（縄張図）土山城跡平面図：福永清治氏作図
（写真１）土山城郭?・?間の堀切
（写真２）土山城郭?の内部
淡海の城（おうみのしろ） 第２１号 平成２２年(2010)５月１３日発行
速報 淡海の城（８）−織田の城・六角の城〜安土城ＶＳ観音寺城
「織田の城はこういうもんだとか六角の城はこういうもんだ」という城郭研究者に期待を持たせそうなお題ですが、正直このお題では無理があります。特に六角の城というのが問題です。六角高頼なのか義賢なのかいつの当主の時なのかという問題、近江国内で六角氏の造った城があるのかという問題、強いて六角氏の本城とされる観音寺城の縄張りに六角氏の意向が入っている箇所があるとするならばどこなのかという問題です。織豊城郭研究の第一人者中井均氏にも尋ねてみましたが分からないと言う返事です。そこで、一応織田の城として安土城、六角氏の城は観音寺城ということにしました。
安土城・観音寺城ともに戦国時代の籠城戦等を想定した城としては、登城路が複数あり、しかも道沿いの谷筋を埋め尽くすように配される雛壇状のあたかも分譲地を思わせる郭群など極めて防御性が低い城であるとされてきま
した。最近の研究報告では、安土城は天皇行幸を計画に入れて造られた「見せる城」、観音寺城は六角家臣（被官）が集住する「一揆的な城」という評価がなされています。
また、山寺の坊跡群を城郭が取り込んでいくという新説があり、観音寺城では西国三十三箇所の観音正寺の本堂以下僧坊が先にできあがっており、観音正寺を利用した結果が、あのような分譲住宅地みたいな城になったといい、石垣も観音正寺が先に築いたというような見解もあります。安土城についても九品寺・安土寺という安土山にあったと伝承されている山寺を利用したという説があります。谷筋に伸びる登城路沿いに雛壇状に立地する郭は山寺の僧坊の配置状況に似ているというのです。
さて、へそまがりの私は、最近両方の城には完成する前の古い時期の城があるのではないかと考えました。
石垣導入以前の城は、郭の周囲を土塁で囲み、敵の侵入を阻害する竪堀・堀切といった空堀を配しています。安土城では、土塁・竪堀・堀切といった土の城の定番となるものが一切見られません。一方、観音寺城では、西の本丸・平井丸・池田丸周辺ではこれらの構造物は見られませんが、東の布施淡路丸・目賀田丸に土塁・堀切・土橋があります。布施淡路丸では、一見石塁で囲われているようですが、北東隅が土塁になっています。もともと土塁であったところを石塁に替えたのではないかと考えますが如何なものでしょう。
また、観音寺城では、郭の一部に小石塁を造るという安土城には見られない手法が取られています。布施淡路丸とその下の段の郭、本丸、池田丸といった郭では、郭全体を石塁で囲むのではなく、それぞれ敵が侵入してきそうな斜面に対してのみ石塁が設けられています。本丸の石塁は二段になっており、明らかに防御を意識したものです。一方で平井丸や池田丸下の木村邸、観音正寺下の進藤邸などでは郭の入り口にあたる部分に石塁を造り、玄関口にあたる虎口とやや離れた位置に潜り門をセットで造るという構造です。安土城では伝台所郭で小石塁に潜り門がついたものが、伝煙硝蔵跡で小石塁が造られていますが、いずれも観音寺城のように居住空間としての郭に伴うものではありません。この観音寺城特有の小石塁で防御する郭に似たものが、安土城に１箇所だけあります。「馬場平」です。能登川方面を望む北面は高い石垣になっていますが、その郭側は武者走り状の高まりになっており、郭平坦部は一段下がった位置にあります。郭側には石垣が無く土の斜面になっています。土の中に栗石等が散見されないことから石垣の石が持ち去られたものではないようです。馬場平は東西に分かれていますが遮断する部分は土塁となっており、南面のみ石垣が貼られています。能登川方面の石垣は土塁を削り込んで施行したのではないかと思われます。土塁の上と郭内の落差は３〜４ｍあり、安土城のほかの郭には見られない構造です。南面には武者走りがあり、それぞれの郭中央に入る石段虎口があります。天主側の郭は虎口が石垣で埋め戻されています。観音寺城の平井・池田丸の虎口の付け方とまさに同じで、安土城の中で最も中世山城的な郭です。観音寺城の郭に類似する構造から元観音寺城の支城があったのではないか、さらにもう一歩進んで、『武功夜話』に記されている目賀田城ではないかという考えなのですがどうでしょうか。
観音寺城では布施淡路丸・目賀田邸が最も早い段階に造られた郭、安土城では馬場平に古相が見られ目賀田城の可能性があるという本題からかなり外れたお話となりましたが、ご容赦下さい。詳しいお話は連続講座「滋賀の城郭」第１回目にしたいと思います。（仲川）
○連続講座「滋賀の城郭」
昨年、好評を得ました連続講座「安土城四百三十年」ですが、今年はテーマを変え、「滋賀の城郭」と題して全７回を開催する予定です。とりあえず第１回は７月17日（土）滋賀県立安土城考古博物館セミナールームで行います。開始時刻等詳細は会報・ホームページなどでおってお知らせします。
○歴史放談「安土 信長の城と城下町」
