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アンチ・ファンタシーコミュのH21時間芸術

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【テーマ・目標】 コンピュータ・ゲーム研究
 “伝奇活劇ビジュアルノベル”Fate stay night”及び ”Fate hollow ataraxia”を対象にして、コンピュータ上の映像表現と活字表現双方の変化と、ゲームというジャンルの持つ可能性について考察していく。
【授業概要】 インタラクティブに操作される視覚表現として提示されたストーリーである”ビジュアル・ノベル”としてのゲームを実際にプレイしながら、その新しいジャンルとしての表現の特質や主題性について検証していく。
【授業計画】
1回 “ビジュアル・ノベル”というジャンル・カテゴリーについて
2回 “インタラクティブ・ノベル”の可能性について
3回 タイポグラフィーの活用と活字文化の変容
4回 “伝奇活劇”というジャンルとファンタシー
活劇(アクション)とアクション・ゲームと演劇の“アクション”
5回 エロ、グロ、ナンセンスと文化
エロスとタナトスグロテスクとアラベスクナンセンスとパラドクス
6回 エッチと萌えと実存について
ニーチェとキルケゴールの実存主義
7回 英雄的類型と実存的日常
お料理とエッチと探求の旅と神殺し
8回 永劫回帰の思想
運命愛と永遠性に対する意識
9回 神話と英雄
ヘラクレス、メディア、アーサー王、クーフーリン、メデューサ等
10回 アンチ・ヒーローとアンチキリスト
ユダとアンリマユ
11回 自己犠牲と生け贄と贖罪
ル・グィンの「オメラスから歩み去る人々」
12回 平行宇宙と多義性の原形質
素粒子の発現可能性の順列組み合わせ的網羅的可能態の宇宙像
13回 創造的付加の試み、代替候補の英雄を提示してみる
ジークフリート、アキレス、バットマン等
14回 創造的論評の試み、妄想と悪乗り
セイバーと凛と桜の胸をそれぞれに記述してみる
15回 創造的関与の様々な試み
原作の応用。パロディー、コスプレ、ヴィデオ・クリップ作成等

コメント(38)

第1回課題

 ゲーム作品には、その特徴に従って様々なジャンルが分岐している。
良く用いられるカテゴリー名称の省略形としては以下のようなものが認められる。

ADV:アドベンチャー・ゲーム
SLG:シミュレーション・ゲーム
ACT:アクション・ゲーム
RPG:ロールプレイング・ゲーム
TBL:テーブル・ゲーム
STG:シューティング・ゲーム

 一般的に「エロゲー」あるいは「美少女ゲーム」などと呼ばれているものも、さらにそれぞれの特性を反映した詳細なジャンル・カテゴリーを形成して認知され、流通しているようである。しかしこれらのジャンル名称は、現在のところ作り手側の自己申告に従って公開されているので、まとまりと整合性を欠く、中々興味深い名称と表現が見受けられる現状となっている。まずは、これらのジャンル表現に用いられた用語についてその実体を確認し、さらにその表現としての文学的評価を試みてみることにしよう。手始めに以下の例について検討して頂きたい。

『Fate/stay night』:伝奇活劇ヴィジュアルノベル
『戦国ランス』:地域制圧型SLG
『つよきす』:強気っ娘攻略ADV
『To Heart 2 XXRATED』:ビジュアルノベル
『マブラブオルタネイティブ』:あいとゆうきのおとぎばなし
『D. C. ~ダ・カーポ』:こそばゆい学園恋愛ADV
『この青空に約束を』:学園ADV
『夜明け前より瑠璃色な』:月のお姫様ホームステイADV
『君が望む永遠』:多重恋愛ADV
『大番長』:地域制圧型SLG
『恋姫+無双』:妄想満載煩悩爆発純愛歴史ADV
『遥かに仰ぎ、麗しの』:ADV
『プリズム・アーク』:S RPG style ADV
『ef- the first tale』:インタラクティブ・ノベル
『Really? Really?』:想い出修復ADV
『ここより、はるか』:新たな世界で大切な何かを掴み取るADV
『彼女×彼女×彼女』:同居型エロ萌えADV
『CHAOS; HEAD』:妄想科学ノベル

上の結果を参考にして、受講生は各自架空の新ゲーム名とジャンル・カテゴリー名称を創作してみることとしよう。さらにそのゲームの紹介あるいは宣伝文、もっと悪乗りするならば批評と研究レポート等も捏造することができればなおよろしい。
 本年度は「時間芸術」としてコンピュータ・ゲームを採り上げることにした訳ですが、健全な教養の涵養を主眼とする文化講座においては、常に種々の概念拡張を行って、統合的なシステム理論的理解を行う視点が保持されていなければなりません。例えば、「人生」や「エッチ」や「勉強」や「仕事」を、上で試みたようなゲームとして記述する変換操作を企ててみるとするならば、どのような結果が得られるでしょうか。また、その他の変換記述を行うべき対象として、どのようなものが付け加え得るでしょうか。
「テーブル・ゲーム」について、以下のようなお知らせを頂きました。

 テーブルゲームでは「チェス」「トランプ」「オセロ」などが一般的に知られていますが、最近では「TRPG」(ルールブックに従い、役など決めていくゲーム、人生ゲーム系)やカードゲームの「遊戯王デュエルモンスターズ」などが人気があるそうです。今はアニメやゲームから生まれたカード・ゲームが、子供から大人まで人気があります。しかし、こういうゲームは誰もがルールを理解できている訳ではないので、一般に家族でやったりする割合は低いそうです。

 テーブル・ゲームについてのレポート、ありがとうございました。
本講座の主題との関連では、コンピュータ・ゲームの中でテーブル・ゲームを
バーチャルに再現してプレイするものなどの、具体的な例を見つけていきたいところです。
 例えば、麻雀を様々にコンピュータ・ゲームとしてアレンジしたゲーム作品などがいくつかありそうです。その変化系などを分類して研究してみると面白そうです。カテゴリーなどが様々に分岐して進化・発展していることが予想されます。このような実例が見つかりましたら、またお知らせ下さい。
「課題」について質問を頂きましたので、いかのようにお答え致します。

 このトピックに書き込んでいる「課題」は、この講座を受講するにあたって意識して欲しいこと、考えてみて頂きたいことを述べたものです。「レポート課題」のように何時までに提出せよとか、提出しないと評価に響くとかいうようなものではありません。これからの授業をより面白くするために、色々なフィードバックを頂ければ有り難いので、もし面倒でなければ、何度でも回答や情報提供をしてみて下さい。一応先生なので「課題」という言葉を使わせて頂きます。学生の君達は「要望」だの「注文」だの色々出してくれればよいのです。
ウェブ上の検索機能を利用するのに何かとよくアクセスする「検索デスク」のアドレスボタンを下に貼っておきます。
http://www.searchdesk.com/

講座担当者黒田のホームページは以下のアドレスです。
http://www.linkclub.or.jp/~mac-kuro/

また、ブログ「Fantasy as Antifantasy Daily Lecture」も順次活用していきます。
http://antifantasy2.blog01.linkclub.jp/

今後はこれらの既存のウェブページと、和洋で21年度から導入した「Manaba Folio」を効率的に利用していきたいと思います。

Manaba Folio
http://folio.wayo.ac.jp/ct/login

質問等はミクシイのメールを活用して下さい。
「空の海賊」さんから課題のお答えを頂きましたので公開します。

『天使と悪魔』幻想育成SLG
天使か悪魔を育てるというゲームで、育て方によって結末が違ってくる『シスタープリンセス』や『アイドルマスター』といった娘育成ゲームにファンタジーをつけてみました。

  こういった育成SLGはゲーム雑誌を見てみても意外に少ない感じがします。それも、男性向けに作っているので、女性向けは少ないです(つまり、息子育成ゲーム)。そういった意味で、育成ゲームというジャンルは男性の方が多くプレイするのだと考えられます。私が考えた『天国と地獄』は、それにファンタジーをつけただけなので、従来の物と違いはあまりありません。
 
 TRPG(についてですが、新紀元社という出版社が多くのゲームブックを制作しています。さらに、クートルー神話に基づいたTRPGなど、個性的なものが多いです。
  また、この出版社の本は、RPGや美少女ゲームなどの設定にも使われる神話や道具など、ファンタジー知識についてもかなり豊富な情報量があります。少しオタク文化の強い出版社ですが、ホームページを見ると面白そうな本がたくさんありますので、除いてみるのもいいかもしれません。

 情報提供ありがとうございました。
創造的作文の演習課題としては、以下のような辛口の評価をしてしまいましたが、他の方たちのご意見はいかがでしょうか。例えば、今一歩のところで彼女にかわされてしまった哀れな主人公が、淋しく家に帰って悶々としながらゲームの数々をやっている場面などを想定してみると、悪乗りした題名を捏造してみたくなるのですが。

情報提供としては十分なメッセージだと思うのですが、
文学的な課題として考えると、ゲーム名称に既存のものを流用しつつ
ぶっとんだ内容とか、用いられた語句そのものが醸し出す妖しさとか、
もう少し演出に気を配ってみたいところもあります。何よりも、男の子のゲーム
ではない、女の子専用のゲームらしい嫌らしさとか卑猥さを表現する特異性が
名称に反映されることが大事でしょう。文学的創作の演習として提示された課題として、 さらに悪乗りを試みてみるとよろしいでしょう。
主題メモ:Fate stay nightとFate hollow ataraxia


