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混沌図書館 深淵書庫コミュのカエデ奮闘日記

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 彼女の名前は『カナリア・ルクーシュ・アロマサット』…。

【有力な貴族の出自である彼女はこの国の最高学府を誇る『王立サントグランデ学園』、その中にある『魔法技術科』に席を置いている…。ただし成績は中の下】
「ほっとけ!」
 と、ここで思わずナレーションにツッコミを入れる彼女ことカナリア。
「これでも他の学校の学生に比べたら雲泥の差はあるっての!」
【しかしこの学園の中での話なので…。もっと勉強頑張りましょうよ…】
「… … … …」
【あ、手に武器(モーニングスター)を持たないで!そんなのどこから出したのですか?】
「淑女の嗜みとして常に持っているわよ。あなたみたいに御主人様の逆鱗に触れる使い魔を教育するためにね」

【…てへっ…?】
 可愛くポーズを決めてウインク。

「可愛い猫の振りしても駄目よ?あなたのマスターは私なんだから騙されないって」
 そう言ってニッコリと笑顔を作る。だが目は笑っていない。
【…はいごめんなさい私が悪かったですだから殴らないで形が崩れちゃう!】
「だーめ」

 カナリアが凄惨な笑みを浮かべながら手にしたモーニングスターを振り下ろした。躊躇も遠慮も容赦も無い重い一撃!

『グチャ!』

 その『猫』は無残にも潰れ、部屋のあちこちに欠片を飛ばして動かなくなった。
【… … … …】
「死んだ振りしても駄目よ、早く元に戻りなさい!」
 彼女はモーニングスターを片付けてそう言い放つ。
【はーい、分かりましたマスター】
 潰された筈の『猫』だった肉塊はそう答えると小さく蠢き、急速に『何か別のモノ』へと変貌する。
「ほら、早く飛び散った残りも回収して!」
【うー、飛び散らかしたのはマスターですよー】
 カナリアの命令に不平不満のこもった言葉を返しながらも、言われた通りに回収しては同化していった。

 しばらくしてから…。

【カナリア様、戻りましたー】
 そう言ってカナリアの前に鎮座しているのは、何処からどう見ても『大きなピンク色のスライム』にしか見えない物体であった。
「おっそい!あと1分は短縮しなさい!」
【 ? えええええっ!そんなー!だってマスターが想像以上の馬鹿力で飛び散らか…はいゴメンナサイ】
「よろしい」
 彼女は再び振り上げたモーニングスターを待機位置に戻し…。
「まったく、変に口だけは達者なんだから…。誰に似たのかしら…」
【私の創造主はマスターですよー、子は親に似ると言いますからきっとマスターに似たんでしょうね】

『どぐちゃっ!』

 再び数分後。

【すいません、もう潰さないで下さい。こんなナリをしていても痛いものは痛いので…】
 創造主でありマスターであるカナリアに『ソレ』はひたすら頭(?)を下げて謝っていた。
「だったら余計な事は口にしない!ホント、『カエデ』は物覚え悪いんだから…」
 だがカナリアに『カエデ』と呼ばれた『大きなスライム』(なんとなく♀らしい)は続ける。
【でもマスターが授業サボった時、変わりに受けたテストは十分合格点だった筈でしたけど…?】
「私より高い点数だったわよ…」
 そう言って凹むカナリア。orzな体勢で恨みがましい視線を『カエデ』に向ける…。
「おかげで次の授業の時、特別課題とか言われて上級実技に挑戦させられたわよ!」
【普段真面目に勉強してれば簡単でしたよ?授業をちゃんと聞いていないマスターが悪いんですー】
「だからそれがカエデの悪い所なのよっ!ちょっとは空気読んで行動しなさいって言ってるのっ!」




 この世界には魔法が存在している…。
 それらを極め、駆使する者は一般的に『魔法使い』と呼ばれていた。
 そして時が経つに連れて魔法は学問の一つへと昇華される。

 すなわち…。

 魔法学である…。




「さて諸君、魔法や魔術と呼ばれるモノには様々な種類がある事は知っての通りです。基本4大元素を使ってのエレメンタル系、それらの力の源となる精霊を駆使した精霊系…。そしてそこからの派生で生まれ魔法体系に組み込まれた光と闇、生と死の魔法。これらは主に神聖魔法や医術魔法。果ては戦術魔法として磨かれ数多の結果を生み出しました…。そして…」

