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機動戦士ガンダムver.2.0コミュの帝国編 なんでもアリの物語トピ第3巻

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前の方が書かれた内容に絡むように、物語を自由に続けてください。

展開は何でもありです?!



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には、ご協力をお願いします。


超兵器は、もう当たり前になりつつありますからね…右斜め下右斜め下右斜め下

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〜DGの脅威 ユーフォリア視点編〜


辺りはすでに、けたたましい発射音と爆煙につつまれていた。 再生能力を持つ敵を相手にする以上、対DG性能を持つ実弾兵器が中心になるからだ。 詳しく見てみると、敵MSに当たった際に爆発せずに機体内に残る、ショットランサーがかなり有効なようだ。





霧雨「…僕の部隊を甘く見すぎるとこうなるんだ」


霧雨はまだ憤懣やる方ないようだったが、それを見たユヅキは苦笑いしていた。



ケイ「司令が練兵に熱心だった成果が出たな。 ユーフォリアは弱いと口しがない者は言うが、ユーフォリア軍の特性は、集団による組織的戦術にある。 すべて司令の指導の賜物だ」


ユヅキは司令である霧雨を持ち上げながらも、事態を冷静に分析していた。 とりあえず多数対多数、しかもユーフォリアが倍以上の数を誇る現状では、たとえDGMSと言えど、必ずしも優位ではないようだ。





レイ「再感染しないのは、本当やりやすいですよ。 私に言わせれば、再生なんかより百倍厄介でしたから」


こう言うのは、実際マリアベルのゾンビバスターガンダムと死闘を演じたレイだった。

再生能力を有し、個々の戦闘性能は宇宙での無人ゾンビMSを大きく上回る、今回のDGMSだが、敵に触れられれば感染し、味方が敵になってしまう悲劇を自らの力で乗り越えた彼にすれば、また違う感慨があるのかも知れなかった。





ケイ「…化け物である部分と、粗雑な量産兵器である面を併せ持っているな。 それがこいつらの最大の長所であり、同時に短所なんだろう」


霧雨「それくらい僕にもわかる。 短い間に圧倒的な数のMSを投入できる。 だが、その性能はともかく、戦闘行動はいかにもワンパターンだ。 それを再生機能で無理矢理補っているんだろう。  …ん?」


不意に霧雨が怪訝な表情をした。 優位と思われた戦況が、その一点だけ跳ね返されている。 何か固い物に水の流れが突き当たったような風にも見える。





シュール「…ああ、あの指揮官ゾンビでしゅか。 あの機体だけは、動きが違いましゅたかりゃ」


シュールはそう簡単に言い放った。 元が帝国でブラックが見つけ出したシュールは、霧雨の側近であるリバルとは、ほとんど接点がなかったのだ。





霧雨「…リバル…」


霧雨は複雑な表情だ。





ケイ「…リバル副司令は戦死したんだ。 割り切るしかないだろう」


ユヅキはそんな霧雨に声をかけるが…。





霧雨「…感傷はマリアベルの時に棄てた。 わかっている。 ゾンビに名前も何もないことくらい。 敵のろ獲兵器は味方にいらない混乱をもたらすからね? 速やかに破壊するだけさ」


それだけ言うと、霧雨は自らのストライクフリーダムをその真っ只中に突っ込ませた。





ケイ「レイ大佐。 乱戦では、ファンネルの支援はやりにくいか? それならば私が…」


レイ「…ユヅキ大佐。 あなたはまだ、霧雨を甘く見ていますよ。 リバルとは仲も良かったんですけれど、模擬戦において私はともかく、霧雨に勝ったことはありません。 つまり、そういうことです」


ユヅキの言葉を遮ったレイは、冷静にそう告げた。





そしてその言葉に違わず、しばらくして再び姿を表した霧雨は、デュエルガンダムの頭部だけを手にしており、その足元には、対DGショットランサーで四方八方から貫かれて止めを刺された、デュエルガンダムの機体が横たわっていた…。


〜DGの脅威 総括編(だって書き込みないしあせあせ(飛び散る汗))〜


ガンダムヘッド、ついでデスアーミーによる攻撃は、各地で驚異的な戦果を上げていた。


まずインドラ軍は、襲撃当夜に「楽園の剣」ダインら軍首脳部が運悪く前線を外していた。 そのために軍首脳部将校に戦死者こそ出なかったが、前線では混乱を鎮めることができなかった。 インドラ兵は、個別に見れば果敢な反撃を行ったのだが、いかんせん統制はとれておらず、同士討ちや部分的な突出を繰り返し、損傷撃破はインドラ全軍の7割にも達した。 そして、すべての攻撃を撃退した時には、まるで半身不随の有り様とすら言える状況だった。


一方でユーフォリア軍は、ユヅキの的確な指揮により速やかに撤退した結果、被害は3割程に留まっていた。 副司令のリバルこそ戦死したものの、反撃を行う準備まで整っており、その逃げ方は極めて巧みでと言えたが、その代償として、パンドラール侵攻以来の占領地のすべてを失う、100キロ以上の後退を余儀なくされていた。


そしてプリベンターは、そんな窮地を支えるべく、各地で奮闘を…

いま現在も続けていた。


そのためにインドラ、ユーフォリア両軍の被害を抑えるのには一枚も二枚も寄与したが、その手法は現れたエージェントに闇雲に戦いを仕掛けるものであり、戦線全体を見る目に欠けていた…。







(ルムメニゲ視点)


ルムメニゲ「もう少しで敵は壊滅するでしょう。 あと一押しです」


ルムメニゲは力強くそう語ったが…。





エッフェンベルグ「いや。 ここまでだ。 取り返した地に腰を据え、固く守る」


ルムメニゲ「…なぜ? いまが好機とみな勢いづいて…」


エッフェンベルグの言葉に、普段は従順なルムメニゲもやや声を荒げた。





エッフェンベルグ「…たしかにここで攻めれば、反帝国勢力は壊滅しよう。 だが、それからはどうなる? いまは乱れている敵も、いずれは統制を取り戻す。 深入りすれば、敵も傷つくが我らも無事では済まない。 いま兵をまとめれば、敵は痛手を受けているが、我らはほぼ無傷だ。 いままで各地で帝国が負け続けたことを差し引いても、その力は互角になったと言えるだろう」



ルムメニゲ「…互角、でよいと?」


エッフェンベルグ「ルムメニゲ。 帝国がすべてを握ろうとした7年前。 世界はどうなった?」


ルムメニゲ「……。」


その場をしばらくの間、沈黙が支配する。





エッフェンベルグ「…それに、いま後方のパンドラール防衛大隊から連絡があった。 敵のものと思われる、極めて防御の固いMS数機が、我らの背後を脅かすように動いているそうだ。 援軍は間に合うまいが、もしもの時に足元をすくわれぬようにしなければな」


ルムメニゲ「…わかりました」


こうして帝国軍は、丸1日に及んだ追撃を、自らの被害を出さないうちに切り上げた。

これにより、反帝国各勢力は九死に一生を得たが、エッフェンベルグの言葉通り、パンドラールに対して打つ手をすべて失ったのも事実であった…。


〜レオン決戦編〜


時間は少しだけ遡る。

反帝国勢力が大損害を受け、帝国軍がその追撃に全力を注ぐなか、レオンはパンドラールに張り巡らせた諜報機関の総力を結集し、帝国議会に潜入を果たしていた。 潜入に際しては、衛兵は元より、一部の議員や果ては掃除婦までに手を回し、誰にも気付かれることなく、議事堂にまで到達したのだ。





そして、時刻はちょうど9時を差し、帝国元老院の定例議会は始まりの時を告げた。



ジェイソン「…これより第14回、帝国元老院定例議会を開催させていただきます」


議会の開催を宣言したのは、エージェントであるだけでなく、帝国貴族にもその籍を置くジェイソン・ヤヌスだった。 ザキラが自ら出撃するに当たり、パンドラールのすべてを任されたのが、このジェイソン・ヤヌスとイエスマンの2人だった。

…とは言え、議員たちの間では、この2人をザキラの側近ぐらいにしか思っていない者も多い。 ましてやDGのことなど、ちょっとした新兵器ぐらいだとしか知らされておらず、ザキラの情報統制は完璧であった。







レオン「…予定外だな。 後に残るとすれば、自身の戦闘能力は常人並みのイエスマンだけだということだったが…」


レオンは軽く舌打ちした。 予想では、エージェントはみな出撃し、帝国軍主力もパンドラールから離れるはずだった。 防衛大隊も、いまモカが誘い出している。 完全に空のはずのパンドラール、しかも帝国議会に予定外のエージェントが1人いるのだ。





元老院議員「申し訳ありません、殿下。 最近、ザキラはもとより、その一派が議会に顔を出すことはありませんでした。 それゆえ、つい…」


変装したレオンの隣に座るその議員は、恐縮した表情だ。





レオン「…いや、いい。 作戦に予想外の事態などつきものだ。 奴とは戦わないようにしよう。 予定は変えればいいだけだからな?」


元老院議員「…で、殿下?!」


暑くもないのに、額に汗をたらしているその議員にこう言うと、レオンはすっと席を立った。







レオン「ジェイソン議長代行。 開会さっそくで悪いが、1つ採決をお願いしたい議題があるのだが?」


レオンは凛とした声を上げた。





ジェイソン「…構いませんよ? 遠慮なく言って下さい」


ジェイソンはどうやら、いま自分が話している相手が、レオンだと気がついていないらしい。

というより、7年前に15歳で帝国を出奔したレオンを、手配書でしか知らない者も多かったのだ。





レオン「元来、帝国とは皇帝が君臨、統治する国である。 だが、帝国は先帝亡き後、次の皇帝も立てられず、その権威は地に落ちたままだ。 それゆえ、新たに皇帝を… とまでは言わぬが、まず皇帝の全権たる摂政を置き、世界にその復権を示すべきと思うが、いかがか?」


ジェイソン「それは結構なことです。 ですが生憎、摂政を務めるべき人物がおりません。 帝国憲法によれば、摂政は皇帝の身に変事があった際、皇族からのみ選ばれる役職。 いま帝国に残る皇族と言えば、ベルリンのドラグノック卿だけですが、再三の要請にも関わらず、就任には至っておりません。 従って、主旨は理解できますが、適任者不在ゆえ、実現不可能なことです」


ジェイソンの言葉に同調するように、周囲からも声が上がる。 ザキラは独裁を決め込んでいたが、いつの時代にも、独裁者の懐で甘い蜜を吸う者もいるのだ。





レオン「…適任者ならば、心配無用に願いたい。 私が立候補させて頂くからな!」


その言葉に、議会が騒然となった。 話し声でざわめき、何も声が聞こえないような喧騒さだ。





ジェイソン「あなた帝国憲法も覚えていないのですか? 先ほど言ったようにですね、摂政は… !!」


そこまで言ったジェイソンの表情が凍りついた…。

バイモルフ:《少佐〜、インドラ軍叩くより、プリベンターを狩りたいんだけど、駄目??だって毎度僕たちが遣ってるの、ほぼインドラ軍じゃん》

マックス:《そういうな。メルダーフロイラインを指揮官にして総出で奴らの脱出経路を探したが、奴ら、数がそれほど多く無かったことをいいことに、奇襲をしては綺麗に退却ばかりしておる。痕跡をほとんど残さず、だ。敵ながら、これはあっぱれとしか言いようが無いだろう。》

バイモルフ:《でも、これじゃ、プリベンターに主力機のデータを教えちゃったみたいで不快じゃないか。あいつら本当うざいよ。》

ザキラ:《《マックス並びにメルダーフロイライン達に次ぐ。お前達は引き続き新型のデスシリーズの活用を許可する。インドラの戦意を可能な限り、徹底的に削げ。プリベンターは所詮は小数。局地的敗北、エースクラス機撃墜による我が軍の逆撃の足止めは認めるが、今最優先すべきことは、インドラ軍の殲滅、少なくとも国境までの戦線離脱をさせて包囲戦線を緩くさせることだ。上手くいけば反乱軍を萎縮させることが出来る。それとバイモルフ!》》