 もともとはType-Moon社製のエロゲーである。最初はウィンドウズ版のコンピュータソフトとして発売されていたが、現在ではいくつかの家庭用ゲーム機にも移植されている。Kanon、Clannad等の水準の高いゲームのいくつかが、これと同様の経過をたどって一般ゲーム作品・アニメーション作品として広く受容されているのは、現在の日本の仮構世界創出の場の興味深い実態を語る事実であると思われる。
 7人の魔術師達がパートナーとして一人ずつ歴史上の英雄達を召還して戦いを繰り広げ、莫大な望みを叶える力を持つという聖杯を勝ち取ろうと互いに競い合う、というのが伝奇活劇的な基本設定だが、決して既存のゲームやフィクションの依拠する類型的パターンに収束してしまうことなく、ストーリーを裏で支える価値判断や目的意識等が様々な側面から深く掘り下げられ、熾烈な主題性が窺える演出となっているのがことさらに興味深い。
 召還される英雄の一人一人のキャラクターを、かつて英雄を英雄足らしめていた一意的な価値基準に基づく伝説を形成していた狭隘な価値観に束縛されることなく、むしろこれらを反転的に脱却させてみせる大胆な操作を通じて、幻想を排した生身の人物像として再点検することにより、歴史上の“英雄的行為”や“悪逆行為”とされてきたものの内実について、徹底的に批判的な検証がなされる結果となっている。同様に、英雄を英雄足らしめる筈の“運命的出来事”と、平凡な一個の人間存在が日々の体験として実際に享受する日常茶飯的出来事の双方が、あるがままの事実としてごく自然に等価的に受け入れられ、一個の意識体にとっての生の実相に対する徹底的な内省的検証もなされていく。
 だからそれぞれの主要女性キャラクターと繰り広げられるエッチの過程と、極めて丁寧に描き出される日々のお料理の献立の双方に見られる細部へのこだわりは、具体性を持つ陰影の豊かなストーリーの展開と人間関係の緻密な構築をもくろむという演出的要請以上に、むしろ枢軸的な主題的必然性を持っているものなのである。崇高性を帯びた英雄的行為と卑近な日常的瑣末性の双方の内実を、フィクション構築の都合による陳腐な類型に決して陥ることなく探査し尽くし、そこに取得される実存的な真の運命性をとことんフィクションの中で味わい尽くそうという、苛烈な覚悟がその背後に潜んでいるからである。
 このビジュアル・ノベルでは、ゲームとしてプレイを進行させるため、設定上の枢軸となっている前提条件に対して選択可能なストーリーの展開が複数に分岐し、可能態の順列組み合わせのすべてをなぞることができる仕組みとなっている。結果として、そこに得られる状況の各々の収束が示すそれぞれの事象の発現形に対し、考え得る限りの角度からその倫理的本質と実存的意義性を確証することを企図するという、頑強な全方位的知への願望が制作者の根幹的な問題意識としてあることが分かる。
 殊に特徴的な状況設定としては、過去の自分である主人公士郎を抹殺することを決心した未来の自分である、英霊となったアーチャーを倒すことにより、生と存在の不毛なループを選び取るという可能性がある。あるいは成果の得られない4日間の聖杯戦争を時間軸を捻転させて限りなく繰り返すなどという、続編において選択された永劫回帰に対する覚悟への偏執的な程のこだわりも同様で、これらは実存的生のあり方を意識する作者の精神の類い稀な強靭さを感じさせるものなのである。

 ゲームの中の仮構的な人物像をゲームプレイヤーとしてその役割を演じながら進行させていく、という機構と、双方向的な選択行為により世界の全体像が多義的に変化するというゲームの枠組み的特質そのものを、ゲームの中に展開する一つの仮構世界を成り立たせる存立条件そのものとして採用した試みは、全方位的反射性に対する鋭敏な意識と共に、アルゴリズムを超えたアルゴリズムを不断に探索していこうとする、メタ構造性に対する尽きない研究心を主張するものでもある。
 だから本編Fate stay nightに対する続編Fate hollow ataraxiaの関係自体も、単に前作の設定をなぞってストーリー的にフィクション世界を伸展させたものとはなっておらず、むしろ前作の示した重大な意義性自体を反転させ、その結論として選ばれたものを敢えて否定したところに、さらなる考究の意義性を開拓することを企図するものとなっている。言うならば、キリストに対してユダに敢えて焦点を当てることによってキリスト教の本質を語ろうとするような、思い切った趣向が採用されているのである。このような視点を理解するための重要なキャラクターが、アヴェスター語で“アンリマユ”と呼ばれるゾロアスター教の悪神である。常に正義の味方である主人公士郎の性格的・存在的危うさが正しく理解されなければ、この思想的内実豊かなエロゲーであるビジュアル・ノベルの本質を読み取ることはできないと思われる。常に善人の側に自身を置いておきたい人間達の都合によって作られた哀れな生け贄としての“絶対悪”は、その人の心の身勝手な願望に忠実に従って悪を演じ続けているからである。
ゲームの紹介レポートを頂きました。以下にそのまま引用させて頂きます。

こんにちは。時間芸術の方でシャルノスについて今回レポートを送らせていただきます。

春休みに私がプレイした、エロゲは『漆黒のシャルノス −What a beautifull tomorrow−』というタイトルで
ジャンルは『スチーム・パンク・ホラーADV』になります。
これは『ライアーソフト』のあるシリーズの続編になります。
そのシリーズの前作には『蒼天のセレナリア〜What a beautifull world〜(スチームパンク冒険活劇ADV+冒険SLG)』と
『赫炎のインガノック What a beautifull people(幻想閉鎖都市ADV)』があります。
これらは直接的な繋がりはありませんが、世界観を同じくしているので共通の用語という言葉がシャルノスに出てきたりします。
私はこれが初めてのエロゲなので基準がよくわからないのですが、濡れ場のシーンはあまりエロくないです。
ここからは箱の裏側に書いてあるストーリーの引用です。

『比類なき蒸気都市と謳われる大英帝国、ロンドン。

 そこは、我々の知るロンドンとはいささか違う。機関革命によって、世界は一変していたのだ。
 異常なまでに発達した蒸気式の機関は、今やエネルギー発生装置としての役割だけでなく、
 超高度な演算を果たす情報機械や飛空挺、巨大飛行船までをも生み出すに至った。

 そして20世紀初頭。現在の人類は繁栄をきわめている。

 けれども人々は失っていた。
 無数の蒸気機関群の生み出す排煙によって形成された灰色雲が空を覆っても、
 機関工場の廃液がテムズのせせらぎを澱んだ黒色に変えてしまっても、
 それでも、霧と蒸気の満ちるロンドンは美しい――訪れた旅人は、皆そう言う。

 テムズのほとりのコンドミニアムに暮らす女学生、メアリ・クラリッサ・クリスティ。
 彼女もそう、ロンドンのすべてを愛していたし、
 第2次産業革命こと機関革命によってもたらされるであろう人類の発展を、
 他の皆と同じように信じて疑っていなかった。

 あの日、あの時までは。

 そう、運命の1905年の10月のあの日。
 あの夜、機関街灯の明かりも及ばない暗がりの中でメアリは男と出会った。
 黒色に身を包んだ男。彼が差し伸べた黒い手は、メアリを非日常へと誘った。
 すなわち、夜闇に潜む《怪異》と言う名の“誰も信じていなかった”はずの幻想の化け物たちが牙を剥き、
 無辜の人々を次々と襲う、愛されざるべきロンドンの暗黒の一面へと。

 ――夢見るような暗黒と、ささやかな輝きとが混在する日々へと。』

あらすじはこのような感じです。
ノベルパートとゲームパートで構成されており(分岐無)、ゲームパートは主人公のメアリが《怪異》をかわしつつ目的地まで走るのですが
この部分を『スチーム・パンク・ホラーADV』のカテゴリ名称に活かせたらなお良かったのかな、と思います。
(ならば私によりよい名称を考えられるか、というと思い付かないなのですが)

また、ライアーソフトの最新作がとても長いタイトルで面白そうだったので、これも一緒に書いておきます。
『水スペ 川野口ノブ探検隊 これが秘境だ!人跡未踏!立ちふさがる商店街!八鏡大学に隠された地球最大の謎を追え!!』
カテゴリは『ドタバタ探検SLG+ADV(ポロリもあるよ)!』です。
(ライアーソフトのファンクラブ会誌に書かれていたものをそのまま書きました)
***************************************************************

ジャンル名称だけでなく、宣伝文の傾向としてテレビ番組のパロディや、アニメ映画の設定等とのリンクなど様々な特徴が指摘できそうです。1905年というのはアインシュタインの相対性理論の発表の年なので、とても興味深いものがあります。もっとゲームをやりこんだら追加レポートを出して頂ける予定なので、相互連携を意識しながら講座運営に協力して頂けると助かります。この講座が、面白いゲーム紹介の掲示板として成立すればいいですね。
 空の海賊さんから作品の紹介レポートを頂きました。
これを核にして、さらにコメントを追加したり、他の関連知識を拡充したり、兎に角色々な観点から遠慮なく意見を提出できる場が形成されればよろしいでしょう。講座運営に対する注文とか要望とかを意識して、問題提起や疑問の提議をしてみて下さい。作品に対する自分の思い入れ、あるいは批判等も大事です。

授業の中で話題になった「ひぐらしのなく頃に」について簡単にレポートを書きます。

「ひぐらしのなく頃に」は、雛見沢村で起こる謎の連続怪死事件を題材にしたサウンドノベルです。原作者は竜騎士07、この作品は元々コミックマーケットで発表されたものです。
物語の流れは、主人公の前田圭一が雛見沢に来たところから始まります。最初の内は、かわいい女の子と一緒にゲームをやったりします。萌えやお色気(エロいメイド服や体操服、猫耳など)が織り交ざった美少女ゲーム要素が多く見られます。しかし、この村には連続怪死事件、鬼隠しと呼ばれる失踪事件について聞かされます。やがて綿流し(雛見沢に伝わる祭り)以降、徐々に平穏な日々が崩れていき、ついには凄惨な結末を迎えます。
このゲームは、そんな運命(輪廻)からの脱出を目的としています。
このゲームには、選択肢というものは存在しません(PS2で選択肢が登場した)。プレイヤーは、話を読み進めながら推理を楽しみます。
はたして、この事件はオヤシロ様の祟りなのか、それとも人の仕業なのか、というのが推理の論点です。

