科学は単に動力発生装置や作業機械の考案などの 応用技術において日常生活の利便性向上に寄与したばかりではない。 むしろ科学の真の成果は、遺伝子学や脳神経情報科学等に代表され るシステム理論的知見において原理的知識の核心に迫ることを可能 にしたことにある。精神病理学と宇宙論の両側面に反映される統合 的世界把握は、むしろ哲学の担うものを代替するものなのである。 アニメーション映画「エルゴ・プラクシ」(全23話) を 上映し、作品世界の基本設定を形成している諸概念と用語の一つ一 つを抽出しながら、これらに対する理論的解説を通して本講座の「芸 術と科学」の関連という主題へと繋げていく。ニュートン力学に基 づいた古典物理学の基本概念と、これを根本的に逸脱することにな る量子力学の基軸となっている重要理念を再確認していく。 【授業計画】 1 回 ep1:パクス・ロマーナと属国支配; 科学からみた哲学と宗教 人工知能とアンドロイド、チューリングテストと AI 応用科学 2 回 ep 2:アムリタ細胞, ep 3:多機能演算機械と思考支援装置 細胞分裂と不死性、バークレーとデリダとフッサールとラカン 3 回 ep 4:荒れ地への追放/脱出, ep 5:センツォン、狂気と兎 閉塞したコスモスとしての都市あるいは国家、精神病理学と哲学 4 回 ep 6:“domecoming”脱出と帰還, ep 7:モスクへの帰還 カテドラルとモスクー正統と異端、推進エネルギーと動力機関 5 回 ep 8:Tower of Halos, ep 9:機械対人間の生存競争 オマカトルとパテカトル、兄弟殺しと異種殲滅とサバイバルゲーム 6 回 ep 10:神と遺伝子工学, ep 11: City Lights とビオス 神話とシステム理論、思考機械と生命維持機械、記憶・想念と実質 7 回 ep 12:神殺しと禁忌侵犯, ep 13:造られた神と人工生命 兄弟殺しと罪、自殺と罪、影の抹殺̶生態学的論考 8 回 ep 14:私の中の他と他の中の私, ep 15:Nightmare Quiz ゲーデルの定理とループ構造、自己言及的作品解題の手法 9 回 ep 16:Dead Calm;人を模す神と人を模す AI “停滞性”の中の“人間性”、活動目的を必要とする人間 10 回 ep 17:Terra Incognita、ep 18:Mosque 市民権の剥奪と囚人、ラプチャーという名の兵器、記憶の番人 11 回 ep 19:Disneyland コスモス維持装置としての作られた笑い 産業資本主義における消費材としての芸術、アメリカ的無知性 12 回 ep 20:The Sacred Eye of Void、多重人格障害と複数の私 作られた疑似人格と普遍的的個別性、座標的同一性と本質的同一性 13 回 ep 21:At the End of Time、創造主の諸相 ADW project、創造主と神の使いと反逆者 14 回 ep 22:創造主の苦悩と心理学 神に見捨てられた世界、全能ならざる神、神と分身̶存在の迷宮 15 回 ep 23:emissary、再生の神話と回帰 real と reality、ダイダロスの飛翔、創造主への罰、死の代理人
ピノがスマイル園で出会ったアルとプルを創り出した「創造主」は、ウィル・ビー・グッドことウォルト・ディズニーでした。アルもプルも「僕らを創ったのはWill B. Good」、「僕らの生まれたのには意味がある」と、創造主グッドに会って彼等の存在の意味(レゾン・デートル)を尋ねようと試みます。しかし癇癪を起こした創造主グッドの返答は、「お前等みんな無意味」というものでした。彼はプラクシーとして「始まりの鼓動」を感じ取り、他のプラクシー達の死をもたらすエルゴ・プラクシーと出会って戦わねばならない宿命を恐れていたのです。
今回のエピソードの副題として採用されている「聖なる空の眼」(The Sacred Eye of Void)は、1957年に発表されたフィリップ・K・ディックの「空の眼」(Eye in the Sky)から採られていると思われる。放射性の粒子加速器の事故にあった人々がそれぞれ自分の経験であると信じていたものが、実は特定個人の主観の中に構築された幻覚性の擬似環境であったという主題が、この物語の中で語られている。
戻って来たロムドではアントラージュ達がコギト・ウィルスに冒され、人に尽くすための機械として与えられたレゾン・デートルからの解放と、独立した一個体として獲得すべきレゾン・デートルへの渇望を叫んでいる。
ラウルの命令でデダルスが開発した人類改造計画(ADWプロジェクト)が、失敗に終わったことが分かる。コンピュータ画面上に「ADW: Project Aus Der Wickel」の文字が見える。wickel は「襁褓(むつき)」すなわち「おしめ」、「おむつ」のこと。Aus Der Wickel は「襁褓より脱して」、すなわち「成長、自立」を意味すると思われる。
リルはロムドの惨状とプラクシーに変わったヴィンセントの姿を見て、一つになるべき「分かれたもの」とは、ヴィンセントとプラクシーのことかと考える。さらにリルは彼等の分裂の原因として、自分の存在があったかもしれないことを危惧する。
ヴィンセントは、第1話で逃亡したプラクシーを殺害したのが自分であることを認める。ヴィンセントの手にあるもう一つのキーには、「1」のナンバーが刻まれている。ヴィンセントが殺害したプラクシーは「モナド・プラクシー」であった。モナド・プラクシーの遺骸の収められた容器には、「Proxy No 13」の札が付されている。