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リズモジカル -lismojical-コミュのカタクアイ:完全版

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半分くらい自転車になりかけていた

麻津子と出会ったのは 知人に誘われたホームパーティーの中で紹介されたのが初めてだった
背が高くて細い身体のシルエットだが骨太なしっかりとした体型にも見える
大きすぎる瞳にはまっすぐな生きるためのレールをしっかり見出してる芯の太さを感じる
屈託のない笑顔が印象的で でも自分が好きになるとか そういう想像もすることも許されないような
会った瞬間から稲妻が走って恋をしたわけじゃなく 何年かは知り合いを介してたまに会うくらいだった

そのタイミングは偶然にもやってきたのだった

チリで大地震が起きて 津波が1700キロメートルも離れたところからやってくるってニュースでやっていて
その途中で沖合いのエルニーニョを立て横に揺さぶりながら 日本より5時間先にハワイに到達してたいした被害が出ず
そうして日本までチリ津波はやってきた8月からちょうど1ヶ月後だった

麻津子の隣の席にすわり
唐突にも んじゃ 付き合おうか 
ってまるで前置きもなく言ってるみたいに気持ちを伝えたら
やっぱり麻津子は僕の気持ちの変化に気付いていなかったようで 
びっくりした表情を僕に向け
なんだか黙っちゃって 手元で指輪をチロチロいじっていた
そこからは今までの曖昧な態度を翻して 
もー 直球な言葉のボールをバッシンバッシン投げつけたのだが
相変わらず目をつぶってそのボールをキャッチャーミットでとろうとするので
目をつぶっちゃあボールはとれないよー って伝えるんだけど
それでも
大丈夫大丈夫 私 あなたのボール拾いたいの 
って なんだそれOKってことか!? ってよろこんで
さらに150キロオーバーのストレートな言葉を投げつけたら
やっぱり目つぶったままだったから
麻津子のキャッチャーミットの上側にぶつかって130キロくらいには弱まったけど
そのまま顔面にボールが直撃して 頭をのけぞって ようやく顔を正面に戻したら
鼻血を出していて それでも目を開けて へへ もう少しだったのにぃ って笑顔で僕を見る
そんな麻津子にさらにやられちゃって
持っていたボールとグローブを投げ出して
今はいい これくらいにしとこう いつか拾えるときがきたなら教えてくれって 言って抱きしめた 

それからも麻津子は断りも承諾もしないので
なんとなく日々会い続けて なんだか受け入れられてるのかな 
と思い始めていた9月ごろ
突然彼女の身体が変化し始めたのだ

最初は右足の踝の辺りが キリキリ痛むの 
って なんだか関節痛みたいに言っていたのだが
湿布をしても痛みが治まらないからっていうので町の形成外科にいったら
右足になんかしこりがあるねぇ
って言われて大きな病院で精密検査をしたほうがよい と紹介状を書いてもらって
後日 急行電車で2駅離れた 大学病院に行く事になる
病院の帰り それでも笑顔を絶やさない麻津子だったが 
右足が痛むようでびっこ引きながら歩いていた
麻津子の体を支えて歩く
僕は麻津子の愛し続けて その愛の形だとばかりに 身体を気遣う
そうすることで 麻津子の笑顔をみたかったし 少しは 自己満足が麻津子にとってもなんだ って思い込んでいた

大学病院の予約の日
さすがの麻津子も身体のことで 精神的に病んできちゃって 寝不足だし 少し笑顔が減ってしまう3日しかたっていないのに
そのしこりがこぶし大まで膨らんできて
膨らんだ分なんだか右足の指が短くなってきていて まるで身体の一部がトランスフォームして
指の骨が減った分を使って踝に骨を集めてるみたいになってきた
左足にも変化が起こっていた
左の足は右足とは逆にどんどん薄くなりながら大きく広がり
湾曲して人差し指が かかとにくっつこうとしているんじゃないか ってくらいに丸くなってきている
もう自力では歩くことも困難になってきた麻津子