以上、とても簡単に「ひぐらし」についてレポートを書きました。
しかし、このゲームはとても奥の深いものです。すべてを書くのは難しいです。実際にプレイするか、アニメを見るかすると、より世界観に浸れるでしょう(アニメのほうが、萌えやお色気が繊密に描かれている)。

以上、空の海賊でした。
 「FATE」では魔法使いによって召喚された「英霊」、つまり神話・伝説上の英雄的存在達が互いに戦い合い、莫大な願いを叶える力を備えているといわれる「聖杯」を勝ち取るゲームを展開する訳ですが、ここで興味深いのは召喚の対象となる英雄達の素性です。彼等は、各々がギリシア神話や古代アイルランド神話等の中で活躍した、英雄と目されるものであったのですが、それぞれの存在する次元界面が異なっているために、互いに関わり合いを持つことがあり得ない独立したキャラクター同士でした。しかしこの「FATE」という一つのフィクションの中において、彼等の存在性向を束縛していた次元的断絶が超克され、「戦い合う」という関係性を賦与されて、結果的にこれらのキャラクター達を媒介軸として、複数の神話・伝説の世界の統合と融和がなされる結果が招来していることになります。そればかりでなく、召喚された英霊の一人の佐々木小次郎などは、本人が自分が神話や伝説を通して醸成された存在とは異なる、純粋にフィクションの中の一切の現世的実体性を持たない存在であることを自覚しているのです。このゲームにおいては、何らかの歴史的事実を核としてその存在傾向を確定させていた神話・伝説上の存在達に加えて、さらにとりとめの無い空想上のキャラクターまでもが同一空間に勢揃いして、互いの存在論的意義性を付託し合うことが可能となっていることになります。このようなことが可能となる可能世界次元として、「FATE」というフィクション空間を成立せしめている世界の肌理の構成単位、あるいは宇宙論的「場」がいかなる特質を持っているものとして仮定されているのかが、重要な論考の対象となるはずです。システム理論的には、この「FATE」というゲームにおけるオリジナルの「英雄」像であるアーチャーの存在までもがさらに付け加えられていることが、見逃すことのできないポイントとなることでしょう。
 上で問題とした存在論上の次元界面という束縛を超克するキャラクターの例として、実は『ピーターとウェンディ』に悪役として登場する海賊船の船長キャプテン・フックが挙げられます。彼はネバーランドの海賊の首領として全ての子供達の想像の中にその存在位置を占めることになる以前には、立派な現実世界のパブリック・スクール出身のエリートだったのです。この記載に関する指摘は、本日お配りした参考資料『アンチ・ファンタシーというファンタシー』の93−94ページあたりにあります。
 生活環境学科の英語bでは、ゲーム版Fateを英語の教材として用いて授業を進めています。ゲーム作品Fateの理解をより深めるために、トピック「生活環境英語b」の中身ものぞいておいて下さい。こちらは英語版なので、細かいところが微妙に違っていたりします。
 フィクション世界を構築する基軸となる概念を担っていると思われる「用語」に注目せよ。「聖杯戦争」という中心的な題材を規定する基幹的設定に加えて、これに関連する魔術の施行の際に語られる「召喚」や「契約」等の用語が、具体的にどのような相関関係をなして意味の複合体を形成しているかに注目せよ。さらに、これらの用語が仮構世界の設立条件に寄与するものとしていかに導入されていたかを、その根本概念の実質のみならず、演出上の基調底音導出技法の再検証という観点から点検していくべし。殊にこのFate Stay Nightにおいては、フィクションとして独特の世界を構築するために必要な基本設定条件を形成する筈の基軸となるべき根幹要素自体が当初から巧みに転倒操作を施され、その結果決して類型に陥ることのない主題的緊迫性と詳細部分における仮構的実体性を獲得し得ている点自体を、特有の仮構世界存立条件の一つとして指摘する用意を備えておくこと。
Fate 第1日目、凛がサーヴァント召喚を行うあたりで、この仮構世界の基本原理を形成すると思われる特殊な概念とそれらの織りなす独特の関係性が紹介されています。興味深いのは、文字列とそこに振られた読みがな(ルビ)とが意味を乖離した二重構造を形成するという、一種のタイポグラフィーの工夫を活用してこの概念操作が行われている点でしょう。

 Schliessung(ロック). Verfahren(コード). Drei(3).

 聖杯戦争に参加する条件。
 それはサーヴァントと呼ばれる使い魔を招集し、契約する事のみだ。

 サーヴァントは通常の使い魔とは一線を画す存在だ。
 その召喚、使役方法も通常の使い魔とは異なる。

「……サーヴァントはシンボルによって引き寄せられる。
 強力なサーヴァントを呼び出したいのなら、そのサーヴァントに縁のあるモノが必要不可欠なのだ、かぁ……」
 つまり、そのサーヴァントが持っていた剣とか鎧とか、紋章とか、そういうとんでもない値打ち物だ。

「閉じよ(みたせ)。閉じよ(みたせ)。閉じよ(みたせ)。閉じよ(みたせ)。閉じよ(みたせ)。
繰り返すつどに五度。
ただ、満たされる刻を破却する」

「―Anfang(セット)」

 ……指先から溶けていく。
 否、指先から満たされていく。
 取り込むマナがあまりにも濃密だから、もとからあった肉体の感覚が塗りつぶされていく。

 だから、満たされるという事は、同時に破却するという事だ。

魔術刻印は術者であるわたしを補助する為、独自に詠唱を始め、わたしの神経を侵していく。
取り入れた外気(マナ)は血液に。

始めよう。
取り入れたマナを“固定化”する為の魔力へと変換する。

視覚が閉ざされる、
目前には肉眼で捉えられぬという第五要素。

故に、潰されるのを恐れ、視覚は自ら停止する。

Vertrag(令呪に告げる)….! Ein neuer Nagel(聖杯の規律に従い、) Ein neues Gesetz(この者、我がサーヴァントに) Ein neues Verbrechen(諌めの法を重ね給え)--

―右手に刻まれた印が疼く。

三つの令呪。
聖杯戦争の要、サーヴァントを律するという三つの絶対命令権が行使される。

「……はあ。いいかね。令呪はサーヴァントを強制的に行動させるものだ。
 それは“行動を止める”だけでなく、“行動を強化させる”という意味でもある」

「そっか。サーヴァントは聖杯に呼ばれるけど、呼ばれたサーヴァントをこの世に留めるのは」
「そう、マスターの力だ。サーヴァントはマスターからの魔力供給によってこの世に留まる」
Fate 2日目(2月1日)の重要箇所と思われる部分のテキストです。魔法とサーバントとの関連が、固有の専門用語を通して語られています。殊に興味深いのが、「英霊」とされるものの存在論的内実でしょう。


 聖杯に選ばれた魔術師はマスターと呼ばれ、
 マスターは聖杯の恩恵により強力な使い魔(サーヴァント)を得る。

 ―――マスターの証は二つ。
 サーヴァントを召喚し、それを従わせる事と。
 サーヴァントを律する、三つの令呪を宿す事だ。

 アーチャーを召喚した事で、右手に刻まれた文様。
 これが令呪。
 聖杯によってもたらされた聖痕(よちょう)が、サーヴァントを召喚する事によって変化したマスターの証である。
 強大な魔力が凝縮された刻印は、永続的な物ではなく瞬間的な物だ。
 これは使う事によって失われていく物で、形の通り、一画で一回分の意味がある。

「……あいつの記憶が戻るまで法具(きりふだ)は封印か……思いだせないんじゃ使いようがないしね」

 「ああ、そういう事か。
 それも問題ではない。確かに着替える必要はあるが、それは実体化している時だけでね。
 サーヴァントはもともと霊体だ。非戦闘時には霊体になってマスターにかける負担を減らす。
 「あ、そっか。召喚されたって英霊は英霊だものね。霊体に肉体を与えるのはマスターの魔力なんだから、わたしが魔力提供をカットすれば」
 「自然、我々も霊体に戻る。
 そうなったサーヴァントは守護霊のようなものだ。レイラインで繋がっているマスター以外には観測されない。
 もっとも、会話程度は出来るから偵察ならば支障はないが」

「マスター、私のクラスは何か忘れたのか。遠く離れた敵の位置を探るなど、騎士あがりにできるものか」

 ――――固有結界。
 魔術師にとって到達点の一つとされる魔術で、魔法に限りなく近い魔術、と言われている。
 ここ数百年、“結界”は魔術師を守る防御陣と相場が決まっている。
 簡単に言ってしまえば、家に付いている防犯装置が極悪になったモノだ。
 もとからある土地・建物に手を加え、外敵から自らを守るのが結界。
 それはあくまで“すでにあるもの”に手を加えるだけの変化にすぎない。
 だが、この固有結界というモノは違う。
 固有結界は、現実を浸食するイメージである。
 魔術師の心象世界――心のあり方そのものを形として、現実を塗りつぶす結界を固有結界と呼ぶ。

 ……周囲に意識を伸ばす。
 精神で作り上げた糸を敷き詰め、公園中を索敵する。
 「……わたしじゃ見つけられない。
  アーチャー、貴方は?」

***************************************
 ここで「レイライン」と呼ばれているものは、大地の気の流れとして知られるあの「ley line」とは異なる、独特の造語である「霊ライン」なのでしょうね。
 「固有結界」についての説明の、「現実を浸食するイメージである。」という部分が英霊の存在性と等質の存在論的仮説に基づいていることが分かります。このあたりの裏設定を理解するためには、物理現象の生成に関する「観測効果」についての理解を深めておく必要があるでしょう。
続いてFate 第3日目(2月2日)の前半です。
 人間存在あるいは英霊を規定する概念の中で、「たましい」と「精神」という言葉がいかなるものとして理解されているかが、殊に興味深いものとなります。類例としては、「魂」と「魄」の関係性などを調べておくとよいでしょう。


2/2

 一時的にこの呪刻(けっかい)から魔力を消す事はできるけど、呪刻(けっかい)そのものを撤去させる事はできない。
 術者が再びここに魔力を通せば、それだけで呪刻(けっかい)は復活してしまうだろう。