バイモルフ:《…解ってますよ。プリベンターの奇襲ポイントを引き続き調べて、殲滅させろってことでしょ?》

少し不機嫌なバイモルフを余所に、次第にインドラ方面の退却は熾烈を極めていた…。

−プリベンターサイド−

「…今日もまいたか。悔しいが、インドラの助力が無ければ、日毎に我が東欧方面軍も戦線が維持出来るか怪しいな。何より………」

??:………すまん。大言を吐いてこの様だ。機体を失っておちおち逃げ帰って来る俺なぞ、むしろ、殺して欲しいくらいだ………。

「勝敗は時の常さ。まあ、コアブロックシステム付きだったとはいえ、よく帰って来たことをむしろ労う。あの場合、相手が悪い。よって、途中からの敵前逃亡はお咎め無しと俺はする気満々、だが、な。せめて、また戦線復帰するなら、ボコボコに凹んで使い物にならなくなってる貴方の義手を直してからにしてくれ。」

トロンベ:また、生き恥を晒せと?東欧総司令は相変わらず趣味が悪い。だが…恩に切る。

ヤス:…親方〜。

トロンベ:…情けない声を出すな。悔しいが、ミヤイの言いたいことの通り、俺は一時、戦線を離脱する。その間はきちんと言うことを聞け。

ヤス:…へへ。親方みたいに生き残っても包帯ぐるぐる巻きじゃ、恰好が付かないしな。

トロンベ:…言わせておけば!……まあ、そういうことだ。

ベコベコに凹んだ四枚羽のコアファイターらしきものが輸送車に積まれるのを確認すると、負傷せし老将はその車と共に一足先に東欧へと消えて行く。プリベンター東欧方面軍はインドラの状況によっては、一時、本拠への退却を考えねばならなくなりつつあった………。
ザキラ:(《突然、議会に摂政を勤めると宣言した者が現れただと…?)》

ジェイソン:(《…は。あまりの事態に議会は騒然としております。今なら、例え本物だろうと、無理矢理跡付けで皇族を語る不届き者とレッテルを張って、演説後に処分してみることも可能ですが、いかが致しましょう??)》

ザキラ:(《…任せる。そうか。内の反乱分子で死んだと思っていた者の中にも取りこぼしがまだ残っていたか。》)

ジェイソン:(《…といいますと?)》

ザキラ:(《…トルネードが生きていた。よもや、後一歩の所で本人に逃げられるとは思わなかったが。奴め、鼬の最後っ屁のように機体の片足と片手を対DG兵器とやらで遣りおった。ナノマシンが侵食する前に破損部ごと切り落とし、再生させた後、エッフェンベルグ、ルムメニゲ達と合流し、帰還するつもりだ。風上が悪いようなら、イエスマンと共謀して時間を稼げ。その時は私自らがなんとかしてみせよう。》)

一方で裏で脳粒子波で、場合によっては、暗殺も厭わないような雰囲気が漂う会話をする戦場のザキラと内のエージェント達。レオンの運命やいかに……!?

〜レオン決戦編〜


レオン「話は終わったかな? 議長代行」


レオンはそうジェイソンに声をかけた。 議会はレオンの突然の出現に、協議ためとして挟んだ、15分の休憩が終わったばかりだ。




ジェイソン「…いいでしょう。 あなたがその気なら、受けて立ちますよ? その後で…」


ジェイソンはレオンに小声で囁くが、レオンも一歩も引かない。



レオン「…意気込まれるのは結構だが、良からぬことは考えられぬことだ。 仮にもここは議会の場、手荒な真似をすれば、ザキラがせっかく得た帝国を失い、ただの野良犬同士の喧嘩になるからな」


その瞬間、ジェイソンはレオンの意図を察知した。 ザキラは帝国の議長である。 いくら方便とは言っても、その地位にある限り、帝国軍はその指揮に従わざるを得ないし、DGの研究にも際限なく予算を使えた。

だが、この場で皇族たるレオンを力で排除すれば、ザキラの建前は失われ、レオンとザキラの内戦となる。 最悪の場合、逆にザキラが帝国に追われかねない。





ジェイソン「…議場においでの皆様には、大変お騒がせをいたしました。 これより議会を再開いたします。 なお、先ほどのレオンハルト皇子… 殿下の、摂政立候補にあっては、帝国法第20条に乗っとり、採決によってこれを決したいて思いますがよろしいですか?」


レオン「…異議はない。 というより、それしか方法はなかろう?」


顔をひきつらせ、なんとか言葉を繋ぐジェイソンに対し、レオンは涼しい顔をしている。





ジェイソン「…それでは、摂政就任に賛成の方の起立をお願いします!」


…議場は静まり返ったままだった。


〜レオン決戦編〜


ジェイソン「…ふっ。 では反対多数で否決と…」


ようやく余裕の表情を浮かべたジェイソンあったが…。





レオン「そう結論を急ぐものではない、議長代行。 議決を取るのは結構だが、その前に聞いておきたいことがある」


レオンはそう言って、壇上に上がった。





レオン「まず皆に確認しておきたいことがある。 元老院の議員の数だ」


レオンの言葉に、議場は再びざわめき出す。





レオン「本来の元老院の定数は80。 それに、皇族と公爵に上流侯爵、それと帝国に大きな貢献をしたる者を合わせて、元老院は構成されることになっている。 先ほどそれを計算してみたが、その数は114名になる」


ジェイソン「……。」





レオン「…だが残念なことに、その114名のうち、この戦いで戦死された方が16名、他にも病ですでに亡くなられている方が4名みえる。 従って、現在の元老院定数は94名だ」


レオンはそこで一旦言葉を切り、横に置いてあった水を口にした。 その落ち着き払った態度に、議場が焦れるのがわかる。





レオン「…よってその94名で議決をと言いたいところだが、この94名の中にも、生きてはいるが、元老院議員にふさわしくない者がいる。 帝国に反乱をなしたる者や、それに加担した者、他にも悪事に手を染めた者たちだ」


レオンが左手で合図すると、壇上のレオンの背後と、議員それぞれの机に備え付けられたモニターに、それらの議員の名前が映し出された。

それらのほとんどがメリャーナやマヒロといった、すでに帝国からの離脱を宣言した者とその支持者の名前だったが、中には顔色を変えている議員もいた。 インドラとの物資の密輸や、帝国内での不正を指摘された議員たちだ。





レオン「これら無法者たちを除名するのに、皆の異存はないと思う。 無法者の数は、悲しいことに33名にも上った。 よって議決は、残った61名によって採りたいと思うがどうだろうか?」



ジェイソン「…ですが定数が何人で、議決を何名で採ろうと、賛成する人間がいなければどうにもなりませんよ」


ジェイソンは奥歯をギリギリと噛みしめながらも、そう言葉を吐くが…。





レオン「もちろん。 だが、そんな見通しもなく、私が立候補したとでも思っておられるのか? ここに西欧貴族と月貴族を主体とする25名の委任状がある」


レオンはそう言って紙の束をジェイソンに突きつけた。

つまり現在は賛成25に対し議決権があるとされた者が、残り36名。 6名以上の造反があれば、レオンの摂政就任は賛成多数で可決されてしまうのだ…。

レオンの根回しのよさに、ひやりとするジェイソンを余所に、意外にもニヤリとした男がいた。ずっと不気味に沈黙を保っていたイエスマンである。

イエスマン:(…思い出した。あいつは、ザキラ様に盾突き、出奔して行方をくらました、あの時の悪ガキ皇子か。ふむ…面白いな。ザキラ様の体制も悪くは無かったが、レオンの体制もまた、見て見たくなった。だが、これだけでは、決断するには趣としてどうも……ふぅむ…………。)

ジェイソン:……イエスマン、何が可笑しい!?

イエスマン:…ヤー、何でも無い。ただ…

ジェイソン:…何だね?

イエスマン:スマンねー、少し席を外させてくれ。花を摘みたくなった。歳のせいか急に危なくなる時があってねー。

アイコンタクトをする、よく解らないイエスマンに忍び笑いすら聞こえだした。彼を見兼ねたジェイソンは、

ジェイソン:……早く行け。《(何か妙案でも思い付いたのか?)》

イエスマン:…オー、イエース。《(まあ、やってみるさ〜。)》

脳粒子波で二人しか解せない短い会話をさりげなく交わすとイエスマンは議会から一時席を外して行った。レオンが部下に命じて、不審な行動が無いか確認させる為に、イエスマンの後を付けさせたのは言うまでもない。ただ、この時点でイエスマンの真意に気付いた者は一人もいなかった。仲間である筈のジェイソンですらも………。

〜レオン決戦編〜


そんなイエスマンの様子を気にしながらも、レオンはあえて淡々と事を進めた。 レオンがイエスマンを甘く見た訳ではなかったが、この議会においてなら、ジェイソンもイエスマンも1票を持つ一議員に過ぎない。

企みようはいかようにもあるとは思っていたが、この場だけは、なんとか凌ぐしかない。 結果、摂政になってしまえば


議長の罷免の権限がレオンに与えられることになる


ドクロ議員や軍人を辞めさせたり、もちろん勝手に罪を着せたりはできないがドクロ






…それから後は、自分とザキラで政争をするしかないが、そうできれば逆に、DGはザキラの足枷になるはずと見ていた。 ふつうの神経の人間ならば、DGを心強いというより不気味に感じるはずだから…。







レオン「…イエスマンが戻り次第、採決といこうか。 君たちは、遠慮なく反対票を投じたまえ。 君たちがこの6、7年、議員の諸君にどれだけ甘い汁を吸わせていたかわかる、よい機会だ。 人の心は脆いものだ。 ここで私に寝返れば、次の政権において私はその人物を重用せざるを得なくなる…。  しかし、寝返ったにも関わらず否決されれば、その人物に将来はない。 さてさて悩みどころではあるな?」


レオンはことさらにジェイソンに余裕に振る舞ってみせた。 さらにその声を、わざと議場に漏れ聞こえるように。







…だが、危機はレオンにも訪れていたのだ。

なぜレオンが、こうも余裕ぶった態度でいるのか?



その理由は、ジェイソンとイエスマンの存在自身にあった。

遠慮なく1票をと言ったが、レオンが事前に調略した議員は、実はこの時点では、過半数に達していなかったのだ。 出てこない予定の2人が出てきたいま、その2票と、存在からくるインパクトは大きい。


つまりレオンとしては、いかにも勝利を確信した態度で、ザキラに尻尾を振っていた議員を、いまこの場で寝返れらせなければならないのだった…。

帝国兵?:(今のところ不審な感じは無いが……)

−議会、公衆トイレ−

場所は代わってイエスマンは呑気に用を足している。最も、目が笑ってない様に見えて不気味だが。。。不審に思い、護衛に化けた工作員の彼は特殊サーモを使い、イエスマンを見ると変化が見られていた。

帝国兵?:(脳の辺りで、何か妙な波長を感知……?これが噂の…)

イエスマン:《(チャンスをあげるよ。エージェントG……作戦って程でも無いけど、僕がレオン有利に運ぶようにわざとして気を引くよ。ランドルフの時は戴冠の話の時はこれでころっと騙されたしね。議決の後、彼らを安心させるそぶりをしつつ、移動経路を誘導させてみる。君は孤立した一時を見計らって、不慮の凶刃に粉して一行を暗殺しろ。デスがいなくなった今、代わりが出来るのは君しかいない。頼んだよ。ジェイソン、話は聞いたね?)》

ジェイソン:《(布石の毒か。不快だけど他に名案が無いしな。合図はお前に一任する。)》

ゴウ:《(本当に上手く行くのだな?俺なら確かに仕留めれる自信はあるが……)》

イエスマン:《(……オーイエース。任せてよ。)》

ゴウ:《(……承知した。)》

イエスマン:(……馬鹿が。僕の真意も気付かずに。ふふふふふ………。)

イエスマン:《(…捕まえてごらんよ。暗殺者を………)》…おい、衛兵。

帝国兵?:……は!?は!!!