僕は麻津子を背負って病院へ行く
身長の割には軽く 背負うと身体の柔らかい部分より
皮一枚隔てて感じる骨の存在のが強く 僕の背中に刺さってくるようだ
僕の家からタクシーに乗り込み病院に向かう
麻津子は 本当にごめんね こんな迷惑をかけたくないのに どうなっちゃったんだろう 私の身体
僕はいたたまれなくなって 麻津子を抱きしめる
麻津子は フフッ って笑う
安心感からのもれた笑いなのか わからないでいると
すぐに麻津子の体に異変が起こる
今度は右足の付け根 腰のすぐ下の部分を痛がり始める
思わず タクシーの運転手に 急いでくれ すぐに見てもらわないと 早く! 急げよ!
と 後ろの席から運転手のシートを揺さぶる
ええ これでも飛ばしているんですが 道が込んでてねぇ と 運転手
苛々がその運転手のゆっくりとしたしゃべり方に怒り爆発
赤信号で停車している時にドアを無理やり開け運転手側の扉を開け
その運転手を蹴飛ばして車から引っ張り出し
自分で運転してやろうかと思って行動せず
それを察してか麻津子が 僕の目を見ながら 首を振る
渋滞を抜けて病院内のロータリーを制限とおり10キロでのろのろ入るタクシー
中央玄関のところで止まるが料金を払うまでドアを開けようとはしない運転手 料金を投げつけ
反対側に周りドアを開け麻津子を背負う
受付で事情を説明し紹介状を渡すとすぐに診察所に通される
麻津子の元右足は足のつけねから曲がらなくなって
元踝の骨に骨でできたしこりが円柱状の骨となり
皮から飛び出して 皮を破って飛び出したせいで血が出始め その血が潤滑油となり
円柱状の骨が踝の骨を軸として回り始めていた
診療した中年の医者は あー これきれいに回るねー たぶん足根骨が変形したんだろうな
なんて 意味のわかんない事いいながらくるくる っと その元骨が変形してできた円柱状のハブを回して
そのたびに彼女が辛そうな顔をするので
医者に 何が原因なんだよ ここ数日でどんどん悪化してるんだよ って言う
とにかく検査をするので入院しましょう と 医者
簡単な処置を受け レントゲンを撮り
看護士に車椅子を渡され病室まで行く
辛そうに足をさすりながらベットに横たわる麻津子
自分が何もしてやれない苦しさに
とにかく 手を握り麻津子をはげます
右足の踝から飛び出した骨はそのままに ただ止血され ガーゼされていた
痛いよ 痛いかも でもきれいに回ってるね これでもいいのかも でも 痛い 痛いよ
その回転を止めてやりたいけれども 触ると麻津子は痛がり どうすることもできない
とにかく手を握り さすってやる
ベットに寝かせてやり 担当医が来るのを待つ
ベットに横になると麻津子は そっと握っていた手を離し
今日は病院でゆっくりするから かえっていいよ 横になったら少しは痛みも和らいできた
心配かけてごめんね 明日も仕事でしょ
今日はずっと傍にいるよ
だめだよ 私は大丈夫だから いっぱい言葉もらったから 大丈夫 ありがとう
せめて症状だけでもわかるまでいるよ 僕は大丈夫だから
ふっと目をつぶり 再度目を開け 麻津子は口を開く
さっき連絡して両親も来てくれるみたいだから ね 今日は帰って


帰りの電車の中で偶然見つけた空席に落ち着き
目をつぶる 脳は考えながら 身体は休もうとする

それはまるで未来の自分を示すように
そのとき感じていたことの違和感を知りながら消し去っていたかのように
それ以上の暖かさが自分にとって最高のぬくもりだったのだ
それはそれを与えている想像する形は誤解できても 実際はどんな形状のものかわからないのだ

