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エーテル絵本コミュのパズル

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大学時代、哲学の授業でよく見掛る黒髪の癖毛の子が妙に気になっていた。その子はいつも一人で座っていて、黙々と板書をする手は、今までみたどの人より色白で華奢だった。細い腕に嵌められた左腕のブレスレットがやけに大きく太くみえ、違和感さえある。哲学の授業は自由席だったから、ある日その子の隣に座り話し掛けてみた。何年生?と聞くとその子はすこし驚いたように、しかしそれでいて穏やかに2年、と微笑みながら小さく答えた。自分も社交的な方ではなかったがその子の潤いのある小さく可愛らしい声に好感を覚え、それからすぐに親しくなった。
一緒にいるようになってからは、授業をサボってドライブしたり駅前の店にアイスを食べに行ったり、時にはお互いの家に行くこともあった。一人暮らしではなかったようだが、いつも家には誰もいなかった。母さん夜にならないと帰ってこないからその間に妹迎えに行って掃除して洗濯して夜ご飯の準備しなきゃ、これが口癖だった。早くに父親が亡くなり女手ひとつで育ててくれた母親の負担をすこしでも軽くするため、小学生の頃から家のことはずっと1人でやってきたそうだ。
ふと彼女の部屋の隅を見ると、古い写真が写真立てに飾ってあった。そこには幸せそうに笑う若夫婦と、一人の少年の姿があり、写真の端の方に お父さん お母さん ナオ と書いてあった。
「 え、ナオって 」
ナオは慌てて写真を奪い、暫くして、どう思った?と聞いてきた。
「 引いた?女の子だと思ってたんでしょ?嫌う?わたしのこと気持ち悪いと思った? 」
呆気にとられて言葉がひとつも出てこなかった。見るとナオはガタガタと顎を震わせて涙を流している。写真をギュッと握って、切なそうだったが、どこか悔しそうにも見えた。俺はたまに自分のなかで性別とは何なのかわからなくなるときがあった。性別とはただ、パズルのように女には女の、男には男のかたちがあって、それが男と女でなければピッタリ当て嵌まれることはないのだと。そして今目の前で起きている現実によってさらなる混乱の糸が加えられ、やがて完全に昇華した。俺は静かにナオを抱き寄せ、ずっと言えなかったんだけどと言って暫く黙った。ナオは答えを急ぐことなく静かに涙を流していた。
「 俺も女なんだ本当は。 」
深呼吸のあとようやく言葉を滑らすと、ナオは何も言わずに華奢な腕で強く、強く抱き締めてきた。




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