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ダイオキシン中毒(カネミ油症)コミュの戸田清研究室ホームページよりコピー

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戸田清 『週刊金曜日』掲載原稿

2008年1月25日 2009年4月22日改訂

●『週刊金曜日』661号(2007年7月6日)49頁きんようぶんか・「読み方注意!」掲載

14字×60行 財界・共和党がゆがめる科学的真実

『アメリカの政治と科学 ゆがめられる「真実」』マイケル・ガフ編著、菅原努監訳、昭和堂、2800円(税別)ISBN978−4−8122−0709−3

 一般論として、科学的真実が政治によってゆがめられることは、その通りである。旧ソ連の生物学のルイセンコ事件もそうだし、日本で言えば水俣病の病因物質が有機水銀と判明してからの政府、財界、学者の「追認引き延ばし工作」(一九五九年から六八年)もそうだろう。米国でも同様な事例が少なくないと思われる。ただ本書は、その内容があまりにも財界寄り、共和党寄りである。原著の発行は二〇〇三年。発行元は共和党系のシンクタンクとして知られるフーバー研究所の出版局。執筆者には、ネオコンの『ウィークリー・スタンダード』誌の寄稿者もいる。「原子力」の章の執筆者は『私はなぜ原子力を選択するのか 二一世紀への最良の選択』(近藤駿介監訳、ERC出版、一九九四年)の著者バーナード・コーエンである(近藤は原子力委員会の委員長)。

 この本からは、次のような主張が読み取れると思う。

「ブッシュの京都議定書離脱は正しい。地球温暖化はあまり心配する必要はない。/ブッシュは原発建設を早く再開すべきだ。原発の危険性は誇張されている。反原発運動は非科学的だ。/レイチェル・カーソンの『沈黙の春』は有機塩素系農薬の危険性を過大視していた。ベトナム枯葉作戦の健康影響も誇張されている。/環境政策における予防原則の適用(不確実な状況で潜在的危険性を重視すること)は最小限にすべきだ。/アル・ゴア前副大統領やラルフ・ネーダーは大衆の敵だ。/悪名高いエンロン社は環境団体のお気に入りだった(驚くべき珍説)。」しかし、「合成化学物質に注意を集中しすぎたために、ビタミンやミネラルの欠乏を招いている」「DDTの規制をあせりすぎたために第三世界でマラリアが再び流行して、多くの人命が失われた」などの論点は真剣に検討・批判すべきであろう。

翻訳陣は原著以上に露骨に原発推進を意図しており、訳者九人のうち七人が放射線専門家である(医学、生物学、工学)。「気候」と訳すべきところを「気象」とするなど、不適切な訳語も多すぎる。

●『週刊金曜日』668号(2007年8月31日)45頁 きんようぶんか・読み方注意! 基本的知識・理解で看過できぬ「勉強不足」

『環境問題はなぜウソがまかり通るのか』武田邦彦著、洋泉社、952円(税別)ISBN978−4−86248−122−1

武田氏は一九四三年生まれ、東大卒、工学博士、名古屋大学教授などを歴任、文部科学省科学技術審議会専門委員。本書は、三月に出版されて、六月には7刷という「二五万部突破のベストセラー」になったそうだが、「学者の勉強不足」を痛感させる本である。たとえば、カネミ油症に関する記述には仰天した。カネミ油症がダイオキシン被害と呼ばれるのは、PCB中毒だからではない。PCBの不純物であるPCDF(ポリ塩化ジベンゾフラン)のほうがむしろ主因だとわかったのは、八三年である。基本的な情報は確認してほしい。

ベトナム枯葉作戦についての理解にも疑問がある。武田氏は「なぜベトちゃんドクちゃんだけがいつまでも出てくるのか」と嘆いているが、本当にそうだろうか。故レ・カオ・ダイ博士(ハノイ医科大学)の『ベトナム戦争におけるエージェントオレンジ』(尾崎望監訳、文理閣、〇四年)や中村梧郎『戦場の枯葉剤』(岩波書店、九五年)などは基本文献のはずだが、読んでいないのではないだろうか。使用量の多かった農薬はCNPであるが、ダイオキシンとの関連で問題になるのはむしろ2,4,5−Tのほうである。