イエスマン:殿下にあうことがあれば伝えな。これからの戯曲の武勇伝の内容によっては僕は心から、《宇宙(そら)の一筆》になってもいいと。

帝国兵?:…は、はあ。

−議会−

レオン:(…今の、声は…?)
ジェイソン:おや、どうしたのですかね…レオンハルト皇子殿下?

レオン:そちらこそ、僅かの間だが、放心していたように見えたが。

レオンは確かに暗殺者を捕まえて見せろと言う幻聴のようなものを聞いた。不思議なことにジェイソンにも、他の者も一切聞こえなかった様だが…。しかし、レオンにはそんな事を気にする余裕も今は無い。その後、ジェイソンと意味もなく睨み合い、気まずい沈黙が流れ出した所で、議会の扉を開いてイエスマンが帰って来た。

イエスマン:…ヤー、待たせて申し訳無い。秘書、僕がいない間の演説の記録を…………いや、聞くまでも無いか。だが、敢えて聞かせて貰おう。ジェイソン、ふりょ………レオンハルト皇子殿下の演説に落ち度は?

ジェイソン:見ての通りだ……早く席に着け。決議がとれないだろう?

言葉とは裏腹に、油断ならない状態にこめかみと、手が震えてるジェイソンにイエスマンは相変わらず飄々とした態度を続ける。きわめつけは………。

イエスマン:…殿下に付くのもありかな?

ジェイソン:…な!?

前以て伝えて、心構えは出来てる筈なのに、あわてふためくジェイソン。あまりのあほらしさに、イエスマンはしてやったりと思った。…議会が再び騒然としたのは、言うまでも無い。

〜レオン決戦編(イエスマン視点)〜


ジェイソン「…で、では採決を。 摂政就任に賛成の方の起立を… お願いします!」


ジェイソンの声は震えていた。 その様は、イエスマンにすれば、迫真の演技というより、素のままを隠しきれていないように見えた。 思わずため息をつくイエスマン。

そして議場では、3人の議員が立ち上がっているのが見えた。 それはレオンがあらかじめ手を回していた者なのか、土壇場で裏切ったのかはわからないが、3人だけでは、就任は否決となる。





ジェイソン「…ふっ… こんどこそ反対多数だな? よって…!!」


イエスマン「…私も賛成させてもらうとしよう」


ジェイソンが勝利を宣言しようとしたその瞬間、立ち上がったのは他ならぬイエスマンだった。 議場はたちまち騒がしくなる。






ジェイソン「イエスマン!! 貴様、ザキラ様の恩を忘れて裏切る気か!!!」


いきなり怒号をあげるジェイソン。 それもイエスマンの目には、演技ではなく、ありのままの感情の発露に映った。





イエスマン「…裏切る? ジェイソン・ヤヌス。 君は何か勘違いをしていないか? これは殿下の摂政就任の賛否を問うているのであって、議長の信任を問うているのではないはずだ。 そのいう意味で、私は殿下の摂政就任には賛成だよ」


イエスマンは凄まじい形相で睨みつけるジェイソンを、まるで子供に対するような口調で諭し続ける。





イエスマン「…議長の力は私もよく知っているつもりだが、最近は他人の言うことをあまり聞かれなくなった。 殿下が持ち出された西欧と月の貴族たちが、帝国本国と距離をおきたがるのも、元はと言えば、それが原因ではないのかな?  だが、殿下が摂政になられれば、いやでも2人で話し合わざるを得ない。 それは結果として、帝国の乱れた結束を取り戻す絶好の機会になるかと思ってね。 それにジェイソン。 君は忘れているかも知れないが、反帝国のプリベンターとユーフォリアは、殿下の姉君が率いているのだ。 実の弟が相手となれば、その矛先も鈍るというものだろう?」


イエスマンの話を聞いてどよめいたのは、当のジェイソンではなく議場の方だった。 ついに1人、また1人と立ち上がる者が出始め、先の3人にくわえて、なんと10人もの議員が賛成に回ったのだった。





イエスマン「…殿下。 35対26。 就任おめでとうございます」


ジェイソンをまるで無視したかのように、そう祝いを述べるイエスマンに、ついにジェイソンはその肩を掴んだ。





ジェイソン「イエスマンっ!!」


だが、イエスマンはそんなジェイソンに対して、言葉ではなく脳量子波で答える。





イエスマン(…君がそんな演技派だったとは、初めて知ったよ。 いっそエージェントを辞めて、俳優にでもなったらどうかな?)





ジェイソン(……!!! す、すまないイエスマン。 つい、やりすぎた。 後は任せてくれ)


咄嗟に脳量子波で言い訳をするジェイソン。 これでは、さっきまでの態度が演技ではなく、段取りを失念しての失態だったと自白したようなものだ。





イエスマン(…いいとも。 朗報を待っている)


そうジェイソンには告げたイエスマンだったが、レオンに手を打つことも忘れてはいなかった。





レオン「…まさか、お前の世話になろうとはな…」


イエスマン「それは『これから』です、殿下。 それで、就任されたからには、しかるべき儀式を執り行わねば、ね。 正式な就任式は後としても、まあ略式の挨拶くらいは頂きたい。 とりあえず、衣裳を改められるべきかな」


そう言葉で言うと、イエスマンは着替えのための部屋にレオンを案内した。 部屋にいるのは、イエスマンとレオンを除けば、レオンの直属の衛兵4人だけだ。





イエスマン「…では、後ほど迎えの者をやります。 それまでに、摂政としてふさわしいお姿になっておられるように…」


それだけを言い残し、部屋を後にするイエスマン。 レオンの脳裏には、さっきの襲撃を予告した言葉がちらつく。 そして事実、その部屋に近づく影が…。


〜レオン決戦編(レオン本人視点)〜


衛兵1「…陛下。 実は… その… 信じにくいかも知れませんが、先ほど陛下の襲撃を予告する密告がありまして…」


衛兵の身なりをした、レオン直属の部下のうちの1人が、おずおずと声をかける。





レオン「…密告か。 で、誰から、どのような方法でその情報はもたらされた?」


衛兵1「…そ、それはその…」


部下は、なぜか言葉を濁した。





レオン「…突然、声のようなものが聞こえた。 違うか? 宗教的な言い方をするならば、神のお告げがあったとか、天の教示が見えたとか…。 もしくは、虫の知らせのようなものではなかったか?」


衛兵2「まさか、陛下にも?」


レオン「…あった。 白日夢と言うには、あまりにリアルにすぎるものが、な…」


レオンと衛兵らは驚きからか、眉をひそめ口を閉ざす。







だが。


レオン「…私のEx-sガンダムをこちらに手配せよ。 それから、お前たちはその記憶に沿った形で、私を守るのだ」


そうレオンは決断を下した。







衛兵2「アレをお信じになられるのですか?」


レオン「…私にもわからぬが、なぜか信じてみる気になった。 それに考えてみよ。 実際に襲撃がなければ、ただな取り越し苦労ということで、別に大きな問題にならぬ」


こうしてレオンは、直属の部下たちと3人とともに、その部屋で襲撃に備えることにした。(衛兵の4人目は、Ex-sガンダムを取りに急行)

衛兵の見た襲撃のイメージが事実ならば、ドアから銃弾が撃ち込まれ、怯んだ時に壁が崩され襲われるはずなのだが…。

〜イエスマン視点〜

ここはイエスマンの私室。彼は、投げたさいの余韻に浸るかのように、ゆっくりと自分の紅茶を炒れていた。

イエスマン:……頃合いか。そろそろ血を見るのが当たり前と言わんばかりのパレードが始まるな。

ゴウ:《(………仕掛ける)》

イエスマン:《(ああ、武運を祈るよ)》…………………………最も、増援を呼ばれたり、証拠を掴まされたら、終わりだろうが、な。

ザキラと対峙するとなると、暗殺等の強行策に生き延びれる様な奴でないと、帝国では生きられない、とイエスマンは断言出来る程には自信がある。…くら替えしようにも、ザキラの魔の手をかい潜れなければ、話にならない、そう思わずには彼はいられない。だから、こんな真似をした。………理由の半分はそんな所だ。

イエスマン:(主であり、親友であった奴の敵を討つまでは、ミーも死ねない……一度記憶を消された贖罪も兼ねて………)

〜レオン視点〜

突然、ノックが掛かる。何者かも答えない誰かが来た。レオン達に緊張が走った。全員が、襲撃時の死角に入ると、扉の近くの壁を背にした一人が慎重に扉を開けるように開閉スイッチを押した。刹那、銃弾の雨が扉を貫通して襲った。

一同:……ちぃ!!

隙を着いて銃撃の薄い辺りから、レオンと一人が応射した。《弾を放っていたも》のは、それで意外にも、《爆発》してしまった。不審に思い、弾が来なくなったのを確認して外に出る。

近衛兵1:センサー付きの…自動照準機…だったのか?

レオン:…上だ!次が来る!!

近衛兵2:…ぐはあ!!

一番最後に部屋から出た男が派手に血しぶきをあげながら倒れたのと、レオンが叫んだのが同時だった。開けられた通気孔を背後に、覆面を被った男が出て来る。

??:…あれを、よんだ、だと…?だが………

今まで気配を消して上手く不意をつかれたのすら驚愕の事態だが、それを感じさせた当の本人から今度は殺気が立ち込める。素人がいれば失禁しても不思議は無い程の凄まじさをレオン達は感じた。本能的に真っ向から戦うのはやばいと直感する。

ゴウ:…見られたからには、死んで貰う!!

……そう、エージェントであり、ガンダムファイターである、ゴウ・サオトメ自らの襲撃だった…………。

〜レオン決戦編(レオン本人視点)〜


レオン「…お前、脳味噌まで筋肉でできているタイプか?」


ゴウ「…まだ、つまらんジョークを言う余裕があるようだな?」


言葉に反して、レオンの息は荒い。 対するゴウは、息1つ乱れていない。 レオンの部下に至っては、みな血ヘドを吐いて、床に倒れていた。





レオン(…奴は本当に人間か? このままでは…)


ゴウ「…身をかわすのはうまいようだが、ただそれだけだったな。 もう飽きた。 次で殺す」


レオン「…くっ…」





だが、絶体絶命のピンチに、またアノ囁きが聞こえた。





???(聞いた話だけど、そいつの必殺の一撃には、右の脇腹に一瞬の隙があるらしいよ?)


レオン「…なにっ?!」


ゴウ「…死ね!」


ゴウは右手を降り下ろす。 レオンどころか、後の壁ごと砕くであろう一撃だ。





レオン「…やむを得んっ!!」


レオンは半ば闇雲に、囁きの告げた右脇腹をめがけてカウンターの蹴りを突き出す。 すると、たしかに激しい衝撃が脚に走り、さっきまでレオンたちのあらゆる攻撃に耐えていたゴウが、簡単に逆の壁際まで吹き飛んだではないか!





