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コメント(4)
この年は、ジーンズブルース、修羅雪姫怨み恋歌、無宿の３本です。他に「去れよ去れよ...」のアルバムも作ってます。つまり「闘う女」路線から卒業していく過程の年です。
さそりと修羅雪姫でしか彼女を見ていないと、無宿のサキエが梶さんだと気づかない人がいるかも知れないくらい、イメージが違います。テクニック的には、口もとを少しだらしなくして前歯を見せるという比較的単純な手法で「クールビューティー」じゃない顔を作っているのでしょうが、例によって梶さんの憑依感が半端ではなく、細かな表情の動きや仕草が純情素朴で頼りなげなサキエさんそのものになりきっています。
この役が梶さんじゃなかったとしたら、ガチャになるかベタになるか、いずれにせよこの映画の抒情性は半分になってたでしょう。
ラストでの梶さんの姿も胸を打つものがありますが、それはあえて貼り付けませんので、DVD買うか借りるかしてご覧下さい(結構出回っているので入手は容易と思います)。
さそりと修羅雪姫でしか彼女を見ていないと、無宿のサキエが梶さんだと気づかない人がいるかも知れないくらい、イメージが違います。テクニック的には、口もとを少しだらしなくして前歯を見せるという比較的単純な手法で「クールビューティー」じゃない顔を作っているのでしょうが、例によって梶さんの憑依感が半端ではなく、細かな表情の動きや仕草が純情素朴で頼りなげなサキエさんそのものになりきっています。
この役が梶さんじゃなかったとしたら、ガチャになるかベタになるか、いずれにせよこの映画の抒情性は半分になってたでしょう。
ラストでの梶さんの姿も胸を打つものがありますが、それはあえて貼り付けませんので、DVD買うか借りるかしてご覧下さい(結構出回っているので入手は容易と思います)。
日本残侠伝 1969.8
マキノ雅弘監督に名付親になってもらって「梶芽衣子」になった記念すべき作。梶さんもいろんなインタビューで、必ずといっていいほど、マキノ監督に着物の着方を教わった話を語ってますね。また「薄幸の遊女」役の原点でもあるので、ここにくっつけておきます。
木曽の田舎から売られてきた梶さんを見かね、高橋英樹がやくざと警官を叩きのめす場面が、この映画のオープニングになっています。で、その二年ほど後から物語が始まります。
店に客が来る。遊女が呼ばれて奥の部屋から出てくる。横目でパシッと客を一瞥し、物も言わずに無表情で階段を上る。遊女役の基本ということで、これもマキノ監督直伝なのかも。
でも、この冷えた視線に、彼女の遊郭での二年間を凝縮して表現しているのですね。それでいて下品でもスレ切ってもいないので、後で客(津川雅彦)の歌う木曽節を聴いてぱっと表情が緩む場面が活きてきます。
マキノ雅弘監督に名付親になってもらって「梶芽衣子」になった記念すべき作。梶さんもいろんなインタビューで、必ずといっていいほど、マキノ監督に着物の着方を教わった話を語ってますね。また「薄幸の遊女」役の原点でもあるので、ここにくっつけておきます。
木曽の田舎から売られてきた梶さんを見かね、高橋英樹がやくざと警官を叩きのめす場面が、この映画のオープニングになっています。で、その二年ほど後から物語が始まります。
店に客が来る。遊女が呼ばれて奥の部屋から出てくる。横目でパシッと客を一瞥し、物も言わずに無表情で階段を上る。遊女役の基本ということで、これもマキノ監督直伝なのかも。
でも、この冷えた視線に、彼女の遊郭での二年間を凝縮して表現しているのですね。それでいて下品でもスレ切ってもいないので、後で客(津川雅彦)の歌う木曽節を聴いてぱっと表情が緩む場面が活きてきます。
「行かないで！」
「・・・しあわせだったよ」
現代任侠史 1973.10
無宿と共に健さんとの共演ということで、ここにくっつけます。さそり３と修羅雪姫の間の時期です。監督は日活時代に「怪談昇り竜」を撮った石井輝男、共演者としてこれも日活時代からおなじみの郷��治、さそりに刺し殺された夏八木勲、片腕ぶった切られた成田三樹夫という因縁浅からぬ面々。
この映画は、梶さんのアップが多いということで(石井輝男も商売気を出したか)、梶さんマニアにはひそかに人気らしいのですが、映画としてはどうも腑に落ちない。やくざから足を洗った健さんのかつての兄弟分達が窮地に追い込まれていくストーリーはそれなりに描かれているのですが、それと並進行する健さん梶さんのラブストーリーにあまり中身がないのですね。さしたる出来事もないままにいつのまにか婚約までしてるし。はっきり言って、梶さんでなくても、そこそこの「きれいなおねーさん」女優だったら、この役はつとまるだろうな、という印象。
ところが、そろそろ映画も終盤という頃になると、やはり「ラスト15分の法則」の発動なんですな(「流血の抗争」の項参照)。健さんは、もう健さんそのもの、自己パロディと言ってもよい状態。梶さんはと言うと、このシーンに限って和服で登場、ここまでとメイクもぜんぜん違うような気がするんだけど。で、ここに至って、ここまでのすべてのストーリーは、健さんと梶さん、特に健さんに、ラスト15分の「型」を演じさせるための前フリに過ぎないということに、ようやく気がつくわけです。
