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インドヒマラヤ山岳会&自転車部コミュの毎日新聞のラダック記事

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毎日新聞、しかも栃木版というローカルな話題のはずの紙面にインドヒマラヤのど真ん中、ラダックの記事がありましたのでご紹介。
ストクカンリの登山事情もあります。



秘境を越えて:栃木〜インド・ラダック/上 人の温かさ、魅力だった /栃木
 ◇県の登山家が今夏、マリ峰初登頂に成功した地 外国人で戦後初めてこの地に入った県人がいた
 ◇宇都宮の登山家・空さん、37年前の調査記録出版

 今年7月下旬。タラップを降り立つと、強い日差しにさらされた。頭上に突き抜ける青空と、眼前に広がる茶褐色の荒野と。圧倒的なコントラストに目まいを覚えた。

 ここはインド北西部、標高約3500メートルのラダック地方。南にヒマラヤ山脈、北にカラコルム山脈が衝立となって立ちはだかる。

 私がこの地に立った少し前、栃木の登山家、沖允人(まさと)さん(76)=足利市=率いる登山隊がこの地方の未踏峰・マリ峰(6586メートル)の登頂に世界で初めて成功した。だが、意外にもここラダック地方と栃木との縁は古く、深い。

  □  □

 1974年夏。宇都宮市在住の登山家、空昌昭(よしあき)さん(75)と沖さんら7人の日本人の調査隊がラダック地方に入った。外国人では戦後、世界初だった。

 チベット仏教を研究していた空さん。現地調査の必要性を感じていたが、中印国境に近く軍事拠点でもある同地方への渡航許可取得は困難を極めた。インド政府高官に直談判までし、やっと道筋がついた直後に一般開放された。ラダック地方の中心都市レーまでの道のりは標高3000〜5000メートルの山岳地帯を2日かけてジープで越える強行軍だった。

 調査期間は7日間。村々をつぶさに訪ね歩き、写真や映像に収めた。チベット仏教の僧院での勤行に触れ、世界でも珍しい一妻多夫制に、厳しい自然環境にあってコミュニティーを維持するための人口抑制の役割があると気付いた。

 植村直己さんの活躍が注目を集めていたころ。「最後の秘境」への関心も高く、空さんらの調査の様子はテレビ放映された。翌年に報告書を出版。日本語の希少な資料として評価されることになる。

  □  □

 ただ、心に訴えかけた最大の魅力は、人の温かさだったという。どこの家庭も歓迎してくれた。調査は高山病や極度の腹痛の連続でもあったが、床でぐったりしていると下宿先の家族が付ききりで看病してくれた。「日本人が忘れてしまった温かさや、素朴で人を疑うことを知らない人柄に魅せられた」と懐かしそうに振り返る。

 ラダック地方は冬、氷点下20度になる。厳しすぎる自然が、人を温かくするのだろう。

  ×  ×

 空さんは今春、当時の調査記録を収録したエッセー「山と人を想(おも)い」(随想舎・1600円)を出版した。だが、私が訪れた現地は様変わりし、観光ブームで近代化の波が押し寄せていた。栃木の登山家が長年、魅せられたラダックの今を見つめた。(この連載は吉村周平が担当します)

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 ■ことば
 ◇ラダック

 パキスタン、中国と隣接するインド北部ジャンムー・カシミール州の一地方で、大半は標高3000メートル超の山岳地帯。人口は約27万人。チベット系民族のラダック人が多数を占める。多くがチベット仏教徒。国境紛争など政治的理由から1974年7月まで外国人の入域が制限され、現在も立ち入り禁止の地区がある。6000〜7000メートル級の未踏峰も多い。






秘境を越えて:栃木〜インド・ラダック/中 伝統文化の破壊危惧も /栃木
 ◇74年の観光解禁で近代化

 インド北西部・ラダック地方最大の町レー。一番のにぎわいは、町の中心にあるメーンバザールだ。宇都宮市在住の登山家、空昌昭(よしあき)さん(75)が初めてこの地を訪れた1974年は、路上は野菜を売る女性で活気にあふれ、背後の建物には衣料品や食品、生活用品を売る店が建ち並んでいたという。「『ジュレー(こんにちは)ジュレー』って、外国人なんて来たことがなかったから、みんな物珍しがって集まってきてね」。レーに到着した37年前の夏の日を振り返る。

 通りは今も健在だが、趣はがらりと変わった。野菜売りの女性たちの姿はあるが、観光シーズンの夏は外国人であふれ、通りの店はほとんど土産物屋に取って代わられた。連なるレストランやカフェ、バーは観光客向け。ネットカフェもある。店主や店員にはカシミール人やネパール人の出稼ぎ者も多く、秋になると店じまいして故郷へ帰るという。今ごろは、ラダックへつながる陸路は雪に閉ざされ、町は静けさに包まれていることだろう。