平成元年度からスタートした特別史跡安土城跡調査整備事業は平成２０年度で２０年間にわたる事業を終了しました。この事業によって、それまで謎に包まれていた安土城の姿の一端が明らかとなり、その成果は多くの人々の注目を集めています。
このフォーラムでは、特別史跡安土城跡調査整備事業２０年間の調査成果を紹介し、その意義付けについて調査担当者が熱く語り合います。また安土城を築いた信長の人物像や城下町を含めた都市安土の全体像についても話題を展開します。ご参加いただいた方々との質疑も行いますので、この機会にぜひとも日頃疑問に思っていることをぶつけてください。
大勢のご参加をお待ちしています。
１．日 時 平成２２年６月５日（土）１５：３０〜１７：００
２．場 所 安土町文芸セミナリヨホール
３．定 員 ３８０名（事前申込制 申し込み多数の場合は先着順）
４．参加費 ３００円（会場整備費・資料代）
５．次 第
（１）主催者挨拶
（２）記録ＶＴＲ「特別史跡安土城跡 調査整備２０年のあゆみ」上映
（３）ミニコンサート
（４）パネルディスカッション「安土 信長の城と城下町」
パネラー 仲川靖（滋賀県教育委員会事務局文化財保護課）
伊庭功（財団法人滋賀県文化財保護協会）
上垣幸徳（滋賀県教育委員会事務局文化財保護課）
コーディネーター 松下浩（滋賀県教育委員会事務局文化財保護課）
６．主 催 滋賀県教育委員会事務局文化財保護課（担当：城郭調査事務所）
財団法人安土町文芸の郷振興事業団
７．後 援 ＢＢＣびわ湖放送
８．問い合わせ 滋賀県教育委員会文化財保護課城郭調査事務所
TEL0748-46-6144 FAX0748-46-6145 E-mail：ma16@pref.shiga.lg.jp
安土町文芸セミナリヨ
滋賀県近江八幡市安土町桑実寺777番地
TEL0748-46-6507 FAX0748-46-6510 E-mail：bungei@zc.ztv.ne.jp
９．申し込み先 安土町文芸セミナリヨ
滋賀県近江八幡市安土町桑実寺777番地
TEL0748-46-6507 FAX0748-46-6510 E-mail：bungei@zc.ztv.ne.jp
シリーズ「淡海の城」（21）−土山城（つちやまじょう）（滋賀県甲賀市北土山）
土山城は鈴鹿山麓を伊勢に向かって延びる東海道沿いに位置する城郭遺跡です。城郭の遺構は近世東海道における滋賀県最後の宿場、土山宿の北東に位置する丘陵上に残存しています。この城は『甲賀郡誌』では文明年間に土山盛忠による築城、天正年間に滝川益一により落城と伝承されています。
土山城の遺構は現在のところ山頂部とそこから南西に延びる尾根上を中心として大小の郭が残存しています。山頂部に一辺50ｍ前後という最大規模を持つ方形の郭?があります。周囲は高さ3m前後の土塁で囲まれ、北および南辺に虎口が1箇所ずつ開口しています。南辺虎口の前面には土塁で囲まれた角馬出状の虎口空間?が存在しています。城内での位置や構造からこの郭が「主郭」と考えられます。郭?の北側には規模の小さな郭がいくつか構築されています。その中には縁辺に土塁をもつ郭もあります。また、主郭の北側には竪堀が配されています。一方、郭?から南西へ伸びる２本の尾根上ではそれぞれ大規模な郭が構築されています。この2本の尾根上に構築された郭は堀切によって区画されています。南側の尾根では土橋により郭間が連絡されている部分もあります。北側の尾根上の郭?は約70ｍ×30ｍと規模が大きく、縁辺北東部に土塁の存在が確認できます。南側の尾根で最も大規模（約50ｍ×25ｍ）な郭である郭?の南西には郭?で見られるのと同様の角馬出状の虎口空間?が接続しています。２本の尾根に挟まれた谷部分も段状になった郭として利用されていると考えられ、現状ではこの部分に山麓から郭?に通じる通路があります。ただ、これらの郭の内部については発掘調査が行われていないため詳しい状況は判明していません。
残存する遺構は土の盛り切りによって構築されています。この構築手法は城郭としては古い手法だといえます。また、郭?のように郭の周囲を土塁で囲むという形態は甲賀郡内に残る城郭遺構に類似しています。しかし、土山城の遺構には角馬出状の虎口空間という城郭としては新しいとされる要素も存在しています。この角馬出状の虎口空間については、天正12年の小牧・長久手の戦いの際に羽柴（後に豊臣）秀吉が土山に在陣したという記録があることから、この秀吉の布陣によって構築されたものではないかとも考えられています。そうであれば、もともと「甲賀の在地の城郭」として構築されたものが天正年間に新しいスタイルを取り込んだ城郭として改修されたものであるかもしれません。
土山城へは麓の甲賀市土山町から城跡に向かう道があります。国道1号線土山支所前交差点から北へ進み通称トラバースロードへ右に曲がり集落内を北へ進む道へと向かいます。集落内の集会所の前を過ぎると南からの登り口があり、説明板が設置されています。公共交通機関の場合、ＪＲ貴生川駅からのバスを利用すると、近江土山停留所で登り口に徒歩20分程度で向かえます。自動車利用の場合、国道１号線を利用して城跡へ向かうことになりますが、登山口付近に駐車場はありません。駐車には1.5kmほど離れた道の駅あいの土山を利用することができます。