ゴウ「…また、だ…。 バカな。 俺の攻撃を見切ったというのか?!」


自分の攻撃にかけた力をすべて、カウンターという形で脇腹に返されたゴウは、さすがに苦しそうに呻く。





???(…あと、もう1つ教えてあげよう。 そいつの強さには時間制限があるんだよ。 ついでに頭の方もあんまり、ね…)


レオン「…?!」


レオンの脳裏に、3度目となる囁きが響く。






その囁きを聞いたレオンは、不意に不敵な笑いを浮かべると、こんなことを言い出した。


レオン「…残念だが、私は目だけはいいんだ。 苦しいんだろう? 待ってやる。 遠慮なく休め」


レオンはそう言うと、懐から潰れかけた箱に入った葉巻を取り出し、火をつけようとする。





ゴウ「…貴様!」


レオン「…そう、いきり立つな。 お前の一撃に私が耐えられそうもないのはよくわかった。 結局は、次の一撃を再び私が見切れるかどうかだろう? 慌てずとも、すぐ決着はつくさ」


レオンはようやく火のついた葉巻を燻らせ、ゴウを挑発する。 ゴウは怒りを全身にたぎらせたが、レオンに襲いかかることはなかった。





ゴウ「…いいだろう。 その自信のある目ごと、貴様をくり貫いてやる!!」


そう言うと、ゴウは再びレオンに飛びかかるべく構えるが…。







レオン「…悪いが1つ言い忘れた。 私は目もいいが、頭にも自信があってな? つまらぬ命の駆け引きはしない主義なのだ。 昔から言うだろう? 三十六計、逃げるに如かずとな?」


レオンの言葉の終わりを待たず、葉巻から煙が吹き出し、当たり一面を白く包み込む。





ゴウ「発煙筒だと! だが、この程度の目眩ましでっ!!!」


ゴウは叫ぶが、そんな2人に構わず、辺りには機械的な音声が響きわたる。





「D区画35ポイントにて、火災と思われる発煙を確認。 スプリンクラー作動、防火シャッター緊急閉鎖。 衛兵は議員の避難誘導に当たれ。 消防MS出動。 繰り返す…」


ゴウの頭上からも冷水降り注ぎ、何枚ものシャッターが閉まっていく。 シャッターを次々と力任せに破りレオンを追うゴウだったが、そんなゴウが目にしたのは、窓から駆けつけたEx-sガンダムの手に飛び乗るレオンの姿だった。





レオン「…すまないが、私にはまだやることがあるのだ。 果たし合いはまたの機会にな!」


飛び去るレオンを尻目に、ゴウは動かなかった。 ガンダニウム合金すら、素手で叩き割る自信はあったが、追おうにもその身体は動かなかった。 時間をかけすぎたのだ…。










(後刻。 イエスマン視点)


イエスマン「…殿下。 つまらない騒ぎは困りますねぇ…」


レオン「すまぬ。 議事堂が禁煙だったとは知らなかったのだ」


イエスマン「…まあ、誰にでも不注意はありますか。 さあ、改めて就任を祝う式典と参りましょう」


正装したレオンの後につき従うイエスマン。 そして、その姿をただ見送るしかないジェイソン・ヤヌス。





イエスマン(…私はしばらく殿下の側で機を窺うことにするよ。 君はせいぜい、議長への言い訳でも考えておくんだねぇ〜)


ジェイソンの膝は…。

いゃ、全身は震えていた…。


〜パンドラール侵攻の果てに編〜


結論として、パンドラールは落ちなかった。


最もパンドラールに迫ったのはインドラ軍であったが、あと一歩のところで壊滅的な損害を被り、行動不能になった。

プリベンターは各地で善戦したが、それが逆にエージェントたちの目を引く結果となり、真っ向から押し戻されてしまう。

さらにユーフォリアに至っては、自軍の損害を抑えるためだったとは言え、降下作戦で得たモンゴルの帝国領の半分以上を失い、文字通り振り出しに戻っていた。





…しかし、ザキラの勝ちだったかと言うと、それも違った。

勝ちに乗じた追撃でパンドラールを離れた隙に、肝心のパンドラールにおける政治的アドバンテージをレオンに奪われてしまう。 もちろん留守を預かるジェイソン・ヤヌスとゴウは抵抗し、暗殺によるレオンの排除を試みるが失敗、レオンは帝国本国にて、ザキラに匹敵する地位を瞬時にして手にしていた。







レオン「…議長。 これからは皇族、帝国貴族の代表として、よろしく頼む。 とりあえず、純粋な軍務と外交はは私に任せ、議長は政治に徹してもらいたい」


レオンは凱旋したザキラを、こう言って迎えたという。 その言葉と、後に従うイエスマンの姿に、ザキラは終始無言であったと伝えられる。


〜第一期エピローグ マヒロ編〜


マヒロ「陛下におかれましては、此度の我等の無礼を、何とぞ御慈悲を持ちまして御赦しくださいませ。 もし御赦しを頂けましたならば、このマヒロ・ミズサワ、帝国に生涯の忠義を誓う所存にございます」


こう言ってマヒロは平伏していた。

ここはパンドラールの謁見の間、つまり皇帝が他国の使者などを公式に接見する場所だ。





リリス「…この者はこう申しておるが、どうするべきか? レオン。 そちはどう思う?」


だが、その玉座にレオンの姿はなかった。 レオンは相変わらず摂政のままで、玉座にいるのは10歳の幼子だった。 血統で言えば、先帝の長女リリアンヌの子であるため、より正統血統には近い。

だが、祖父たる先帝はもちろん、父はこの戦乱で、母(マリアンヌ)は病ですでに亡くなっており、何の後ろ楯も持たなかった。 早い話が、レオンの傀儡である。


レオンが自ら帝位に就かなかったのは、いまだ力を持つザキラ派の反発をかわすためと、レオン自身がまだ帝国に戻って間がないため、足場を固めきれなかったからだ。





レオン「ここで陛下が寛大な御心を示されれば、帝国の威のみならず、大徳も天下に鳴り響きましょう」



リリス「…そうか。 ならば、マヒロ。 そちをユーフォリア『王国』の女王に任ずる。 帝国のため、心を入れ替え、朕に尽くすがよい」


マヒロ「ありがたき御言葉を賜り、この身に余る光栄にございます」



リリス「うむ。 詳しいことは、これにおるレオンハルトより下命を受けるがよい」


マヒロ「ははっ」







こうして建国1年足らずで新生ユーフォリア帝国は解体、マヒロもまた皇帝の座を降りることになった。


だが、こんなやり取りが茶番なのは言うまでもない。

話はレオンとマヒロの間でとうについており、ただ帝国の体面を保つため、降伏という形を取っただけだ。


事実、ユーフォリア王国は軍備に多少の制限を受け、毎月の朝貢を定められたものの、内政不干渉、外交の自由を獲得しており、事実上の独立承認を獲得していた。









マヒロ「…ここまで来て、またあんたの言いなりになるのは癪なんですけど〜」


別室に下がるや、さっさとかぶった猫を脱いだマヒロは、レオンに対し口を尖らせた。





レオン「…ならば別に、反帝国のままでいてもよかったのだぞ? まあ、それなら遠慮なく討伐するが」


マヒロ「…はいはい。 私は餌を貰った犬ですから? 尻尾でもなんでも振らせていただきますよ〜」


結局、ユーフォリア発足以来の2人の関係は、いまも変わっていなかった。

表で目立つ役目のマヒロに対し、裏ですべてを取り仕切ろうとするレオン、という構図だ。 だがマヒロは、レオンからそれ相応の厚遇を受けており、そういう意味では、レオンはけしてマヒロを邪険に扱ってはいないのだった。





マヒロ「…またメリャーナがキレるだろうなぁ〜」


マヒロは嘆息した。 ユーフォリアの反帝国離脱、帝国との単独講和は、マヒロとブラックの独断であった。 長い同盟国であるインドラには、一応の使者を送ったが、仲が険悪になるのは致し方ないだろう。 もともと意見が合わないメリャーナが、マヒロをどういった目で見るかは、推して知るべしといったところか。





レオン「…お前の希望だからな。 一応の手は打とう。 受け入れるとも思えぬが?」


マヒロは自分が帝国に降伏する条件として、いくつかの要求を出していた。 そのほとんどはユーフォリアに関するものだったが、その中には、他の反帝国勢力とも、必ず1回は停戦の会合を持つというものもあったのだ。





マヒロ「…それは私の知ったことじゃないわよ。 私は宇宙が平和で繁栄すればいいの。 でも、地球もついでにそうなれば、もっといいってだけよ」


レオン「…身勝手なのか、他人思いなのか、まるでわからんな」


マヒロ「…あんたなんかに理解されたらおしまいよ」





こうして、一足早く帝国との終戦を迎えたユーフォリアは、モンゴルのすべてを帝国に明け渡し、地球を去った。 代わりにルナ2以下、初戦においてユーフォリアが得た宇宙の帝国領を所領とする条件で…。


〜エピローグ レオンハルト編〜


マヒロ率いるユーフォリアとの単独講和が成立するや、レオンの帝国内での権威はより確固たるものとなった。

レオンが、最初からマヒロと組んでいたのは知らない世の人々は、ただ姉弟の絆と政治力だけを頼りに、反帝国勢力の切り崩しに成功したように映ったのだろう。


この声望を背景に、レオンはザキラに対し攻勢に出る。

すなわち、ザキラとエージェント達に、大元帥〜少将までの高位を与えつつも、新編成した中東、アフリカ方面軍団に左遷したのだ。


新中東アフリカ方面軍団は、数こそ帝国外征軍の1/4を占めていたが、二線級の部隊であり、かつアフリカもさほど重要視されている訳ではなかった。

いまだ議長であって、パンドラールにもたびたび現れるザキラや、議員として一定の力を持つジェイソンはともかく、エージェント特権を剥奪され、ただの将軍に祭り上げられたエージェントに、かつての姿はなかった。


ただし、レオンもザキラとエージェントの離間、ザキラ本人の解任や処刑などといった大事には手をつけられないでいる。 昨今の権勢を失ったとは言え、ザキラ派の勢いはいまだ侮りがたく、なによりDGに対して、ザキラはレオンに何1つ掴ませなかったのだ。

そのため、レオンはイエスマンの発案に沿う形で、DGごとザキラをアフリカに追いやるしかなかったのだ。 ザキラで出て行けば、DGの研究も当然アフリカで行うだろうという読みだ。






レオン「…読めぬ」


レオンはそう呟いた。





イエスマン「…何がでございますかぁ〜?」


イエスマンの口調は、言葉遣いは丁寧なのに、なぜか相手を小馬鹿にしたような響きがあった。 最初はレオンも気になっていたが、最近では慣れていた。






レオン「イエスマン。 お前のことが、だ。 ザキラのアフリカ左遷といい、エージェント特権剥奪といい、ずいぶん私に肩入れした発案をするではないか? 本気で私につくつもりか?」


イエスマン「どうでしょうねぇ〜? こうしておいて、殿下が油断したところを、後ろからこうバッサリと…  かも」


イエスマンの軽口は変わらない。 ただ、人に聞いた話だと、ザキラにはイエスマンはもっと違った態度で接していたらしい。 その違いをどう考えるべきか、レオンは判断しかねていた。





レオン「…まあ、よい。 叔父上(ドラグノック)とオードリー伯爵(月貴族頭領)、モカらには、帝国軍として相当の力を持たせる。 私を暗殺し得たとしても、3人を簡単には除けまい。 帝国の金を自由に使いたければ、うかつな真似はせぬことだ」


ちなみにレオンは、自分についたイエスマンに、帝国軍財務局長の地位を与えていた。 たかだか局長クラスの地位だが、帝国軍の予算案を取りまとめる役職で、金に関しては絶大な権限を駆使することできる。 外征をするにも防衛をするにも、まず先立つもの金なのだ。

もちろん、DGの開発にも金はいるはずである。





イエスマン「…一応戦乱が終わりそうってことで、税金も順調に徴収できてるみたいだからねぇ…。 ちょっとくらいネコババしてもわからないかな」


レオン「…好きにしろ。 私は鞭も使うが、飴も欠かさぬ主義だ」


イエスマン「…ありがとうございま〜す」


現実に帝国では、西欧や月が手のひらを返したように本国への納税を行うようになっており、加えて諸外国の朝貢や戦費の圧縮によって、ザキラ時代よりも予算は潤沢になりつつあった。

ザキラがDGにどれだけの金を回していたのかはわからないが、各地への侵攻の戦費と、帝国内部での腐敗と反発により、想像したほど金にゆとりがなかったことがいまになってわかってきていたのだ。

(まだ続きます)

〜第一部エピローグ マヒロ協力者編〜


霧雨「…これで僕の役目も終わりかな?」


そう霧雨が言ったのは、ユーフォリアが宇宙に撤兵するのを不満として、反乱を起こした一派を討伐した後だった。 霧雨は、鮮やかすぎる戦いで鎮圧し、ユーフォリアはあっさり平穏を取り戻したのだ。





