ってランニングコストでは既に自動車のコストを下回っているので、将来のコスト利得を引き当てにして現在無利子のローンとして国から借りられたら購入が進むのではないか。


ポイント3:環境ビジネスがターゲットとすべき市場は、国内市場か、それとも海外市場(特に成長力の高い途上国市場)か。

【岩本チーム】
・今後の成長が見込める新興国市場をターゲットとすべきという意見が優勢。
・新興国に輸出出来そうなものとして、以下のようなアイデアが挙げられた。
 高効率な火力発電所/小型蓄電池(過疎地向け)/充電ステーションと小型電気自動車のパッケージ販売

【高橋チーム】
・導入のしやすさから考えると途上国をねらうのがいい。(ただしハイテクなものはまず自国で実績を作るべき。)
・途上国はクリーンエネルギーの技術ではなく、原子力とかの技術の方が魅力的なのでは。

【石渡チーム】
・先進国においては、完全とは言えないまでもエコシステムが整いつつあり、埋没費用となっているので、これより新たに環境ビジネスを展開していくのはやや難しいのではないかという指摘があった。
・一方、人口も多いため、環境の改善効果が大きい途上国を目指すべきという前提のもとで、途上国のニーズに適応したサービスを日本は提供する必要があるという意見があった。具体的には、停電が少ない発電や漏水を防ぐ水道技術が挙げられた。

【戸辺チーム】
・[企業で実際に環境ビジネスを経験された参加者から] 国内では、投資が回収できない。もうからない。日本の環境水準は既に高く、必要なくなってきている。海外しかない。
・国内では最先端を追求し、技術のかたまったパッケージは海外へ 展開するとよい。
・海外へ出ていくにせよ、初期立ち上げだけでなく、長期メンテナンスも含めてビジネスを考えるべき。

【槙野チーム】
・国内向け2人、新興市場向け4人
・新興国にインフラを輸出するには、まず自国内でオペレーションやメンテナンスのノウハウも蓄積する必要があるのではないのかということで、国内にまず投資するべきという声があった。
・新興国に持ち込むには政治性が強くなるので、政治リスクのない国内で実績を作るべきだという声があった。


ポイント4:今の日本でもっとも拡大が求められる環境ビジネスは何か。理由とともに議論してください。

【岩本チーム】
・復興の関連では、福島の木材や瓦礫を使った火力発電がありうる。
・航空機は電気では動かせない(燃料が必要)。航空燃料をバイオ燃料に代替していく余地があるのではないか。
・自治体への蓄電池の導入。災害時の電源として使えば、防災対策にもなる。
・ドコモの小型蓄電池については、10万円は高すぎるとの意見が太宗だった。

【高橋チーム】
・電気の供給がストップしても自力で対応できる準備しておくことが重要。(例えば六本木ヒルズは震災の際も影響がなかった。)
・踏むと電気が起きるという技術があるのでそういうものも利用していくのがいい。
・藻を栽培して燃料を作るという技術を農家保護とかとからめていくことはできないか。
・結局電気はためられないという問題を蓄電池で解決すべき。

【石渡チーム】
(時間の都合上、議論は割愛させていただきました。)

【戸辺チーム】
・太陽光、蓄電池、電気自動車、これらは日本がやらなくても、他国でも開発可能で、すぐにコモディティ化してしまう。
 微生物発酵のお家芸があるバイオに力を入れるべき。[1名]
・規制を緩和して、地熱発電を推進すべき。
・個々の要素ではなく、「スマートホーム」といったパッケージ、メカニズム、ソルーションで勝負すべき。
・[論点から離れるかもしれないが] "世界一エコなギャンブル場"

【槙野チーム】
・選択肢にあるなかでは蓄電池の開発が必要という意見が多かった。
・蓄電池ができれば太陽光の日照条件や風力発電施設の設置場所問題がなくなる。
・しかし過大な投資をし技術が陳腐化したときに太陽光のセルの二の舞を踏むことを懸念する意見もあった。


ポイント5:プチ政策立案
お題 スマートスモールシティを建設していくにあたって、どのような取り組みが必要であるか。

【岩本チーム】
案1:小規模自治体のSSC化
・日本のスマートグリッドのモデル事業は横浜市や豊田市など比較的大都市で行われているが、むしろ、地方の限界集落など、電力供給が非効率な小規模自治体でSSCを進めるべき。
・そうした取組は、今後途上国の農村にSSCを輸出する際のノウハウの蓄積ともなる。

案2:地底都市化
・地上と異なり、地下の温度は季節によらずほぼ一定。冷暖房による電力消費を抑えるために、建物を地下に埋蔵。
・そこまでしなくても、二階建の家を地上1階、地下1階にするなど。

案3:排出CO2の農業利用
・火力発電等で排出されたCO2をパイプラインでビニールハウス等に流し、農作物の生産に活用(オランダで実際に行われている)

