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mixi小説(手探り更新作品集)コミュの炎の記憶【京都編】

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連載小説
炎の記憶【京都編】です。
今回から主人公の視点が
輝美から礼に変わります。
まずは序章での輝美が夢を見た日から
礼の視点で振り返っていきます。


登場人物

主人公?
神藤 輝美【シンドウ テルミ】(17)高校生

5年前の火事で両親と最愛の弟を失い、自信も心と顔に傷を負っている
父親の親友である綺堂夫妻に養子として迎え入れられ、現在は少しずつではあるが落ち着きを取り戻している
綺堂夫妻の一人息子 礼 と交際関係にあり、夫妻からも認められている


準主人公(予定?)
神藤 輝明 【シンドウ テルアキ】(??)???

5年前の火災で燃え尽きて死んでしまったと言われている、輝美の弟
幼い頃から姉の輝美のことを慕い、なんでも真似をしているうちに女の子みたいな性格と容貌に・・・?
しかし本人はそのことをすごく気にしていたようだ
5年経過してなお、輝美の夢に現れては、彼女に救いを求め続けている
これはただの夢なのか・・・それとも・・・?
最近になって今までの夢とは違った一面を見せ始めるが・・・


主人公の恋人
綺堂 礼 【キドウ レイ】

輝美とは彼女が小学二年生のころからの知り合いで、当時は時々会う親戚みたいな印象しかなかったが
輝美が火災で家族を失ってからは、急激に意識しはじめるようになった
その最大の理由は、自身が幼い頃に火災で母親を亡くしていることである
幼いころは両親とともに京都で暮らしていたので、今でも関西弁が抜けない
本人は関西弁を直すつもりは全くないらしい
礼にとって関西弁で話すということは、幼い頃の楽しい家族の思い出を残すことにも繋がっているのかもしれない


礼の実の父親
綺堂 清二 【キドウ セイジ】

輝美の父親、礼の亡くなった母(由愛)、再婚相手の彩華、夢路、とは中学からの長い付き合いである
とくに輝美の父とは兄弟のように仲が良く、遠くへ引っ越すことになってもずっと交流があったという
由愛が亡くなってからは非常に落ち込んで、一時は引きこもって廃人同然の状態であったが
彩華が献身的に世話をし、幼い息子が必死に無理をして元気付けてくれたおかげで立ち直る
見た目はしっかりした人物に見えるが、本当は大切なものを失うと急にもろくなってしまうタイプである
そして事故からしばらく後、息子の礼が非常によく懐いていたこともあって
二人は再婚することになるが・・・それを互いの両親から反対されて勘当されてしまう
しかし清二は自分にはどうしても彩華がいないといけない・・・そう決心して
長く暮らしてきた町を捨てて神藤家の暮らすこの町へ移り住むことになる


礼の実の母親
綺堂 由愛 【キドウ ユメ】(旧姓=藍原 由愛)
夢路の実の妹で、非常に兄を慕っていた
遠いイタリアに留学することになったときは、とても落ち込んでいたが
すぐ近くにはいつも清二が寄り添って支えていてくれたという
すぐに二人の関係は進み、仲間からは祝福されるが、互いの両親からは反対されていた
しかし5年間何度も説得を続けて、最終的には交際を認めてもらうことに成功
結婚後に息子の礼を出産し、それから数年は幸せな時を過ごす
しかし、礼が小学校2年生のときに悲劇が起こる・・・・・


由愛の兄
藍原 夢路 【アイハラ ユメジ】
イタリアへ留学して一人離れてしまうまでは、このメンバーの中でリーダー的存在であった
幼い頃にある事件で両親を失い、妹の由愛と共に孤児院で幼少期を過ごす
しかし、当時としては裕福であった遠坂家から、跡取りとして引き取られることに
最初は夢路一人だけという話であったが、夢路本人が由愛と一緒でないとどうしても嫌だと
意見を譲らなかったので、兄妹共に引き取られることになる


