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ダイオキシン中毒(カネミ油症)コミュのダイオキシン間題の最新情勢について

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特別講演
ダイオキシン間題の最新情勢について


摂南大学薬学部教授

宮田秀明

はじめに
 ダイオキシン類は地球的規模で環境や人体の汚染をもたらし、しかも現在ので人体に生体影響を及ぼす可能性が強く指摘されている超毒性の有機系環境ある。
 1998年、世界保健機関(WHO)はダイオキシン類の耐容一日摂取量(TDI)の基準値をより厳しい値に変更するとともに、コプラナーPCB(Co−PCBs)を新たにダイオキシン類として取り扱うことを決めた。一方、大阪府能勢町の高濃度土壌汚染、埼玉県所沢市の野菜汚染騒動、廃棄物焼却に関連する多数の訴訟問題等が大きな社会的問題になった。このような国内外の事情を考慮して、政府は1999年3月に「ダイオキシン対策推進基本方針」を打ち出した。また、1999年7月、政党も「ダイオキシン類対策特別措置法」を全党一致で成立させた。これらの方針や措置法を推進するため、2000年5月に「循環型社会形成推進基本法」が成立し、これに基づいて八種類の法律が新設あるいは改正された。
 一方、大阪府豊能郡美化センターにおいては、従事者が高濃度ダイオキシン類汚染を受けており、また、施設の解体工事に伴って作業者も高濃度汚染を受けるなど、労働安全衛生的にも大きな問題に発展している。

1.法規準値や汚染調査に使われる単位
 ナノグラム(ng):10億分の1グラム(排ガス規制に使用)
 ピコグラム(pg):1兆分の1グラム(耐容一日摂取量、環境基準、環境汚染などに使用)

2.ダイオキシン類と毒性評価
 1)毒性評価対象化合物
  ダイオキシン[ポリ塩化ジベンゾ−p−ジオキシン(PCDDs)]:7種類
  ポリ塩化ジベンゾフラン(P0DFs):10種類
  コプラナ−P0B(Co−PCBs):12種類
 2)毒性評価
  最強毒性の2.3.7.8-四塩化ダイオキシンの毒性に換算した濃度である毒性等価量(TEQ)を用いて評価する。

3.物理化学的性質
3−1.難点、水溶解性、蒸気圧、Pow(オクタノール・水分配係数)
 1)融点は196.5〜485℃であり、極めて高い。
 2)水溶解性は19〜1030ng/Lと極めて低く、水に溶解しにくい。低塩素化体は高塩素化体よりも水に溶けやすい。
 3)同一塩素数を有する化合物の水溶解性はCo−PCBs>PCDFs>PCDDsの
 4)蒸気圧は1.34x10−5〜8.52x10-13mmHgと極めて低く、蒸発しにくい。低塩素化体は高塩素化体よりも蒸発しやすい。
 5)同一塩素数を有する化合物の蒸気圧は、Co−PCBs>PCDFs>PCDDsの傾向にある。
 6)logKowは6.21〜8.78であり、極めて脂溶性が高い。

3−2.安定性
1)湖などの水中では極めて安定で、底質を含めた湖水中における2,3,7,8-TCDDの半減期は550〜590日になる。底質を含まない場合はさらに分解しにくい。
2)微生物は5塩素化体以上の高塩素化体をほとんど分解できない。
3)土壌中でも安定で、2,3,7,8-TCDDの分解率は次の通りである。
 米国のユタ:282日〜635日で51%  米国のフロリダ:490日間で33%  米国のカンザス:651日間で91%
4)メタノール、オリープ油などの水素供与体の存在下では充分解が容易に起こる
 メタノール中:太陽光照射下7時間で100%分解
 オリープ油で処理した土壌表面:太陽光照射下9日間で90%以上分解
 ガラスプレート上:太陽光照射下14日間で分解せず。