土山城では、平成21年度に甲賀市が実施した里山森林と遺跡整備を兼ねた事業により、城跡内部が間伐され、遺構へ向かう通路・案内看板が整えられました。城跡内部・周囲の見通しがきくようになり、郭の形状や土塁の残存状況も捉えやすくなり、見学し易くなりました。（上垣）
城郭伝言板
全国で実施される城郭関連の催し物についてお知らせします。
※ここに掲載した情報は、各機関のホームページやポスター・チラシから転載したものです。詳細についてはそれぞれの機関にお問い合わせください。
※淡海の城友の会ではここに紹介した催し物への参加申込のあっせんや取り次ぎは一切行っておりません。各催し物の申込先を御確認のうえ、直接お申し込みください。
○滋賀県立安土城考古博物館企画展・滋賀県文化財保護協会調査成果展「戦国の琵琶湖−近江の城の物語（仮）」
会期：平成２２年７月１７日（土）〜９月２６日（日）
会場：滋賀県立安土城考古博物館企画展示室
関連行事
記念シンポジウム
日時：８月１５日（日）１３：００〜１７：００
講師：中井均氏（NPO法人城郭遺産による街づくり協議会理事長）
谷口徹氏（彦根市教育委員会）
渡辺恒一氏（彦根城博物館）
博物館講座「影の者たち−情報ネットワークの担い手−」
日時：７月２５日（日） １３：３０〜
講師：阿刀弘史氏（財団法人滋賀県文化財保護協会）
博物館講座「近江の城・発掘最前線−肥田城・佐和山城・関津城−」
日時：９月１２日（日） １３：３０〜
講師：堀真人氏・小島孝修氏・大崎康文氏（財団法人滋賀県文化財保護協会）
問い合わせ：滋賀県立安土城考古博物館
〒521-1311滋賀県近江八幡市安土町下豊浦6678
TEL0748-46-2424 FAX0748-46-6140
E-mail：gakugei@azuchi-museum.or.jp
URL：http://
○滋賀県立安土城考古博物館テーマ展「�宛�寺所蔵名品展」
安土城内に信長が建てた�宛�寺伝来の信長・安土城関連資料を展示しています。
会期：平成２２年４月２０日（火）〜６月６日（日）
会場：滋賀県立安土城考古博物館第２常設展示室
問い合わせ：滋賀県立安土城考古博物館
○兵庫県立考古博物館特別展「戦国時代の守護・山名氏の城と戦い」
会期：平成２２年４月２３日（金）〜６月２７日（日）
会場：兵庫県立考古博物館特別展示室
関連行事：
特別展講演会
第３回「考古学が明らかにした戦国時代の守護所」
日時：平成２２年５月２９日（土） １３：３０〜１５：００
講師：山上雅弘（兵庫県立考古博物館学芸員）
第４回「山名氏と室町幕府」
日時：平成２２年６月５日（土） １３：３０〜１５：００
講師：小林基伸氏（大手前大学准教授）
第５回「焼物が語る戦国時代」
日時：平成２２年６月１９日（土） １３：００〜１５：００
講師：岡田章一氏（兵庫県立考古博物館学芸員）
会場：全回とも兵庫県立考古博物館講堂 定員１５０名
展示解説会
日時：会期中の毎日曜日 １３：３０〜１４：００ ※毎回テーマを決めて解説を行う
遺跡見学会「山名の城を歩く」
日時：平成２２年５月３０日（日） １３：００〜１５：００
見学先：いすし古代学習館、出石神社、宮内堀脇遺跡、此隅山城跡
定員：４０名
日曜戦国体験
日時：会期中の日曜日 １１：００〜１２：００ １４：００〜１５：００
内容：段ボールの甲冑着付け体験 記念撮影
ペーパクラフト兜造りなど考古博であそぼうから１メニューを実施
問い合わせ：兵庫県立考古博物館 〒６７５−０１４２ 兵庫県加古郡播磨町大中１−１−１
ＴＥＬ０７９−４３７−５５８９
URL http://
○馬の博物館特別展「戦国の城と馬」
会期：４月２４日（土）〜６月６日（日）
会場：馬の博物館 〒231-0853 横浜市中区根岸台１−３
TEL ０４５−６６２−８１０５
URL http://
○岐阜市歴史博物館「美濃と越中を結ぶ考古展? 城と都市〜遺跡から見る戦国と江戸」
会期：７月１６日（金）〜８月２９日（日）
会場：岐阜市歴史博物館 特別展示室
〒500-8003 岐阜市大宮町2-18-1
TEL058-265-0010 FAX058-265-0106
URL http://
○第６回 賎ヶ岳合戦城郭フオーラムと砦跡見学会
日 時 ６月２６日（土）10時〜16時
場 所 滋賀県長浜市余呉町国安 行市山陣城と別所山陣城
集 合 ＪＲ余呉駅10時10分集合 小雨決行
講 師 長谷川博美氏（愛知中世城郭研究会・滋賀民俗学会理事)
参加費 2500円 (資料代、弁当代、バス代を含む) (要予約)
装 備 山城探訪に適した服装・雨具など。
主 催 「賤ヶ岳合戦」城郭フォーラム実行委員会 ウッディパル余呉
後 援 浅井三姉妹キャンペーンイベント実行委員会
問合せ (予約先）ウッディパル余呉 〒529-0515 滋賀県長浜市余呉町中之郷260
TEL：0749-86-4145 FAX：0749-86-4545 wp-yogo@zc.ztv.ne.jp
※御遠方の方は宿泊施設も予約出来ます。
