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mixi小説(手探り更新作品集)コミュの炎の記憶【礼の記憶】

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礼の幼少期から
輝美の事件が起こるまでの回想です。

彼の人間性が形成される過程とか
彼が心理学に取り組むきっかけだとか
その辺りを描いていきたいと思います。

コメント(4)

1984年 春

【京都】


俺は昔からいつも大人たちの言うことを
なんとなく理解はしていたんだと思う。

不思議なことに
子供ながらにそれは普通の【子供】ではないと
なんとなく理解はしていたんだと思う。

ただなんとなくそう思うだけ・・・

本当は知っていてはいけないこと

大人たちに知られてはいけない
大人たちを知ってはいけない

そう言い聞かせているうちにも
それはどんどんと大きくなっていって

自分でも諦めていた

それが自分だから
それに気がつかないふりをしてきた

だってこんなこと知られたら
誰だって俺のことを
特別な目で見るだろう

そんなことには耐えられなかった
だから必至に消えろと願った
こんなものいらないと思っていた・・・

そう・・・あの時までは・・・




1984年 3月10日 午前11時25分


俺は窓際の自分の席で
黒板にチョークを叩きつける音を聞きながら
ぼんやりと校庭を眺めていた。

とくに理由はなかった
ただ・・・土曜日の昼前のこの時間は
どうにも勉強する気になれない。
ただ・・・それだけだった。


校庭には今は誰もいない。
ただ埃が舞い散らないように粘土質の高い砂で覆われた
子供にとってはそこそこ広いといえる地面が
見下ろした校舎の入り口から正門のあたりまで続くだけ。
空は透き通った青で雲ひとつなく
校庭の白い地面を照らしている。
そのせいか一層に校庭が広く大きく感じられた。


俺は心の中で
校庭のキャンバスに絵を描くことに没頭していた。


大きなキャンバスは
次々といろんなもので埋め尽くされてしまう。


首の短いキリン
鼻のないゾウ
羽のないコトリ
足のないライオン
瞳のないネコ
そんな何か足りない動物たちで
校庭が埋め尽くされていく。


不思議な世界
へんてこな動物園
その中の中心に
たった一人【正常】な生き物がいた

そう思っているのは自分だけなのに
それに気がつかないフリをしたいたそいつは
いつのまにか孤立していた。


そしていつしか
周囲の動物たちから
恐れられ、嫌われて、そして敵対されることになる。


最初に首に噛み付かれた

次に鼻を潰された

羽のかわりに両手を失った

足はいつの間にか食われてしまった

そして瞳はいつのまにか見えなくなっていた


暗くなった世界は
そのまま校庭を黒く埋め尽くしてしまう。




そんな妄想が終わる頃には
4時限目終了のチャイムが鳴っていた。
1984年 3月10日 午前12時05分



授業が終わってから放課後のホームルームの時間が
いつもより長引いてしまったので帰るのが遅くなってしまった。


なにも人の時間拘束してまであんなこと話し合わなくてもいいのになぁ・・・


今日のホームルームは特に最悪。
クラスの女子にやたらうるさいのがいて
クラスメイトたちの細かい些細なことをいちいち取り上げては
謝罪しろだの改めろだのと騒いでいたようだけど
それに関わっていない人間にとってはどうでもいいことだった。
その当人と自分と担任だけ残っていくらでも話し合ってくれればいい・・・
それで時間を拘束されてしまうこちらとしてはいい迷惑だ。


といって・・・
人と不必要に関わろうとすることをやめた自分にとって
そんなことを言い出すことが出来るわけもなく
まぁどうせ俺がそんなことを言い出したところで
また文句で返されて長引く結果になるだけだろうから
その間もいつものように校庭のキャンバスに向かって
妄想することに没頭はしていたんだが。


しかしそれがよくなかったらしい。
例の女子生徒が俺に向かって
ホームルーム中に不真面目だと言い出したものだから
今までその女子に向けられていた怒りや煩わしさは
突然俺に方向を変えて向けられることになった。
まぁたしかに・・・
普段から良好な授業態度ではなかったかもしれないが
そこに担任まで混ざって突然裁判まがいのことをされても
驚いてしまうのを通り越して呆れるしかなかったが。


いつのまにか俺は教壇の前に立たされて
クラスメイトたちの有罪コールを受けることになってしまった。


冗談じゃない
俺はこんな目立ってはいけない
さっさと家に帰って一人になりたいんだ


そう思っていると
いつのまにかみんなの【声】が聞こえてきてしまった。


いやだ・・・
知りたくない!


しかし【声】は俺の中へどんどんと流れてくる



○○『なんだよあいつ・・・いつも気取っててきにいらねぇな。』
○○『いやだぁ・・・変なやつ・・・もうあいつのせいで午後のドラマ見れないし!』
○○『なんで黙ってんだよ、さっさと帰らせてくれよ・・・もう!』
○○『あぁ〜あ・・・あんなやつ【消えればいいのに】』


やめろ・・・俺がなにしたってんだよ・・・
なんでみんなそんなこと考えるんだよ・・・
最初はあの女に向けて【言っていた】ことじゃないか
なんで俺を攻撃するんだよ・・・!
だから関わらないようにしていたのに
だからいつも一人だったのに


それすらも許してくれないのか



そして俺は
教室を飛び出していった。


俺は怖かったんだ


周りが
じゃない


自分が一番怖かった


だってこんなの普通じゃない


一番わかりたくないことを
わかってしまう力なんて


そんなのほしくなかった・・・・・


いつも誰とでも笑顔で接してるやつだって
こころの中はまっくろだ
墨汁を撒き散らしたみたいに
相手への悪意でいっぱいじゃないか


なんでだよ?
なんでそんな顔でいられるんだよ?


うそつき


珍しく俺に声をかけてきた担任だって
内心は俺のことを・・・
【消えて欲しい】って思ってるんだ
めんどくさい・・・もう相手したくないって
そんなことわかってるさ
最初からお前の考えなんて
見たくないけど見えてたんだ


うそつき


うそつき
ウソツキ
うそつき
ウソツキ
うそつき
ウソツキ
うそつき
ウソツキ
うそつき
ウソツキ
うそつき
ウソツキ
うそつき
ウソツキ
うそつき
ウソツキ
うそつき
ウソツキ


みんなうそばっかりじゃないか!!!!!



そんなことは
気がつきたくなかったんだ・・・


みんなと同じように
知らないままだったらどんなにか・・・




俺はいつのまにか学校を飛び出していた


いいんだ
みんなからああいうふうに思われてたのは知ってた


それが辛くて逃げ出したわけじゃないといったら
嘘になってしまうけど・・・


あれだけ一度の多くの【心を聞いた】のは
久しぶりだったから・・・


とても耐え切れなかったんだ




礼『あそこなら・・・ひとりになれる。』


1984年 3月10日 午前14時15分


俺は秘密基地にいた。

といっても誰もいない廃墟ビルみたいだけど
俺にとっては貴重な・・・
誰の【心】も聞こえてこない
一人きりになれる場所だ。


ここにいるときだけは
かなしくならない

ここにいれば
なにもこわくない

みにくいひとのこころも
みえない・・・きこえない・・・


これでいいんだ・・・
ひとりになれれば・・・それで・・・。

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