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‐HOUND‐コミュのハウンド―2―

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一方、ヒロと銀牙は前件の現場の公園へと赴いていた。

「一番最初の現場だ。被害者は10代少年が二人。近くのコンビニで強盗傷害を起こしてる」

ヒロが端末からデータを読み上げる。銀牙はあたりを見回す。

「へへん。どんなに綺麗にしたって血の匂いはそう簡単に消えないんだ。オイラからしてみれば、あるも同然」

銀牙は得意げに笑うと、地面に手をつき身をかがめる。
銀牙はしばらく一帯をぐるぐると張って回ると、立ち上がって棒きれで地面に線を引き始める。

「一番おっきいのがこれだね。で、ちょっと重なってもう一つ、あとは飛び散った血があっちこっちにあるよ」

ヒロはそれを現場写真と見比べて、銀牙から棒きれを受けとる。

「そうだな。現場の写真で見ると一人目の死体がここ。で、少し離れたところにもう一人がいる、恐らく逃げようとしたんだろう」

「でも、ソッコーで殺られた」

「この位置なら二人は至近距離にいたことになる。一人が捕まって殺されたのを見ていたなら妙だ」

「二人とも捕まってて順に殺られたとか」

「有り得るな。何かに拘束された状態で並んで立っていた」

「で、相棒が殺られるのを見てビビって逃げようとした?」

「ますます変だ。10代のガキ二人が殺されるのを分かっててパニックにもならず大人しく捕まっていたと思うか?」

「普通の人間なら無理だね」

「二人とも自分が殺されるなんて思ってなかったんだ。だから捕まっても大人しく従った」

「じゃあ、パニッシャーは二人を捕まえて当たり前の人間ってこと?警官とか」

「可能性は大いにありうるな。何せ二人は犯罪を犯してる」

「もしかしたらさ、他の3件も…」

「あぁ、今頃メグがデータを洗ってるところだろう。帰るぞ」


「どんな感じ?」

リビングへと向かう廊下から声が届くように問う。
ドアを開ければそこはランチタイム真っ只中だった。

「えらい寛いでんなぁ」

「プロファイリングは終わったの?」

予想外のまったりモードにアキラは少々苛立ちを感じた。

「終わった」

「でも、腹減っちゃってさ」

「アキラも食べる?」

「後でいい」

メグはごちそうさま、と皿を流しへ移すとノートパソコンをテーブルの上に置いた。

「パニッシャーはとても崇拝されてるみたいなの」

黒いゴシック調に飾られた掲示板。
浮き上がる色とりどりの文字が少し不気味さをにじませる。

「『パニッシャーがまた罪びとを裁かれた』」

「『次は○○に裁きを』」

「『パニッシャーネ申』…何これ」

「パニッシャーを一種の神として崇拝しているの。人間って本当に変わってるよね」

「神か…」

アキラはため息を零す。

「で、ほかの4件については」

「警察のデータチェックしてあるよ」

銀牙が応え、ヒロがメグからパソコンを受け取り、新しいタブを開く。

「最初の被害者は10代の少年が2人、直前に強盗傷害を起して逃亡中だった。次は中年男性が一人、駅からの帰宅途中に襲われてる。3件目が10代の少女が3人、コンビニから出た直後。そして最後は20代の不良グループの2人。皆、渋谷区にて終電後から始発2時間前までのほとんど人が通らない時間帯に起こってる」