霧雨「…所詮は海賊、敵がいなくなったら、味方に横暴になる。 よくマヒロも、こんな連中を使ってたよね」


霧雨はそう言ったが、マヒロはそこまで事態を楽観視してはいなかった。 海兵の乱は敵の謀略かも知れず、ぱっと見では味方に見える者達が、裏で動いた可能性は十分にある。


下手をすれば、軍縮でユーフォリアの海兵の立場を微妙にし、その一方で裏から手を回す…

そんなレオンの策かも知れないのだ。





ブラック「…そんな貧相な策を疑われるとは、『殿下』も平和になって、いくらか頭脳が鈍りましたか?」


旅立ちの支度を終えたブラックは、別れ際にマヒロの考えを見通したようなことを言った。





マヒロ「…まだ何も言ってないんですけれど〜」


ミク「無駄だよ。 お姉って、嘘がものすっごい下手だから」


口を尖らせたマヒロを、義妹のミクが切り捨てた。





ミク「でも、しょうがないって言えば、しょうがないんだケド。 レオンちゃんとお姉って、仲イイようで悪いから」


ブラック「承知しております。 まあ、飼い犬と仲が良すぎるのも、我らとしても困りますし」


ブラックは、レオンの元に帰参するその日まで、やはり毒舌、慇懃無礼は変わらなかった。 しかし、レオンとこの外務卿が、ユーフォリアの裏事情を支えたのも事実なのだ。





霧雨「…とにかく、しばらくはユーフォリアも安定するだろう。 つまり、僕の出番もないって訳さ」


マヒロ「…やっぱり本気なんだ?」


霧雨は、自ら予備役編入を希望していた。 海兵の乱で半月ほど先延ばしにはなったが、意思は変わっていないようだ。





霧雨「…結局DGが何で、ザキラは何をしたかったのかわからなかったからね? 少し調べてみたいこともあるし、僕は自分の領地に引きこもるとするよ」


引きこもると言っても、霧雨のユーフォリアにおける地位は相当なもので、ある意味では最大派閥と言ってもよかった。 ただそれを、当の霧雨は自覚していない。





ミク「…みんな行っちゃうと寂しくなるなぁ〜。 お姉はついに誰にもフラグを立てられずに…」


マヒロ「…あのねぇ… その最近ハマってる中世のゲームキャラみたく、あたしを言わないでくれる?」


ブラックと霧雨はマヒロの元を離れるが、ミクは当然マヒロのそばにいるままだった。

ところが最近、アイスだけでなく中世のゲームにハマるわ、シュール大尉との恋愛は発覚するわで、自由奔放さはさらに加速していた。





マヒロ「…って言うか、本当はあんたがミズサワの嫡子なん…」

ミク「パスっ!! 孤独な政治家やるのは、お姉だけで十分っ!!」


ミクはマヒロの言葉の半分も聞く前に返事を返した。



ミク「まあ、いくらケイさんが


『国のNO.1とNO.2が恋仲というのはどうかと思う。 公私は分けるべきだろう』


って言ったからってねぇ〜。  つか、そんなんお姉を傷つけないための嘘で、単純に振られただけじゃん?」





マヒロ「…あんた、なぜそれを…」


ミク「そりゃもちろん、お姉にあげたハロハロ君2号の盗聴機能で…  あ、しゃべっちゃったあせあせ(飛び散る汗)


マヒロ「…そういう魂胆だったのね…。 待ちなさいっ!」


そしていつもの追いかけっこは始まり、苦笑する2人。





ブラック「…あれで一国の皇帝… いまでは女王ですが、なされていたというのですから、なんともはや…」


霧雨「…いや、マヒロがああなれるのは、世界が一応は安定した証拠じゃないかな? できれば、戦闘コーディネーターと謀臣、反核の女帝が再び一同に会さないことを願うだけさ…」


〜第一期エピローグ レオン&ジェニファー、デボラ編〜


ジェニファー「嬉しいですわ。 まさか私がレオン様の妃にしていただけるなんて」


帝国を掌握したレオンがしたことは、ザキラの左遷ともう1つあった。 自らの妃に、ジェニファーを迎えたことだ。





レオン「…私は強い女が好みでな。 しかもそなたは美しい」


ジェニファー「レオン様ったら、いくら本当のことでしても」


はっきり言って暑苦しいノロケを繰り広げる2人だったが、それがレオンの愛情だけで動いているかと言えば、やっぱりそうでもない。





レオン「…ザキラの動きがなさすぎる。 いずれは何かしかけてくるつもりだろう。 イエスマンにも違った意味で油断できぬしな」


ジェニファー「おまかせくださいませ。 並の護衛10倍は、私は頼りになりましてよ?」


ジェニファーは、懐に忍ばせた45口径にそっと手をかける。





レオン「そなた達を巻き込んでしまったのは、いまでも悪いと思っている。 だが、どうせ巻き込んだならば、だ」


ジェニファー「私は気にしておりませんわ。 こうしてレオン様の妃にもなったわけですし。  …ですが、お姉さまは…」


デボラはマリンピアでウインドにDGの力を奪われて以来、ずっと生死の境をさ迷っていた。 幸いにもパンドラール戦が終わった頃に意識を取り戻したのだが、なんとDGに触れて以来の記憶をすべて失っていたのだった。





レオン「…記憶は戻りそうか?」


ジェニファー「…まるで。 少し前には、いくらかでもきっかけになるかと思って、2人でアルケーに乗ってみたのですが…」



レオン「どうだった?」


ジェニファー「…無邪気に感心されてしまいましたわ。 こんなMSを動かせるなんて、ジェニファーはきっと天才なのねって」


ジェニファーは、なんとも言えない複雑な表情を浮かべていた。








レオン「…いい機会かも知れぬ」


ジェニファー「…はい?」



レオン「…いや、記憶が戻れば、また私はデボラをいらぬことに巻き込みかねぬ。 いっそのこと、このまま貴族の娘ということにしてしまおうかと思ってな。 ジェニファーのことは、妹と慕っているのだろう?」


ジェニファー「そのあたりは、記憶をなくしても変わってはいませんわ。 …わかりました。 お姉さまには、空襲で瓦礫の下敷きになった時、頭を強打したために記憶がなくしたということにしておきます」



レオン「…無理を言ってすまぬ」


ジェニファー「その借りは、今晩の寝室で返して頂きますわ」


そう言うと、ジェニファーはレオンに軽く口づけをする。 レオンの策謀とその贖罪に始まった関係ではあったが、意外にも2人の関係は、ふつうの恋人のような一面も持ち合わせていた。








レオン「…そう言えば、あのカトラスとかいう男はどうしている?」


ジェニファー「風の噂では、アフリカにいるらしいと聞きましたが…。 気になられまして?」


レオン「…ならぬと言えば、嘘になるな。 偶然とは言え、ザキラもあいつもアフリカに、か…」


レオンは遠くを見つめるような目をし、そんなレオンを、ジェニファーは微笑みを浮かべながら見つめていた…。


(書き込みないから、書いちゃおっとるんるん)


〜第一期エピローグ ザキラ編〜


ウインド「…なぜ奴らを消さない?」


ウインドはそう静かにザキラに詰め寄った。 目には鋭い光がある。





ザキラ「…DGの復活は完了した。 もう帝国を隠れ蓑にする必要はない。 いや、帝国そのものも消し去る対象でしかない」


ウインド「…ならばなおのこと、動かない理由を説明してもらおうか?」





ザキラ「…イエスマンだ」


ウインド「…ほう」


ザキラ「イエスマンに私はあのような真似を命じてはいない。 ジェイソンは騙せても、私の目はごまかせぬ」



ゴウ「…じゃあ、俺たちを裏切ったのか?!」


ゴウは拳を握りしめ、手近にあったテーブルに降り降ろした。 テーブルは脚が折れ、上の板もぱっくり割れてしまう。





ザキラ「…そう物事は単純ではない。 お前たちはイエスマンを知らぬ」


ゴウ「…???」





ザキラ「…イエスマンは、私に忠義を誓ったことなど一度もない。 イエスマンは、ただ己の思うがままに世界と人間を動かしたいだけなのだ。 ならばなぜ私についたか? イエスマンが操りたがるのは、己が気に入った人間だけだ。 頭脳明晰で、力に溢れ、人を惹き付ける…

そんな英雄を意のままにするのが、イエスマンの悦びなのだ」


ゴウ「…やっぱり裏切ったんじゃねぇか!」


ゴウは再び怒りを露わにするが…。





ザキラ「…だから、そう慌てるな。 DGはこちらがすべて握っている。 それにな? イエスマンは飽きやすい性格なのだ」


ゴウ「…なんだ?」





ザキラ「…この十数年、なぜ帝国において、皇太子や次代の有能な将軍となるべき人材が次々に死んだと思うか?」


ウインド「…なるほどな。 いい趣味はお互い様という訳か」


ザキラ「…お前たちは、しばらく大人しくしていることだ。 DGが復活する過程で、ほとんどのエージェントは失われてしまった。 私だけでもできなくはないが、それでは楽しみも半減するというものだ。 もう少し、じわじわと、な…」


ザキラは、そう言って不気味に笑った…。


〜第一期エピローグ ニュクス・レメク編〜


バラク「…まあ、我々としては主義主張がどうであろうと、取引を断る理由はない。 しかもニュクスはすでに、ただのゲリラ風情という訳でもあるまい?」


エスピナス「…誉め言葉と受け取っておこう」


反帝国連合に属しながらも、パンドラール攻めに手を出さず、力を温存したニュクスは、プリベンターのジャブローが帝国軍侵攻部隊共々潰滅した機を狙い、あっさり南米のすべてを手中にしていた。 しかも、エスピナスはその先を読み、マリンピアで反乱に失敗した、元エージェントT、トロピコを捕え、その人脈を駆使し、北米のレメクと濃密な関係を築くことに成功していた。





バラク「…我々は、誰が世界を治めようが興味はない。 必要だと言うなら、税を納めてもよい。 ただ、その税以上に稼ぐまでだからな?」


現実にバラクは、ザキラ、レオンの両端を長く持してきた。 いくら技術的には進んでいるとはいえ、わずかなMSしかもたないレメクが生き残ったのは、その驚異的なまでのバランス感覚のよさゆえだった。

そしてそのバラクは、次なる相手にエスピナスを選んだのだ。





エスピナス「…私は目的のために手段は選ばない。 だが、私は貴様の稼ぎなどに興味はない」


バラク「よく言う。 だが、その言い様は逆に信用できる」


そう言って2人は、握手すらすることなく、互いの領分についての取り決めを終えたのだった。








そして互いが別れた後…


ヒデノシ「…父上。 あれでよかったのですか?」


息子のヒデノシは、そう言って疑問を呈するが…。





バラク「…よい。 奴らは我々とは違った価値観で動いている。 その価値観の中に、我々は存在しないも同然。 つまり、奴らは我々を襲わぬと言うことよ」


ヒデノシ「…そんなものですか…」



バラク「とにかく、ザキラ殿がアフリカに移り、レオン様も帝国を握られた。 いまは同じ帝国ということになってはいるが、それも長くは続くまい。 舵取りを誤れば、7年前と同じ轍を踏む。 心しておくことだ」


バラクはそう息子を諭した…。








トロピコ「痛いっ! 離せよっ! ボキを誰だと…」


エスピナス「…豚。 五月蝿くすると死ぬぞ」


エスピナスの声には、独特の凄味があった。 トロピコの背筋に悪寒が走る。





エスピナス「…貴様はすでに私が貰い受けた身だ。 逆らうこと、口ごたえすることは許さん。 死にたくなくば、な」


そう言ったまま、エスピナスは黙って動かなくなった。 そして、トロピコの視線だけが、おろおろと宙空をさ迷っていた…。

オクサイド:…木星付近のエージェントX、キサナドゥからの報告は今日も無しか……。

帝国兵:…ハ。残念ならがら、完全に連絡を遮断され、パンドラールでは何か動きがあった模様。正直、ここまで、かもしれません。

−ロシア、モスクワ−

レオンとマヒロの行動にメリャーナは嫌がらせとばかりに、《今後は中立に立ち、停戦を考えるが、通達がモスクワには間に合うか解らない》とだけ、摂政になったレオンの手のものが来た時に伝えると、事実、プリベンターのロシア方面軍は、その日のうちにモスクワ攻めの佳境を迎えていた。

オクサイド:…中佐に通達しろ。死にたいなら勝手に死ね、と。退却の支度をする。化け物MSが地下から部隊を送り込んで来る、地球は脱出出来ない、肝心のキサナドゥは、役に立たない、正攻法でも東西から敵の援軍がやって来る!!こちらの頼りになる軍は無駄に減るばかり………これでは海路から脱出か降伏しか我々が生き残る術が無いでは無いか。

帝国兵:…何?それは本当か!?…さ、さらに報告します!!………お心を確かに。

オクサイド:……聞こう。

帝国兵:…報告します。アジア圏、太平洋帝国海軍の内、ハワイ艦隊が離間、ぷ、プリベンターの影響下にある組織に吸収されたとのことです………あろうことか、ハワイ艦隊の一部をもがこちらにただでさえ少ない友軍の残された海洋艦隊を押し返しながらロシア北部海域にまで到達、徐々にだが、向かっているとのこと……最悪…

オクサイド:…すぐ近くまで敵の海軍の先行部隊が来ていると?完全に包囲される前に脱出する!前線部隊をゆっくり下げつつ、すぐに海路を通って逃げよ。ロシアを放棄する!!