合成洗剤と石けん(本書では言及なし)あるいはリサイクルについての武田氏の議論(二〇〇〇年に刊行された『リサイクルしてはいけない』の内容)の問題点について、NPO法人環境市民のウェブサイトでかなり体系的に論じられたことがあるが、武田氏ご本人から批判掲載への抗議はあっても、内容への実質的な反論はなかったようだ。また、ダイオキシン論争も含めて最近の議論については、畑明郎ほか編『公害湮滅の構造と環境問題』(世界思想社、〇七年)に手際よくまとめられている(武田氏への言及もある)。著者紹介によると、武田氏は「内閣府原子力安全委員会専門委員」であるとのことだから、原発についても言いたいことがあるはずだが、本書では言及はない。なお洋泉社は、煙草問題についても最近トンデモ本を出している(『タバコ有害論に異議あり!』)。

●『週刊金曜日』683号(2007年12月14日)41頁 きんようぶんか 読書

重大すぎるからウソが許されるという不条理

『完全シミュレーション 日本を滅ぼす原発大災害』坂昇二・前田栄作=著、小出裕章=監修

風媒社=発行、1400円(税別)

ISBN978-4-8331-1076-1

 「第1章 隠された臨界事故」で解説するように、一九九九年には二つの臨界事故があった。住民被曝と作業員死亡で直ちに大騒ぎになった東海村のJCO事故と、八年間隠されてきた北陸電力志賀原発1号機事故である。七八年の東京電力福島第一原発3号機臨界事故は、二九年間も隠されていた。さらにもうひとつ、八四年の東京電力福島第一原発2号機臨界事故も、二三年間隠されていた。北陸電力と違って東京電力の臨界事故隠しは、古くて資料がないので運転停止処分を免れてしまった。不二家や関西テレビの不祥事では社長の首が飛んだが、「事の大小、深刻さからいえば原発の事故隠しは、スケールの違う大問題だった」のに、異例の甘い処分だった。沸騰水型原発では制御棒を重力にさからって下から水圧で入れるため、抜け落ち事故が起こりやすいという構造的欠陥がある。JCO事故で「裸の原子炉」をとめるための決死隊二四人の「全員重大な被曝」について本書には数値の言及はないが、末田一秀氏のホームページによると最高一二〇ミリシーベルト(以下mSvと略記)もあったという。一時報道された「最高九八mSv」という数値は改竄の疑いがあるようだ。

 世界には四二九基の原発があるが、日本を除いたそれはほとんど例外なく地震地帯を避けて立地されている。しかし世界の地震の一割が集中する日本ではそれは不可能だ。第2章の表題である「世界で最も危険な原発」とは、予想される東海地震の特定観測地域に立地する中部電力浜岡原発のことである。東海地震は中越沖地震(柏崎刈羽原発が被災)に比べると三百倍も巨大な地震になると予想されている。浜岡原発の五基でドミノ倒し的に連鎖事故が起こると急性死と癌死の合計が八三〇万人に達することもありうるというシミュレーション結果もある。本書の随所にこうした試算が紹介されるが、瀬尾健さんの遺作『原発事故……その時、あなたは!』(風媒社、九五年)をベースにしたものだ。この章で、嶋橋伸之さん(九一年死去)の白血病労災認定のことも解説されている。中部電力のひ孫請け会社に勤務していた彼は、八年半で五〇・九三mSv被曝した。ところが、労働者被曝の許容限度は五年間で百mSv、一年間で五〇mSvである。それなのに労災認定の要件となる線量は年間五mSvだ。自然放射線(一mSv)の五倍浴びれば白血病になっても不思議ではないというわけだ。つまり「労災要件の十倍浴びても合法」ということだが、これはかなり深刻なことではないだろうか。

 「第3章 日本を滅ぼす“原発震災”」では原発震災のシミュレーションなどが紹介され、中越沖地震による柏崎原発被災(炉心の状態はまだわからないが)の状況も解説されている。県庁にも近い島根原発については「岡山県、広島県の顧客に影響が少なくてすむよう、島根県がスケープゴートにされた」とコメントされる。「第4章 未来を汚染する六ヶ所再処理工場」では「原発一年分の放射能を一日で出す」再処理工場の問題を解説する。本格稼働間近の六ヶ所再処理工場でコスト削減のためクリプトン85とトリチウムの回収装置を削除したスキャンダルも指摘されているが、その背景には英国核燃料公社からの圧力もあったらしい。

 本書を、明石昇二郎『原発崩壊』(金曜日)と併読することを是非お薦めしたい。

●『週刊金曜日』732号(2008年12月19日号)45頁 きんようぶんか・読み方注意!