 内部の人間から精神力や体力を奪うという結界はある。
 けれど、いま学校に張られようとしている結界は別格だ。
 これは魂食い。結界内の人間の体を溶かして、滲み出る魂を強引に集める血の要塞(ブラッドフォート)に他ならない。
 古来、魂というものは扱いが難しい。
 在るとされ、魔術において必要な要素と言われているが、魂(それ)を確立させた魔術師は一人しかいない程だ。
 魂はあくまで“内容を調べるモノ”“器に移し替えるモノ”に留まる。
 それを抜き出すだけでは飽き足らず、一つの箇所に集めるという事は理解不能だ。
 だって、そんな変換不可能なエネルギーを集めたところで魔術師には使い道がない。
 だから、意味があるとすれば、それは。
 「アーチャー。貴方たちってそういうモノ?」
 知らず、冷たい声で問いただした。
 「……ご推察の通りだ。我々は基本的に霊体だと言っただろう。故に食事は第二(たましい)、ないし第三(せいしん)要素となる。
 君たちが肉を栄養とするように、サーヴァントは精神と魂を栄養とする。

 地面に描かれた呪刻に近寄り、左腕を差し出す。
 左腕に刻まれたわたしの魔術刻印は、遠坂の家系が伝える“魔道書”だ。
 ぱちん、と意識のスイッチをいれる。
 魔術刻印に魔力を通して、結界消去が記されている一節を読み込んで、あとは一息で発動させるだけ。
 「Abzug(消去) Beldienung(摘出手術) Mittelstnda(第二節)」

「Es ist gros(軽量). Es ist klein……(重圧)!!」

 サーヴァント。
 七人のマスターに従う、それぞれ異なった役割(クラス)の使い魔たち。
 それは聖杯自身が招き寄せる、英霊と呼ばれる最高位の使い魔だ。

 サーヴァントとは、それ自体が既に、魔術の上にある存在(モノ)なのだ。
 率直に言おう。
 サーヴァントとは、過去の英雄そのものである。
 神話、伝説、寓話、歴史。
 真偽問わず、伝承の中で活躍し確固たる存在となった“超人”たちを英霊という。
 人々の間で永久不変となった英雄は、死後、人間というカテゴリーから除外されて別の存在に昇格する。
 ……奇跡を行い、人々を救い、偉業を成し遂げた人間は、生前、ないし死後に英雄として祭り上げられる。
 そうして祭り上げられた彼らは、死後に英霊と呼ばれる精霊に昇格し、人間サイドの守護者となる。
 これは実在の人物であろうが神話上の人物であろうが構わない。
 英雄を作り出すのは人々の想念だ。

 聖杯は英霊たちが形になりやすい“器(クラス)”を設け、器に該当する英霊のみを召喚させる。

 予め振り分けられたクラスは七つ。
 剣の騎士、セイバー。
 槍の騎士、ランサー。
 弓の騎士、アーチャー。
 騎乗兵、ライダー。
 魔術師、キャスター。
 暗殺者、アサシン、
 狂戦士、バーサーカー。
 この七つのクラスのいずれかの属性を持つ英霊だけが現代に召喚され、マスターに従う使い魔――サーヴァントとなる。

 サーヴァントとは、英雄が死後に霊格を昇華させ、精霊、聖霊と同格になった者を指す。

 かつて、竜を殺し神を殺し、万物に君臨してきた英雄の武器。
 サーヴァントは自らの魔力を以てその“宝具”を発動させる。
 言うなれば魔術と同じだ。
 サーヴァントたちは、自らの武器を触媒にして伝説上の破壊を再現する。
 マスターの人数が揃ったので、時間芸術第7.5次聖杯戦争を開始して頂きます。各受講生は以下のルールに従って、自分の召喚するサーヴァントを申告して下さい。
 申告項目は以下の5項目を必須とし、残り5項目を任意の範疇を形成する創造的記述で補います。これらは参加者全員が共有する基礎知識として無意識の閉鎖空間を規定し、ゲームの基本設定となる意味の複合体を展開した新規の仮構世界を発現させることとなります。なお、これらの情報は今回の聖杯出現を可能にした講座担当者赤い彗星の得意技である記述魔法の原理に従うため、他の参加者に内緒にしておいたり、誤情報の記載を用いて他者を欺こうと画策する行為は、仮構世界としてのゲームの存立機構を根底から破壊する大厄災を招くことになるので、くれぐれも注意して下さい。

申告項目
1 サーヴァントの真名
2 サーヴァントの属性構築の根拠となる神話、伝説あるいは仮構作品
3 サーヴァントのクラス(Fateに登場したものを逸脱することも可)
4 サーヴァントとこれを召喚するマスターとの潜伏的関係性
5 このサーヴァントを召喚する主観的理由あるいは言い訳

 参加者全員が上に付け加えてさらに5項目の任意の妄想を記述し終えた時、その総体となる均衡と様式が自ずから最適の仮構的座標軸を現出せしめ、ゲーム宇宙の今後の生々発展を可能とする諸宇宙定数を選択し、戦線開始の合図の方法を選ぶことでしょう。

 申告項目作成の資料として、以下のウェブ・ページを参考にして下さい。

「月姫研究室」
http://lab.vis.ne.jp/tsukihime/
2月2日の後半です。

 敵サーヴァントを打破するには、その正体を知ることが近道となる。
 自分の正体さえ知らないバカものは例外として、サーヴァントにとって最大の弱点はその“本名”なのだ。
 サーヴァントの本名―つまり正体さえ知ってしまえば、その英霊が“どんな宝具を所有しているか”は大体推測できる為だ。
 言うまでもないが、サーヴァントは英霊である以上、確固たる伝説を持っている。
 それを紐解いてしまえば、能力の大部分を解明する事ができる。
 サーヴァントがクラス名で呼ばれるのは、要するに“真名”を隠す為なのだ。
 なにしろ有名な英雄ほど、隠し持つ武器や弱点が知れ渡っているんだから。
 サーヴァントとなった英霊は決して自分の正体を明かさない。
 サーヴァントの正体を知るのはそのサーヴァントのマスターのみ。

 「願い?そんなの、別にないけど」
 「――なに?」
――
 「よし、よしんば明確な望みがないのであれば、漠然とした願いはどうだ。例えば、世界を手にするといった風な」
 「なんで?世界なんてとっくにわたしの物じゃない」
 「あのね、アーチャー。世界ってのはつまり、自分を中心とした価値観でしょ?そんなものは生まれたときからわたしの物よ。そんな世界を支配しろっていうんなら、わたしはとっくに世界を支配しているわ」

 気配が、気配にうち消される。
 ランサーというサーヴァントの力の波が、それを上回る力の波に消されていく。
 ……瞬間的に爆発したエーテルは幽体であるソレに肉を与え、
 実体化したソレは、ランサーを圧倒するモノとして召喚された。

********************************************************************
 凛の「願いや野望なんてものは別にない」という醒めた認識が、かつての伝説を形成した英雄達の保持していた筈の世界観とは明らかに異なる、はなはだ現代的な生の感覚をあらわしています。戦いの目的や偉業を成し遂げることなどの基幹原理に対する率直な疑問を提示する、常に反省的な意識がむしろこの作品の基調となっているのです。「英雄」の意味と「正義」の内実の再検証がこのエロゲーの関心事なのです。
 「エーテル」という概念については、歴史的な意味の変化を調べてみると面白いでしょう。
聖杯戦争エントリー提出書

                       赤い彗星による模範解答

1 サーヴァントの真名
黒田 誠 (3次元に生息する凶悪生命体)

2 サーヴァントの属性構築の根拠となる神話、伝説あるいは仮構作品
禁則項目に属するため、直接の情報の記載は不可能。犠牲者の証言と以下のホームページを参照のこと。
http://www.linkclub.or.jp/~mac-kuro/index.htm

3 サーヴァントのクラス(Fateに登場したものを逸脱することも可)
  当然、理性と人情の欠片も無い“バーサーカー”。

4 サーヴァントとこれを召喚するマスターとの潜伏的関係性
マスター“赤い彗星”の“影”、あるいは反転的因果座標における同位体。

5 このサーヴァントを召喚する主観的理由あるいは言い訳
勝ち目が無くなったまさかの場合、マスターと接触することにより“サード・インパクト”を引き起こして、全てを抹消するという反則技が使える。

6 参加の表向きの理由
世界の平和を度外視した芸術と学芸の発展のため。

7 参加を決心した直接の動機
イリヤスフィール・フォン・アインツベルンに会いたい。

8 所持する宝具と得意技
邪剣“Barbed Tongue” を用いた毒舌による精神汚染とへ理屈による洗脳攻撃。

9 これまでの戦績
全て無効試合のため強制退場を命じられる。

10 今回の抱負
反英雄アンリ・マユに取り憑いて、死海文書に語られた未公開の預言を成就します。
 遠坂凛の登場するプロローグは、魔法という主題に関してかなりややこしい裏設定のあるこのゲーム世界を解説する役割を果たしていたようです。プロローグであると同時に、凛パートでゲームを進めた場合の、ゲームオーバーを迎える一つの結末としても理解できるのが、ここまでの進行でした。
 士郎パートの本編1日目の重要部分の抜き出しを以下にアップします。

Fate stay night

プロローグ
 両親とか家とか、そのあたりが無くなってしまえば、小さな子供には何もない。
 だから体以外はゼロになった。
 要約すれば単純な話だと思う。

 つまり、体を生き延びらせた代償に。

心の方が、死んだのだ。

1月31日
 テーブルに朝食が並んでいく。
 鳥ささみと三つ葉のサラダ、鮭の照り焼き、ほうれん草のおひたし、大根とにんじんのみそ汁、ついてにとろろ汁まで完備、という文句なしの献立だ。

 古びた電気ストーブに手を触れる。
 普通、いくらこの手の修理に慣れているからって、見た程度で故障箇所は判断しにくい。
 それが判るという事は、俺のやっている事は普通じゃないってことだ。
 視覚を閉じて、触覚でストーブの中身を視る。
 ――途端。
 頭の中に沸き上がってくる一つのイメージ。