急に北方からも戦闘の光が出て来るモスクワ基地。パンドラールの異変が起きるまでに、墜ちたロシアの主要基地ですら10は裕に越える。もはや声も出ない。

帝国兵:…北方から襲撃、敵、機種の割り当ては不明ですが、水陸両用機らしい、とのことです。

オクサイド:…………あれは?

帝国兵:…は?……exclamation & question敵の信号弾exclamation & question内容は…

オクサイド:言わずとも解る。《我降伏を薦める。武装解除し、平伏すならば、殺生を止めると誓おう》、であろう。私が逆の立場ならそうする。

オデッサであの時さらに再攻撃をしておけば…オクサイドの胸中はさておき、その日の深夜未明、モスクワ基地は静かに白旗をあげた。奇しくも、ダが、アジア、ロシアの帝国領の残された、制海権を手にする、一人前だった……。
(>975、一人前→一日前
失礼)

ポテフ:……上手く、いったみたいだなぁ。

北方の部隊(と言っても、全てダのものだが)の奇襲(?)の一同は降伏に安堵した。この状況下で付近までこれたのはユルングを含めて僅か三隻。しかも、連日のプリベンターのロシア襲撃で消耗した基地や、貝が口を閉じたみたいな守勢に回った群島基地を相手としても、これが限界だった。後一押しの為の賭けに出てほしいと、ラーダに言われるまま来た、と言った所だろうか。

ラーダ:《ご苦労、早く帰っておいで。》

ポテフ:釈然としねえ。だって海戦でいいとこ取りの後のやや評しぬけの進撃だぜ?流石に、元小将って肩書きだけじゃ大将の言い分でも納得できねーとこが多いぜ。

ラーダ:《ハワイ艦隊のことかい?お前はしゃべり過ぎるんで黙ってたんだがね。あそこはザキラに左遷された軍団が多かったってことさ。…………うちとも縁が深くってね。》

サルラ:《元々、あそこの海域に仕事に出るのは私だったもんね。あんたなら、気付かなくて当然か。あそこ、今はいない私のお父さん、つまりお母さんの元旦那さんの元直衛の部下が大多数、実権握ってたようなものだったの。》

ポテフ:なんでえ、俺だけのけ者かよ?…まあ、敵を騙すには味方からってか。かあちゃん、こういうの本当勘弁してくれよ……。

なんか、未だ要領の得ない団欒(?)のような雰囲気の中、ラーダは静かにユルングから見える海面の光を眺める。

ラーダ:(あんた、これで良かったんだろ……?あたしゃ、やっぱり、真相を伝えずにはいられなかったよ。部下に慕われてたあんたを見てたらね。最も、あたしゃ愛人だったから、未亡人のふりをしろ、と言われてたけどね。トルネードを結果弄ぶことになったのは少し心が痛んだがね。Z………いや、ゼラファード………安らかにお眠り。今度墓でも出来たら花でも手向けてやるよ。)

〜第一期エピローグ 共和国編〜


しかし、そんなプリベンターの動きを、目ざといレオンが放置するはずもなかった。 レオンは『マヒロとの約束』を果たすべく、共和国とも停戦の会談を設ける。

すなわち、太平洋、東南アジア、日本における共和国の優位を認め、賠償代わりに、戦時中の共和国による最大範図をもってして、互いの国境とし休戦する、としたのだ。


一見するとこの条約は、共和国の勝利を帝国が認めたかに見え、事実、共和国に対してのみはそうであった。



だが、レオンの真意は、共和国を逆用してのプリベンター封じ込めにあった。

南と東の国境が確定するということは、すなわちプリベンターを北のロシアに封じ込めたことに他ならないのだから。







ダイアナ側近「…次の選挙を考えますと、この話に乗るのが最上と思われます。 共和国は参戦したとは言え、激戦を交えたのは日本のみ。 国民は戦争の危機の実感に乏しく、あまり深入りを好んでおりません」


ダイアナ「…しかしその世論、帝国側の誘導がいくらか入っているのでしょう?」


ダイアナは少しだけ苦い表情を浮かべる。





側近「…まず、間違いなく。 ですが、こう表と裏を使い分けられては、民主主義を掲げる我が国には、まことにやりにくい…。 それに帝国は、プリベンターとも休戦交渉中なのでございましょう? ならば、我が国が一足早く休戦したとて、同盟国を見捨てることにはなりますまい」





ダイアナ「…帝国に通告しておきなさい。 あくまで休戦です。 いま取り決めたのは、戦火を交えぬということだけで、それ以外に関しては、時間をかけて詰めさせてもらいます、とね」


側近「…それで帝国は納得しますか?」


ダイアナの言葉はつまり、プリベンターと帝国が戦い続けた際は、共和国は直接は戦わないものの、プリベンターを支援すると言っているも同じだった。 ふつうであれば、休戦する以上、休戦相手と敵対している国への支援は控えるものだ。





ダイアナ「…そこは言いようです。 プリベンターと帝国は休戦交渉中…。 つまり、三国はそれぞれに戦いをやめようとしているのですから、我が国の支援を理由に休戦しないというのはおかしい…。 そう言って押し切りなさい」


側近「わかりました」


ダイアナの外交上手は、この時レオンの思惑を越えた。 ダイアナ相手に不利を悟ったレオンは、時間をかけることを惜しみ、共和国サイドの条件をほぼそのまま認める形で休戦する。


そしてこの2日後、共和国は自国領域外への一切の派兵を禁じることだけを条件に、帝国との休戦条約を締結したのである…。

シャムシール:…ミヤイ、面倒だから、とっととやってね☆お・ね・が・い揺れるハート

「お前がメリャーナ様を演じると、キャバ嬢にしか見えんなたらーっ(汗)

シャムシール:うっさいわねexclamation ×2でも、言われたまんまやらされてるじゃない?あんたほんとお人よし過ぎ!

「あのマヒロめに、やりたいこと、先を越されて、拗ねておられる、のだろうな。終始不機嫌な顔をしてるのをあまり兵に見せたくないと言われてしまっては、乙女らしくて中々かわいらしいでは無いか。」

マリー:全く水臭い。姫様がお好きならミヤイさんもそう言えば良かったのに。私は最初から大歓迎でしたよ。

モスクワをも制圧したプリベンターは、それから、瞬く間にロシア一帯を手中にした。とはいえ、今後の行動は元レジスタンス勢力への背信行為と誤解され兼ねない。そのため、メリャーナの代理として、ミヤイが領内通信をジャックして演説をすることにしたのである。………とうの本人はやりたいことが、妹と所々被った上に、先を越されてしまう事実を知ってから、ふさぎ込んでしまったが。

ワグナー:……そうだったか?我々は、どちらかと言うと最初色眼鏡で見ていたような気がするが。

マリー:ワグナー!!

レアルタ:まあまあ、マリーさん落ち着いて。気持ちは解りますが、みんなに見られてしまいますよ。

グリフィン:はっはっはっは!レアルタにまで言われてしまえば、もはや形無しだな!!

トロンベ:…違いない(笑)

シュバルツ:…ミヤイ中佐、いや、参謀長閣下。時間です。演説台に速く。

「ああ、解った。その前にシュバルツ殿。」

シュバルツ:……は?

「俺の呼び名は、今まで通り、ミヤイか、閣下で充分だ。長い肩書きは嫌いでね。」

シュバルツ:……はい!

「「勇敢なる帝国、反帝国派の兵士達よ!!私はメリャーナ様が一の家臣、サコン・ミヤイである!!メリャーナ様は今お体が優れないので私が代わって話をさせて貰う………」」
「「………知っての通り、帝国に異変があったのをご存知だろうか?……摂政が変わり、皇族レオンハルトが就任となった。だからといって、帝国が善になったかとは私もまだ信じぬ。私は知っている。ザキラの圧政を。皇族の命をも蝕まんとした人の思いを踏みにじる行為を、それを野放しにした帝国の怠慢を私は許さない。

だがしかし!!反帝国の諸君達よ!それを重々承知で私はこうも思う!!《人の可能性を、今一度信じては見ぬか?》、と。我等が得た情報によるとザキラは左遷を早くもされている。善政も始まる日も近いと耳にする。帝国も良き日を当たる時が来たのだ。戦の時は終わりつつある……思い出せ!!我等の大儀は何か!?」」

一同:《《戦の火だねの根絶と、万民に日の当たる政治を!!》》

声が挙がった途端、儀礼用の帯剣をミヤイが抜くと、後ろについていたプリベンターの諸将達もそれに倣う。

「「………聞いての通りだ、百合撃ち合っても尚生き残ったロシアの将兵達よ。私は進撃の際にメリャーナ様と共に皆にこう厳命させた。《降伏するのであれば命までは決して取るな。》、と。我等は《世界の雨》の様な存在と成らんと日々奮闘している。いさかいは水に流そう。今後、士官だけ薦めるが、無理強いはせぬ。我等に付きたい者だけ残れ。残りはこぞって会談の日までに、帝国に返すと確約しよう。よって、これより、帝国と、停戦協定を正式に結ぶこととする!!」」

帝国兵:………………おおおおおおお!!

最後の儀礼に、プリベンターの士官達が剣を天に翳しながら、剣を重ね合う姿に歓声が聞こえる中、なんと今まで戦っていた者まで魅了された者が少なく無かったと言う。後に、メリャーナに準じる名誉ある将達の束ねる軍団の総称を《アクアナイツ》と名付けられる。また、この演説は、ミヤイがプリベンターの名実共にナンバー2の席に着いた、瞬間でもあった………。
レオン:……ほう?捕虜の返還と東欧の一部返還を行う代わりに、プリベンターの領土交換と自治権を??

「…最も、こちらに付きたいと言われてしまった者に関しては、了承しかねる形になりますが。」

演説から完全に領内の情勢が静かになった三日後、ミヤイが帝国に訪れていた。本来、メリャーナが来るべき所であるが、《ユーフォリアの者と私は仲が悪い。万一、遭遇してつまらない口論になる醜態を新しく戴冠された陛下には見せたくない。》と返答されてしまっては遇の音も出なかった。事実、停戦を誓った元反帝国連合にいた、ダイアナにまで《充分有り得ることだ》、と書状まで来ていた。……最も、ミヤイの計らいか、ユーフォリアの面子を守るかのように、昔交換された、エンドラを儀礼用に改造して施設団用の艦の一つとしてやって来ていたが………

レオン:………交換する場所は、ノルウェー以東のヨーロッパ、南部は東欧領と領土がきっちり繋がるよう、計らい願いたい。それに見合う形で東欧を西端から受け渡すとする……か。

モカ:………一つ聞きたい。

「…何でしょう?」

モカ:…パンドラールだけ確実に《綺麗に帝国領》と言う案は何処から来ているんだ?

「……はて?これまた異なことを。貴方方にして見れば、あの地は帝国の聖地の様なもの。事実、我等も神の逆鱗に触れたかのように押し返され申した。その様な地を書状や人の交渉で土足で踏みいる真似をするのは天命に対する冒涜でしょう。」

イエスマン:発言を許されよ……実は、とか言って、再び敵と認識されたら、真っ先に攻めるおつもりでは??

