ログインしてさらにmixiを楽しもう

コメントを投稿して情報交換!
更新通知を受け取って、最新情報をゲット!

コルダ★ドリームコミュの『con amore』 第3話

  • mixiチェック
  • このエントリーをはてなブックマークに追加

あれからセレクション参加者全員に声をかけて、全員の承諾を得る事が出来た。

うん、これだけのメンバーが集まれば、いいアンサンブルが出来そう。
みんなにメールで、昼休みに打ち合わせって連絡しておいたし……今日から本格的に、忙しくなりそうだ。









……なんて思いながら学校に来ると、何だか妙にテンションが低い香穂の後姿を見つけてしまった。

後姿でもわかるくらいの落ち込みっぷりに、思わず葵と顔を見合わせて、お互いに?マークを浮かべてしまう。
何かあったのか……?
そういえば結局、お姉さんアドバイザー役引き受けたのかな。

「日野さん、どうしたんだろう?何だか元気がないみたいだけど……」
「だね。何かあったのかな………。おーい香穂ー!おはよー!」

後ろから大声で叫ぶと、香穂はビクッと弾かれたように振り返る。
そして、あたし達の顔を見た途端、へにょっと何だか情けない顔になった。

「幸緒ちゃん、加地くん……」
「おはよう、日野さん」
「どーしたの?朝からテンション低いじゃん」

いつも明るい香穂がこんな表情をしてるのなんて、凄く珍しいことだよね。
こんな顔を見たのって………アレだ、春に魔法のヴァイオリンの事で悩んでて、コンクール辞めるとか言い出した時以来?

「実はね……アドバイザーの事、結局お姉ちゃんに断られちゃって」
「お姉ちゃん……??」
「え、そうなの?保留とは言ってたけど割と前向きな答えだったから、引き受けるのかと思ってたけど」

キョトンとしてる表情の葵は若干置いてけぼりになってる気がするけど、とりあえず話を聞く。
そういえば葵って、香穂にお姉さんがいる事は当然ながら知らないんだよね。

「私もそう思って期待してたのに……昨日、凄く怒りながら急に家に帰ってきたの」
「へー」
「何があったのか知らないけど、もう高校には行きたくないとか、音楽関係の事話したら殴る!とかも言われたんだよ」

むーっと膨れたような顔をしながら、香穂は軽く自分の頭をさすってみせる。
……ああ、なるほど。それでも頼み込もうとして、殴られたわけね。
あの人、一度言い出したら何言っても絶対聞かないからなぁ……。


でも、学校行きたくないって………何があったんだろう。
金やんとケンカでもしたのかな?

まあ、さほど興味もないし別にどっちでもいいんだけど。


「まあ……残念だけど、仕方ないんじゃない?やりたくないって言ってるのを無理にやらせるわけにいかないし、先輩も忙しいんでしょ、きっと」

正直、あたしは先輩がアドバイザーを引き受けようと断ろうとどっちでもいい。
専攻楽器が違うから、あたしは特に先輩から教わる事もないしね。
だから、香穂には悪いけど無理に引き止める理由もなくて、そんな答えを返した。

「それに今回は理事が相手の行事だしさ、音楽科の先生とかがアドバイスくれるよ、きっと」
「……うん、そうだね……」

あからさまにヘコんだ香穂に、あたしと葵は顔を見合わせて苦笑を浮かべた。
一応納得してはくれたみたいだけど……やっぱりショックだったのかな。


そしてその直後に、予鈴が鳴って。
話は終わったような中途半端のままのような……という状況のまま、あたし達は揃って校舎に駆け込むことになった。






















そして、昼休み。
皆に連絡しておいた通り、全員で音楽科の屋上に集まって話し合いだ。


「金やんからの要望だと、曲数は2〜3曲。で、愁情系の曲を入れてほしいって」
「愁情系かぁ〜。おれちょっと苦手かも……」

ちょっと困ったように眉を潜めて、火原先輩はバツが悪そうにそう呟く。
まあ、確かに火原先輩の演奏に憂いのある曲ってのは合わないけど……。

「でも、全てを同じ系統にしろって事じゃねぇんだろ?」
「うん。そういう感じの曲も入れて欲しいって事みたいだから、曲調は統一しなくても大丈夫だと思うよ」
「それなら、いっそ色々な曲調の曲を演奏するのもいいかもしれないね。曲調を一定にしない方が、理事の皆様方も楽しんで下さるんじゃないかな?」
「あ!はいはーい!おれ、それ賛成!」