 伝熱管がイカレてたら素人の手には負えない。
 その時は素人じゃない方法で“強化”しなくてはいけなかったが、これなら内部を視るだけで十分だ。

 それが切嗣に教わった、衛宮士郎の“魔術”である。

 そう。衛宮士郎に魔術の才能はまったく無かった。
 その代わりといってはなんだが、物の構造、さっきみたいに設計図を連想する事だけはバカみたいに巧いと思う。
 実際、設計図を連想して再現した時なんて、親父は目を丸くして驚いた後、「なんて無駄な才能だ」なんて嘆いていたっけ。

物事の核である中心を即座に読み取り、誰よりも速く変化させるのが魔術師たちの戦いだと言う。

「せーのっ、起きろー、タイガー」
 全員が声を合わせたわりには、呟くような大きさだった。

「……まったく、人が良いのも考え物だな。衛宮がいてくれると助かるが、他の連中にいいように使われるのは我慢ならん。人助けはいい事だが、もう少し相手を選ぶべきではないか。衛宮の場合、来る人拒まず過ぎる」
「? そんなに節操ないか、俺」

「早く呼び出さないと死んじゃうよ、お兄ちゃん」

 鶏肉はじっくり煮込めば煮込むほど硬くなってしまう。故に、面倒でも煮る前に表面をこんがりと焼いておくと旨味を損なわずジューシーな仕上がりになる。

「じゃあ話しちゃおう。これがねー、士郎は困った人を放っておけない性格なのよ。弱きを助け強きをくじくってやつ。子供の頃の作文なんてね、ボクの夢は正義の味方になる事です、だったんだから」
テキストの続きです。

 深夜零時前、衛宮士郎は日課になっている“魔術”を行わなくてはならない。
「―――――」
結跏趺坐に姿勢をとり、呼吸を整える。
頭の中はできるだけ白紙に。
外界との接触はさけ、意識は全て内界に向ける。
「―――同調(トレース)、開始(オン)」
 自己に暗示をかけるよう、言い慣れた呪文を呟く。
 否、それは本当に自己暗示にすぎない。
 魔術刻印とやらがなく、魔道の知識もない自分にとって、呪文は自分を変革させる為だけの物だ。
……本来、人間の体に魔力を通す神経(ライン)はない。
それを擬似的に作り、一時的に変革させるからには、自身の肉体、神経全てを統括しうる集中力が必要になる。
魔術は自己との戦いだ。
例えば、この瞬間、背骨に焼けた鉄の棒を突き刺していく。
 その鉄の棒こそ、たった一本だけ用意できる自分の“魔術回路”だ。
 これを体の奥まで通し、他の神経と繋げられた時、ようやく自分は魔術使いとなる。
 それは比喩ではない。
 実際、衛宮士郎の背骨には、目に見えず手に触れられない“火箸に似たモノが、ズブズブと差し込まれている。
 ―――僕は魔法使いなのだ。
 そう言った衛宮切嗣は、本当に魔術師だった。
 数々の神秘を学び、世界の構造とやらに肉薄し、奇跡を実行する生粋の魔術師。
 その切嗣に憧れて、とにかく魔術を教えてくれとねだった幼い自分。
 だが、魔術師というのはなろうとしてなれる物ではない。持って生まれた才能が必要だし、相応の知識も必要になってくる。
 で、もちろん俺には持って生まれた才能なんてないし、切嗣は魔道の知識なんて教えてくれなかった。
 なんでも、そんなモノは君には必要ない、とかなんとか。
 今でもその言葉の意味は判らない。
 それでも、子供だったじぶんにはどうでも良かったのだろう。
 ともかく魔術さえ使えれば、切嗣のようになれると思ったのだ。
 しかし、持って生まれた才能―――魔術回路とやらの多さも、代々積み重ねて来た魔術の業も俺にはなかった。
 切嗣の持っていた魔術の業……衛宮の家に伝わっていた魔術刻印とやらは、肉親にしか移植できないモノなのだそうだ。
 魔術師の証である魔術刻印は、血の繋がっていない人間には拒否反応が出る。
 だから養子である俺には、衛宮家の刻印は受け取れなかった。
 いやまあ。
 実際、魔術刻印っていう物がなんなのか知らない俺から見れば、そんなのが有ろうが無かろうがこれっぽっちも関係ない話ではある。
 で、そうなるとあとはもう出たトコ勝負。
 魔術師になりたいなら、俺自身が持っている特質に応じた魔術を習うしかない。
 魔術とは、極端に言って魔力を放出する技術なのだという。
 魔力とは生命力と言い換えてもいい。
 魔力(それ)は世界に満ちている大源(マナ)と、生物の中で生成される小源(オド)に分かれる。
 大源、小源というからには、小より大のが優れているのは言うまでもない。
 人間一人が作る魔力である小源(オド)と、世界に満ちている魔力である大源(マナ)では力の度合いが段違いだ。
 どのような魔術であれ、大源(マナ)をもちいれう魔術は個人で行う魔術をたやすく凌駕する。
 そういったワケで、優れた魔術師は世界から魔力をくみ上げる術に長けている。
それは濾過器のイメージに近い。
 魔術師は自身の体を変換回路にして、外界から魔力(マナ)を汲み上げて人間でも使えるモノ、にするのだ。
 この変換回路を、魔術師は魔術回路(マジックサーキット)と呼ぶ。
 これこそが生まれつきの才能というヤツで、魔術回路の数は生まれた瞬間に決まっている。
上の続き

 一般の人間に魔術回路はほとんどない。
 それは本来少ないモノなのだ。
 だから魔術師は何代も血を重ね、生まれてくる子孫たちを、より魔術に適した肉体にする。
 いきすぎた家系は品種改良じみた真似までして、生まれてくる子供の魔術回路を増やすのだとか。
 ……まあ、そんな訳で普通の家庭に育った俺には、多くの魔術回路を望むべくもなかった。
 そうなると残された手段は一つ。
 切嗣曰く、どんな人間にも一つぐらいは適性のある魔術系統があるらしい。
 その人間の“起源”に従って魔力を引き出す、と言っていたけど、そのあたりの話はちんぷんかんぷんだ。
 確かな事は、俺みたいなヤツでも一つぐらいは使える魔術があって、それを鍛えていけば、いつか切嗣のようになれるかもしれない、という事だけだった。
 だから、ただその魔術だけを教わった。
 それが八年前の話。
 切嗣はさんざん迷った後、厳しい顔で俺を弟子と認めてくれた。
 ――――いいかい士郎。魔術を習う、という事は常識からかけ離れるという事だ。死ぬ時は死に、殺す時は殺す。
 僕たちの本質は生ではなく死だからね。魔術とは、自らを滅ぼす道に他ならない―
 幼い心は恐れを知らなかったのだろう。
 強く頷く衛宮士郎の頭に、切嗣は仕方なげに手を置いて苦笑していた。
 ――君に教えるのは、そういった争いを呼ぶ類いの物だ。
 だから人前で使ってはいけないし、難しい物だから鍛錬を怠ってもいけない。
 でもまあ、それは破ったって構わない。
 一番大事な事はね、魔術は自分の為じゃなくて他人の為にだけ使う、という事だよ。そうすれば士郎は魔術使いではあるけど、魔術師ではなくなるからねーー
 ……切嗣は、衛宮士郎に魔術師になってほしくなかったのだろう。
 それは構わないと思う。
 俺が憧れていたのは切嗣であって魔術師じゃない。
 ただ切嗣のように、あの赤い日のように、誰かの為になれるなら、それはーー
 

 衛宮士郎は魔術師じゃない。
 こうやって体内で魔力を生成できて、それをモノに流す事だけしかできない魔術使いだ。
 だからその魔術もたった一つの事だけしかできない。
 それが――
 「――構成材質、解明」
 物体の強化。
 対象となるモノの構造を把握し、魔力を通す事で一時的に能力を補強する“強化”の魔術だけである。
 「――、基本骨子、変更」
 目前にあるのは折れた鉄パイプ。
 これに魔力を通し、もっとも単純な硬度強化の魔術を成し得る。
 そもそも、自分以外のモノに自分の魔力を通す、という事は毒物を混入させるに等しい。
 衛宮士郎の血は、鉄パイプにとって血ではないのと同じ事。異なる血を通せば強化どころか崩壊を早めるだけだろう。
 天海杏花さんから、Fateの主題に関連すると思われる興味深い資料の指摘を頂きました。