○大阪歴史学会見学検討会「伏見城研究の成果と課題」
日時：平成２２年５月２９日（土）１０：００〜１２：３０ 現地見学
１３：３０〜１７：００ 検討会
場所：現地見学 近鉄京都線「桃山御陵前」駅改札前集合
※京阪「伏見桃山」駅より徒歩２分
検討会 京都市呉竹文化センター（京阪・近鉄「丹波橋」駅西側徒歩１分）
京都市伏見区京町南７丁目 TEL075-603-2463
URL http://
内容：報告
「伏見城と豊臣・徳川初期の城郭構造」中井均氏（NPO法人城郭遺産による街づくり協議会）
「伏見城の機能とその破却について」福島克彦氏（大山崎町歴史資料館）
「伏見城の考古学的調査」丸川義広氏（財団法人京都市埋蔵文化財研究所）
「伏見城城下町の考古学的調査」森島康雄氏（財団法人京都府埋蔵文化財調査研究センター）
コーディネート 仁木宏氏（大阪市立大学）
紙上報告（依頼中）
「伏見城・城下町の研究史と陵墓問題」山田邦和氏（同志社女子大学）
「豊臣期城下町のなかの伏見」仁木宏氏
参加費：無料
問い合わせ http://
参考URL http://
城郭だより 中世近江と佐々木六角氏
中世近江といえば何を思い浮かべるでしょうか。延暦寺、惣村、一向一揆、忍者、お城、堅田衆。様々なイメージが思い浮かぶのではないでしょうか。このように何か一つ、強烈なイメージが無いのが中世近江の特徴といえるでしょう。しかしこのことは逆に、中世近江の様々な勢力がそれぞれに存在感を持っていたことを意味しています。こうした中世近江の特徴を一言で言えば自立性という言葉がふさわしいのではないでしょうか。
このような特徴を持つ中世近江を考える上で、鍵を握るのはやはり近江守護佐々木六角氏でしょう。たしかに佐々木六角氏は、他の戦国大名のような強大な権力をもって近江一国を支配したわけではありません。しかし鎌倉時代から織田信長の近江侵攻まで、佐々木六角氏は近江守護でありつづけました。その支配は専制的なものではなかったかもしれませんが、残された資料からは佐々木六角氏の近江支配の足跡をたどることができ、決して名目的な存在に過ぎなかった訳ではなかったことがうかがえます。
このような佐々木六角氏の近江支配のあり方が、結果的に近江国内の様々な勢力の自立性をはぐくんだと考えられます。この意味で、中世近江を考える上で、佐々木六角氏の支配のあり方を無視することは出来ないのです。しかしこれまでは、他の戦国大名に比べて権力が弱い六角氏は、あまり注目されてきませんでした。中世近江においては、佐々木六角氏の権力の弱さのもとで発展してきた惣村や寺内町といった自治的集落に注目が集まっていたのです。また近江守護権力の構造についても、佐々木六角氏当主自身の権力よりも家臣である在地領主たちの権力構造の解明が主眼とされてきました。このことは観音寺城の理解とも密接に関わっています。従来、観音寺城の特徴である独立性の高い郭群を自立性の高い家臣団屋敷と見て、観音寺城の構造は、家臣団の一揆的結合の上に成り立つ六角氏権力の特徴を反映したものだとする理解が一般的だったのです。
しかしその一方で佐々木六角氏は、戦国期の室町幕府とも深く関わりを持ち、京都を離れ流浪する将軍足利義晴を長く近江国内に抱えるなど、その存在感を示す行動が見られます。また観音寺城についても、城が築かれる以前から山内に存在した観音正寺と観音寺城との関連性が注目され、山内に存在する郭群を城郭に伴うものと考えてよいかどうかが問題となっています。佐々木六角氏そして観音寺城の研究は再検討されるべき時期に来ているといえるのではないでしょうか。 （松下）
事務局からのお願い
城郭伝言板に掲載する情報について会員の皆様からの提供をお待ちしています。展覧会・講演会・現地説明会な
どご存じのことがありましたら、事務局までお知らせ願います。
編集後記
会報第２１号をお届けします。４月２４日に開催した史跡観音寺城跡のスライド発表会は、県内外から１０３人の参加者がありました。予想を超える参加者の来場に、用意した資料が足らず、大変ご迷惑をおかけしました。しかし、こうした状況は観音寺城に対する関心の高まりを示しているようで、大変うれしく思います。今後とも観音寺城を様々な形でＰＲしていきますので、安土城同様、皆様どうぞよろしくお願いします。
「淡海の城」友の会事務局
滋賀県教育委員会事務局文化財保護課城郭調査担当気付
〒５２１−１３１１ 滋賀県近江八幡市安土町下豊浦６６７８ 城郭調査事務所
（近江八幡市と安土町との合併により住居表示が変更になりました）
ＴＥＬ０７４８−４６−６１４４ ＦＡＸ０７４８−４６−６１４５
E-mail：ma16@pref.shiga.lg.jp URL：http://
○●◎◇◆□■△▲▽▼※○●◎◇◆□■△▲▽▼※
「淡海の城」友の会事務局
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城郭調査事務所気付
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お気に入りに登録されている方は変更をお願いします）