なるほど、確かに全部の曲を同じ曲調で統一するよりは、色々な曲調の曲を弾いた方が利き手も楽しいだろう。
それぞれ、得意な曲調も苦手な曲調もあるだろうし。
特に今回は憂いのある曲って要望なだけに、それで統一すると全体的に暗くなっちゃいかねない。

「じゃあ、決まりだね。曲はどんなものにしようか?」
「あ、それなら、一応曲目はある程度リストアップして来たんですけど……」

準備期間もそれほど多いわけじゃないから、一応昨日、自分なりに曲目は選んでみた。
リストを見せると、皆しばらく無言でそれを見てたけど……

「弦楽四重奏の曲は、1つ入れたいです」
「あ、じゃあこの曲はどう?弦楽四重奏曲『アメリカ』第1楽章」
「その曲を入れるなら、残りの2曲も国民楽派音楽で統一した方がいいかもしれないな」
「なら、スラヴ舞曲第10番はどうでしょうか?曲調も、あちらの要望に合ってると思います」

一度口が開いたら、次から次へと意見が出てくる。
皆表情は真剣そのもので……いきなり頼んだのに、すごく真剣に取り組んでくれるのがわかる。
そんな皆を見てると、何だかあたしも嬉しくなってきて……是が非でもこのアンサンブル成功させなきゃ!って思った。

「じゃあさ、残り1曲は明るい曲調のにしようよ!」
「あ……でしたら、この曲はどうでしょう……?」
「どれ?……展覧会の絵?」
「いいんじゃない?葵と土浦は他の曲でもパート入ってるから、2曲弾くことになるけど……」
「俺は別に構わないぜ」
「僕も、この曲なら大丈夫だよ」

どうしても一人で複数の曲を弾く人が出てくるから、確認とってみたけど……2人とも頼もしい返事が返って来た。

「ヴァイオリンも、2曲弾く人が2人必要になるね」
「なら、俺が弾きます」
「あたしもOKですよ」
「あ、じゃあお任せしていいかな?私、今回弾いたことない曲ばかりでちょっと、2曲は自信なくて……」

ちょっとバツが悪そうな顔で香穂が言うから、あたしも「オッケー、大丈夫だよ」って答えを返した。
月森なら心配ないし、あたしもこの曲目なら全部演奏した事あるしね。


そして、あたしのその言葉で演奏曲は決定となった。
なんか、思ってた以上にあっさりと決まったけど……でもグダグダ言い争いする事にもならなくて、よかった。

曲が決まれば後は、ひたすら練習して、完成度を上げて……。
本番までに皆で息を合わせて、完璧に仕上げていかないとね。


「しばらくは個人練習に専念するとして、全体練習はどうします?」
「そうだね……時間もそれほどあるわけじゃないから、予定が合えば土日も使っていこうか?」

柚木先輩のその提案に、大半の人は頷いたけど……あたしは思わず、一瞬固まってしまった。
言っとくけど、別に土日練習が嫌なわけじゃない。
むしろ、そう時間があるわけでもないんだから、あたしだってその意見には賛成なんだけど……

「あ、すみません。あたし今週の日曜日は予定があるので、ダメなんです」

軽く手を上げて、早めにそう申し出ておいた。
土日練習は賛成なんだけど、今週の日曜日だけはダメなんだよね。

「何か、予定があるのか?」
「うん。信武くんからボランティアの代理頼まれてるんだ。信武くん、ウィーンに行く事になって行けなくなっちゃったから、代わりにって」

内容は、保育園でのヴァイオリン演奏。
確か、友達がアルバイトしてる所だって言ってたけど……信武くんの頼みだから、あたしも引き受けた。

そして理由を話すと、皆も納得したような表情になる。
……ってか、信武くんの名前を出したから、かな?
信武くんの人柄のおかげか、このメンバーの中でも信武くんの人望は篤いから。

