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経済読書会−東京経済政策研究会コミュの特別企画2 山田昌弘先生との討論会 活動報告

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テーマ:希望格差社会とその処方箋

参加人数:32人
主な参加者属性、職業:国家公務員、金融機関、ウェブ会社経営、会社役員、IT会社、弁護士、医師、フリーランサー、学生、ジャーナリストetc


流れ
・司会役の三四郎から、山田昌弘先生のご経歴と研究会の趣旨を紹介(10分)。
・山田昌弘先生より、テーマ:希望格差社会について講演(60分)
・山田昌弘先生と質疑応答(10分)
・休憩、名刺交換(10分)
・4グループに別れ、事前に用意した論点に沿って、山田先生も交えて討論(60分)
・各グループのファシリテーターより討論の結果を発表(15分)
・→二次会(交流会)


山田先生の講演要約
・『新平等社会 -「希望格差」を超えて(山田昌弘著)』を課題図書に、山田昌弘先生に希望格差社会について講演いただく。
・若者がとにかくリスクを取らなくなったことを指摘。彼らは、やる気がないのではなく、リスクをとって努力をすることの「割の合わなさ」を強く理解している。
・「既得権」に入るか、入れないかで決定的に人生が変わっていってしまうので、必然的に若者が保守化する。
・一方で、優秀だが既得権に入れない人(特に女性)は海外に行って帰って来なくなる。
・正社員になれば(正社員の妻になれば)安定、そうでなければ不安定という社会構造を変える必要がある。→各種提案




議論

論点1:希望格差の存在はそもそも悪いことなのか?
(主な意見)
【三四郎チーム】
・個々人は必ずしも希望をもつ必要はないかもしれないが、国全体としては、活力を生むために一定の希望が必要。
・「生きる意味」をもつためには、希望が必要になる。その意味で、幸福だけでは不十分。

【山田チーム】
・希望のモデルが画一的すぎるように思える。もっと多様な希望の形があるのではないのか。
・格差そのものは必ずしも問題ではないが、努力が報われないというのは問題であり是正されるべき。

【f_world21チーム】
・高齢者でも希望が必要ないかというと違うのではないか。残りの余生を自分の思い通りに過ごせるか、という希望があってこそ生きる気力が湧いてくる。
・希望と幸福は不可分ではないか。希望はないが幸福という状態はあまりないのではないか→例えば未来に対する希望はないが今が楽しい(今日食べた物がおいしい、今日好きな人と遊んで楽しかったなど)というのは「希望はないが幸せ」という状態かもしれない。
・希望は未来に対してもつもの、幸福はいま現在にたいして感じるもの。そのような観点から考えると希望を持つべきなのは若者で、幸福は今までがんばってきた中高年〜高齢者が(自身の成し遂げた成果などに対して)感じるもの。若者が希望をもてない社会はよくない。
・希望の格差というより、希望が持てない状態はよくない。

【Kwithcyチーム】
・「希望」は主観的で、その定義は難しいとの意見があったが、「個人が努力によって、望む一歩先への可能性がある、あるいは現状を維持できる状態」という案が大方の納得を得た。
・インドや中国などにおいては成長及び希望が期待できつつも、近未来に置いては、日本と同様な希望格差が表れるようになるなど世界的な状況に関しての指摘があった。
・男性は仕事とプライベートの相互両立が成り立ちやすいが、女性は片方を諦めるケースが多いという希望格差の特徴についての一歩踏み込んだ分析があった。



論点2:近年の希望格差の拡大は実感する具体的な事象について。また、希望格差の存在は、個人家族そして社会にどのような影響を与えているか。
(主な意見)
【三四郎チーム】
・「希望があるか否か」との質問に対しては、全員が「ある」と回答。
・希望がある理由としては、「自由だから」「選択肢がたくさんあるから」など。
・一方で、正社員の地位についていることは必ずしも希望にはつながらないとの意見が複数あった。
・格差の固定は、結婚格差や、能力ではなく肩書で評価される仕組みに感じられる。