Ｅ−ｍａｉｌ：ma16@pref.shiga.lg.jp
（写真１）土山城郭?・?間の堀切
（写真２）土山城郭?の内部
淡海の城（おうみのしろ） 第２１号 平成２２年(2010)５月１３日発行
速報 淡海の城（８）−織田の城・六角の城〜安土城ＶＳ観音寺城
「織田の城はこういうもんだとか六角の城はこういうもんだ」という城郭研究者に期待を持たせそうなお題ですが、正直このお題では無理があります。特に六角の城というのが問題です。六角高頼なのか義賢なのかいつの当主の時なのかという問題、近江国内で六角氏の造った城があるのかという問題、強いて六角氏の本城とされる観音寺城の縄張りに六角氏の意向が入っている箇所があるとするならばどこなのかという問題です。織豊城郭研究の第一人者中井均氏にも尋ねてみましたが分からないと言う返事です。そこで、一応織田の城として安土城、六角氏の城は観音寺城ということにしました。
安土城・観音寺城ともに戦国時代の籠城戦等を想定した城としては、登城路が複数あり、しかも道沿いの谷筋を埋め尽くすように配される雛壇状のあたかも分譲地を思わせる郭群など極めて防御性が低い城であるとされてきま
した。最近の研究報告では、安土城は天皇行幸を計画に入れて造られた「見せる城」、観音寺城は六角家臣（被官）が集住する「一揆的な城」という評価がなされています。
また、山寺の坊跡群を城郭が取り込んでいくという新説があり、観音寺城では西国三十三箇所の観音正寺の本堂以下僧坊が先にできあがっており、観音正寺を利用した結果が、あのような分譲住宅地みたいな城になったといい、石垣も観音正寺が先に築いたというような見解もあります。安土城についても九品寺・安土寺という安土山にあったと伝承されている山寺を利用したという説があります。谷筋に伸びる登城路沿いに雛壇状に立地する郭は山寺の僧坊の配置状況に似ているというのです。
さて、へそまがりの私は、最近両方の城には完成する前の古い時期の城があるのではないかと考えました。
石垣導入以前の城は、郭の周囲を土塁で囲み、敵の侵入を阻害する竪堀・堀切といった空堀を配しています。安土城では、土塁・竪堀・堀切といった土の城の定番となるものが一切見られません。一方、観音寺城では、西の本丸・平井丸・池田丸周辺ではこれらの構造物は見られませんが、東の布施淡路丸・目賀田丸に土塁・堀切・土橋があります。布施淡路丸では、一見石塁で囲われているようですが、北東隅が土塁になっています。もともと土塁であったところを石塁に替えたのではないかと考えますが如何なものでしょう。
また、観音寺城では、郭の一部に小石塁を造るという安土城には見られない手法が取られています。布施淡路丸とその下の段の郭、本丸、池田丸といった郭では、郭全体を石塁で囲むのではなく、それぞれ敵が侵入してきそうな斜面に対してのみ石塁が設けられています。本丸の石塁は二段になっており、明らかに防御を意識したものです。一方で平井丸や池田丸下の木村邸、観音正寺下の進藤邸などでは郭の入り口にあたる部分に石塁を造り、玄関口にあたる虎口とやや離れた位置に潜り門をセットで造るという構造です。安土城では伝台所郭で小石塁に潜り門がついたものが、伝煙硝蔵跡で小石塁が造られていますが、いずれも観音寺城のように居住空間としての郭に伴うものではありません。この観音寺城特有の小石塁で防御する郭に似たものが、安土城に１箇所だけあります。「馬場平」です。能登川方面を望む北面は高い石垣になっていますが、その郭側は武者走り状の高まりになっており、郭平坦部は一段下がった位置にあります。郭側には石垣が無く土の斜面になっています。土の中に栗石等が散見されないことから石垣の石が持ち去られたものではないようです。馬場平は東西に分かれていますが遮断する部分は土塁となっており、南面のみ石垣が貼られています。能登川方面の石垣は土塁を削り込んで施行したのではないかと思われます。土塁の上と郭内の落差は３〜４ｍあり、安土城のほかの郭には見られない構造です。南面には武者走りがあり、それぞれの郭中央に入る石段虎口があります。天主側の郭は虎口が石垣で埋め戻されています。観音寺城の平井・池田丸の虎口の付け方とまさに同じで、安土城の中で最も中世山城的な郭です。観音寺城の郭に類似する構造から元観音寺城の支城があったのではないか、さらにもう一歩進んで、『武功夜話』に記されている目賀田城ではないかという考えなのですがどうでしょうか。
観音寺城では布施淡路丸・目賀田邸が最も早い段階に造られた郭、安土城では馬場平に古相が見られ目賀田城の可能性があるという本題からかなり外れたお話となりましたが、ご容赦下さい。詳しいお話は連続講座「滋賀の城郭」第１回目にしたいと思います。（仲川）
○連続講座「滋賀の城郭」
昨年、好評を得ました連続講座「安土城四百三十年」ですが、今年はテーマを変え、「滋賀の城郭」と題して全７回を開催する予定です。とりあえず第１回は７月17日（土）滋賀県立安土城考古博物館セミナールームで行います。開始時刻等詳細は会報・ホームページなどでおってお知らせします。
○歴史放談「安土 信長の城と城下町」