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 74年の観光の解禁に伴うラダックの近代化は、伝統的な文化や生活を破壊しつつあると警告する識者もいる。レーの南のストック村で伝統的古民家を再生しホームステイやツアーを企画しているラダック人のスタンジン・ワンボさん(31)は、「(貨幣経済が加速したことで)忙しくなり家族や友人と過ごす時間が少なくなった」と話す。教育の質が上がり、政府や企業で働く人が増えた一方、農業をする人は減ってしまったともいう。

 また、地域共同体としての個々のつながりも弱まっている。かつては隣近所も呼び、豊作をもたらした家畜の労をねぎらう「スカンソル」と呼ばれる各家庭の祭りも、近年はごく近い家族だけで祝うようになった。「いまは食べ物にも恵まれているし、時間もなくなってしまったからね」。そうワンボさんは指摘する。

 一方で生活水準は確かに向上し物質的には豊かになった。「昔は外に旅行に行くことなんかできなかったけど、今はできる。何事にも良い面と悪い面がある。伝統的な生活と現代生活の良い部分のバランスを探っていくしかない」

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 それでもラダックの人々の多くは今も親切で温かい。レーのネットカフェでカメラを忘れた。数十分後、諦め半分で戻ってみると若い店主が机の中に保管してあったカメラを渡してくれた。「もしあなたが忘れたまま帰国しても、来年来たらいい。ここはラダック。カメラはちゃんとここにあるから」。そう言うと、真っ白な歯を見せてニカッと笑った。

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 ◇ラダック関連の書籍・映画◇

「懐かしい未来 ラダックから学ぶ」(ヘレナ・ノーバーグ=ホッジ著、懐かしい未来の本、1575円)

「ラダックの風息 空の果てで暮らした日々」(山本高樹著、ブルース・インターアクションズ、1680円)

「ラダック」(高木辛哉著、旅行人、1575円)

「山と人を想い」(空昌昭著、随想舎、1680円)






秘境を越えて:栃木〜インド・ラダック/下 6000メートル超の未踏峰群 /栃木
 ◇欧米人に人気…観光客はトレッキング

 「世界の屋根」ヒマラヤ山脈とカラコルム山脈の間を流れるインダス川上流部。そこに位置するラダックは「インドヒマラヤ」と呼ばれ、6000〜7000メートル級の山々が幾重にも連なっている。

 7月のマリ峰登頂隊長を務め、長年ラダックやカシミール地方の山々を登ってきた足利市の登山家、沖允人(まさと)さん(76)は「(ラダックは)長く外国人の入域が制限されていたから、6000メートル超の未踏峰がたくさん残る」と言う。国境に近く登山許可の手続きも煩雑で難しいが、それでも挑み続けるのは「同じ命がけなら誰も登っていない山に登りたいから」だ。

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 ラダックでは一般のトレッキングツアーも観光客の人気の的。谷沿いの集落を訪ねながらのホームステイやキャンプが楽しめるトレッキングもある。2泊3日程度のものから、20日以上かけて厳冬期の凍結した川の上を歩くものまでさまざまだ。中でも欧米人たちがこぞって登るのは、レーの南西にそびえるストック・カンリ(6153メートル)。高度にさえ順応できれば3泊4日で登頂できる。

 ツアーを手がける旅行代理店「ネオ・ラダック」。スタンジン・ワンボさん(31)と妻で日本人の池田悦子さん(36)の2人で切り盛りしている。日程は標高4300メートルと5000メートルのベースキャンプ(BC)で1泊ずつ。3日目に登頂し、翌日下山する計画だ。ガイドや装備などすべて込みで約8万円。同行者がいれば割安になる。

 食料や調理器具を積んだ馬3頭を引いて緩やかな斜面を登る。「村人たちは家畜の放牧でこの辺りまで来るんですよ」。道中、池田さんが説明してくれた。一帯は高度4000メートル超。あえぎながらのハイキングだが、村人は、農業での労働力や乳しぼりなど普段の生活に欠かせない家畜を日常的に連れてくる。

 「ほら」。ワンボさんの指さす方に、マーモット(大型のリスの一種)が巣穴からひょっこり顔を出していた。辺りは荒涼とした山並みだが、雪解け水が絶え間なく流れ、食料の草も豊富で、絶滅危惧種のブルーシープ(野生のヒツジの一種)など野生動物もそこかしこから顔を出す。

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 雪解け水が勢いよく流れる氷河地帯を注意深く渡り、雪渓を一歩一歩登り詰めていく。酸素濃度は地上の半分程度。もうろうとしながら、すっぱりと切れ落ちた岩稜(がんりょう)帯を越え、たどり着いた山頂には青、白、赤、緑、黄のチベット仏教の祈願旗がはためいていた。

 近代化の波が押し寄せ変化の渦中にあるラダックだが、山頂から見渡す限りに広がる雄大なインドヒマラヤの山々は、昔と変わらぬ姿でそびえていた。

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