「パニッシャーの処刑スタイルもちょっとずつ変わってきてるみたい。最初はその場で殺してたみたいだけど、だんだん今回みたいに血痕の範囲が広がって来てる」

「…遊びを覚えてくみたいやなぁ」

「最初に能力に目覚めたのが最初の事件の時だったんじゃない?突発的に起こった。で、だんだんと自分の能力を知るうちに自分を崇高な処刑人だと思い込んでいった」

「目撃証言は?」

「第一発見者は大体始発に乗ろうとした人か、早朝マラソンをしてる人。でも、最初だけは違うみたい」

メグが新しい画面を開き、そこに写真を表示させる。

「一番最初の事件の第一発見者にして、パニッシャーの担当刑事。真崎健斗、特殊犯罪対策課の警部補」

「さっきの現場にいた?」

「いや、俺男に興味あらへんから」

「アホか」

蛟にアキラは蹴りを入れる。

「もともと少年課の刑事で正義感に熱く、一人で勤務外時間に見回りをしているらしい」

「見回り、へーまだそんな刑事がいるんだ」

「でも、事件は起こる」

「確かに、渋谷区ゆーたかてそんなに広い訳やない。カチ遭わないにしても声すら聞いてへんなんて、妙やな」

「もう一つ妙なことがある」

ヒロが言った。

「過去の現場を見て回ったが、1件目と3件目4件目には共通点がある」

「みんな、至近距離で一人目の殺しを目撃してるんだ。特に最初の奴は二人が並んで拘束されていた可能性がある」

「傷害事件を起こした直後の人間が大人しく捕まったんだ」

「相手は警官の可能性があるってことか」

「真崎警部補がパニッシャーだと?」

「可能性は否めない」

アキラは数秒何かを考えているようだった。

「ねぇ、真崎警部補の見回りって毎日やってんの?」

「うん、家が近いみたいで見回りをしてから歩いて帰るみたい」

「あのさ、ちょっとやってみたいことがあるんだけど」







深夜、渋谷。







終電を逃したらしいサラリーマンの男が一人、誰もいない公園のベンチに腰をおろしていた。

「ねぇ、おじさん」

声をかけるのは制服姿の女子高生。

「一人?」

「そやけど」

「ほ…ホテル行かない?(棒読み)」

「は?」

「お…お金が欲しいの(棒読み)」

「何やてー、行こ行こ!おねーちゃんかわいいからおっちゃんいくらでも払ったるわ(大声)」

男は女子高生の肩を抱いて公園を出て行った。
そして、少ししてそのあと追うひとつの影。

「(アキラ、お前演技ヘッタクソやな。もうちょっと可愛らしい声だされへんのか)」

「(そっちこそ、大げさすぎんのよ)」

「(何やて、こっちはこんなに地味な変装までしてやってんのに)」

「(うるさいな。いつもが派手すぎんのよ)」

「(お洒落やお洒落、俺の格好良さが滲みだしてんの)」

「(はいはい、分かったから。ほら、来てるよ)」

「(本当にやるん?俺痛いの嫌いやねんけど)」

「(腕の一本や二本我慢しなさいよ。すぐ治るんだから)」

「(せやかて痛いもんは痛いやろ)」

こそこそ話をしながらホテルに向かう二人。白髪交じりのカツラとくたびれたスーツの蛟。
そして、ドン○ホーテで買ってきた制服で髪をおろしたアキラ。
アキラの作戦とはパニッシャーをおびき出そうというものだった。

「罪だね…罪を犯そうとしてる…」

二人は後ろから聞こえる声にぴたりと立ち止まった。

「「((来た!))」」

二人はゆっくりと振り返り、その姿を捉えた。

「何よあんた」

「邪魔せんどいてな」

「悪い奴だ…悪い奴らだ…」

目の前の男が歩く度にじゃらり、じゃらりと金属がぶつかりあう音がする。

「悪い奴は逮捕する…このゴミだらけの街をキレイにするんだ…」

男は懐から手錠を取り出すと二人に近づいてくる。
二人は脅えながら、後ずさりする…ふり。

「お前、いい加減にせぇや」

サラリーマン役の蛟が男を突き飛ばそうと手を伸ばした。
がしゃり、とその手に手錠が掛けられる。

「なっ!」

手錠が一瞬、光を放つと同時に、蛟の左手が地面に転がった。

「!」

蛟の表情が一瞬の驚愕の後、痛みに歪む。
そしてアキラは蛟の左手が落ちた瞬間、バッグに手を突っ込み愛銃ブローニングを引っ張り出す。
男もそれに気づいたのか、銃声とほぼ同時に身を翻した。