貴重な指摘と暴論・記述の混乱が混在

『エコロジーという洗脳 地球温暖化サギ・エコ利権を暴く[12の真論]』

副島隆彦+SNSI(副島国家戦略研究所)

成甲書房 1700円(税別) ISMN 978-4-88086-237-8



副島隆彦氏は日本の保守系知識人のなかで、なかなか切れる人物であり、時々貴重な指摘をかなりの説得力をもって述べている。本書は副島氏と「弟子たち」が、地球環境問題をめぐる「洗脳」を「疑い」、「諸真実を暴きたてる」本であると自信たっぷりで、必ずしも反面教師的な本と決めつけるわけにはいかない。排出権取引(排出量取引)には金融派生商品としての危険性がある、沖縄の不適切な公共事業(国策)による赤土公害から目を逸らすためにサンゴの減少に関して地球温暖化の関与が誇張されている、地球温暖化対策を口実にして原発を推進する「原子力ルネッサンス」は原発の危険から目を逸らす策謀である、アル・ゴアの言説にはかなり問題があるし利権もある、などの指摘は重要である(一一月一二日の報道によると、経済産業省は自然エネルギーと原発を同列において「グリーン電力」として優遇するとのことで呆れかえる)。その一方で「全ての税は悪であり、環境税も悪魔の新税だ」のような粗雑な暴論がある(環境税については、『環境税』足立治郎、築地書館〇四年、を良書として薦めたい)。排出量取引とクリーン開発メカニズムの関係についても少し誤解しているようだ。副島氏ら執筆者の多くは脱原発派のようだが、原発についての章の結論は何故か「米国の操作を排して国益にかなった原子力開発を」と推進論になっていて驚かされる。洗脳を疑うと自負しながら、「鯨が増えすぎて生態系を壊している」という捕鯨推進派のプロパガンダを鵜呑みにしている。京都議定書が九二年で気候変動枠組条約が九七年だという説明(もちろんその逆)がある。地球温暖化の主流の言説に批判的だという理由で武田邦彦氏と槌田敦氏を同列に並べる認識にも驚かされる。槌田氏は一貫した反原発派であり、武田氏は自説を隠しているようだが原発推進派であろう。本書は、読み物として結構面白く、いくつかの貴重な指摘を含みながら、暴論や記述の混乱、不統一も散見し、どこが貴重な指摘であり、どこが不適切なのか、読むときに絶えず注意が必要であると思う。



●『週刊金曜日』743号(2009年3月20日号)43頁

きんようぶんか・読み方注意! 重要な指摘もあるが、難点も少なくない

『オバマ 危険な正体』ウェブスター・G・タープレイ著、太田龍監訳、1900円(税別)成甲書房 ISBN978-4-88086-239-2

書店に行くとオバマ演説集をはじめとして「礼讃本」の洪水である。日本語でのまとまったオバマ批判としては、本誌734号(1月16日号)の特集、『オバマの危険』成澤宗男(金曜日)、そしてタープレイの本邦初紹介である本書『オバマ 危険な正体』くらいではないだろうか。その意味では本書も貴重な情報源ではある。本書の記述の特徴は、オバマ大統領の外交ブレーンであるズビグニュー・ブレジンスキーの危険性をカーター政権時代にさかのぼって詳述し、さらに経済ブレーンである新自由主義人脈の数人についても有益な情報を提供していることである(ローレンス・サマーズへの言及がないのは、本書の執筆時期が早かったためだろう)。タープレイが本書を執筆したのは〇八年の春、原書の刊行は六月、邦訳もマケインとの決戦に先立つ一〇月には完了し、刊行は一二月であった。本書が主張する「オバマのもとでの新型ファシズムの危険」についても、重要な問題提起として受けとめておこう。タープレイは早くも一一月には第二弾の『バラク・オバマ 非公認伝記』を出した。実は私がタープレイの存在を知ったのは〇六年のことで、『9/11合成テロ アメリカ製』(邦訳なし)が手元にあったが読んでいなかった。今回初めてタープレイを読み、大変失望した面も大きい。左翼を自称しているのに原発推進派の言い分を鵜呑みにして米国が「原子力ルネサンス」に乗り遅れないかと心配し、プーチン政権の宣伝を鵜呑みにして「チェチェンのテロリスト」を一方的に非難しつつ、ロシア軍のチェチェン民間人大量殺戮などには言及しない(『ロシア 語られない戦争 チェチェンゲリラ従軍記』常岡浩介、アスキー新書、〇八年、は必読)。成澤氏の『オバマの危険』は必読の良書だが、タープレイの『オバマ 危険な正体』も、どこが重要な指摘であり、どこが不適切なのか、絶えず注意しながら、是非とも読んでほしい。訳者は左翼から右翼に転じたあの太田龍である。本書は、批判対象も、著者も、訳者も、そろって「危険ないし要注意」であるという点では、珍しい本だ。

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