 退屈な『基礎魔法学』の授業を聞きながら、カナリアは最後列の机に突っ伏して欠伸を噛み締める。
『もうやだー、退屈ー、研究棟に行って自由課題したーい』
 と、小さく愚痴をこぼしながら授業を真面目に聞かずに目を閉じる。そしてそんな彼女の足元から小声で…。
【マスター、授業中ですよ!寝たら駄目です。起きて下さい】
 カナリアの座るイスの下、そこに小さくなって鎮座している『スライム』こと『カエデ』が腕(?)を伸ばしてカナリアを揺さぶった。
『退屈ー、カエデー。替わりに授業受けといてー』
【ちょ!またですか?これで今月3回目ですよっ!】
『私、転移で研究棟行ってるからー、それじゃ後お願いー』
 そう言ってカナリアの姿は一瞬にしてその場から掻き消える。基本とか成績とか授業態度はからっきしなのに転移魔法等と言った高度な術を何故か自在に使えるのが彼女らしかった。
【うわーん!マスターのバカー!】
 カエデは恨みの念の篭った言葉をカナリアの消えたイスの上に向けて放ったが、当の本人はもう居ないので魔力カロリーの無駄使い以外の何物でもない。
 と、そこに…。
「カナリア君、この続きの古代語の説明文を現在語に訳して下さい」
 こう言う時に限って狙いすましたかのように教壇に立つ教授が問題を出してカナリアを指名する。
【は…!はい!】
 カエデは慌てて自身のその姿を『カナリア』そっくりに作り変えた。しかしイスの上に居なかった為に床から立ち上がってしまう。
「ん?どうかしたかね?」
 不思議に思った教授は『カナリア』(カエデ)にそう聞いた。
【あ…、あははは!ちょっと鉛筆を床に落としてしまいまして…】
 冷や汗交じりでとっさにウソを付く。
「ふむ、さ、早く訳して下さい」




 ここで説明すると、『大きなスライム』にしか見えない『カエデ』は、実はスライムでは無い…。
 その正体は、魔力流体金属(水銀では無い)と生きた細胞が交じり合った『シェイプシフター』と呼ばれる魔道生命体である。
【これでもすごい貴重な存在なのですのよ?】
 優秀な錬金魔術師が非常に長い歳月を掛けて生み出される『ソレ』は高い知能を持ちつつも性格はマスターに忠実。魔術では数十を越える様々な術の重ね掛けで初めて実現できるスキル『変身』を、その特殊な身体で簡単忠実に再現出来ると言う特技を持っていた。
 ちなみに、古代王朝など時の権力者達は影武者としてこの『シェイプシフター』を多数所持していたと文献には書かれている。
【しかし今は作れるアルケミストも殆ど居なくなり、さらに治安や政治力の向上で必要度は限りなく0に近いですー】
 それでも百年程前まではその特殊性、そして流通の少なさ故に超高額での取引がなされており、その為に王侯貴族やセレブの間では『沢山持っている事が富の証』として宝石や芸術品と同格の品として財宝庫行きも多かったとの事。
【それもニセモノや粗悪品の氾濫ですぐに廃れましたけどねー、あははは】

 ならば何故この『カエデ』はここに居るのだろう?

【それがですねー】
 話は一年程前に遡る…。カナリアが自宅(大きな屋敷)の裏庭にある死んだ祖父の趣味の部屋で見つけた『シェイプ…』の事が書かれた錬金術師の『文献』を見つけてしまったのが始まりであった。
 普段のカナリアは『いいかげん』『飽き性』『わがまま』『凶暴』と、貴族の娘らしからぬ性格なのだが、いざ『面白いモノ』を見つけた時の行動力は他人の追随を許さぬ程の突進力を持っていた。そんなカナリアによって見つけられたその『文献』は彼女の心をガッチリと掴むには十分であった訳で…。
 その日からカナリアの『シェイプシフター製造計画』が幕を開けたのは言うまでも無く…。
 有り余るお小遣いをフルに使い、資料を漁り、文献が書かれた当時には珍しいとされた材料(今でもそれなりに高額)をふんだんに消費しつつの3週間…。
【ここまでは良かったんですけど…】
 材料を全て調合し終え、後は精製本番と言った所で仕上げの為に『文献』を確認していたカナリアは最後に小さく書かれたある『一文』に気付いたのだ。
 そこにはこう書かれていた。
『…調合が終わり投入、後は一定の環境に保たれた空間で5年間、そして無事に一次精練された後に3年…』
 つまりどんなに早くても、完成するには8年以上の期間が必要とそこに書かれて居た訳で…。
【もちろん、飽き性のマスターがそんなに待てる訳も無く…】