4.環境動態
4−1.地球規模の環境移動
1)超微量のダイオキシン類は容易に気化し、環境大気に移行して地球環境をグローバルに汚染する。
2)大気中のダイオキシン類は気相状態と大気浮遊粒子吸着状態で存在する。
夏期では大半が気相状態で存在し、冬期では大半が粒子状体で存在する。
3)光分解速度
 PCDDsは低塩素化体が高塩素化体よりも分解されやすい。
 PCDFsは、高塩素化体が低塩素化体よりも分解されやすい。
 PCDFsの分解速度はPCDDsよりも3〜4倍速い。
4)植物への移行
 土壌から水経由で根部への高度の濃縮、根部から上部への移行は極めて少ない。
 大気から気相状態のダイオキシン類が集部へ高度に濃縮する。
5)魚介類への移行
 低塩素化体は高塩素化体よりも高度に濃縮される。
 甲殻類や貝類には生息域のダイ才キシン類成分を反映した蓄積パターンになる。
 魚類には高毒性の2.3,7,8一塩素置換体が選択的に蓄積する。
 魚介類への蓄積率は、Co−PCBs〉〉PCDFs〉PODDsの順になる。
4−2.陸生動物の汚染経路
1)鶏
(1)飼育期間が短いにもかかわらず、各国の鶏肉、鶏卵中の残留濃度は高い。これは主に土壌摂取経由の汚染に由来する。また、魚粉、フェザーミール等の飼料経由も考えられる。
(2)白色レグホンの80日間飼育実験では、土壌摂取に伴う胃腸からの吸収率は、4塩化〜6塩化物で50〜80%、7塩化物で10〜50%である。
(3)白色レグホンにおいては、体内取り込み量のうち、卵へは5〜30%が排出され、脂肪組織に7〜54%および肝臓に0.5%以下の量が蓄積する。そして、(組織中湿重量当たりの濃度)/(飼料中の濃度)を生物濃縮係数とすると、その大きさは、脂肪組織>>卵黄>肝臓、大腿部の順になる。
2)乳牛
(1)大気や水を経由する汚染よりも飼料経由の汚染が主体である。ドイツのバックグランウド地域では99.5%は牧草経由である。
(2)摂取量のうち、糞に58%が 牛乳に20%が排泄され、22%が体内に善積される。
(3)4頭の乳牛を用いた経口投与実験では、吸収率はダイ才キシン類化合物により相違する。毒性の強い4塩化や5塩化物の吸収率は26.5〜35.5%であり、他の毒性の弱い高塩素化物よりも高い。
(4)乳牛における生体内半減期は44.5〜165日である。
3)ほ乳類では胎盤移行よりも母乳移行が圧倒的に多い。また、毒性の低い高塩素化体は移行しにくい。
4)人体における蓄積濃度は、脂肪組織>>肝犠>筋肉>他の組織の傾向にある。
5)生体内半減期は、ラット・マウスで20〜40日、サルで1年、ヒトで7.5年

5.ダイオキシン類の耐容一日摂取量および実質安全量
1)1998年5月、WHOは最近の胎児毒性を主体としたデータに基づいてTDIの基準値を10pgTEQ/kg/日から1〜4pgTEQ/kg/日に変更するとともに、Co−PCBsもダイオキシン類として規制することを決定。目標値は1pgTEQ/kg/日未満。
2)1999年6月、わが国もWHOに準じてTDIの基準値を10pgTEQ/kg/日から4pgTEQ/kg/日に変更するとともに、Co−PCBsもダイオキシン類として規制することを決定。
3)2000年5月、米国EPAはダイオキシン類を発ガン物質と正式に規定。2000年中にダイオキシン類の実質安全量を決定すると表明したが、現時点において報告無し。

6.ダイオキシン類対策特別措置法の概要
 1999年7月12日成立、7月16日公布、2000年1月15日施行
(1)環境基準値の設定:土壌1pgTEQ/g、大気0.6pgTEQ/m3、水質1pgTEQ/L
(2)特定施設の水質排出基準:10pgTEQ/L
(3)特定施設の排ガス基準:廃棄物焼却施設(新設0.1〜5ngTEQ/m3、既設80pgTEQ/m3 (2002年11月30日まで);1〜10ngTEQ/m3(2002年12月1日から)、
特定工場(新設0.5〜1ngTEQ/m3、既設2〜40ngTEQ/m3(2002年11月30日まで);
1〜10ngTEQ/m3(2002年12月1日から)
(4)燃えがら等の基準:3ng/g、特別管理廃棄物に指定
(5)都道府県知事権限強化:上乗条例の設定、総量規制基準および総量削減計画、大気・水質・土壌汚染状況の常時監視
(6)廃棄物最終処分場における排水、土壌、大気基準を遵守した維持管理
(7)設置者義務:排ガス、水質、排出水の測定と都道府県知事への測定結果の報告義務
(8)罰則規定
(9)付則および検討事項
・特定工場における公害防止組織の整備に関する法律の改正規定(公布日から起算して2年を経過した日)
・臭素化ダイオキシンの調査結果に基づいて必要な措置を講ずる
・ダオキシン類規制の見直し:その時点において到達されている科学的な知見の結果に基づき、必要な見直し等の措置を講ずる
・健康被害および食品汚染の対応:汚染・蓄積状況を勘案して、科学的な知見に基づき、必要な対策措置ずる
・小規模廃棄物焼却炉の構造、維持管理の規制ならびに廃棄物焼却施設によらない廃棄物の焼却に関する規制:検討を加え、結果に基づき必要な措置を講ずる
7.摂取量
1)人体汚染量の90%以上:食事経由(60%以上は魚介類に起因)
2)ダイオキシン類の一日摂取量は1980年に較べて1996年はかなり減少。
例・関西地区における1977〜1990年の一日摂取量:体重1kg当たり12.4pgTEQ
・関西地区における1996年の一日摂取量:体重1kg当たり2.6pgTEQ
3)摂取量減少の理由:汚染の低い輸入食品の増加、汚染の低い高級魚摂取量の増加
4)問題点
(1)食料自給率(約40%)の異常な低下:農地の荒廃、農民人口の減少
(2)近い将来に食料の世界的枯渇:急速な経済発展と遂げる開発途上国における食料の急激な需要、特に肉類の急激な消費量の増加
・肉食は大量の穀物が必要:
肉1kgを生産するために必要な穀物量(トウモロコシ換算量)
鶏卵:3kg  鶏肉:4kg  豚肉:7kg  牛肉:11kg
(3)(2)を踏まえて、わが国の食料自給率増加と環境汚染低減化が急務
(4)偏西風による中国や韓国からの汚染物買飛来防止に対する監視と技術的援助
8.人体汚染と母乳問題
1)ダイオキシン類の人体内半減期は5年〜10年:体内蓄積量は加齢とともに増加
2)授乳による乳児の摂取量は平均でTDIの約17〜37倍、高濃度者で50倍以上
3)母乳中のダイオキシン類は毎日の食事に主として起因
4)大規模疫学調査による母乳の安全性を検討することが急務
5)国際的には胎児毒性が母乳汚染影響よりも問題視

