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ベン村さ来「と言えば・・・」コミュの【16・クリスマスイブ】 平成11年12月24日(木)

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原典:http://www.owarai.to/ben/16.html
written by ベン村さ来

◆クリスマスイブである。
クリスマスイブとはいえ世間は何の変わりもないだろうと思い新聞を広げると『U-turnの土田に妻子がいた!』(サンケイスポーツ)とのこと。クリスマスイブに何を書かれているのだ!私は知らされていなかったが、それよりU-turnの「Uの字」のスキマに土田の顔
が入っている絵柄の方に気を取られて笑ってしまった。

◆ U-turnとは5〜6年前に『松村邦洋のオールナイトニッポン』で知り合った。ノンキースと一緒に深夜のレポーターをやってもらっていたのだが、その頃から土田には妙なおかしさがあった。今でも覚えているのが幽霊が出ると評判の池袋サンシャインシティ下の森林公園に行ってもらった時のこと。松村氏が「何か幽霊の出る漢字はするか?」と問いかけると、土だは元・不良でもこういう雰囲気は恐いという趣をたっぷり見せた演技で

「恐いですねぇ・・・何かヤバイっすよ!」

と言った。するとその後に

「ズズズズズッ・・・」

というノイズが!

松村がビビりながら
「なっ、何の音だ?」

と聞くと、

今度の土田は口に何か入っているようなモソモソした口調で

「幽霊の声ですかねぇ?ズズズズズッ・・・」

と続けた。

さっきよりはっきり聞こえた

「ズズズズズッ・・・」

に松村氏、少し考えて

「お前、ラーメン食ってるだろ!」

とやや怒り口調。土田、少しも慌てずに

「食ってませんよォ」

と真面目な口調で言ったあと、いいタイミングでゲップ。


◆ 今、この文章を読んだ自称お笑い通のアナタは「ベタなコントだな」と思っただろう。しかし、演技的にもタイミング的にも松村氏とのカラミ的にも土田のレポートは最高のものだった。あのレポートを生で聞いて笑わぬ者はいないと私は断言する。こんな天才的ボケを持つ土田と爆笑問題の田中氏に負けずとも劣らないセンスを持つ対馬のツッコミでU-turnはまだ売れるハズだ。土田のことだからただの放送作家にこんなことを言われても何とも思わないだろう。しかし、老いぼれて将来スナックを始める私の『マスターの自慢話』として語れるぐらいは売れて欲しい。「U-turnは俺が育てた!」とまでは言わないが「U-turnとお台場の浜辺でSMラジオ体操をした!」ぐらいの事は言わせてくれ。まさか、クリスマスイブにこんな話をしようとは思わなかった。

クリスマスイブと言えば思い出すのが…
私の生涯最低のクリスマスイブのことである。

◆ 私は放送作家になる前は浅草キッド(当時のたけし軍団2軍)配下でコント芸人をしていた。得意技は放送禁止の人種差別ネタ。一人コントだったのと落語で言うところの「かみしも」の演じ分けに自信があったので『一人時間差人種差別コント芸人』と名乗っていた。そんなある日のこと、TBSラジオから生出演の依頼が来た。しかもクリスマスイブの夜である。彼女もいなければ、予定もなかった私はスグにOKした。当日、私は多少は持っていた放送可能なネタを用意して赤坂のTBSホールへ。連絡のあった通り夕方6時頃に楽屋入りしたのだが台本に私の名前がない。その日はオールナイトの生放送で、番組は芸人の事務所や芸の種類別に7つくらいのコーナーに別れていた。しかし、どのコーナーにも私の名前がない。

◆ その後、知り合いのディレクターの発言に私はいくつか驚くことになる。まず、夕方6時に楽屋入りしたが私の出番は早朝の4時30分だということ。つまりADの連絡ミスだったのだ。このミスのお陰で私はクリスマスイブの夜、楽屋にのり弁ひとつで10時間待ちをすることになる。さらに驚いたのが私には放送禁止の人種差別ネタをやって欲しいというのだ。私は人種差別ネタと言っても世の中の悪い政治家を風刺していた訳でも何でもない。身体障害者差別だけをやっていた筋金入りだ。さらに第3の驚きが私を待っていた。早朝の4時30分から5時までは放送はニュースの時間だというのだ。つまり、この30分は放送禁止コーナーで、ホールのお客さんだけに聞かせるコーナー、放送的には息抜きコーナーだったのだ。

◆ ちょっと怒ってしまった私は同じコーナーに出演する『へらちょんぺ(差別ネタのパイオニア。私の尊敬する先輩芸人)』『三津間JAPAN(松村邦洋の弟子。見た目が放送禁止)』『げんしじん(坂田利夫師匠の弟子。発言が精神病患者っぽい)』との4人で聖夜に世界でここだけの『差別ワールド』を繰り広げた。特に私はサリドマ.イド病やダウン症、義眼や義足のネタまでやり、最前列に見ていた女の子にゲロを吐かせてしまった。芸人冥利につきる瞬間だ。

◆ 芸人冥利にはつきたが、
クリスマスイブにこんなことをやっている自分に愛想がつきてしまった。
生涯最低のクリスマスイブだった。

 
原典:http://www.owarai.to/ben/16.html
written by ベン村さ来

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