「そっかぁ。それじゃ、仕方ないね!」
「ごめんなさい……。それ以外の日なら大丈夫なんで!」
「じゃあ、土日練習は来週末からにしようか。皆それまでに個人練習を重ねて、出来る限り完成させておいてくれるかな?」

柚木先輩の言葉に、全員が頷いた。
アンサンブル……この間の教会のバザー以来だけど、やっぱりワクワクする。
保育園で弾く曲も練習しつつだから、今週はかなりハードになるけど……土曜日までみっちり練習付けにすれば、大丈夫だよね。
そのために今週は、バイトのシフト少なくしてもらったし。


半ば押し付けられたとは言え、一度引き受けたからには中途半端な演奏はしたくない。
このメンバーで弾くアンサンブルなら、きっと楽しいだろうし……。

よーし、頑張りますか!

























「ねえ幸緒ちゃん、日野さんのお姉さんってどんな人なの?」
「は……?」


時間は過ぎて、放課後。
バイトまでまだ時間があるから、いつも通り葵と一緒の帰り道……いきなりそんな事を言われたから、あたしは思わずポカンとした顔をしてしまった。

「香穂の、お姉さん?」
「うん。日野さんに聞こうかとも思ったんだけど、なんだか聞けない雰囲気だったから」
「あー……確かに」

異様にヘコんでたし、あの状態で聞くのは気が引けるだろうね。
でも、日野先輩かぁ……どんな人って言われても……

「あたしも、数えるくらいしか接した事ないんだけど………うちのOB。人見知りしないし、明るくて元気のいい人なんだけど、結構気が強いかも。香穂とはあんまり似てないよ」
「へぇ……大学部の人なの?それとも社会人?」
「大学部だよ。信武くんの同級生」

葵は時折頷きながら、じっとあたしの話を聞いてた。
ぶっちゃけあたしは苦手です、なんて言うのも気が引けるから、説明するにもそういう意見は避けて……。
………なんて、思ってたら……


「……ねえ、的外れな意見だったらごめんね。もしかして……幸緒ちゃんって日野さんのお姉さんの事、嫌い?」


じっとあたしを見ながら言い放たれたその一言に、思わず足を止めてしまった。
しかも、口調がからかうようなものでもいつもの軽い口調でもない、ちょっと真剣なものだから……多分本気で聞いてんだよね。
鋭いなぁ、相変わらず……。
いや、別に嫌いではないんだけどさ。

「いきなりな事聞くねぇ……まあ、当たらずとも遠からず、って感じだけど」
「? どういう事?」
「ん〜……決して嫌いではないんだよ?ないんだけど……苦手ではあるんだよね」

苦笑混じりにそう答えを返すと、葵はちょっと驚いたような顔になった。
嫌いじゃない。だけど、あの良くも悪くも遠慮のないノリが、どうも苦手だ。

「苦手って、どんな所が?」
「まあ、実際に会えばわかると思うけど……良くも悪くも遠慮がないとこあるし、悪ふざけしたり人をからかったりするのが大好き、みたいな人だから………どうもそのノリがね」

こう言う本人のいないとこで悪口言う、みたいな事は、気が引けるけど……。
あ、でも、ある意味葵とは気が合うかも?割と方向性一緒なとこもあるし。
まあ、何があったのか知らないけどしばらく学校来ないなら、会う機会も当分ないと思うけど。

「そうなんだ……。ありがとう、教えてくれて」
「いいよ、別に。結局詳しい事何も言えてないし」
「そんな事ないよ。……あ、そうだ。昼休みにボランティアに行くって言ってたけど、どこに行くの?」

にっこり笑いながら、自然と話を変えてくれる。
正直、これ以上突っ込まれても話せる事もあまりないから助かった。
きっと、そう察してあえて話を変えてくれたのかもしれないな………葵って昔から、そういう事には聡いから。

「保育園だよ。信武くんの友達のバイト先なんだって」

言いながら、信武くんに聞いた保育園の名前と住所のメモを見せる。
そういえば、その『友達』が誰なのかは、興味ないから聞かなかったけど……誰なんだろ?
保育園だから、女の人……なのかな?

