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混沌図書館 深淵書庫コミュのエインへルヤル 12話

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【直衛艦隊】
 彼女と、その乗艦と…。

「とりあえずは無事な様子、じゃな?」
 そう言いつつ、俺とヘリントンの艦にゆっくりと近づく白い艦。
「えと…、ウェスタナさん?その艦は?」
 未確認と表示されている通り他に類を見ない形状…。その驚異的な性能は既存の機動戦闘艦すらも超えていた。
「あー、これはの…、その、あれだ」
 何故か言葉を濁すウェスタナ…。と、その時。
『後方の海賊艦隊より巡航ミサイル。数は12』
 高速で接近するミサイル。だが迎撃しようにも艦の数が足りなく、回避しようにも損害の為に機動力が落ちたままである。そしてあと1撃でも貰ったらヤバイぐらい艦の耐久力は減っていた…。それでも。
「回避運動しつつ危険度の大きいヤツから迎撃!」
 こうなれば後は運次第。敵の命中率ステータスが低い事を祈る。だが。
「私に任せて」
 唐突にウェスタナが俺達の盾になるように前方へと移動を始め。
「子機放出。防御展開」
 彼女の艦から幾つもの小さな物体が放出された。その数は30以上…。見た目はスラスターが付いた小型の単砲型ビームキャノンだ…。それらは小刻みに移動しながらウェスタナの艦の周りに展開し。
「撃て」
 と、短く告げたウェスタナの声と共にそれらが一斉にビームを放った。
「うわっ!」
 宙域を埋め尽くすビームの奔流。そして広がる撃墜されたミサイルの爆光。
「すっげぇ…」
 へリントンも俺も唖然としながらその光景を眺める。
『後方海賊艦隊、撤退を始めました』
 その光景を見て残った海賊もその戦力差に気付いたのだろう。形振り構わない方向転換で逃げていく。
「うん、逃げられるものならね」
 そしてそれを眺めながら、ウェスタナが意味深な台詞…。
『後方宙域全域に艦隊反応多数』
 索敵AIの報告。海賊艦隊の退路を塞ぐように現われたのは巨大な戦闘艦を軸とした大艦隊。
『艦種、ヴァルキリー直衛タイプ。所属陣営不明。未登録です』
「…は?」
 宙域に現われたそれは1隻でもボスクラスの強さを誇るヴァルキリー親衛艦と呼ばれるAI達であった。そしてその所属は報告の通り『未登録』…。
 いや待て、ヴァルキリー関連の勢力はゲームを始めた時からデータベースに登録されている筈だ。未登録な勢力なんてプレイヤー個人で組んだ弱小連合ぐらいだが…。
 因みにヴァルキリーの存在する公式勢力は中央に位置する最大勢力『ラルフィドローグ連合』を始め、南方『マールグリュース宙域民族』、そして北方の『ディーダ帝国領』と東方『月照皇国』、辺境宙域を拠点とした『ミクステルテ放浪船団』の5つだけである…。それなのに未登録のヴァルキリー艦隊と言う事は…。
『ヴァルキリー直衛艦隊、攻撃を開始しました』
 索敵AIが戦況の報告を始める…。いや、もはやそれは戦況とは言わない。艦隊による攻撃の前に海賊艦隊は一瞬で消え去ったのだから。
「さてと、これで色々と終わりじゃの」
 画面の中のウェスタナがこちらを向く。
「紅夜君、それにヘリントン君」
 神妙な顔。
「友達になったばかりだけど…、これでお別れ」
 俺とヘリントンのステータス画面が立ち上げてもいないのに突然起動した。
「え?何?何なんだコレ?」
 友録が勝手に開きスクロール、そしてウェスタナの欄でスクロールが止まる。
「本当は誰とも友録なんかしたら駄目だったんじゃが、君達みたいな面白いプレイヤーと知り合えたからね」
 詳細画面が開き、カーソルが『編集』にポイント、友録削除がクリックされ…。
「おいおいおいおい!!!何だよコレ!何で勝手に動くんだ!」
 俺達がパニくる中、ウェスタナは軽く手を振って。
「楽しかったよ」
 そう言うと彼女の艦が動き出す。
「おい紅夜、直衛艦が」
 気が付けばヴァルキリー直衛艦隊はウェスタナの艦を迎えるように進路を開けて待っていた。まさかまさかまさか…。
「ウェスタナ!」
 直衛艦隊と合流した彼女を呼び止める。
「うん、君達の想像通りだよ」
 ウェスタナはニッコリと笑顔で答え。
「またね」
 そして、彼女は艦隊と共にこの宙域から消えた…。

「… … …」
「… … …」

 後に残されたのは、俺とヘリントンのボロボロになった艦だけであった。

「なぁ、紅夜」
「ん?」
 へリントンが神妙な口調で俺に言う。
「また、会えるのかな?」
「…またねって言ったんだから、会えるんじゃねーの?」
 そう言って俺達は目的地に行く事無くカルバルーンに引き返し、その日はお互いログアウトする事にした…。

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