ログインしてさらにmixiを楽しもう

コメントを投稿して情報交換!
更新通知を受け取って、最新情報をゲット!

アンチ・ファンタシーコミュの2011芸術と宗教

  • mixiチェック
  • このエントリーをはてなブックマークに追加
芸術と宗教 シラバス

【テーマ・目標】 アニメーション映画『化物語』における怪異の内実を、心霊と宇宙論という概念を軸に考察する。作品の背景となっている宗教的発想を抽出し心霊・神・精霊・妖怪・デーモン等の諸概念の内実との関連を総点検していく。特定の宗教に限定することなく、全一的世界観と“影”という発想との対照を通して“心霊的”世界観の前提とするシステム理論的特性を掘り下げる予定である

【授業概要】 作品世界の基軸をなす宗教的概念と超自然的現象について考察していく。最初にロバート・バートンの『憂鬱の解剖学』に展開された精神と世界の連関を前提とする世界観を紹介し、アニメ作品『かみちゅ』、『モノノ怪』、『蟲師』、『ヨスガノソラ』等を随時参照しながら、『化物語』にあらわれた科学的世界観とは対蹠的な位置を占めるもう一つの世界認識のあり方を検証していく。

【授業計画】
1回 1話ひたぎクラブ1:神と人、存在と現象、等価交換の原理
「神様なんてのはどこにでもいるし、どこにもいない。」
2回 2話ひたぎクラブ2:本体と影、分離と合体、月の模様
夢野久作と『ドグラ・マグラ』、「ズルはしているかも」
3回 3話迷い蝸牛1:萌えと蕩れと憧憬 aspiration, sehnsucht
迷子と地縛霊と浮遊霊 lost boys と enfants perdus
4回 4話迷い蝸牛2:『東雲物語』、参照と引用とパロディ
迷い牛、お化けと巡礼と八九寺、古典と当世意識
5回 5話迷い蝸牛3:取り憑く、憑依、possession, haunting
悪魔祓い、exorcism と祟り神、神殺しと調伏と鎮守
6回 6話するがモンキー1:W・W・ジェイコブズの「猿の手」
北欧神話とヴァルハラ、神々の黄昏、百合とBL、怪奇譚
7回 7話するがモンキー2:駿河問いと拷問、魔女狩りと科学
rainy devil、悪魔と契約、ダイモーンと守護天使と心の内なる声
8回 8話するがモンキー3:本音と潜在意識と言い訳とすり替え
人なるものの悪意や敵意、怨恨や悔恨、嫉心や妬心、鬼と菩薩と神
9回 9話なでこスネイク1:お札とお守りと霊力、憑依と召喚
北白蛇神社、蛇神信仰、呪術とオカルト、有害図書と普遍倫理
10回 10話なでこスネイク2:蛇切り縄、朽ち縄とうわばみ
呪いと祈りと魔法、「人の悪意によって遣わされた怪異さ。」
11回 11話つばさキャット1:障り猫、多重人格症、アルター
「怪異には、それにふさわしい理由がある。それだけのことだ。」
12回 12話つばさキャット2:夏の大三角と天球図と初デート
情愛と警戒心、毒舌と心の傷と照れ隠し、自己犠牲と利己主義
13回 13話つばさキャット3:怪異自体はずっと、当たり前の
ようにそこにあるもので、ある日突然現れた訳じゃないらしいけど
14回 14話つばさキャット4:ストレス、アバター、魑魅魍魎
信じられ恐れられ怖がられ疎まれ奉られ敬われ嫌われ忌まれ願われ
15回 15話つばさキャット5:暦の影の中の忍と忍の影である暦
レポート課題の検討、質疑応答
【教科書名】 アニメーション・ビデオ『化物語』、
ロバート・バートン『憂鬱の解剖学』
【参考図書】 『アンチファンタシーというファンタシー』(近代文藝社)、『アンチファンタシーというファンタシー2』(牧歌舎)
【評価方法】 提出レポート及びコミュニティの質疑応答への自発的関与による貢献度。レポート提出は manaba folio を利用して行う。
【履修要件】 ネットワーク環境を活用した講座運営に対応できること
【事前・事後学習等】 参考資料の提示と質疑応答の受付場所としてmanaba folioのコミュニティ「2011 芸術と宗教」を活用して行く。
【備考】 manaba folio を使用。3回を超える欠席があった場合には、単位を与えないものとする。