「ヒロ!銀!」

近くで様子を疑っていた二人が瞬時に現れる。
ヒロの肩にはメグが乗っていた。

「耳が…耳がぁ…」

どうやらアキラの銃弾は耳を吹き飛ばしたようだ。

「蛟、大丈夫?」

「あかん、めっちゃ痛ぁ」

メグは地面に落ちた蛟の左手を拾い上げ、傷口にくっつける。
そして、それを針と糸で縫いつけ始めた。

「メグがおらんかったらこんな作戦出来んわ」

「そうだね」

言い終わるのが早いか、あっという間に縫合が終わり、糸が肌に溶け込んだかと思うともう左手は元通りになっていた。

「子供は寝とる時間やのに、メグありがとうな」

「ううん、私もハウンド。だから」

蛟は元通りの左手でメグの金糸の髪を優しく撫でた。

「やっぱりアンタだったんだ。真崎健斗。アンタの標的はみんな軽犯罪者。最初は強盗傷害、あとは全部憶測だけど、痴漢、万引き、暴行、器物破損、正義感の強いアンタは許せなかった」

「その異常なまでの正義感から生まれた能力に、お前はだんだんと陶酔していった」

「その結果生まれたんがイカれたパニッシャーやったってわけや」
真崎は痛みさえ忘れ、ふるふると震えだす。

「有罪…みんな有罪だ…有罪は…死刑だ!」

狂気に溺れた真崎のコートの裏には大小様々な手錠が。

「いっ!」

「とんだSMコレクターやな」

「銀はメグを連れて離れてろ」

「えー」

「行け」

「ちぇっ」

銀牙はメグをおぶさるとその場から姿を消した。

「ぶっ殺すっ…」

「殺したらあかん、アキラ」

「なんで!」

真崎から投げられる手錠を撃ち落としながら、アキラは問う。

「面の割れてない指名手配犯や!しかも相手は警官。確かな証拠もなしに死体じゃ警察は認めん」

「は!?」

「警察が面汚しを認める訳がないて言うてんねん!」

「じゃあどーすんの!?」

「動きを止めればいい」

大剣を構えたヒロを再び蛟が止めた。

「あかん、接近戦は危険や。物体に能力を融合する力や。あちらさんは物理的な攻撃と違うから、下手したら刃毀れじゃすまんで」

「…それは困る。アキラ、任せた」

「はぁ!?何それ!」

「足止めたったらええねん」

「っ…わかったよ!」

アキラはバッグの中からもう一丁ブローニングを取り出し、左手に構えた。
2発の銃声が響き渡ると、がしゃん、と手錠が地面に落ちる。
アキラの銃弾は真崎の両腿を打ち抜いていた。
真崎の両足は体を支えられず、その場に崩れ落ちる。

「ど?」

「ナイスカウボーイ」

ひゅう、と蛟は口笛を鳴らす。

「アキラ!」

ヒロの声に反応して、アキラは即座に発砲した。
金属のぶつかりあう音がして、空中で手錠が弾き飛ぶ。
地面に伏したまま、真崎はまだ手錠を投げようとしていた。

「ちっ!」

再び銃声がして、アキラの銃弾は真崎の両手を打ち抜いた。

「次に手錠がかかるんは、あんたの手やで」

「警察は?」

「呼んである」

「もう帰ろ、スカート動きづらいよ」

「何で?似合ってるやん」

「うるさい、変態」

アキラの拳が蛟の脇腹に突き刺さる。

「あイタっ!あぁ、あかん。貧血で倒れそう」

「死ね。そのまま一回死んじゃえ」

「ひどっ!」

「うっさいエロ蛇」

「男がエロくて何が悪いねん!なぁ、ヒロ」

「さりげなく俺も巻き込むな」








静かに渋谷の街の夜が明ける。

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