【山田チーム】
・「希望があるか否か」との質問に対しては、一人を除き全員が「ある」と回答。唯一希望が「ない」と発言したのが最年少の学生であったことが象徴的。
・希望が「ある」と答えた人の殆どが、社会状況は有利ではないが、自分が乗り越える自信があるという理由であった。
・現代の社会で、希望をもつためには、自分自身を信頼できることが重要である可能性が高い。
・一方で、現代の社会状況は多くの人が閉塞感を感じ行動力が減退しているため、「動く人」にとっては競争が少なく、行動しやすいという意見もあった。

【f_world21チーム】
・希望は持ってはいるが、少なくなってきている。そして希望を保つための努力が大変。たとえば就職・転職をするさいに未来に対する希望(希望の会社・部署に所属されるか、活躍しつづけられるかといった希望)を保つための努力が大変。
・特に若者(学生)の新卒就活が近年大変。2000年前後の就職氷河期の頃と比べても大変そう。そういった意味で、近年の若者はなかなか希望がもてない状態ではないか。
・希望格差は縮小していると感じることもある。たとえば1998年に日本で起きた金融危機以降、日本の大企業が多数潰れた。また会社が潰れなくても昇級昇進が見込めない人が多数おり、正社員の立場は下がってきている。そういう意味で今まで上にいた人が下がってきているので格差はむしろ縮んでいる。

【Kwithcyチーム】
・機会均等法世代である女性は、年を重ねていくうえで「見えない差別」を経験し、それを見た若い世代の女性たちは希望格差を感じているという意見があった。
・所属する大学によって、人生観や職業観において希望の格差が顕著になるという話も出た。
・上の意見とは別に、今の若い人たちは希望にもとづいたハングリー精神が足りないのではという意見に対して、彼らは現実味が少ない希望を持つことを諦め、社会貢献活動といったフィールドにその希望と活躍の場を見出しているのではないかという意見のやり取りもあった。



論点3:今後、日本において格差はどうなっていくか。
(主な意見)
【三四郎チーム】
・グローバル化が進むのは間違いないため、所得格差や希望格差は一層拡大していくのではないか。
・昔の大企業では、大卒の人は必ず管理職になれたが、今はそうではない。今後は大企業の中でもある一定のポストに就ける人とそうでない人との格差が生まれてくる。
・所得において貧困層が増えているように、希望においても希望が少ない「希望貧困層」が増えていくのではないか。
・企業研修も「選択と集中」が図られ、一部の優秀な人しか研修を受けられないような環境となりつつあるため、生産性の格差も拡大していくと考えられる。

【山田チーム】
・格差の固定化がすすんでいくという意見が太宗を占めた。そのため希望が少ない人は状況を受け入れるようになり、結果的に不満が見えなくなる可能性もありうるという意見があった。

【f_world21チーム】
・歴史の順番で考えると(アメリカ型の)所得格差が日本で発生する。つまり所得格差を中心に拡大するのではいないか。
・順番で考えると、所得格差がうまれて希望格差がうまれるはず。所得格差が広がると希望格差も広がる。
・生産性格差は広がる。それはそのまま所得格差になる。ただ、収入という点においてはにおいては再配分の仕組みをうまく設計すればある程度解決するはず。
・希望を持てるかどうかはその時代の文化との関連が深い。新しい文化がどのように生まれ、それを社会の人々がどう受け止めるかにより希望格差は拡大もするだろうし、縮まりもする。

【Kwithcyチーム】
・希望格差は主にジェンダーと年に基づくものなのではないかという提案があった。
・格差は是正される必要性については大方の合意が得られたものの、格差を生みだす競争とのバランスについても考慮されるべきということが話し合われた。



論点4:希望格差を是正するための具体的な方策について。
(主な意見)
【三四郎チーム】
・希望格差を是正するためには個々人の「考える力」あるいは「戦略的思考」を底上げする必要がある。その意味では、初等教育における読み書き能力ではなく、高等教育、社会人教育のカリキュラムを見直すべき。
・社会人になってからも様々なキャリアプランが描けるように、社会人大学院の拡充を図るべき。
・中国、インド人が優秀なのは、初等教育を徹底的にやっているから。義務教育で徹底的に読み書きを教えることも重要。
・SNSなど、ウェブを介したコミュニティは、多様な発想に触れたり、思考のトレーニングを行う場となるため、希望格差の是正にも貢献し得るものではないか。
・家族や子どもを持つことは、希望と直結する。特に、子どもを持つことで、価値観は180度変わったりもするので、希望格差を是正する観点からも、家庭を持つことは重要。