お勧め漫画

今回私が、薦めるのは『聖戦記エルナサーガ』です。時間芸術で英霊としてヒロインを提出したと思います。元々は、旧エニックスのGファンタジーで連載していた漫画です。北欧のバイキングなどをモデルとした作品でその昔、フレースヴェルグという鳥の姿をした魔獣がいたが勇者が一切の魔法を帯びない反魔法の性質を持つ聖剣グランディンを持って、フレースヴェルグを倒します。それでもフレースヴェルグの傷口からは魔風が吹き出し、その風から土地を守るため勇者はヨルズ山の山頂に聖剣を突き立てた所、グランディンを避けるように魔風が吹きそこに世界(ギムレー)が生まれた、というのが大前提の世界です。本編ではこの時代を「三剣(聖剣グランディン・統魔雷剣トゥアラテイン・炎魔剣レーヴァテイン)の時代」
この世界の人々は皆魔法(魔力に相当します)を持っていて、特に王侯貴族は強大な魔力を持ちそれがこの世界でのステータスの一つでもあるようです。その魔法をエルナは持っていなかったため、神の加護を持たぬ闇の姫御子と呼ばれることとなりエルナの勇者が始祖であるとされる国アーサトゥアルとその隣国アンサズの戦争が起こった時には、「グランディンをいつでも抜くことができる」と他国を脅すことができるようエルナを自領土内のノルズ山にエルナを送り込もうとする訳です。そこでエルナを暗殺するため無敵のシャールヴィとの異名を持つアンサズ第9王子シャールヴィが単身乗り込みも暗殺は失敗、アーサトゥアルの大魔道士ヴァーリがエルナもろともシャールヴィを殺そうとしたため、エルナを生きたまま自国へと連れて帰り彼女を立たせることで「グランディンをいつでも抜くことができる」という事実が虚偽であるということを公にするため、二人は一緒にシャールヴィの国アンサズへと向かうこととなります。
この世界にはいくつか魔法が存在するのですが、その魔法の中に魔精霊というものがあります。これは魔精霊を人の体の中に取り込ませることで人間の体を変異させます。この世界で言うウィルスや遺伝子操作に相当するようです。エルナ自身もこの魔精霊の影響を間接的に受けています。他の多くの魔法は呪文と掌相との組み合わせで発動させるのが殆どです。これは密教を参考にしていたと思います。ところで、聖剣グランディンは反魔法の性質を持ちますので通常魔法を帯びないエルナでないと触れることができません。しかし、エルナが勇者の幻影を見た際幻影の口走った、この扉を開けたあなたは鎧を再び作ったのかもしくは神ご自身なのだろう、という台詞そしてエルナサーガの続編であるエルナサーガ2では更にその反魔法を封じ込める鎧が登場したことから勇者は魔法を使うことができたと思われます。
神様もこの世界には存在するのですが、エルナサーガでは「子供の守護神ハーリィ」「女神エイル」「雷精ソーロッド」くらいしか登場せずしかも実体まで伴ったのはソーロッドだけです。魔獣フレースヴェルグも神に作られた装置らしく神々がフレースヴェルグの中で様々な生命を創造し、魔獣が壊れたため神々はこれを放棄、宇宙へと旅立ったとあります。エルナサーガ2では更に、神は魔法そのものとなるため肉体を捨てたとあり、エネルギーが不足してくると地球に飛来し人間を虐殺しその際の人間の足掻き、叫び、祈るその人間の心のエネルギーがイコール神のエネルギーとなるようでした。また、エルナの従兄弟でありアーサトゥアルの王エイリークは最終巻でエルナがグランディンを抜いて戦えるよう(最初から彼がそう意図したわけではないのですが)自らの強大な魔力を餌とし、世界樹となって人々を魔風から守ります。しかし、この意思はこの後も生きていたのかエルナサーガ2ではこの作品のエルナの子孫である「エルナ」を力付け、共に神々に向かって呪文を唱えます。このように、魔法は人間の意志の力とも世界を汚すものだとも考えられ、肉体の死がそのまま人間の死ともいえないように思われます。
勉強不足で説明し切れていないところも多分にありますが、今回はこのあたりで切らせていただきます。


 サブカルチャーの特徴として、作品世界を形作る様々な基本設定や、場合によってはキャラクターや事件などの流用までが行われて、複合的で多元的な仮構作品世界が形成されるという傾向があります。実はこのようなメカニズムこそ、文化というものの基盤を形成する重要な要素といえます。仮構作品の主題に関して考察や論証を行う際にも、他の仮構作品の中にある関連要素を的確に参照することが、有用な手段となることでしょう。
 『フェイト』のキャラクター紹介レポートを頂きました。
 要点の押さえ方が的確で、主観を交えた記述がとてもしっかりしているので、みんなの参考になるように公開させて頂きます。まだ最初のあたりを観たばかりなのに、ここまでまとめることができるのは、大したものです。
                          
・はじめに
時間芸術を通して、『フェイト』を観てきた。このレポートでは、『フェイト』に登場する主要キャラクター(マスターとサーバント)について述べていく。

キャラクターについて
・遠坂 凛
ゲームのスタート直後は、彼女の目線で物語は進行していく。本来、彼女はかなりサバサバしており、アーチャーに対してもこの雰囲気を崩さない。しかし、学校においては、優雅で知的な口調である。プレイヤーからは見られないが、おそらく振る舞いも優雅なことだろう。いつも強気で自信に溢れているが、ここぞという時に失敗するという「ドジっ子」属性も備わっているみたいだ。また、アーチャーに名前を言われたり、真っ直ぐな目で見られると、恥ずかしそうにするところも可愛らしい。要するに「ツンデレ」である。
私から見た凛は、猫かぶりの上手な世渡り上手、しかしツンデレドジっ子という愛らしい属性も持っている、「萌え」としては完璧な少女である。
・アーチャー
凛のサーバントである彼は、かなりの皮肉屋で、現実的である。しかし、敬意を払うべき相手なら、たとえ自分よりも若い少女だとしても敬意を示す。そういったところがかなり大人である。また、紅茶入れるのが上手であったり、家の修復を完璧にやったりと、出来る男をアピールしている(本人はそんなつもりないだろうが)。困った顔が可愛いところも、個人的には萌える。「さん」付けで名前を呼びたいキャラである。
私から見たアーチャーさんは、私のツボをかなりとらえたキャラクターである。皮肉屋で現実的、しかし何だかんだ言ってお人好しで、紅茶まで入れてくれる。今のところ、一番「萌える」人である。
・衛宮 士郎
一見すると、漫画でよく見る感じの主人公だ。今のところ、士朗の「歪み」はまだ目立っていない。しかし、そう感じるのには「漫画でよく見る」からだ。最近の漫画には、「正義や人間を愛する主人公」と、「人間嫌いで現実的な主人公」の両極端な性格の主人公が登場することが多くなった。両者からは人間としての魅力を感じない。優しすぎる主人公は正直言って、冷めてしまう。冷た過ぎる人間は腹が立ってくる。これが悪役なら好きになれるのだが、主人公がこんな性格なのは嫌である。私としては、『ワンピース』のルフィ(意外かもしれないが、別に好き好んで人助けはしない。気に入った人を助けるだけ)、『ケロロ軍曹』のケロロ(彼は宇宙人だが上記の人間たちより人間らしい)みたいな、「正義でもなく悪でもない」主人公が好きなので、実は士朗のことはあまり好きではない。しかし、彼の「いい人が死ぬのは嫌だ」「命を粗末にしてはいけない」という考え方は好きだ。また、藤ねえや桜との食事シーンのほのぼのした会話も、いいお兄さん、いい弟という感じがして和んでくる。
私から見た士朗は、正義に執着する様はちょっと異常だが、普通にいい子といった少年である。
上の続き

・セイバー
まだちょっとしか見ていないので、少しぐらいしか記述できないが、第一印象は「クーデレ」(「クールなツンデレ」と考えればよい)であった。青というイメージカラーが、より一層彼女の「クーデレ」を引き立たせる。しかもワンピースの上に甲冑で戦闘するという、可愛らしさと勇ましさを兼ね揃えた美少女ときた。人気が高いが分かる。
私から見たセイバーは、すごく可愛い「クーデレ」である。これからのストーリーにどう絡んでくるのか楽しみである。
・ランサー
 飄々としいるように見えて、かなり好戦的。しかし、ちょっとした慈悲があったり、士朗に対する評価もいい加減ではない。悪い人といった感じがあまりしない、男らしい人である。自分のマスターの回りくどいやり方に対してよく思っていないあたり、実直な人なのかもしれない。男女問わず人気がありそうな性格だ。
 私から見たランサーは、悪い人っぽいのに悪い人ではなさそうなキャラクターである。こういう人間らしい人(英霊だけど)はとても好きだ。

・おわりに 
 まだほんの冒頭のあたりしか見ていないはずだが、キャラクターたちはとても魅力的である。その理由として考えられるのは、彼らを取り巻く生活がリアルだからだ。その中で生きているからこそ、皆が生き生きとしており、リアルな感情、思考を伴っているのだ。 
凛、士朗の感情や思考はかなりリアルだ。普通に怖がり、感動し、パニックになる。そういった、かっこ悪いが、私たちに近い感情、思考を持っていることが魅力的なのだと、私は考える。
Fate 2月2日後半

 今朝のメニューは定番の他、主菜でレンコンとこんにゃくのいり鶏が用意されていた。
 朝っぱらからこんな手の込んだ物を作らなくとも、と思うのだが、きっと大量に作って昼の弁当に使うのだろう。

 十年前。
 まだあの火事の記憶を忘れられない頃は、頻繁に夢にうなされていた。
 それも月日が経つごとになくなって、今では夢を見てもさらりと流せるぐらいに立ち直れている。
 ……ただ、当時はわりと酷かったらしく、その時からうちにいた藤ねえは、俺のそういった変化には敏感なのだ。

「……気のせいか、これ」
 なのに、目を閉じると雰囲気が一変する。
 校舎には粘膜のような汚れが張り付き、校庭を走る生徒たちはどこか虚ろな人形みたいに感じられる。

 青い方のソレに、吐き気がするほどの魔力が流れていく。
 周囲から魔力を吸い上げる、という行為は切嗣に見せてもらった事がある。
 それは半人前の俺から見ても感心させられる、一種美しさを伴った魔術だった。
 だがアレは違う。
 水を飲む、という単純な行為も度を過ぎれば醜悪に見えるように。
 ヤツがしている事は、魔力を持つ者なら嫌悪を覚えるほど暴食で、絶大だった。

 こみ上げてくる物を堪えながら、手近な教室に入る。
 おぼつかない足取りのままロッカーを開けて、雑巾とバケツを取り出した。
「……あれ……なにしてるんだろ、俺……」

 まだ頭がパニックしてる。
 とんでもないモノに出会って、いきなり殺されたっていうのに、なんだってこんな時まで、後片付けをしなくちゃいけないなんて思ってるんだ、馬鹿。

「――――同調(トレース)、開始(オン)」

 自己を作り替える暗示の言葉とともに、長さ六十センチ程度のポスターに魔力を通す。
 あの槍をどうにかしようというモノに仕上げるのだから、ポスター全てに魔力を通し、固定化させなければ武器としては使えないだろう。
「――――構成材質、解明」