自分が作り上げた神が僕の村を訪れる
神といっても自然と生み出された自分以外の自分の本質なのだ
その神はジーパンをなんだか神聖なる衣で覆って
僕の目の前にそれっぽく 空からその衣をたなびかせて降りてくる
付け髭をして 頭は禿げ上がっている
口を尖らせて ホォォォーー とか手を天に仰ぎ 叫んでる

スタッ

あー 君ちょっと歩く音が響き渡り過ぎてるわ ほんと
森林はその振動におびえ根を捨て地に帰ろうとしているし
海は君の歩幅に合わせて多きなる津波が起こして
君の存在を
君の足音のおおきさを
ごまかし消し去ろうとしているんだ
私が降臨している時点でかなり深刻な状態なんだけどさ

いやいや 僕は普段の生活を行おうとして 歩いているだけですよ
それをあなたみたいな人に出てこられて
これから私たちの村はどう生活してゆけばいいんですか?

わかる わかるー そそ 普段のことなんだけど
その普段が1ミリの重力を増してごらんよ わかるでしょ普通じゃないってこと
さっきも言ったけどさ 俺がここにおりてきちゃってるもんねぇ

平和だからこそ人口が増え 安定した生活を望むからこそ
足音を鳴らしすすみ より安定した地を求むるのだ

僕はその神とやらに近づき その神が身に着けたウザイ衣をつかんで

神だかなんだかしらないけどさ!俺らは俺らであってさ!
その上であんたのこと 崇拝して 拝めてるわけじゃないすか
それが降りてきて ある意味あんたの意思で歩いているわけで それは使命であって
森羅万丈なわけでしょう? それこそあなたの示した道なんじゃありせん?

はいはい っと そのジーパン姿の神は 僕の手を払いのけ

うんうん だからさ 言ってるじゃないか
いちいちさそうやって決め付けないでさぁ
もっと大きく もっと地を嗅ぎ 海を吸い 空を包みこんでごらんよ
今いる自分たちの事をよく知って
そのおかげで足りているものは満ち
足らないものから欠け逝くんだよ

ははっ

そう言って また空に向かって 飛び立とうと5センチほどジャンプして
地面にまた着地する って瞬間に 弱弱しく浮かび上がり
それっ とか言って15分くらいかけて消えてゆく

かと思ったら ひょこっと雲の切れ間から手を出して

そーそー ここに君の好きな答えってやつ書いてあるからー
見たけりゃ見といてー
ってなんか 重しのついた 黄金に光る紙束を落とした
ぱひゅーっとその重しが重力の力とあいまって加速!

まさかの僕の頭にクリティカルヒット!

ガツンッ

って 気付いたら電車はもう自分の住む町の駅についていた


次の日麻津子に会いに病院に向かう
電車にのって仕事で疲れてはいたものの
ここで寝たらまたあの神が出てきてしまいそうだ
寝てはなるものかと 必死に眠気と戦い勝利する
ところであの紙に書いてあった答えってなんだろう?

駅から病院まで5分ほど歩くことになるのだが
その道のりには都内を横断する片道3車線もある大通りがありしばらく進む
大通りの向こう側にはこのあたりでは有名な大きな公園があり
夕方ともなり 公園にいた人々がまばらではあるができきている姿をみることができる
その公園の入り口である親子が手をつないで ボールとグローブを その反対の手にもって
笑顔で公園からでてくる 
さっきのボールは早かったなぁ 
そうだよ だって僕ずっと練習してたんだよ だから早いボールをなげれたんだよ
笑顔で話す その親子の会話が耳にはいってくる
気付くと目印のコンビニがあり その角を曲がり 道の端っこにきれいに整備された小川がある歩道を歩く
病院につくころには 辺りは日が暮れ始め  
ほんのり暖かくなっていたアスファルトを冷やし始めていた