【高橋チーム】
案1:シンボル化
 東京のどこかをSSCのシンボルにする。

案2:ODAを使った事業として途上国にSSCを作る
 途上国のどこかの都市をSSCのモデルにし、そこから広げていく。

案3:環境ビジネス企業認定
 環境ビジネス企業というような称号を国が企業に与えるようにする。

【石渡チーム】
・そもそも海外の現地に主に雇用を生み出すスモールスマートシティ(以下、SSC)が日本の国益や日本企業の利益に適うかどうかについて疑問がなげかけられた。その一方で、その設計・企画に関わったという意味では日本の利益に即するという指摘もあった。
・SSCを新興国に展開していくにあたって、ドバイなどといった豊かな新興国の都市とインドの農村などの貧しい新興国の都市には違った戦略が必要。
・また、海外にパッケージングとして売り込む成功例として、日本の一都市(横浜市港区など)を活用する提案があった。

【戸辺チーム】
・現在語られる意味では、スマートということを目指したわけではないが、筑波研究学園都市は、さら地からスモールシティを建設したと言える。その経験を踏まえると、「人間の生活とは何か再考すべき。」通常、都市というのは自律的に発展していく。筑波では、商業地域がある限界まで来ると成長が止まってしまった。都市計画にあった公園地区に達してしまったからである。---> 自由な発展を阻害しない。
・規制フリーの特区を作る。
・大企業だけではなく、中小企業にビジネスが広がり、労働が隅々まで広がるようにする。

【槙野チーム】
案1:中央指令団体を設置し、共通化や規格化を図る
・そもそも「スモール」とはどれくらいの規模なのか→例えば六本木ヒルズは一つの都市として完結しながら自前の発電施設を持っている。ビル単位ならば開発も容易なのではないか。→しかしビルごとに規格が乱立するとそれらをまとめた中規模のまち作りができなくなる→個々の開発はビル単位など小規模ですすめながら、同時に中間団体を設置し、そのような非効率をなくすべき。

案2:中間団体に営利的視点を持たせる
・将来的なインフラ輸出を考えると、開発途中のノウハウを蓄積することが必要→パッケージとしてオーガナイズできる業者(例:商社、鉄道会社、デベロッパーなど)が中間団体のとりまとめを行い、商品としてどのように仕上げるかという視点から関与する。

案3:環境意識やエネルギー問題の認識を市民間で共有できるような教育をする
・現状においてSSCを作ったとき、そこに真っ先に住み始めるのは環境意識の高い人だと思われる→そのような人が集まって作るエコなまち作りはきっと成功する。しかし、それでは汎用性に乏しい。
・どんな人が寄り集まってもSSCが成功するためには人びとの間に共通した環境意識やエネルギー問題の認識が必要であるため、学校教育や地域での教育活動を通じてそのような意識の通底を図っていることが必要である。


講評:
 今回は、尾崎弘之さんをお招きして、環境ビジネスをテーマに討論会を行いました。尾崎さんからは、自然エネルギーや電気自動車の普及を進めていくためには、様々な乗り越えるべき課題があることが指摘される一方、いよいよ社会実験のフェーズに突入したことも強調されました。環境ビジネスが今まさに転換点にあることを肌で感じることができました。
 参加者の皆さんと議論して感じたのは、分散型エネルギーは国内よりむしろ途上国と相性がいいことです。途上国では、先進国と異なり発送電のインフラが充実していないため、分散型エネルギーを導入することに経済合理性があります。日本企業が今後分散型エネルギーでイニシアチブをとっていくためには、国内市場のみならず新興国市場を見据えながらビジネスモデルの構築、研究開発を進めていくことが重要ではないかと強く感じました。
(岩本)

 今回は、尾崎さんより現在の中国事情を踏まえた環境ビジネスの話を頂きました。環境ビジネスを取り巻く環境はダイナミックに変化しつつあるという印象を受けました。
 また、環境保護活動を持続的に進める環境ビジネスの競争に対応するべく、日本としては民間企業の優れた技術力や企画力のみならず、政府の強いイニシアチブの必要性も痛感しました。
 その一方で、環境ビジネスにおいても製造業と同様にコモディティ化が進み、環境ビジネスが企業の収益になりにくくなってきているということやEVのように既存の製品に対するエコ商品の積極的なメリットを消費者が見出しづらいということも知りました。
 その前提に立つならば、環境ビジネスが先進国のみならず、貧しい新興国市場の消費者にも魅力的となるためには、より一層の環境に対する意識の充実が望まれると思いました。
(石渡)

 講師の尾崎弘之さんは、技術ではなく、経済、政策面から、環境ビジネス、エネルギー問題を丁寧に解説してくださいました。特に震災後の日本において感情的に語られがちなこれらの問題について、落ち着いた目で対処する態度を促されました。
 その際の、尾崎さんから提示されたキーワードが「グリッドパリティ」です。諸条件を考慮して発電コストが下回ったときに、再生可能エネルギーが既存エネルギーの代替手段になるというこの概念は、判断基準として重要になると感じました。
 このことは多くの人が感じていますが、一つの言葉に凝縮することにより、指標が鮮明になります。さらに、現在、国や立場により異なる意味をこめられる「スマートグリッド」についても適格な解説がありました。 分散型発電も含めて、避けて通ることのできないシステムであり、スマートグリッドへの取り組み方を熟慮すべきであると、改めて思いました。
 全体をとおして、バランスの取れた内容で、環境・エネルギーを冷静に考えるいい機会となりました。
(戸辺)

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