 意識を細く。
 皮膚ごしに、自らの血をポスターに染み込ませていくように、魔力という触覚を浸透させる。
「――――構成材質、補強」

 こん、と底に当たる感触。
 ポスターの隅々まで魔力が行き渡り、溢れる直前、
「――――全行程(トレース)、完了(オフ)」

 「ゴーストライナー……?じゃあその、やっぱり幽霊って事か?」
 とうの昔に死んでいる人間の霊。
 死した後もこの世に姿を残す、卓越した能力者の残留思念。
 だが、それはおかしい。
 幽霊は体を持たない。霊が傷つけられるのは霊だけだ。
 故に、肉を持つ人間である俺が、霊に直接殺されるなんてあり得ない。
「幽霊……似たようなものだけど、そんなモンと一緒にしたらセイバーに殺されるわよ。
 サーヴァントは受肉した過去の英雄、精霊に近い人間以上の存在なんだから」
「――――はあ?受肉した過去の英霊?」
「そうよ。過去だろうが現代だろうが、とにかく死亡した伝説上の英雄を引っ張ってきてね、実体化させるのよ」
「ま、呼び出すまでがマスターの役割で、あとの実体化は聖杯がしてくれるんだけどね。
 魂をカタチにするなんてのは一介の魔術師には不可能だもの。ここは強力なアーティファクトの力におんぶしてもらうってわけ」
「ちょと待て。過去の英雄って、ええ……!?」
 セイバーを見る。
 なら彼女も英雄だった人間なのか。
 いや、そりゃ確かに、あんな格好をした人間は現代にはいないけど、それにしたって――――
「そんなの不可能だ。そんな魔術、聞いた事がない」
「当然よ、これは魔術じゃないもの。あくまで聖杯による現象と考えなさい。そうでなければ魂を再現して固定化するなんて出来る筈がない」
「……魂の再現って……じゃあその、サーヴァントは幽霊とは違うのか………」
「違うわ。人間であれ動物であれ機会であれ、偉大な功績を残すと輪廻の枠から外されて、一段階上に昇華するって話、聞いたことない?
 英霊っていうのはそういう連中よ。
 ようするに崇め奉られて、擬似的な神様になったモノたちなんでしょうね」
「降霊術とか口寄せとか、そういう一般的な“霊を扱う魔術”は英雄(かれら)の力の一部を借り受けて奇跡を起こすでしょ。
 けどこのサーヴァントっていうのは英霊本体を直接連れてきて使い魔にする。
 だから基本的には霊体として側にいるけど、必要とあらば実体化させて戦わせられるってワケ」
Fate における「例外事項」を列挙せよ

 優れた芸術作品というものは、ロマンスの枠組みを自己破壊した『ドン・キホーテ』の例に代表されるように、自身の存在性向そのものを逸脱するような自壊的・背反的要素を捻転して含む、鋭敏な反射的意識に裏打ちされて構築されているものであることが多いようです、このゲーム作品『Fate』においても、伝記活劇アドヴェンチャー・ゲームという外枠に対しても、あるいは作中に中心的な主題として導入された「聖杯戦争」の基本設定条件においても、さらにまた一つの物語を形成するべきストーリーの進行においても、様々な例外事項が現出していることが分かります。これらの例外条件をくまなく列挙し、様々な角度から分析の手を加えてみて下さい。
天海杏花さんから頂いた、「改正版聖杯戦争エントリーシート」です。

1 真名
エルナ

2 作品名
聖戦記エルナサーガ

3 クラス
セイバー(他の人と被ってものいいのかわからないのですが、大丈夫でしょうか?)

4 関係性
伝説の勇者と魔王
魔王を自称をする割にはせこい。
この二人は一応契約を交わした者同士であるため戦闘においては互いの指示に従うが、 そもそも目的が真逆なため意思疎通が不十分であったり、衝突が起こることがある。この点を突けば比較的簡単に倒せる相手であろう。

5 理由・言い訳
私が魔獣であるフレースヴェルグの復活を望んだため、それを目的として聖杯戦争に参戦。
ただしエルナはその魔獣に対し刃を向ける勇者なため、目的は正反対。

6 参加理由
上にも記したが、それにプラスして世界の終わりと始まりを見てみたい。
魔獣フレースヴェルグは世界を破滅させようとしているが、その本質は母であった。
この獣は世界を壊した後は新しい世界を創るつもりなのである。

7 エルナの能力
宝具である聖剣グランティンは強力な反魔法の力を持つため魔法を弾いたり、跳ね返したり 魔法を持つ人間(魔法=魔力に相当)が触れただけでもダメージを与えることができる。
また、反魔法の特性により魔法の発動と同時に振り上げればその方向へと魔法により強力な破壊力を与えて弾き飛ばす。
エルナは唯一神の加護たる魔法を持たない闇の姫御子なのでグランティンにも触れることができる。
だが剣の腕は、第1巻スタート直前まで魔法を持たない以外は普通のお姫様であったためからきしである。

8 宝具
前述の通り、聖剣グランディンである。
普段は聖短剣グランクニーブを使用している。
このグランクニーブはグランディンの弱体化したものだとでも思えば良い(正確にはそれぞれ単独の物)
グランクニーブは威力が弱いため、強力な魔法を持つ人間はその反魔法能力にも対抗することが可能である。

9 基本戦略
エルナに戦闘能力を期待する方が間違っているので、術者が魔法を使いそれを弾き飛ばす
もしくは反魔法の力で敵を弾き飛ばすなどが基本。
このコンビは敵とまともに戦うとまず間違いなく即死するので、入念に敵を見定め罠を張る必要がある。

10参加理由2
私は魔王にはなりたいですが、世界征服はしたくありません。面倒臭いです。
だから管理することを放棄して世界を破滅させ、全部フレースヴェルグに創り直してもらいます^^
二次元っていう天国に行きたいんですよ

*************************************
ごもっともです。確かに世界征服って、やっちゃった後が大変ですよね。
S2機関

 「S2きかん」が気になったので、ウェブで調べてみました。様々の「エヴァ用語集」のページでは「S2機関」として理解されていて、「スーパー・ソレノイド・エンジン」(super solenoid engine)を意味するものとして解説されているようです。「ソレノイド」はウィキの説明では以下のように語られています。

ソレノイド(1827年、フランス語の solénoïde または、ギリシャ語 solen 「管、導管」とギリシャ語 eidos 「形、形状」との合成語[1])は、三次元のコイルである。
物理学では、ソレノイドという語は導線の環状の物を指し、電流が流れると磁界を発生させる。ソレノイドはしばしば金属のコアの周りに巻かれている。ソレノイドは制御可能な磁界を発生させることができ、また電磁石として利用できるため、重要である。ソレノイドという語は、特に、広い空間に一様な磁界を発生させるように設計された磁石を指す(これはかなりの実験が行われているかもしれない)。
工学では、ソレノイドという語はエネルギーを直線動作に変換する各種のトランスデューサー・デバイスのことも指す。この語はしばしば電磁弁を指すこともある。電磁弁は、空圧バルブでも水圧/油圧バルブでも作動させ、またソレノイド・スイッチも作動させる、電気機械ソレノイドを持つ統合されたデバイスである。ソレノイド・スイッチとは、電気スイッチを操作するための電気機械ソレノイドを内部で用いる特定の種類の継電器である。たとえば、自動車のスターター・ソレノイドや、直線ソレノイドといった、電気機械ソレノイドがある。
電磁力によって鉄心が駆動するアクチュエータ [編集]

コイル内に可動鉄心を設置し、電流を加えることで直進運動を得ることができる。運動できる範囲が狭い(ストロークが短い)が、小型で高速応答を得られるので油圧シリンダ、空気圧シリンダの制御、自動車の燃料噴射バルブの制御に使われることが多い。
直流と交流の種類によって、ACソレノイドとDCソレノイドの二つがある。ACソレノイドは可動鉄心を吸引させる力が一定で、動作速度が比較的速い(約10m秒)。DCソレノイドはACソレノイドよりも小さく、音も小さいが、可動鉄心の位置によって吸引させる力が変化し動作速度は遅いという特徴を持つ。
また、可動部の構造によってプッシュ形、プル形、プッシュプル形に分類される。
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 しかしながら、一号機が使徒の体内にあったものを食って取り込んだという描写からは、むしろ「S2器官」という語を当てはめて理解すべきものと解する根拠もある訳です。「コイル」あるいは「螺旋」と形状的に関連する、生体内の動力発生部位を想像すればよいのでしょうか。
空の海賊さんから、課題の「例外事項」に関する回答を頂きました。

1・凛が士郎(目撃者)の命を救った。
2・聖杯戦争の開始期間が今回は早い
3・凛が士郎に協力を持ち出す
4・アーチャーは記憶が飛んでしまい、自分の真名がわからない

というのが、今のところの例外事項だと考える。
 
しかし、1と3に関しては、凛の私情が入っていると考える。
桜という凛と仲のよい少女がいたが、彼女はどうやら士郎が好きで、凛もそれを知っているようだった。
つまり、彼女を悲しませないために凛は士郎の命を守ろうとしているのだと考える。
4に関しても、凛の召喚の仕方が悪かったといえるし、もしかしたら本当は覚えているが、あえてそれを話していない可能性だってある(それはそれで例外的だが)。

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 ここに指摘された「例外」の示唆するそれぞれの内実と相関について、
今後のストーリーの展開から改めて確認されるであろう他の「例外事項」について、
「例外」という要素・概念が暗示する仮構世界構築及び記述作業の秘める問題性について、
 さらに考察を進める用意を整えておいてください。
Fate 2月3日朝

そうなると原因はサーヴァントね。
 貴方のサーヴァントはよっぽど強力なのか、それとも召還の時に何か手違いが生じたのか。……ま、両方だと思うけど、何らかのラインが繋がったんでしょうね」
ライン?ラインって、使い魔と魔術師を結ぶ因果線の事?」
あら、ちゃんと使い魔の知識はあるじゃない。
なら話は早いわ。ようするに衛宮くんとセイバーの関係は、普通の主人と使い魔の関係じゃないってコト」
見たところセイバーには自然治癒の力もあるみたいだから、それが貴方に流れてるんじゃないかな。
普通は魔術師の能力が使い魔に付与されるんだけど、貴方の場合は使い魔の特殊能力が主人を助けてるってワケ」

