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切なさと哀愁の詩(歌詞)や小説コミュの自伝的小説

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★未完なんだけどね・・・哀愁より郷愁のある青年小説ってとこかな?

『フール・オン・ザ・ヒル』

プロローグ

いつもその馬鹿げた微笑を浮かべた男はそこに居た。

彼が馬鹿だからと、誰も彼を知ろうとしない。

彼はその丘の上で太陽の沈むのを見てるが、何も感じていないように見える。

彼の目の奥にはクルクルと回る世界が写っている。

ラウンド、ラウンド、ラウンド・・・

    フール・オン・ザ・ヒル by show(訳) 

ビートルズのジョン・レノンが凶弾に倒れる
わずか5年前、沖縄返還後間もない離島で、360度見渡せる丘の上に集まった無邪気な若者たちが居た。彼らは何を見て、何を感じたのか?・・・ジョンが、かつて自分たちがより有名だと言った神様と同化した瞬間?・・・それは、時が止まる輝かしい瞬間・・・彼らはフール・オン・ザ・ヒルであることを誇りに思った。


第一章
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二つの世界
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いったいどのくらいの時間が経ったのだろうか?・・・

彼は焼きつく太陽の光をTシャツ一枚の背中に感じながら揺ら揺らと輝く水面の上を漂い続けていた。

彼の眼の前には、赤、青、黄色、etc.の魚たちが原色の茂みのような珊瑚礁に群がり、限りなく透明に近い水の世界があった。彼は、潜っては海の底で何かを見て、また水面に戻ることを繰り返していた。水面から見る10mくらいの海底はあたかも空中写真のように鮮明ではあったが、彼は繰り返し潜ることを止めれなかった。次ぎの瞬間には、彼はタイタニックの宝石を見つけられると信じているかのように・・・

「ショウ、いつまで潜るつもり?」と、不意に遠くの方から聞きなれた女性の声が聞こえた。

声の主はヨーコだった。彼女は岸に居て、ずっと彼を見ていたが、待ちきれなくなったようだ。

頭を挙げて太陽を見た。太陽は確か海に入った時には10時くらいの位置にあったが、今は3時を回っていた・・・彼の時間の流れは速かったが、彼女には遅かった。彼女は待ちきれなくて、用意していたサンドイッチを一人で食べてしまっていた。

ショウはおもむろに足ヒレを外し、水中マスクを取って、岸に上がった。

「お腹減ったけど、何かある?」とショウはヨーコに聞いたが、ヨーコは笑って『全部食べちゃった』と言った。ヨーコにそういわれるとショウは、「そっか」と言い、持ってきてたラジカセの再生ボタンを押した。

On a dark in the high way, cool in my hair・・・♪

流れた曲はイーグルスの『ホテルカリフォルニア』、
ショウは曲を聴きながら身体をタオルで拭いた。

岸から改めて海を眺めると、朝方グリーンだった場所が、コバルトブルーに変わっていた。色の違いのせいか、水面に揺らぐ光がより眩しく見えた。

あの水面の下には別の世界がある・・・とショウは思った。それは、彼にとっては憧れの宇宙のように未知の世界だった。

ショウは大学三年生だが、宇宙に憧れ宇宙飛行士になろうと本気で思っていた。

ヨーコは幼稚園の先生を目指す短大生だった。

将来も、いま感じた時間も違う二人にとって、世界は二つあるのか?・・・ショウは自分の見る世界しかわからないことが不思議だった。

それでも、世界は確かに回っていた。

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歓迎の儀式
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太陽の角度がエメラルドグリーンに海を染める時間、ふいに一艘の小型船がこの島の船着場に姿を現した。その小型船に向かって手招きしている若い男女数人が居た。

ショウとその妹ユキ、そして妹の友達アッちゃんが小型船の上から彼らに手を振っていた。ショウ達は、本土から大型旅船で2泊し本島に着いた後、船を乗り換えさらに船中1泊しこの島に物資を供給する離島に着いた。さらに3時間かけてやっと最終目的地であるこの島に到着するところだった。この長い船旅は、海の色が紺、藍、青、青緑へと刻々と変化する様を見ることが出来る感動的な旅ではあったが、ショウは船酔いの為に疲れきっていた。一方、ユキとアキは船酔いしなかったので元気だった。

船首が船着場のタイヤに当たるやいなや船から投げられたロープが引かれ、船は横付けされた。

「ショウ、待ってたよー」とショウの大学の友人のヨッシーが言うなり手を差し伸ばしてきた。ショウはヨッシーの手を取ると、ヨッシーに思いっきり引かれたので、思わず転びそうになった。

ヨッシーの傍らに居たデカイ男が「さあ、儀式だー」と叫んだ。それを合図に皆が船着場の近くの民宿に向かって走り出した。その民宿は白塗りの質素な建物で壁にアオイ荘と書かれていた。

誰かが、ショウ達の荷物をアオイ荘に投げ入れた。「早く水着に着替えて!」とショウ達は言われた。
ショウは、少し休みたかったが、仕方なくすぐに着替えた。女子を待って、ヨッシーにアオイ荘の前の砂浜に連れて行かれた。