この言葉を待っていたかのように、ミヤイはクスリと笑って、こう返した。

「……それはそちらのご想像にお任せ致しましょう。ご安心なされよ。我等は余計な血は好みませぬ。要はそちらの誰かが心変わりしなければ、ですが。」

緩和休題と言う形で、メリャーナの帯剣だと言う物を満面の笑顔でひざまづき、陛下に差し出す。幼子がキョトンとした目をしながらも、近従がそれを受け取った。少なくとも、《プリベンターは形では臣従している組織》となったのである。その後、彼は最も、と皆に続ける。

「パンドラールを下さるのであれば、断る理由もございませんがな。ひょっとすると、我が主君、メリャーナ様はより一層、勤勉になるかもしれませんが。」

モカ:貴様!!

モカ達を含む、衛兵が銃を構えようと手が触れかけたがレオンが手で征する。彼はいつの間にか笑っていた。釣られてミヤイも笑っていた…………。

(エピローグになってないから、仕方なくレオン再登場→(笑)


レオン「…まあ陛下も異論がないご様子ゆえ、それで…  いく訳がなかろう? 虫がよすぎるな。 降伏を拒む理由はないが、与える領土はモスクワ1つか、北欧または東欧に2国のみ。 それから、フロンティアガードとの協調関係を断絶せよ」


ミヤイ「なっ!」


ミヤイはレオンが急に強硬な態度に出たことに、驚いた表情を見せる。





レオン「…何を驚くことがある。 もしその驚きが演技ではないのだとしたら、君臣共々甘いなプリベンターは」


レオンは容赦なく切り捨て、モカがさらに追い討ちをかける。





モカ「…火事場泥棒という言葉をご存じか? いまのプリベンターは、まさにそれだと心得られよ。 妹の真似をしたつもりであろうが、柳の下にドジョウは2匹もおらぬものでな。 ユーフォリアはザキラへの反乱を決めて以来、ずっと殿下と協調関係にあった。 期待以上にザキラを引き付けたのみならず、使い捨てにされぬよう、巧みに立ち回っておった。 にも関わらず、要求した領土は1年近くも前に得たルナ2と地球軌道のみ。 それに対してプリベンターのなんと強欲なことよ。 恥を知るがよいわ!!」


レオンはともかく、モカは本気でそう言っているようだった。 顔が少しだけ紅い。





ミヤイ「…では、この話はなかったことにすると…?」







ブラック「…その前に、もう1つよろしいか?」


そう言ったのは、降伏が成り、ユーフォリアから帰参したばかりのブラックだ。 約1年以上に渡ってマヒロの参謀を務めながら、実はレオンの送り込んだ監視役だった人物である。





ブラック「捕虜の返還と言われるが、休戦する以上、返還は無条件に行われるのが常識では? むしろ形を整えるならば、人質を差し出し、我々がそれを断ったという形にするくらいの配慮があってしかるべき。 それが領土要求に、さもパンドラールを欲するがごとき発言。 冗談にしても笑えぬように思う」


ブラックは、ユーフォリア時代と変わらぬ毒舌を振るう。







レオン「…聞いての通りだ。 私は部下の諫言には耳を傾ける主義では? 2人がこういう以上、やむを得ぬな」








リリス「…なにやら、穏やかではないな。 この者たちがどうかしたのか?」


そんな不穏な空気に、10歳の皇帝がそう訊ねた。





レオン「陛下にお見苦しい様をお見せしてしまい、まことに申し訳ございません。 平にご容赦を」


レオンはそう言ってひざまづく。





リリス「…それはよい。 で、この者たちはなんとしたのか?」


ブラック「…陛下が先のマヒロと、この男の主君… マヒロの姉なのですが、どちらが好きかという話でございますよ」


ブラックが同じくひざまづき、めずらしく優しげな声で語る。





リリス「この者たちはよく知らぬが、朕はマヒロは好きだ。 あやつの献上してくれたアイスクリームは美味であったし、ミクとかいう女も、いろいろと楽しい話をしてくれたからな?」


そう嬉しそうに語る表情は、帝国の皇帝ではなく、10歳になったばかりの女の子のそれだった。





レオン「…幼少の陛下にまで言われたな? では、帰って姉上に伝えてもらいたい。 もう少し、人の心の機微のなんたるかを学ばれた方がよいと。 ちなみに、条件は交渉の余地はない訳ではないが、フロンティアガードとの手切りは絶対条件だ。 帝国に降伏すると言っておきながら、その帝国に反旗を翻す勢力と緊密な関係というのでは、こちらとしても示しがつかぬ」


ミヤイ「……。」


ミヤイの予想に反して、交渉は難航の気配を見せ始めていた…。

〜第一期エピローグ インドラ編〜


インドラは存亡の危機に立たされていた。 パンドラールでのザキラの反撃は、最も果敢に攻勢をかけていたインドラを直撃、インドラの野戦病院は、負傷兵で溢れかえった。

しかも、その危機を救ったのは、皮肉にも帝国のレオンによる政変であった。





ウィナス「…ふん。 たいしたザマだな、マンネ。 私がいない間にパンドラールを攻めたはいいが、これでは元も子もないではないか!」


ユーフォリアに滞在していたウィナスは、パンドラール戦に直接関わっていない。 しかも、責める相手が恨みを持つマンネとくれば、まさに鬼の首でも取ったような勢いだ。





ダイン「…今回の負けは、すべて私の責だ。 それにウィナスもインドラの将ならば、他人の責を追及する前に、打開策の1つも出してはどうか?」


ダインの言葉は、むしろウィナスに対して、より厳しかった。 ウィナスはマンネの敗戦を責めたが、ウィナスもまた、滞在していたユーフォリアの反意に気付けず、インドラとの関係悪化を防げなかったのだった。





ウィナス「…あれはユーフォリアの一方的な豹変です。 その責が私にあるとでも!」


ウィナスはそんな仕打ちに、非難の声を上げるが…。





ダイン「…曲解のしすぎだ、ウィナス。 私は誰の責も責めてはいない。 ただ、いまのインドラは、敵に負け、味方に裏切られたのだ。 この危機を乗り切るには、皆が一丸となるしかない。 そのためには、責任論など無用の長物だと言っているに過ぎない」



ウィナス「……。」


ダインの言葉に、ウィナスは不満そうに黙り込む。







マンネ「…そのことですが、ダイン。 ユーフォリアは本当に裏切ったのでしょうか? そして、帝国は本当にこれからも敵なのでしょうか?」


ウィナス「マンネっ! 帝国が敵ではないとは気でもふれたかっ!!」



ダイン「…聞こうか」


ダインはウィナスを見すらせずに、マンネの方に向き直った。





マンネ「はい。 たしかに帝国と和することは、我が国の事情からして不可能です。 ユーフォリアも帝国に降伏している以上、我が国との再度の軍事同盟は厳しいと思われます。 しかし、帝国もまた政変によって不安定な情勢にあります。 アフリカに飛ばされたザキラが、それを不満として反旗を翻すこともありうるのではないでしょうか?」



ダイン「…つまり、帝国もまた1枚岩ではない、か」


ダインはマンネの言葉に少し考える表情をする。






ウィナス「…そうだとしてマンネ。 どうすればいいと言うつもりだ!」


マンネ「…それは…」


ウィナスの言葉に、マンネは苦渋の表情を浮かべる。 どうやら具体的な策はないようだ。





ダイン「…ウィナス。 いい加減にしたまえ。 わかった、マンネ。 我が国の事情を鑑みるに、帝国がいかに変わろうとも、和平はありえない。 だが、アフリカとパンドラールが1枚岩でないことが前提ならば、その間に挟まれた我が国には朗報だ。 後は北を席巻しつつあるプリベンターだが、これとは反帝国連合以前からの同盟相手だ。 ユーフォリアに代わる同盟相手として、さらに親密になれるか、打診してみる価値はある」


こうして危機を迎えていたインドラだったが、要害を死守して帝国の侵攻に備える一方、新たなる外交を模索し始めていた…。


〜第一期エピローグ ミク・ユヅキ・キルシェ・ナズーリ編〜


ミク「君のことみっくみくにしてやんよぉ〜るんるん


…と、なぜか中世の歌を鼻歌を口ずさみながら何やらキー叩くのは、マヒロの妹として、いろんな意味で有名人になったミク・ミズサワである。 様子から察するに、先にマヒロと訪れたパンドラールでいいことがあって、機嫌がすこぶるいいらしい。





マヒロ「…あんたの中世かぶれもそこまできたわね…。 それはともかく、仕事はちゃんとしてるんでしょうね?」


マヒロは呆れ顔だ。





ミク「…仕事ってなんだっけ?」


ミクは思いっきり素っとんきょうに聞き返す。





マヒロ「…あのねえ… 言っておいたでしょ。 軍…」

ミク「…の編制計画なら、ケイさんに頼んだ。 DGデータの取りまとめなら、ナーちゃんがしてくれるって。  ちなみに、新しいMSの開発と改良プランのことなら、お姉に頼まれる5日前に終わってたよ揺れるハート



マヒロ「…なっ…」





ケイ「…お前の負けだ…」


ナズーリ「…こう言ってはなんだが、殿下。 相手が悪い」


キルシェ「…ふざけているように見えますけれど、その…  開発プランは理想的でした…」





その場に居並ぶ3人は、皮肉にもみなミクのやり方を評価していた。 霧雨が軍を去り、ブラックが帰参したいま、ミクの傍若無人ぶりを止める人間は誰一人いなくなっていた。

…というより、傍若無人なクセに効率的で、しかも他の人間にわかりやすいというミクの仕事は、周囲から歓迎されるようになりつつあったのだ。





マヒロ「う゛〜 ケイさんまでぇ〜」


マヒロは拗ねて見せるが、ユヅキは相変わらずそっけない。



ケイ「…王女として、その態度はどうかと思うぞ。 だいたい、もう拗ねて見せたら可愛いような歳でもないだろう…」


…と言うか、かなり辛辣だった。



キルシェ「…あはは…」


そして、そんな2人に苦笑するしかないキルシェ。







マヒロ「…なによ、みんなして! ユーフォリアだってあたしが興したんだし、少なくとも宇宙は平和になったんだし、もうちょっとくらい褒めてくれてもいいじゃな〜い」


全員「…はいはい。 わかったから」


集中攻撃に屈したのか、マヒロをどよ〜んとしたオーラが包み込む。









マヒロ「…ところでみんな、ユーフォリアに残ったんだ?」


復活したマヒロは、不意に話題を変えた。 言われてみれば、ユヅキ、キルシェ、ナズーリの3人は、紆余曲折があってユーフォリアに来た人間で、和平を機にユーフォリアを去ってもおかしくはない。





ナズーリ「…私はインドラの人間と言うわけでもないしな。 それにまあ、ミクとつるんでいる限り、研究する題材には困らないしな」


キルシェ「…たしかにレオンハルト殿下から帰参のお誘いはいただきましたけれど、軍としての愛着という意味では…」


ケイ「…私も言う必要があるのか?」





マヒロ「…みんな…」


ミク「お姉が心配で仕方がないって揺れるハート


ホロリとしかけたマヒロを、ミクがいつも調子で叩き斬った。 そして、いつもの追いかけっこが始まる。





キルシェ「…ところで、ミクさんがさっきから通信していた相手ですけれど…」


ケイ「…ああ、あれか。 なんでも新しい帝国の皇帝と仲良くなったらしい。 これは、極秘の暗号通信で、直接話ができるらしいな」


ナズーリ「…皇帝と言っても、まだ10歳の子供なんだろう?」



ケイ「…だから、ミクが適任なんだ」


一同が納得したところで、息を切らしたマヒロが話に割り込む。 どうやら、ミクから事情を聞かされていなかったらしい。





マヒロ「…えっ? どういうこと???」


ミク「うん。 ブラちゃんからのお願いでね? リリちゃんの友達になってあげてくれって」


ケイ「…よく見ているかも知れない。 10歳の子供に、いまの帝国の皇帝など保たん。 ミクが通信とは言え、話相手になればいくらかでも変わる可能性はある」



ナズーリ「…他国からもオファーがあるのか。 殿下。 ミクのクーデターには気をつけた方がいい。 この調子だと、殿下より人気があるぞ?」


ナズーリは笑いながら言うが…。





ミク「…そんなメンドいこと、みんなお姉に押しつけるに決まってるじゃんるんるん


本人にその気はまったくないのだった。

こうしてユーフォリアは、平和を謳歌していた。 同じ姉妹のメリャーナとの違いは、どこから来るのか謎のまま…。


〜第一期エピローグ ドラグノック編〜


アスピス「…これでよろしかったのですか?」


アスピスは遠慮がちに声をかけた。 アスピスが言っているのは、ドラグノックがレオンからの即位の要請を黙殺し続け、結果、幼帝を擁立させてしまったことだった。 新帝がレオンのための飾りに過ぎないことは、誰の目にも明らかである。