【山田チーム】
・非正規労働者の社会保障を強化するのは早急に必要。
・日本は、大学のトップや、企業のトップなどが労働市場に及ぼす影響が甚大なため、トップダウンで変わっていく必要がある。
・一部高齢者が資産を持ち過ぎている。世代間の格差を是正するために相続税の強化が重要。
・格差を教育レベルでも広げないためにも子どもだけでなく、親(大人)への教育が重要。
・職業や給与などの格差の是正だけでなく、一人ひとりが人間関係の中で、自分の価値を感じられることが重要。競争社会で自分の価値を押しつぶされないよう、豊かなコミュニティを再構築することを考えるべき。

【f_world21チーム】
・格差是正の観点、及び企業の生産性向上のためにも、優秀な非正規社員をどんどん正規社員として雇うべき。
・企業にある程度努めてノウハウの取得に成功した非正規社員は多数おり、正社員側からもそのような人には正規社員として会社に残って欲しいと思っている。しかし経営者は会社の社会保障負担が増えるので二の足を踏んでしまう。
・そのためにも社会保障の制度改革は必須。(生産性の低い)中高年を早期退職させるための社会保障制度が必要。
・法律で高齢者にしめる非正規の割合を決めてしまうといういささか強引な手法もあるかもしれない。
・(所得の)再配分の仕組みを整備すれば格差は縮まるだろうが、社会全体のパイが伸びてていない現代においてはうまく機能する仕組みがない。
・教育の質を向上させ(例えばイノベーションを促進するような人材を育てる仕組みなど)、日本人の生産性を上げても、社会(文化)が変わらなければそのような人間は活躍できない。
・文化や慣習は外から変えるしかない、外圧が重要。

【Kwithcyチーム】
・高校での職業教育など、これからの日本を支えていくものである若者について多く論じられた。






講評:

 全体として格差そのものに対して否定的な意見は少なく、既得権によるチャンスの低さ、非正規雇用の社会保障のひどさについて是正すべき、という意見はほぼ一致していた印象をもちました。
 格差の拡大には、グローバリゼーションが進んだことがセットになりがちです。しかし、本来グローバリゼーションが進むと、能力の高い人はチャンスが生まれ、既得権益だけで有利な立場にいた層が競争にさらされるはずです。現在の日本の状況は必ずしもそうはなっていないような気がしています。既得権益層の流動性は低い(守られている)ままで、既得権益に入れない人たちだけが、グローバリゼーションの競争にさらされるという歪んだ状況を感じます。社会保障の分配を変えるだけでは根本的な解決にはならないと感じます。競争から守られている人と、競争にさらされている人の境界線をいかに緩やかにしていけるかが、希望格差の是正にとって重要なのではと考えています。
(山田案稜)



 今回は格差がテーマでしたが、私は個人的に格差の存在そのものが悪だとは思っていません。格差が存在し、それによる副次的効果(課題図書の中では【外部不経済】という表現されていました)問題だと思っています。今回の勉強会では格差の現状、およびそれを希望格差という概念で説明するという試みにから新しい知見を得た部分はありましたが、格差の抜本的解決策、あるいは格差があっても外部不経済を生み出さいない是正策に対する議論はいまいち踏み込めなかった感があります。どのようにすれば老若男女を問わず希望を持てる人間社会を築けるか、今後議論を深めていきたいと感じました。
(f_world21)


 山田先生との討論会では、著書にはなかったご自身の経験談や政府の内輪話だけでなく、社会学に関する深い知見を披露するなど、非常に興味深いものとなりました。その後の議論の場では、参加者が各々が自分たちの本音などを交えて、活発な議論が行われました。希望格差については、多くの者が認識し、何らかの対応が必要であるということを肌で感じました。また、個人的にはそのような社会に生き、希望を失いつつある自分を含めた若者についても提案や励ましの声を頂き、身が引き締まる思いでした。
(Kwithcy)

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