病院の見舞い用の入り口から入り 麻津子の病室を目指す
300号室 301号室・・・ 303号室 ここが麻津子の病室だ

カラカラ カラカラカラ カンカンカン カララ

病室の手前から妙な音が聞こえてくる
はっ と思い病室に駆け込む

病室は外のうっすらとした冷気を少しだけあいた窓の隙間から入り込んで
そのカラカラっと乾いた機械音にあわせてカーテンを揺らしている
そのカーテンの手前にベットがあり 病室の入り口からは布製のパーテーションで直接は見ることができない
そのベットにむかって歩を進めると その機械音がはっきりと聞こえてくる
パキンッ カンカララ ランカン カンカンンカン チャ
硬いものと硬いものが擦れて鳴り響く
その硬さに耐え切れず 柔らかい部分が破れていく音が低音で重なっている
パーテーションの横を通り抜けベットにたどりつく

すると麻津子はベット上で まるでバレリーナが練習前の前屈をしているかのようなポーズをとっていた
腰を深く曲げ 膝を伸ばしきって 左足だけ前方に45度ピンっと伸ばし
手はだらりと床にむかってたれ下げて 
こんなに細かっただろうかというくらい 体は痩せ細り 
そのせいで水色の患者衣は骨の一番出っ張っている部分で引っかかっているだけだ
下着をあらわにして前屈状態で硬直している
その分 小さく動いている部分がよくわかる
右足の踝から飛び出した例の骨が奇形したハブが カラカラ回っている
もう指や足の甲はすべての骨をそのハブに使い切って肉と皮だけを脱ぐ途中の靴下みたいにたれ下げている
伸ばした右足は昨日よりひどく曲がり 人差し指が完全にかかとに刺さるくらい丸まってしまっている
急激に曲がったせいだろう 麻津子の左足の甲は皮が裂けて中の骨が見えてしまっている
その左足でできたリングは 右足の踝から飛び出した骨のハブに合わせて動こうとみしみしっと音を立てている

もう彼女の顔からは表情がなくなり 何を見ているわけでもなく ただただ下を見つめていた
その美しく奇怪なポーズに魅了され そして畏れ 数秒間動けづにいた

ぼそり と何かを吐き出すかのようにつぶやく麻津子
それまで金縛りに掛かっていた僕はようやく解ける
麻津子! 痛いのかい? と とにかく横になろう 今先生を呼ぶからね
麻津子に近づき麻津子の声を聞き取ると
麻津子はそのままの膠着状態で僕の名前を呼ぶ
まったく僕のほうを見ていないのに僕の名前を呼ぶ
正気を保ってられる状態じゃ 明らかにないのに僕の名前を呼ぶ 麻津子
なんてことだ たった一日しかたってないというのに こんなにひどい状態になるとは



それから加速度的に麻津子の病状は悪化していった
そして1週間後には僕の名前さえも 呼ばなくなってしまった



今 僕は旅をしている
東京とは明らかに違う空を仰いで 海風を身体全体で受け
ただただペダルをこぎ続けている
晴れた空は僕の汗をさらっと吹き飛ばしてくれる心地よい風を向けてくれる
答えになる終着点は見えてはいないが
この自転車に乗って進んで生きたいのだ

麻津子と一緒に寝た日のことや
麻津子を背負って病院にいったときの
僕の感じた骨の刺さるような感覚はもしかしたら
自分で感じたくなかった
伝えられたくなかった
麻津子の気持ちで
自分で麻津子を愛することが 病気を治すことだって 麻津子のためだって
そうすることが自分にとって満足するため 自分中心な考えだったんだって
その自分の相手への気持ちの強さが 伝えられることが自然なことだと強要してたのかもしれない

ペダルをこいで 知らない土地を進む僕
叫びたい欲求を脳内で行って 何とか進んでる僕
後輪は軽快に回転する
ペダルにかかる力によって回るチェーンリングはようやく手に入れたチェーンによって力を伝達し
その後輪のハブを回す

カラカラ カララ カラララリン カカラッラ

この自転車がまるで麻津子の身体のように
ペダルをこぎながら 違和感を感じながら

でもこれが僕の望んだ旅なのかもしれない

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