砂浜には3つの棺おけのような穴が掘られていた。ショウはハァー?と思ったが、気がつくと3人がかりで運ばれて穴に入れられ砂で埋められた。妹達はキャーキャー騒いでいたが同様に埋められた。

砂浜の温度は高かったが、疲れていたショウには心地よい眠りを誘った。地面からほぼ水平に見えた海面は太陽の光を反射してキラキラとあまりに眩しく直視することが出来なかった。

ショウは、初めて、時が止まるのを感じた。

次の瞬間、「めんそーれ、西表!」の掛け声とともに、3人はエメラルドグリーンの海へ投げ込まれていた。

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座礁船
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アオイ荘に集まった若者達は、ショウには大家族のような感じがした。

ヨッシーの幼稚園時代からの友達のデカイ男は皆からポチョムキンと呼ばれていた。理由は、彼がいつも『戦艦ポチョムキン』を愛読していたから。ポチョムキンは自衛隊で鍛えられたらしく華奢なショウとは対照的なマッチョだった。ポチョムキンはヨッシーのことをヨイコと呼んでいた。何でも小さいときから良い子だったかららしいが、ショウに言わせるとヨッシーは、船着場で転ばせようとしたり、仲間を砂に埋める儀式を考えたりする悪戯好きの悪い子なのだが、大学では勉強しなくても成績トップのエリートだから一目置いてる感じだ。この島のアオイ荘に集まった仲間は、だいたいヨッシーの知り合いだが、その中に、短大生のヨーコとエリーがいた。ヨーコは快活、エリーは美人で人気があった。他にも数人、ショウの顔見知りが居た。

ヨーコはショウにハイビスカスの花輪をかけてくれて以来、いつもくっついて歩いていた。
妹のユキは、ポチョムキンがお気に入りのようで、妹の友達のアキはづっと船旅から一緒だったショウが気になるのに何も声をかけれないようだった。

ショウはこんな皆の思いをよそに、いつもゴーイングマイウェイだった。

朝から、海へ出発するというのに、山下達郎、大滝詠一、伊藤銀次の『ナイアガラトライアングル』を聴き、南の島の朝の幸せな気分に浸っていた♪

「置いてくぞー」とヨッシーがショウに言った。

ショウは慌ててアオイ荘の外に飛び出すと、そこには皆の笑い声があった。

ショウはヨーコに押されて、トラックの荷台に乗った。横にはエリーが立っていた。

ショウには、エリーの長い髪が風に揺られて太陽の光が屈折し金髪に見えた。

ショウはAmericaの『Sisters golden hair』を歌いだしたが、隣に立ってるエリーには聞こえないように・・・♪

15分ほどで、真っ白い砂のロングビーチに着いた。
海の前方には、一見そこには似合わない錆だらけの船が停泊していた。
『座礁船だよ』とポチョムキンがショウに言った。
トラックの荷台から降りた皆は一斉に水中マスク、シュノーケルをつけ、フィンを持って海に向かって走り出した。そして海に入って足にフィンをつけるやいなや座礁船に向かって泳ぎだした。

まるで、そこには金塊が眠ってるかのように神秘的な船体が海の中に現れた。
魚たちは群れをなして船の窓を出入りしていた。
素潜りに慣れているヨッシーとポチョムキンが先頭になって船の周りを探索しだした。
ショウは、彼らの吐く息に驚く魚たちを眺め、海上より巨大な海中の船体が今にも動き出しそうな恐怖を覚えたと同時に、ただ浮き草のように漂う自分が心から愛おしく思えた。

もしも、地球が平らで、世界の端があったなら、この座礁船は次の瞬間、向こう側の淵に落ちてしまうに違いない・・・時がまた止まった。

次の瞬間、

ヨッシーがショウの手を引いた。

ショウは目覚めて、彼と潜り始め、グランブルーの世界へ旅立った。

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神の宿る島
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ショウは泡盛を飲んで身体が火照ったので覚まそうと民宿の外に出た。
すぐ目の前には漆黒の海が現れた。
心地よい波の音と、どこからともなく聞こえてくる蛇三線の音が交じり合う。

ショウは堤防の上に横たわってみた。

目の前には電球を散りばめたような星空。
流れ星がサッと軌跡を描くとハッとするが、すぐにそれは言い知れぬ感動へと変わった。
いくつもの軌跡をショウは数えていた。

すると、ヨッシーがギターを持って現れた。
徐に、ビートルズの曲を彼が弾きだした。『イエスタディ』、『アクロース・ザ・ユニバース』そして何故か『フール・オン・ザ・ヒル』、ショウはいつものように彼のギターに合わせて歌った。そして、いつもと違った高揚感を感じていた。

ヨッシーはいきなりギターを弾くのを止めた。そして語りだした。
「この島には神が宿っている。波は神の声、そして向かいの山々は神の社だ。そして俺たちは神の子供だ。」と・・・・・・彼は宗教論者だったかな?とショウは思ったが、彼の言葉が素直に感じられた。

蛇三線の音はいつしか止んでいた。

波の音も静かだった。

向かいの山々に吹く風が一瞬、空に舞い上がった気がしたのと同時に、
また、一つ流れ星が軌跡を描いた。

誰もが神に守られていると信じられる夜だった。

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