「なによコレ!そんなに待てるわけないでしょ!」と、逆ギレしたカナリアは適当に材料投入(産業廃棄物のごとく)、作業をしていた離れの実験室を機材や資料ごと放棄、封印(勢いに任せて扉や窓全てに自ら板と釘で施工)してしまった。そしてそのままカナリアは日曜大工趣味に目覚めてしまい、桐のタンスを作るれるまでに技術を磨いてしまったのは別の話。

【問題はここからなんですよー】
 そんなこんなで数ヶ月が経過したある日の事、カナリア自身ですら忘れていた『実験室』に変化が起きていた。
 それと同時に、まるで神によって書かれたシナリオのように『実験室』に忘れ物があった事を思い出すカナリア。
【実験室が密封されていたおかげで、環境の一定化の方はクリアされていました】
 それに拍車をかける様に『文献』に書かれた内容の微妙な誤差(誤植)と間違った材料…。そしてカナリアのその時の勢い…。

【私が意識を発生させたのと、マスターがドアを蹴破って入って来たのがまったくの同時でしたー】

『すり込み』…、それは鳥の雛等が初めて見た動くものを『親』と認識する現象である…。

【そんな訳で、カナリア様が私のマスターなのです。以上説明終わりー】


「それで、何が説明終わったってーのよ…」
 授業が全て終わり、研究棟にカナリアを探しに来たカエデ(姿はカナリアのまま)はそこでまた厳しいツッコミをカナリアから受ける。
「あんた、また授業で教授もびっくりの超回答出したって噂を聞いたわよ?」
【あははー、思わず魔法学の限界に挑戦しちゃいました】
「だーかーらー…、それが空気読んでいない証だってーーーーーーーーーーの!」
 激しいチョップを連続でカエデに叩き込むカナリア。(何故かBGMに全日本プロレスのテーマが流れていた)
【痛い痛い痛い痛い!!!!】
 だがその姿は、カナリアがカナリアを激しくチョップしていると言う妙なモノである。
 そんな事が数秒続いたその時。
【!マスター、この研究室に誰かが来ます!】
 伝説の人物、J馬場のようなチョップ攻撃を受けながらも、人外の感知力でカエデがこの部屋に向かってやってくる人の気配を察知する。
「うわっ!カエデ!早く猫でも野良犬でも巨大ゲジゲジとか何でもいいから姿を変えなさい!」
【ゲジゲジは無いと思いますが、分かりましたー】
 どう言う訳か、カナリアは生み出したカエデの事を誰にも話しては居なかった…。もちろん過去の人物達も影武者として使用する為に秘密扱いはしていたが今の平和な世の中に影武者などは必要無いし、更に持っていても自慢するほどの価値は今の『シェイプシフター』には既に無かった…。
 不思議に思ったカエデは以前その旨をカナリアに聞いてみた所…。『だって、どう見たってアンタ失敗作じゃん、恥ずかしいじゃない』と、言われた挙句に何故か顔を真っ赤にしたカナリアに両のコメカミをグーでぐりぐりとされてしまった覚えがあった。(その時は人型に変わっていたのがカエデの不幸であった)
 やがて研究室の扉が開き…。
「あれ?先輩1人ですか?」
 入って来たのは1人の小柄な男子学生であった。背丈はカナリアよりも数センチ低くて、ぱっと見はまるで女の子に近い容姿…。名前は『ルーイ・シュトロ』。出自は平民ではあるが成績が優秀な為に奨学金制度を受けることが出来た幸運な生徒である。
ちなみに年齢はカナリアよりも2つ下で性格は優しく温厚。そのせいか女子生徒ならびに一部の男子生徒にも好意を寄せられている人物であった。
(ただし女子の反応は『可愛い小動物』。一部男子の反応は『ウホッ!可愛いボウヤ』ではあるが…)
 ちなみにカナリアが所属する魔道研究部(弱小)の数少ない部員の1人であり、カナリアにとって可愛い後輩の1人でもある。
 そしてそんな彼を前にしたカナリア。だがその態度には明らかに異変が起きていた。