平成元年度からスタートした特別史跡安土城跡調査整備事業は平成２０年度で２０年間にわたる事業を終了しました。この事業によって、それまで謎に包まれていた安土城の姿の一端が明らかとなり、その成果は多くの人々の注目を集めています。
このフォーラムでは、特別史跡安土城跡調査整備事業２０年間の調査成果を紹介し、その意義付けについて調査担当者が熱く語り合います。また安土城を築いた信長の人物像や城下町を含めた都市安土の全体像についても話題を展開します。ご参加いただいた方々との質疑も行いますので、この機会にぜひとも日頃疑問に思っていることをぶつけてください。
大勢のご参加をお待ちしています。
１．日 時 平成２２年６月５日（土）１５：３０〜１７：００
２．場 所 安土町文芸セミナリヨホール
３．定 員 ３８０名（事前申込制 申し込み多数の場合は先着順）
４．参加費 ３００円（会場整備費・資料代）
５．次 第
（１）主催者挨拶
（２）記録ＶＴＲ「特別史跡安土城跡 調査整備２０年のあゆみ」上映
（３）ミニコンサート
（４）パネルディスカッション「安土 信長の城と城下町」
パネラー 仲川靖（滋賀県教育委員会事務局文化財保護課）
伊庭功（財団法人滋賀県文化財保護協会）
上垣幸徳（滋賀県教育委員会事務局文化財保護課）
コーディネーター 松下浩（滋賀県教育委員会事務局文化財保護課）
６．主 催 滋賀県教育委員会事務局文化財保護課（担当：城郭調査事務所）
財団法人安土町文芸の郷振興事業団
７．後 援 ＢＢＣびわ湖放送
８．問い合わせ 滋賀県教育委員会文化財保護課城郭調査事務所
TEL0748-46-6144 FAX0748-46-6145 E-mail：ma16@pref.shiga.lg.jp
安土町文芸セミナリヨ
滋賀県近江八幡市安土町桑実寺777番地
TEL0748-46-6507 FAX0748-46-6510 E-mail：bungei@zc.ztv.ne.jp
９．申し込み先 安土町文芸セミナリヨ
滋賀県近江八幡市安土町桑実寺777番地
TEL0748-46-6507 FAX0748-46-6510 E-mail：bungei@zc.ztv.ne.jp
シリーズ「淡海の城」（21）−土山城（つちやまじょう）（滋賀県甲賀市北土山）
土山城は鈴鹿山麓を伊勢に向かって延びる東海道沿いに位置する城郭遺跡です。城郭の遺構は近世東海道における滋賀県最後の宿場、土山宿の北東に位置する丘陵上に残存しています。この城は『甲賀郡誌』では文明年間に土山盛忠による築城、天正年間に滝川益一により落城と伝承されています。
土山城の遺構は現在のところ山頂部とそこから南西に延びる尾根上を中心として大小の郭が残存しています。山頂部に一辺50ｍ前後という最大規模を持つ方形の郭?があります。周囲は高さ3m前後の土塁で囲まれ、北および南辺に虎口が1箇所ずつ開口しています。南辺虎口の前面には土塁で囲まれた角馬出状の虎口空間?が存在しています。城内での位置や構造からこの郭が「主郭」と考えられます。郭?の北側には規模の小さな郭がいくつか構築されています。その中には縁辺に土塁をもつ郭もあります。また、主郭の北側には竪堀が配されています。一方、郭?から南西へ伸びる２本の尾根上ではそれぞれ大規模な郭が構築されています。この2本の尾根上に構築された郭は堀切によって区画されています。南側の尾根では土橋により郭間が連絡されている部分もあります。北側の尾根上の郭?は約70ｍ×30ｍと規模が大きく、縁辺北東部に土塁の存在が確認できます。南側の尾根で最も大規模（約50ｍ×25ｍ）な郭である郭?の南西には郭?で見られるのと同様の角馬出状の虎口空間?が接続しています。２本の尾根に挟まれた谷部分も段状になった郭として利用されていると考えられ、現状ではこの部分に山麓から郭?に通じる通路があります。ただ、これらの郭の内部については発掘調査が行われていないため詳しい状況は判明していません。
残存する遺構は土の盛り切りによって構築されています。この構築手法は城郭としては古い手法だといえます。また、郭?のように郭の周囲を土塁で囲むという形態は甲賀郡内に残る城郭遺構に類似しています。しかし、土山城の遺構には角馬出状の虎口空間という城郭としては新しいとされる要素も存在しています。この角馬出状の虎口空間については、天正12年の小牧・長久手の戦いの際に羽柴（後に豊臣）秀吉が土山に在陣したという記録があることから、この秀吉の布陣によって構築されたものではないかとも考えられています。そうであれば、もともと「甲賀の在地の城郭」として構築されたものが天正年間に新しいスタイルを取り込んだ城郭として改修されたものであるかもしれません。
土山城へは麓の甲賀市土山町から城跡に向かう道があります。国道1号線土山支所前交差点から北へ進み通称トラバースロードへ右に曲がり集落内を北へ進む道へと向かいます。集落内の集会所の前を過ぎると南からの登り口があり、説明板が設置されています。公共交通機関の場合、ＪＲ貴生川駅からのバスを利用すると、近江土山停留所で登り口に徒歩20分程度で向かえます。自動車利用の場合、国道１号線を利用して城跡へ向かうことになりますが、登山口付近に駐車場はありません。駐車には1.5kmほど離れた道の駅あいの土山を利用することができます。