ここでは梶さんも全開モードになります。さっきまでの雑誌記者のおねーさんに何で和服での完璧な身のこなしができるんだと突っ込みたくはなるんですが、それはさておき、仏壇前に座る健さんを襖のところから見守る視線の動き、健さんが最後の言葉を口にした瞬間の懇願から絶望への表情の変化、しびれますね。前言撤回。そこらの女優さんではつとまりません。
ですが、やはり、全体としては何か納得がいかない映画です。
「・・・しあわせだったよ」
現代任侠史 1973.10
無宿と共に健さんとの共演ということで、ここにくっつけます。さそり３と修羅雪姫の間の時期です。監督は日活時代に「怪談昇り竜」を撮った石井輝男、共演者としてこれも日活時代からおなじみの郷��治、さそりに刺し殺された夏八木勲、片腕ぶった切られた成田三樹夫という因縁浅からぬ面々。
この映画は、梶さんのアップが多いということで(石井輝男も商売気を出したか)、梶さんマニアにはひそかに人気らしいのですが、映画としてはどうも腑に落ちない。やくざから足を洗った健さんのかつての兄弟分達が窮地に追い込まれていくストーリーはそれなりに描かれているのですが、それと並進行する健さん梶さんのラブストーリーにあまり中身がないのですね。さしたる出来事もないままにいつのまにか婚約までしてるし。はっきり言って、梶さんでなくても、そこそこの「きれいなおねーさん」女優だったら、この役はつとまるだろうな、という印象。
ところが、そろそろ映画も終盤という頃になると、やはり「ラスト15分の法則」の発動なんですな(「流血の抗争」の項参照)。健さんは、もう健さんそのもの、自己パロディと言ってもよい状態。梶さんはと言うと、このシーンに限って和服で登場、ここまでとメイクもぜんぜん違うような気がするんだけど。で、ここに至って、ここまでのすべてのストーリーは、健さんと梶さん、特に健さんに、ラスト15分の「型」を演じさせるための前フリに過ぎないということに、ようやく気がつくわけです。
ここでは梶さんも全開モードになります。さっきまでの雑誌記者のおねーさんに何で和服での完璧な身のこなしができるんだと突っ込みたくはなるんですが、それはさておき、仏壇前に座る健さんを襖のところから見守る視線の動き、健さんが最後の言葉を口にした瞬間の懇願から絶望への表情の変化、しびれますね。前言撤回。そこらの女優さんではつとまりません。
ですが、やはり、全体としては何か納得がいかない映画です。
キネ旬の1974.10下、まだ『無宿』撮影中の4人が座談会なんぞやってます(正確には健さんだけは個別インタビュー)。同じ号に脚本(第三版)が掲載されていますが、完成版の映画とは全くと言っていいほど異なるストーリー。主に勝新と斎藤監督が次はどうしようと議論しながら撮っていたようです。座談会でも主にこの二人がしゃべっていて、梶さんは寡黙。
高倉 見ていると、今までの梶サンと違っているものが出ているようですねえ。彼女の、あの、サキエという役が、人生をひとりで表現しているような気がしていますねえ。一瞬の夢みたいなものに、長い長い地獄を耐えてきて・・・楽しい想いは、ほんのちょっとしかなかった人生ですからねえ。その点では彼女が一番いい役じゃないですか。
勝 ずっと前から、ダンボから手紙を貰っていたんだな。梶芽衣子には何かある、ってね。バラにちょっと似ているような。だけれども、近づいてみたら菊にもなれる花があった。それが梶サンなんだね。
梶 今までね、私が演ってきた自由を求める女というのは、自分ひとりで、というものだったでしょ。他人に頼らないで。肩肱はって。でも今度の場合はね、すがる人がいるわけですよ。そういう、何か弱いっていうか、可哀想な女というのは初めてですから、非常にやり甲斐があるンです。
※勝新の話の中に出てくる「ダンボ」は、兼田淑子マネージャのことだと思います。
高倉 見ていると、今までの梶サンと違っているものが出ているようですねえ。彼女の、あの、サキエという役が、人生をひとりで表現しているような気がしていますねえ。一瞬の夢みたいなものに、長い長い地獄を耐えてきて・・・楽しい想いは、ほんのちょっとしかなかった人生ですからねえ。その点では彼女が一番いい役じゃないですか。
勝 ずっと前から、ダンボから手紙を貰っていたんだな。梶芽衣子には何かある、ってね。バラにちょっと似ているような。だけれども、近づいてみたら菊にもなれる花があった。それが梶サンなんだね。
梶 今までね、私が演ってきた自由を求める女というのは、自分ひとりで、というものだったでしょ。他人に頼らないで。肩肱はって。でも今度の場合はね、すがる人がいるわけですよ。そういう、何か弱いっていうか、可哀想な女というのは初めてですから、非常にやり甲斐があるンです。
※勝新の話の中に出てくる「ダンボ」は、兼田淑子マネージャのことだと思います。
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