「るるる…、ルーイ君、ごきげんよう!」
 真っ赤になって上擦った声を出し、モジモジと身体を意味不明にくねらせながらの挨拶…。
(【…マスター、気持ち悪いですよ…。何か悪いものでも食べましたか?】)
 床に擬態していたカエデは、カナリアだけに聞こえるようにそう囁く。

『ドゲシッ!ゲシッ!メキョス!』

 何時の間に履いたのだろうか?突然赤いピンヒールで激しくも華麗なタップを披露するカナリア。そんなカナリアを見たルーイは。
「先輩…?どうしたんですか?」
 不思議なモノを見るような表情でそう聞いてきた。
「え…?あ、あはは!丁度練習しようとしていた所なの!タップダンス同好会に勝負挑もうかどうとしようかなーとね!」
 あからさまに苦しい言い訳…。だがルーイは。
「えっと、そんな同好会があったのかどうかは初耳ですが、頑張って下さいね」
 と、眩しいまでの笑顔でそう言った。信じたのだ。
「うおっ!眩しっ!」
 それを見て思わず鼻を押さえるカナリア。まるで鼻血が出るのを我慢しているようでもある。
「そそそ、それよりもルーイ君、今日は部室に何用かなっ!今日は部活動は無い筈ぞよ?」
 鼻をハンカチで押さえながら聞くカナリアに彼は。
「はい、昨日部室に寄った時に忘れ物をしちゃいまして…。あ、あったあった。これです」
 そう言って机の引き出しから小さな小瓶を取り出した。
「えっと、それはこの前から作ってる…」
 カナリアの問いに、ルーイは瓶を振って中に入ってるオレンジ色をした霞のようなモノを窓からの光に透かす。
「はい、魔力結晶の元です」
 そして。
「これ、精練して固形化に成功したらルビーみたいな赤い結晶の綺麗な石になりますよね」
 と、にっこりと嬉しそうに微笑みながらルーイにカナリアは。
「そ、そうね…。で、綺麗な結晶を使って指輪にでもするのかしら?女の子が喜ぶわよ…ぐはっ!」
 思わず口に出た余計な一言に言った本人が軽く自爆。
(何言ってるの私!それじゃルーイ君に意中の人が居るみたいじゃないのよっ!)
 だがそんなカナリアの一言にルーイは。
「え?べべべ、別にそんなつもりは無くてデスね!ただ純粋に作ってみたいと言うか…」
 真っ赤になりつつ否定。だが…。
「…なるほど…、もし…すれば…喜ぶのかな…」
 と、小さく呟いたのをカナリアは聞き逃さなかった。
「そ、それでは先輩!用事があるので今日はこれで失礼します!」
 何かに急かされるかのごとくルーイが部室を出て行く。
「… … … …」
 そしてそれを呆然と眺めるカナリア…。
【…ふぅ…、いきなり私の上でストンピングなんてしないで下さいよー…ってマスター?】
 足元の床が少し盛り上がって不満をもらしたカエデはカナリアの様子がおかしい事に気が付いた。
【あの…、どうかしたんですか?】
『ガシッ!』
【ひゃうっ!?】
 突然襟首(?)を掴まれてカナリアの顔の真正面にまで吊り上げられるカエデ。
【ななな…、何ですか突然!?】
「…なさい」
【はい?】
 カナリアの表情は影になっていてよく分からないが、何やら不穏な空気だけは感じ取れる。
「ルーイ君の…」
 さっきまで居た男子生徒の名前。
【先程の彼がどうかしたんですか?】
 そして数秒の間が開いてからカナリアは吠えた。
「カエデ!今すぐルーイ君の身辺調査をしてきなさい!」



 仕事(?)が一つ増えた瞬間であった…。

コメント(2)

超が付くほど不定期に更新する予定(ぇ
世界の創造主がいると聞いて

某ろくご先生とかT樫先生みたいに書けばいいと思うよ!

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