土山城では、平成21年度に甲賀市が実施した里山森林と遺跡整備を兼ねた事業により、城跡内部が間伐され、遺構へ向かう通路・案内看板が整えられました。城跡内部・周囲の見通しがきくようになり、郭の形状や土塁の残存状況も捉えやすくなり、見学し易くなりました。（上垣）
城郭伝言板
全国で実施される城郭関連の催し物についてお知らせします。
※ここに掲載した情報は、各機関のホームページやポスター・チラシから転載したものです。詳細についてはそれぞれの機関にお問い合わせください。
※淡海の城友の会ではここに紹介した催し物への参加申込のあっせんや取り次ぎは一切行っておりません。各催し物の申込先を御確認のうえ、直接お申し込みください。
○滋賀県立安土城考古博物館企画展・滋賀県文化財保護協会調査成果展「戦国の琵琶湖−近江の城の物語（仮）」
会期：平成２２年７月１７日（土）〜９月２６日（日）
会場：滋賀県立安土城考古博物館企画展示室
関連行事
記念シンポジウム
日時：８月１５日（日）１３：００〜１７：００
講師：中井均氏（NPO法人城郭遺産による街づくり協議会理事長）
谷口徹氏（彦根市教育委員会）
渡辺恒一氏（彦根城博物館）
博物館講座「影の者たち−情報ネットワークの担い手−」
日時：７月２５日（日） １３：３０〜
講師：阿刀弘史氏（財団法人滋賀県文化財保護協会）
博物館講座「近江の城・発掘最前線−肥田城・佐和山城・関津城−」
日時：９月１２日（日） １３：３０〜
講師：堀真人氏・小島孝修氏・大崎康文氏（財団法人滋賀県文化財保護協会）
問い合わせ：滋賀県立安土城考古博物館
〒521-1311滋賀県近江八幡市安土町下豊浦6678
TEL0748-46-2424 FAX0748-46-6140
E-mail：gakugei@azuchi-museum.or.jp
URL：http://
○滋賀県立安土城考古博物館テーマ展「�宛�寺所蔵名品展」
安土城内に信長が建てた�宛�寺伝来の信長・安土城関連資料を展示しています。
会期：平成２２年４月２０日（火）〜６月６日（日）
会場：滋賀県立安土城考古博物館第２常設展示室
問い合わせ：滋賀県立安土城考古博物館
○兵庫県立考古博物館特別展「戦国時代の守護・山名氏の城と戦い」
会期：平成２２年４月２３日（金）〜６月２７日（日）
会場：兵庫県立考古博物館特別展示室
関連行事：
特別展講演会
第３回「考古学が明らかにした戦国時代の守護所」
日時：平成２２年５月２９日（土） １３：３０〜１５：００
講師：山上雅弘（兵庫県立考古博物館学芸員）
第４回「山名氏と室町幕府」
日時：平成２２年６月５日（土） １３：３０〜１５：００
講師：小林基伸氏（大手前大学准教授）
第５回「焼物が語る戦国時代」
日時：平成２２年６月１９日（土） １３：００〜１５：００
講師：岡田章一氏（兵庫県立考古博物館学芸員）
会場：全回とも兵庫県立考古博物館講堂 定員１５０名
展示解説会
日時：会期中の毎日曜日 １３：３０〜１４：００ ※毎回テーマを決めて解説を行う
遺跡見学会「山名の城を歩く」
日時：平成２２年５月３０日（日） １３：００〜１５：００
見学先：いすし古代学習館、出石神社、宮内堀脇遺跡、此隅山城跡
定員：４０名
日曜戦国体験
日時：会期中の日曜日 １１：００〜１２：００ １４：００〜１５：００
内容：段ボールの甲冑着付け体験 記念撮影
ペーパクラフト兜造りなど考古博であそぼうから１メニューを実施
問い合わせ：兵庫県立考古博物館 〒６７５−０１４２ 兵庫県加古郡播磨町大中１−１−１
ＴＥＬ０７９−４３７−５５８９
URL http://
○馬の博物館特別展「戦国の城と馬」
会期：４月２４日（土）〜６月６日（日）
会場：馬の博物館 〒231-0853 横浜市中区根岸台１−３
TEL ０４５−６６２−８１０５
URL http://
○岐阜市歴史博物館「美濃と越中を結ぶ考古展? 城と都市〜遺跡から見る戦国と江戸」
会期：７月１６日（金）〜８月２９日（日）
会場：岐阜市歴史博物館 特別展示室
〒500-8003 岐阜市大宮町2-18-1
TEL058-265-0010 FAX058-265-0106
URL http://
○第６回 賎ヶ岳合戦城郭フオーラムと砦跡見学会
日 時 ６月２６日（土）10時〜16時
場 所 滋賀県長浜市余呉町国安 行市山陣城と別所山陣城
集 合 ＪＲ余呉駅10時10分集合 小雨決行
講 師 長谷川博美氏（愛知中世城郭研究会・滋賀民俗学会理事)
参加費 2500円 (資料代、弁当代、バス代を含む) (要予約)
装 備 山城探訪に適した服装・雨具など。
主 催 「賤ヶ岳合戦」城郭フォーラム実行委員会 ウッディパル余呉
後 援 浅井三姉妹キャンペーンイベント実行委員会
問合せ (予約先）ウッディパル余呉 〒529-0515 滋賀県長浜市余呉町中之郷260
TEL：0749-86-4145 FAX：0749-86-4545 wp-yogo@zc.ztv.ne.jp
※御遠方の方は宿泊施設も予約出来ます。