9.人体汚染の低減化方法
1)汚染の高い魚介類の摂取を避ける-----適切な産地の魚介類を選択
産地を選択する魚介類:アジ、サパ、タチウオ、コノシロ、サッパ、ガザミ、ムール貝、ジジミなど産地を考えなくてよい魚介類:遠洋魚(マグロ、サンマ、カツ才)、カニ類(ガザミを除く)、イカ、タコ、エビ、貝(ムール貝、シジミを除く)
2)大気汚染の高い産地の葉菜類を避ける
3)食物繊維や葉緑素を含む食品(野菜、果乗、海草類、茶)を適切に摂取する
4)葉緑素は特異的にダイオキシン類を吸着できる----食物繊維結合型葉緑素は排泄カが強い
5)食物繊維の過剰摂取は栄養素不足をもたらす
6)適切な運動:ダイオキシン類は汗とともに排泄
7)余分な母乳は可能な限り絞り出す

参考責料
1)WHO/IPCS: Executive Summary Report of "Assessment of the health risks of dioxins: re-evaluation of the Tolerable Daily Intake (TDI) (1999)
2)中央環境審議会環境保健部会等:ダイ才キシンの耐容一日摂取量(TDI)について(1999)
3)宮田秀明:ダイオキシン、岩波書店(1999)
4)宮田秀明:よくわかるダイオキシン汚染、合同出版(1998)
5)森田部正、松枝隆彦、飯田隆雄:衛生化学43.35.1997
6)森田部正、松枝隆彦、飯田隆雄:衛生化学43,:42,1997
7)Aozasa O. et al: Organohalogen Compounds 37, 369, 1998
8)Aozasa O. et al: ibid, 42, 155, 1999
9)宮田秀明:化学総説、29.119(1996)

プロフィール
宮田秀明(みやた・ひであき)
【主な職歴等】
1971年:大阪府立大学大学院農学研究科修士課程修了
1971年:大阪府立公衆衛生研究所入所
1984年:同上主任研究員
1985年:摂南大学薬学部助教授
1993年:摂南大学薬学部教授現在に至る。
【専門】
環境科学、食品衛生学、公衆衛生学
【研究】
1971年以来、一貫して塩素系環境汚染物質の環境・人体汚染影響評価を研究。特に、最近はダイオキシン間題について研究を進めている。
【主な委員等】
日本環境化学会副会長、中央環境審議会専門委員、厚生労働省生活環境審議会専門委員、厚生労働省・環境省ダイオキシン類総合調査検討会、経済産業省環境問題連絡会ダイオキシン対策検討会、環境省ダイオキシン類排出抑制検討会、兵庫県ダイオキシン類対策検討会検討委員、大阪府母乳栄養推進委員会委員などの検討委員
【受賞等】
日本食品衛生学会奨励賞、日本環境化学会化学学術賞、日本環境化学会化学功績賞
【主な著警等】
ダイオキシン(岩波書店)、ダイオキシンの真実(岩波書店)、よくわかるダイオキシン汚染(合同出版)、PCB(CRCPress)、宮田秀明のダイオキシン間題Q&A(合同出版)、環境と健康(HBU出版)、ダイオキシンから身を守る法(監修)(成昆出版)、ダイオキシン間題解決への展望(工業技術会)、環境と健康II(へるす出版)、ごみ処理に係わるダイオキシン類の発生防止等技術(エス・ティー・エヌ)、食品・母乳のダイオキシン汚染(監・署)(食ぺもの通信社)

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