「でも、クラシック教室の子とかじゃないから曲目選びが大変でさ〜。信武くんにも手伝ってもらって、何とか決まったけど」
「なんだ、言ってくれれば僕もいくらでも協力したのに。それで、何に決まったの?」
「『エンターテナー』と『ガヴォット』、それと『きらきら星変奏曲』。子供にも馴染みのある曲でしょ?」
「うん、その3曲ならきっと大丈夫。加えて君が演奏するんだもの、あんなに素敵な音に触れる事が出来て、喜ばないはずがないよ」

きらきら星はもう説明不要だし、他の2曲も必ずどこかで聴いてるくらいメジャーなクラシック。
だから、飽きない程度に短めに編曲したパターンなら、楽しんでくれると思うんだよね。
葵も同じ事を思ってくれたのか、笑顔で頷いた。
……後半の恥ずかしいセリフは、あえてスルーしといて。

そして、さらに数秒間、葵は何か考えるような仕草をして……


「ねえ、幸緒ちゃん。よかったらその日、僕も一緒に行っていいかな?」


またも笑顔で言い放たれた本日の爆弾発言………何回目だっけ?に、思わず目を丸くして葵を凝視してしまった。

「え?」
「だって、何だかとても楽しそうだもの。その曲目ならすぐにだって君と合わせられるし、僕も一緒に弾かせて欲しいんだ」
「…………………」
「ダメ、かな……?僕なんかが一緒に行ったら、迷惑?」

視線を合わせるようにかがんで、捨てられた子犬みたいな目線でじっとこっちを見つめてくる。
……計算ですかそれは…………いや、コイツの場合天然か。多分。
そんな顔されたら、頷くしかできないじゃないかー……別に断るつもりもないけど……。

「そんな事ないけど……むしろ、あたし子供ってそんなに得意じゃないから、一緒に来てくれた方が助かるよ」
「本当?じゃあ、僕も一緒に行っていい?」
「うん、一応向こうに連絡入れておくよ」
「やった!ふふっ、嬉しいなぁ。ありがとう、幸緒ちゃん」

さっきまでの表情はどこへやら、今度はパッと笑って、声も弾んでた。
天然なのか確信犯なのか線引きが微妙なとこだけど………あえて気にしないでおこう、うん。
どっちにしても、結局葵の言うこと聞いちゃうんだろうし……。

「じゃあ、明日から早速練習だね。今週は忙しいから、放課後開けておいてよ?あたしもバイトのシフト、今週はもう入ってないから」
「もちろん、君のためならどんな時だって時間を空けるよ。ふふっ……明日からは放課後もずっと一緒にいられるんだね」

凄く楽しみ、なんて笑う葵は、自惚れかも知れないけど本当に嬉しそうに見えた。
そんな葵の笑顔を見てると……あたしも、嬉しくなる。

だって、放課後ずっと一緒にいられて嬉しいのは……あたしも一緒だから。

曲の練習って言う名目ではあるけど、今週は葵と一緒にいられる時間がずっと多くなるんだ。
一緒に弾ける時間も……ずっとずっと、多くなるんだ。
やっぱりあたしは、葵と一緒に弾くのが何よりも好きだから……凄く、嬉しい。


なんだか、どっちも凄く楽しみになってきちゃった。

練習、頑張らなきゃ。










***************************


お久しぶりすぎる更新でした^^;

アンサンブルでの曲目も決まって、高校生組は着々と始動してます!
そして、ストーカー(違)加地は、ボランティア先にも乱入です(笑)
多分、コミックス版の月森のごとく、保育園の女の子たちのアイドルになるかと(^皿^)

コメント(0)

mixiユーザー
ログインしてコメントしよう!

コルダ★ドリーム 更新情報

コルダ★ドリームのメンバーはこんなコミュニティにも参加しています

星印の数は、共通して参加しているメンバーが多いほど増えます。

人気コミュニティランキング