ドラグノック「……。」


ドラグノックは、アスピスにすら黙して語らぬ日々を送っていた。 ベルリンはパンドラールの政変に影響されることもなく、平穏な日々が続いている。 そういう意味では、ドラグノックの判断は正しかったとも言える。

ちなみに、そんなドラグノックに、レオンは欧州軍の最高指揮官の地位を押し付けてきた。 そうされるまでもなく、ドラグノックは西欧を取りまとめてはいたが、形を整えたということになる。

他にも月やアジア、アフリカ、インド方面などの要所にそれなり大きな規模の地方軍団が置かれており、レオンの体制は地方分権体制とも言えた。 ただしその軍団のトップは、アフリカのザキラを除き、レオンの息のかかっている人間ばかりである。





ドラグノック「…あやつも… 変わらぬな」


アスピス「…は?」


ドラグノックはそう呟く。 かつてザキラを暗殺し、無理矢理に帝国を握ろうとした頃に比べれば、そのやり方は巧みであり、用心深かった。 そして、そんなレオンに与する人間も増えたのだろう。





ドラグノック「…なんでもないわ。 ただ、人間の性根というものは、生涯変わらぬものかと思っただけよ」


アスピス「……。」


それだけ言うと、ドラグノックは机の上の書類に目を通し始めた。 下がれとは言われなかったが、長年ドラグノックに仕えるアスピスは、そんな主の気配を察し部屋を辞去した。







アスピス「レオン殿下はパンドラールを握られ、帝国と同一ではないとは言え、マヒロ殿下も国を統べる身。 欧州には何も問題はなく、しいて言うならば、メリャーナ殿下のお考えがわかりにくいことくらいのはずなのだが…」


世界は平穏になりつつあった。 それも、皇族による統治という、ドラグノックの希望を叶える形で。 しかしアスピスは、その動かざる世界に一抹の不安を拭いきれないでいた…。

「……ここに来て、一つだけはっきりしたことがある。」

レオンハルト:…ほう??

「貴公らは作法に関しては非常にお詳しい様だが、故意か、連日の仕事疲れか??田舎者の我等の《真実の心》を見抜く目まではまだ無いようだということです。誤解を招いたことにはお詫び申し上げるが、正直ほとほと落胆いたした。」

モカ:まだ言うか!?

モカの顔が正しく火を噴く直前と言わんばかりに赤くなるが、レオンに制せられる。

ブラック:…ほう?ならば聞かせていただこうか??

「…そもそも、《我々プリベンターは降伏発言をしていない。》…妙だとは思いませんでしたか??私の提案内容には停戦と、制圧地域の安定の為の、一部領土交換と、期間限定で交換領の移民、軍臣の移動の任意を求めるというもの。極めつけは身分の違いこそあれど、対等の相手に近い視点の物腰で話しているという点。これではまるで…」

リリス:…《敵対関係から中立を目差しているようだ》………と言った所ですね。

モカ:…陛下!?

レオンハルト:……………そういうことか。

「左様。…周りもお気づきで嬉しゅうございます。………よもや、若さが売りだと失礼ながら愚考しておりましたが、帝国女王陛下の方がよっぽど話を解っておられる。……良き教育係を手に入れられたのですね。この様子だと帝国の先行きは明るいですな!」

ブラック:……………。

三者三様の臣下を見ながら、ミヤイは素直な感想を述べる。

モカ:…では、あの宝剣は??

「あれは、主の決意表明です。《メリャーナは皇族としてでは無く、個人として帝国から出て行く。故に皇族の証を返す》という。本当はドラグノッグ卿派の者とことを構えるのが後少し遅ければ、返上も断然速かったのですがな。こういう時にしか還しに行けぬとは皮肉な話です。………最も、私は返上の作法を知らぬし、主にも恥をかいて来いと言われ申した。………おそらくですが……」

レオンハルト:…帝国の皇族を抜けたがったはいいが、姉上も作法が解らなかった。……そんな所か。

ミヤイは無言で頷いた。少しいたたまれない空気が漂う。

〜レオン決別編〜


レオン「…ふ… ふはははっ! すまなかったな。 私のつまらぬ勘違いのせいで、話をわかりにくくしたようだ」


レオンはそう言って、豪気に笑った。 まあ、勘違いを誘発したのはミヤイにも責任はあるだろうし、それに真っ向から食らいついたのは、モカとブラックなのだが。





レオン「…作法など知らなくて当然。 そんなものなどありはしないのだからな。 かつて兄弟が即位した折りに、王や諸侯として臣籍に下ったり、病や何やらを理由に継承権を他の一族に託したという話は聞くが、短剣まで突っ返しに来たなどと言う話は聞かぬ。 それを承知で姉上がそうされたならば、それだけの覚悟がおありなのだろう。  …と言うか、そこまでされるからには、もはや姉上と呼ぶのもふさわしくないかな?」


レオンは感心半分、余裕半分といった口調だ。 ただ、ミヤイの言わんとすることを理解はしたようである。





ミヤイ「…呼称などはご自由に。 我が主は、そのような些事にこだわられる方ではありません。 それよりも…」


ブラック「交渉内容か。だがそれならば、領土の配分は我らの指図するところではないと心得る。 領土と一口に言うが、元より帝国の直轄領たるロシアはともかく、東欧、北欧には、それぞれ元来の領主がいる。 それらが、プリベンターにつくと言えばよし、つかぬ、領土を取り戻してくれとパンドラールに頼みにくれば、本国としては援軍を出さざるを得ないだけだ」


ブラックは相も変わらぬ、正論での正面突破を謀る。


モカ「…西欧のドラグノック殿下のなされていること。 あれが、本来の帝国の形なのだ。 いつからか直轄軍が暴走し、地方貴族はその火消しに奔走するようになったが、本来は逆なのだ」





ミヤイ「…では仮に、東欧、北欧のすべてが帝国に背くと言っても見過ごす、と?」



レオン「…帝国がこのような有り様でなければ、私も迷わず鎮圧するだろう。 だが、帝国は乱れ過ぎた。 いまは、地方の弱小貴族と言えど、その苦衷を察する時であり、力で捻り潰す時ではない。 ゆえに、要請がない限り動かぬ。 ただし、援軍の要請があれば、即座に介入させてもらう」



モカ「…まあ、オデッサを結果としては復興させたとは言え、核を使い、ついでに反帝国のフロンティア・ガードと手を組んだままのプリベンターに、どれだけの支持が集まるか疑問だがな? そう言えばたしか、プリベンターは貴族制廃止を掲げてもいたような? 東欧、北欧で得た領土は、配分せずに直轄とするつもりか? 土地に愛着のある者は多い。 身分と生活の保証だけで、簡単に領主たる尊厳を捨てるかどうか?」


レオンと違い、モカは挑発的だった。 高齢で、かつての帝国に固執する分、プリベンターには含むところがあるのだろう。





リリス「…皆、なにやら険悪なようだが、朕は困った人間は助けよ、弱き者の言うことにも耳を傾けよ、と母上に教わった。 そなたたちが朕の貴族たちを困らせるというならば、たとえ伯母上であろうと討たねばならぬことになる。 だが、伯母上がそんな狼藉を働く方ではないと、朕は信じているぞ」


少女らしい笑みを浮かべながら、しかし、受け答えは理知、情共に皇帝として申し分なかった。 意外な名君の言葉に苦笑するレオンとミヤイ。

そして欧州事情は、ようやくの結末を迎える…。

−エピローグ、プリベンター編&ザキラの尻尾?編−

「はてさて?上手く行くかはこちらもまだ賭けに近い段階でしてな。直轄になるかどうかは今後の《従属勢力の住み分け》と《国土内、外の交易の見積もり状態の調査結果》によりますな。………奇妙な話、貴公ら帝国とも、時間が解決するのであれば、交易をするのも有りとも考えていますがいつになるかはこの様子ではまだ解りませぬな。それと…」

レオン:……ん?

「帝国と敵対していたからと言ってレジスタンス勢力は常に敵という認識は改めなされ。条件付きでこそあったが、手を切れと言った当のフロンティアガードの代表の中にも、いずれ帝国領民となるのもありやもしれぬと一昨日の方針会議で語った者もいた。面白い話もあるものですな。何事も人の思惑とは不可思議なもの。…それをゆめゆめお忘れ無きよう。

また、ぬるま湯だからこそ、時として調和が取れることもあるのです。我等は種類の違う川が合流した中洲にいる様な存在だが、何故かそこならではの調和の取り方に恵まれていたからこそ、こんなことが言えるのやも、知れませぬが。」

レオン:それは状況次第と言う所だ。

「ふふ、ごもっとも。これにて、私のここでの今回の私の外交の任は終了です。……表向きは、ですが。」

モカ:…裏があると??

ブラックがモカに続いて何か言おうとしたが、意外な人物が遮る。

イエスマン:その様子じゃ、僕が邪魔かな?

「あなたの話は私も掴んでいる。だが、まだあなたがこの件に関わって良いか半信半疑でね。下手なことをして、今度左遷でもされたら、下々の者達に申し訳無い。」

イエスマン:……いいよ。君、芸達者だね。

「……あなたもね。今度、あなたの素顔を見てみたいものだ。…いや、それはこちらに向かっての言葉でもあるか。感謝する、と言って置こう。元エージェントY」

イエスマンが退場するのを確認すると、ミヤイはロシアで尋問した捕虜達から得たキサナドゥに関する情報を纏めた小型情報投影機をレオンとリリスに小声で話し掛けながら託す。

「(確認は帰って来た捕虜の尋問で。宇宙で、何も起きて無ければそれでよし。この件だけに限り、我等プリベンターが出来ることが有れば、無償で協力しよう。謎の多い、キサナドゥなる男の周りを徹底的にマークしてくだされ。本音を言うと、ザキラが死なぬと、おちおち枕を高くして眠れませぬが…………)」

ミヤイが帝国を去った二週間後、月貴族の洗い直しが済んだ帝国からユーフォリアと合同企画で未開の木星圏への探査団が派遣される。真実が全てはっきりするのは、また、大分後の話……………。

(やっとここまで来たってカンジあせあせ(飛び散る汗))


〜総括エピローグ〜


こうして、宇宙歴155年〜158年の約2年半に渡った戦乱は、一応の終息を見た。 この戦乱で、帝国はその直轄領を大きく削られたばかりか、各地の貴族に分権を余儀なくされ、その中央集権体制を改めざるを得なくなった。

それでも帝国は、新たなる皇帝リリスと摂政レオンの元、新たなる覇道を歩み出す。



だが、分権は地方と密着した細やかな治世がしやすい反面、土着の勢力と化したそれらが、中央と対立する宿命を抱えるのは、幾度となく歴史が繰り返して来た、いわば流れのようなものだった。


そして何より、中央より遠ざけるという形で処理せざるを得なかった問題が、闇の中でうごめき出す。


それは、遠き彼方の星からもたらされるのか?

それとも、熱き灼熱の大地から涌かんとするのか?



とは言え、人々が戦乱に疲れた身を束の間、癒すだけの時が得られたことも、間違いではなかった。

たとえかりそめの平和と言われようとも、いまはその穏やかな流れに身を委ねよう。

それぐらいの権利は、血を流し続けた人々にあると信じて…。

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