○大阪歴史学会見学検討会「伏見城研究の成果と課題」
日時：平成２２年５月２９日（土）１０：００〜１２：３０ 現地見学
１３：３０〜１７：００ 検討会
場所：現地見学 近鉄京都線「桃山御陵前」駅改札前集合
※京阪「伏見桃山」駅より徒歩２分
検討会 京都市呉竹文化センター（京阪・近鉄「丹波橋」駅西側徒歩１分）
京都市伏見区京町南７丁目 TEL075-603-2463
URL http://
内容：報告
「伏見城と豊臣・徳川初期の城郭構造」中井均氏（NPO法人城郭遺産による街づくり協議会）
「伏見城の機能とその破却について」福島克彦氏（大山崎町歴史資料館）
「伏見城の考古学的調査」丸川義広氏（財団法人京都市埋蔵文化財研究所）
「伏見城城下町の考古学的調査」森島康雄氏（財団法人京都府埋蔵文化財調査研究センター）
コーディネート 仁木宏氏（大阪市立大学）
紙上報告（依頼中）
「伏見城・城下町の研究史と陵墓問題」山田邦和氏（同志社女子大学）
「豊臣期城下町のなかの伏見」仁木宏氏
参加費：無料
問い合わせ http://
参考URL http://
城郭だより 中世近江と佐々木六角氏
中世近江といえば何を思い浮かべるでしょうか。延暦寺、惣村、一向一揆、忍者、お城、堅田衆。様々なイメージが思い浮かぶのではないでしょうか。このように何か一つ、強烈なイメージが無いのが中世近江の特徴といえるでしょう。しかしこのことは逆に、中世近江の様々な勢力がそれぞれに存在感を持っていたことを意味しています。こうした中世近江の特徴を一言で言えば自立性という言葉がふさわしいのではないでしょうか。
このような特徴を持つ中世近江を考える上で、鍵を握るのはやはり近江守護佐々木六角氏でしょう。たしかに佐々木六角氏は、他の戦国大名のような強大な権力をもって近江一国を支配したわけではありません。しかし鎌倉時代から織田信長の近江侵攻まで、佐々木六角氏は近江守護でありつづけました。その支配は専制的なものではなかったかもしれませんが、残された資料からは佐々木六角氏の近江支配の足跡をたどることができ、決して名目的な存在に過ぎなかった訳ではなかったことがうかがえます。
このような佐々木六角氏の近江支配のあり方が、結果的に近江国内の様々な勢力の自立性をはぐくんだと考えられます。この意味で、中世近江を考える上で、佐々木六角氏の支配のあり方を無視することは出来ないのです。しかしこれまでは、他の戦国大名に比べて権力が弱い六角氏は、あまり注目されてきませんでした。中世近江においては、佐々木六角氏の権力の弱さのもとで発展してきた惣村や寺内町といった自治的集落に注目が集まっていたのです。また近江守護権力の構造についても、佐々木六角氏当主自身の権力よりも家臣である在地領主たちの権力構造の解明が主眼とされてきました。このことは観音寺城の理解とも密接に関わっています。従来、観音寺城の特徴である独立性の高い郭群を自立性の高い家臣団屋敷と見て、観音寺城の構造は、家臣団の一揆的結合の上に成り立つ六角氏権力の特徴を反映したものだとする理解が一般的だったのです。
しかしその一方で佐々木六角氏は、戦国期の室町幕府とも深く関わりを持ち、京都を離れ流浪する将軍足利義晴を長く近江国内に抱えるなど、その存在感を示す行動が見られます。また観音寺城についても、城が築かれる以前から山内に存在した観音正寺と観音寺城との関連性が注目され、山内に存在する郭群を城郭に伴うものと考えてよいかどうかが問題となっています。佐々木六角氏そして観音寺城の研究は再検討されるべき時期に来ているといえるのではないでしょうか。 （松下）
事務局からのお願い
城郭伝言板に掲載する情報について会員の皆様からの提供をお待ちしています。展覧会・講演会・現地説明会な
どご存じのことがありましたら、事務局までお知らせ願います。
編集後記
会報第２１号をお届けします。４月２４日に開催した史跡観音寺城跡のスライド発表会は、県内外から１０３人の参加者がありました。予想を超える参加者の来場に、用意した資料が足らず、大変ご迷惑をおかけしました。しかし、こうした状況は観音寺城に対する関心の高まりを示しているようで、大変うれしく思います。今後とも観音寺城を様々な形でＰＲしていきますので、安土城同様、皆様どうぞよろしくお願いします。
「淡海の城」友の会事務局
滋賀県教育委員会事務局文化財保護課城郭調査担当気付
〒５２１−１３１１ 滋賀県近江八幡市安土町下豊浦６６７８ 城郭調査事務所
（近江八幡市と安土町との合併により住居表示が変更になりました）
ＴＥＬ０７４８−４６−６１４４ ＦＡＸ０７４８−４６−６１４５
E-mail：ma16@pref.shiga.lg.jp URL：http://
○●◎◇◆□■△▲▽▼※○●◎◇◆□■△▲▽▼※
「淡海の城」友の会事務局
滋賀県教育委員会事務局文化財保護課
城郭調査事務所気付
〒５２１−１３１１
滋賀県近江八幡市安土町下豊浦６６７８
（近江八幡市と安土町との合併により住所表示が変わりました）
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