コメント(4)

心霊
 「心霊」は、英語では「psyche」と表記されます。これは「サイ」とか「プシュケー」などの日本語表記がなされることもある、ギリシア語に源を持つ概念です。全一的世界観を前提とした存在/現象解釈を図るこの語の使用の実例としては、スー・マシソンのピーター・ビーグル論「ピーター・S・ビーグルの『最後のユニコーン』における霊的変成と言語の再生」が参考になるでしょう。以下は上記論文の日本語訳と評釈です。

 スー・マシソン「ピーター・S・ビーグルの『最後のユニコーン』における霊的変成と言語の再生」
http://www.linkclub.or.jp/~mac-kuro/anti/matheson.htm
心霊的存在解釈
 神・精霊・人間等が存在特性を遷移・交換することができるものとして理解される宇宙論的理念がこの語の背後にあります。アニメ作品を具体例にして心霊的存在/現象解釈を図った考察の例として、『エルゴ・プラクシー』について論じた以下の論文を挙げることができます。

科学とSFと哲学的省察
『エルゴ・プラクシー』における神と人と“自分”
http://antifantasy2.blog01.linkclub.jp/index.php?blogid=1214&archive=2010-9-23
怪異と人と神

「怪異」は結局存在理念においては、「神」と同等の位相を占めるものとなります。しかし人間の意識が想像力を駆使してフィクションである様々の神のイメージを作り出した、などという図式はあまりにも安直すぎてつまらないので、もっと洞察の深い論考を試みることにしましょう。例えば、使用する言語環境の変化がもたらした人間存在の意識の持ち方の変化が、紛れも無く実質としての神存在自体の変容と、神と人間との関係性をも変革させた、とする主張などがあります。詳しくは、木村凌二『多神教と一神教ー古代地中海世界の宗教ドラマ』(岩波新書)を参照してみて下さい。超自然や怪異がありふれた日常と共存することを容認する、「科学」とは軌を異にした別種の世界観に基づく宇宙論的発想がそこに発見されるでしょう。さらに、上掲の書物において何故かなおざりにされている、我々東洋人には重要なものとなる筈の考察の視点を一つ指摘して頂きたいと思います。
「化物語」原作もいいぞ

 考え抜かれた視覚表現が印象的なアニメの「化物語」ですが、原作の「化物語」と「傷物語」(西尾維新、講談社BOX)も読んでみました。しっかりした主題的構想に基づいた骨のある書き物で、「人間の少女」という紛れもない「化物」の話であることがよく分かりました。
 一見怪異の存在であると思われていたものが、科学的な合理的解釈によって超自然的存在であることを否定されるという、洞察に乏しい薄っぺらで安直な結構のお話や映画は数多いのですが、「化物語」の場合は怪異の存在がむしろ合理的に肯定される、「超自然的」化物解釈の可能性が提示されているのが、ひときわ興味深いところです。多くの人たちが無反省に受け入れていた限界ある科学的存在解釈の枠組みを拡張した、より原理志向的な統合宇宙論が意識されていることを読み取ることができれば、この「ライト・ノヴェル」の真価が改めて納得できるはずです。原作にしばしば垣間見ることができる、他の作品に対するパロディや、物語を構築するはずの記述の逸脱と遊戯的な作品世界提示の姿勢も、このような根幹原理的システム理論性の反映であることが理解されるのですが、アニメにおける少し無理のあるギャグや実験的演出も、これらの原作の先鋭的な試みの実直な対応を意図したものであろうと推察してみれば、演出に要した心労は大変なものであったことと思われます。「モノノ怪」の監督も、独特の映像表現に随分苦労したということですが、「化物語」の場合は2重に折り畳まれた創作上の冒険と創意工夫を試みている訳です。

ログインすると、みんなのコメントがもっと見れるよ

mixiユーザー
ログインしてコメントしよう!

アンチ・ファンタシー 更新情報

アンチ・ファンタシーのメンバーはこんなコミュニティにも参加しています

星印の数は、共通して参加しているメンバーが多いほど増えます。

人気コミュニティランキング