聖杯を手に入れる為にマスターがサーヴァントを呼び出す、じゃない。
 成敗が手に入るからサーヴァントはマスターの呼び出しに応じるのよ」

 マスター同士で和解して、お互いに聖杯を諦めれば話は済むと思っていたけれど、サーヴァントが聖杯を求めて召還に応じて現れたモノで、けして聖杯を諦めないのならば、それじゃ結局、サーヴァント同士の戦いは避けられない。
 ……なら。
 自分を守るために戦い抜いてくれたあの少女も、聖杯を巡って争い、殺し、殺される立場だというのか。
 ……なんてことだ。英霊だかなんだか知らないけど、セイバーは人間だ。昨日だってあんなに血を流してた。」
あ、その点は安心して。サーヴァントに生死はないから。サーヴァントは絶命しても本来の場所に帰るだけだもの。英霊っていうのはもう死んでも死なない現象だからね。戦いに敗れて殺されるのは、当事者であるマスターだけよ」

そうよ。けれどサーヴァント達は私たちみたいに自然から魔力(マナ)を提供されている訳じゃない。基本的に、彼らは自分の中だけの魔力で活動する。
 それを補助するのがわたしたちマスターで、サーヴァントは自分の魔力プラス、主であるマスターの魔力分しか生前の力を発揮できないの」
 けど、それだと貴方みたいに半人前のマスターじゃ優れたマスターには敵わないって事になるでしょ?
 その抜け道っていうか、当たり前って言えば当たり前の方法なんだけれど、サーヴァントは他から魔力を補充できる。
 サーヴァントは霊体だから。同じモノを食べてしまえば栄養はとれるってこと」

 簡単でしょ。自然霊は自然そのものから力を汲み取る。なら人間霊であるサーヴァントは、一体何から力を汲み取ると思う?」

まず、呼び出される英霊は七人だけ。
 その七人も聖杯が予め作っておいた役割(クラス)になる事で召還が可能となる。英霊そのものをひっぱってくるより、その英霊に近い役割を作っておいて、そこに本体を呼び出すっていうやり方ね。」
 口寄せとか降霊術は、呼び出した霊を術者の体に入れて、なんらかの助言をさせるでしょ?それと同じ。
 時代の違う霊を呼び出すには、予め筐(はこ)を用意しておいた方がいいのよ。
 役割(クラス)――ああ、それでセイバーはセイバーなのか!」
 そういう事。英霊たちは正体を隠すものだって言ったでしょ。だから本名は絶対に口にしない。自然、彼らを現す名称は呼び出されたクラス名になる」

 それもあるけど、彼らの能力を支えるのは知名度よ。
 生前何をしたか、どんな武器を持っていたか、ってのは不変のものだけど、彼らの基本能力はその時代でどのくらい有名なのかで変わってくるわ。
 英霊は神さまみたいなモノだから、人間に崇められれば崇められるほど強さが増すの」
 存在が濃くなる、とでも言うのかしらね。信仰を失った神霊が精霊に落ちるのと一緒で、人々に忘れ去られた英雄にはそう大きな力はない。

彼らにはそえrぞれトレードマークとなった武器がある。
それが奇跡を願う人々の想いの結晶、貴い幻想とされる最上級の武装なワケ」
 Fateにおいては、サーヴァントとして召喚された英霊達の存在論的位置付けを行うに当たって、現実と仮構の間の未知の連関を前提とした、より高次の場の理論と存在物相互の関連性が仮定されていました。この仮説の把握を試みるためのヒントとなる記述を以下に紹介しておきます。

 明らかに量子理論とアクチュアリズムの誕生以前に、知性体の想念の及ぼす現象世界への霊的影響と意識の保持する特有の具現化作用は、宇宙解式の包括的システム理論としての意義性を明確に自覚して思考過程の中に導入されていた。そして一切の現象世界的逡巡を放棄してこのような極限的抽象思考に全てを委ねるならば、古典力学の完成以降にこれまでに理性と科学によって確証されてきたような観測と知覚によってのみならず、思念や情念を通じて非局所的に全体性の相互作用を行っている、さらなる未知の意味界面の存在が、むしろ“仮構”という包括的意味性の場の中にこそ新たに開拓されねばならないことになるのである。

ーー

  こうして相対性理論と量子力学の解式によって波動と粒子、あるいは質量とエネルギーが、相補的にその様相を顕現する共軛的な素因として、何らかの連続体に帰属する概念の一形態に過ぎないことが認められるに至ったように、宇宙の基体となるものが示し得る多義的な様相群のまたそれぞれの影と本体としての個々の様相と、これらを統合して記述する包括的な高次システム上の意義性概念が、フィクション世界をも包摂した場の理論の中に切実に開拓されねばならないこととなるのである。そこでは当然ながら“エネルギー”と“質量”の場合と同様に、 “意味”と“実体”という概念が対称的に相補的様相を保持する連続体である可能性が真摯に模索されねばならないこととなり、その結果が時には、アーヴィン・ラズロ(Ervin Laszlo)が“アカシック・フィールド”(Akashic field)(8)という、“意味”からなる別次元を隠し持つ宇宙の統合連続体としての機構を前提とした仮説を通して提示したような形で導かれるのも、人間知性の裡に得られる宇宙像の論理的あるいは形而上学的帰結としてはむしろごく自然なことだろう。考え得る限りの全ての意味性次元を拡張した宇宙の全体像は、想念と現象、さらにまた仮構と現実というそれぞれの表現形を選択的に取り得る観念の統合連続体としてこそ、その存立可能性が真摯に模索されねばならないこととなるからである。
Fate2月3日残り

 「何故だろう。聖杯には、嫌悪感しか湧かない。」
 望みを叶えるという杯。
 それがどんなモノかは知らないが、サーヴァントなんていうモノを呼び出せる程の聖遺物だ。
 どんな望みも叶える、とまではいかないにしても、魔術師として手に入れる価値は十分すぎる程あるだろう。
 それでも―俺はそんなモノに興味はない。
 実感が湧かず半信半疑という事もあるのだが、結局のところ、そんな近道はなんか卑怯だと思うのだ。
「それに、選定方法が戦いだっていうのも質が悪い」
 ……だが、これは椅子取りゲームだ。
 どのような思惑だろうと、参加したからには相手を押し退けないと生き残れない。
 その、押し退ける方法によっては、無関係な人々にまで危害を加える事になる。
 だから、
――喜べ衛宮士郎。
俺の戦う理由は聖杯戦争に勝ち残る為じゃなくて、
――君の望みは、ようやく敵う。
 どんな手を使っても勝ち残ろうとするヤツを、力づくでも止める事。

 サーヴァントは英霊だ。
 その正体はあらゆる時代で名を馳せた英雄である。
 彼らはクラス名で正体を隠し、自らの手の内をも隠している。
 サーヴァントの真の名はおいそれと知られてはならないもの。
 だが、同時にマスターだけは知っておかなければならない事でもあるのだ。
 何故なら、英霊の正体が判らなければ正確な戦力が判らない。
 マスターとサーヴァントは一心同体。
 どちらかが隠し事なんてしていたら、まともに戦える筈がない。

「ええ、それなのですが、……おそらく、これはもう私たちでは解決できない事です。
 私たちサーヴァントはマスターからの魔力提供によって体を維持する。だからこそサーヴァントはマスターを必要とするのですが、それが――」
「……俺が半端なマスターだから、セイバーが体を維持するのに必要なだけの魔力がないって事か?」
「違います。たとえ少量でもマスターから魔力が流れてくるのなら問題はないのです。ですが、シロウからはまったく魔力の提供がありません。本来繋がっている筈の霊脈が断線しているのです。」

ザッと考えて、まず揚げ出し豆腐。汁物は簡単な豆腐とわかめのみそ汁に。
 下ごしらえが済んでいる鶏肉があるので、こいつは照り焼きにして主菜にしよう。
 豆腐の水切り、鶏肉の下味つけ、その間に大根をザザーと縦切りにしてシャキッとしたサラダにする。大根をおろしてかけ汁を作ってししとうを炒めて――

「協力体制を決めていただけよ。安心なさい、別に貴方のセイバーをとったりしないから。」
「――――!」
 カア、と顔が赤くなるのが判る。
 遠さかに言われて、自分が何に怒っていたのかに気づいてしまった。

 ……恐らく。
 あの瞬間、自分の中にあった“殺される”という恐怖より、セイバーを“救えない”という恐怖の方が、遥かに強かっただけの話。

「そうですね。それが正常な人間です。自らの命を無視して他人を助けようとする人間などいない。
 それは英雄と言われた者たちでさえも例外ではないでしょう。」
「ですから――そんな人間がいるとしたら、その人間の内面はどこか欠落しています。
 その欠落を抱えたまま進んでは、待っているのは悲劇だけです。」
 フィクション作品FATEを、具体的できめ細かな存在感に満ちた世界とすることに役立っていた仮構的リアリズムに該当すると思われる事例を列挙し、それらの共通パターンあるいは作劇的特性について分析してみよ。類型性に堕することのない、説得力を備えた仮構世界の記述には、どのような要素が必要とされるかを考察し、その条件を特定してみよ。
 FATEが「エロゲー界の倫理学」と呼ばれる要因について考えよ。むしろ些末な事例の中にこそ倫理の本質が効果的に充填されていることを理解し、その具体例の抽出と問題点の分析を行ってみよ。
「時間芸術」レポート課題

 伝奇活劇ビジュアル・ノヴェル『Fate』について、その時間芸術としての特質、あるいは展開されている倫理学的主題の問題点、あるいはコンピュータ・ゲームという様相のもとに提示された特有のフィクション世界としての評価における着眼点等、自由に主題を抽出して芸術作品の内実に対する考究のあり方を示せ。

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