清二の再婚相手
綺堂 彩華【キドウ アヤカ】(旧姓=遠坂 彩華)

とある企業の社長、遠坂氏の一人娘
当時としては裕福な生活環境にありながら、人を見下したりしない真っ直ぐな性格の少女であった
父親からは人一倍の愛情を注がれて育ってはいたが、娘であるために跡取りとなることは出来ないと言われ
本人は長い間そのことを気に病んでいたそうだ
跡取りとして藍原兄妹を迎えたときは、誰よりも一番喜んだのだが・・・
後の事件の一件で、夢路と共に勘当されてしまう


礼の恩師
古坂 円蔵【コサカ エンゾウ】

礼の恩師であり、礼の治療を手がけたカウンセラー
現在礼が通っている大学の心理学教授でもあり
自身が開院している病院の院長でもある
【夢】に関する研究をしていて、現在は礼とともに活動しているようだ
その他については、現在のところ謎である
彼の詳細については、後の物語で語られることになるだろう



コメント(15)

あれから私たちは、京都への旅行に向けて準備にとりかかった
私は学校を休む手続きを済ませ、礼も近くの心療医院へのバイトを休む手続きを済ませた

おじ様とおば様は今は自営業なので休みの都合はなんとかなるそうだ




そして京都へと旅立つ前日・・・
私はまたあの夢を見てしまった。







【夢の世界】



私は夢の中で、身動きが全くとれない状態だった

いいえ・・・正確に言うなら・・・動いた瞬間に身体中を激痛が走るのだ




夢は前回と続いているらしい
私は未だに全身を炎で焼かれているような感覚が残っていた
痛い・・・猛烈な熱さはそのまま痛みに変わって途絶えることなく私を蝕んでいく

しかしなぜか私は・・・その苦しみの中で気が狂うこともなく
冷静にこんなことを考えていられるのだ

なんで・・・?
私は今にも泣きたくて・・・でももう涙を流す瞳さえも焼かれてしまって
私は今にも叫びたくて・・・でももう声を出す喉さえも潰されてしまって
私は今にも狂いたくて・・・でももうそんな気持さえも無くしてしまって


そして・・・どこかから声が聞こえた


おかしいな・・・私の耳も・・・もう無くなっているはずなのに



『痛い・・熱イ・・いタイ・・熱・・・イ・・・』



どこかで聞いたことのある声・・・・・



『やめて・・もう・・・ガ・・マン・・できな・・』


これは・・・いつも夢で聞いていた・・・テルの言葉・・・・・


『もぅ・・ムリだ・・から・・』



ちがう・・・これは・・・テルの声じゃない・・・・


『助け・・テ・・・』



これは・・・



『ごめ・・な・・・ぃ・・・』

『モウ・・・コロ・・・テ・・・』





そうか・・・これは・・・



『たすけて・・・たすけテ・・タス・・ケ・・・』



私が・・・叫んでいた・・・
あの日の・・・・・記憶



『たすけ・・・て・・・・・』



 たすけ・・・て・・・・・







1998年 11月24日 4時30分



そうして、私は目を覚ました



輝美『・・・・・ふぅ・・・・・。』


今の夢は・・・たしか・・・
この額の傷跡が残されたときの・・・・・


でも・・・それ以上思い出そうとしても
何も思い出せなかった・・・



輝美『う・・・・っ!』



もう何も感じないはずの・・・この火傷の跡・・・・・
そんなはずはないのに・・・鋭い痛みを感じたような気がした

私はベッドから起き上がると、部屋の中にある姿見鏡の前に立って
前髪をかきあげた



輝美『これ・・・は・・・・・?』


一瞬傷跡が赤く腫上っているように見えた・・・
でももちろんそれは気のせいで、そこには少し黒ずんだ染みのようなものが
広がっているだけだった・・・

私のこの傷跡は結構広い
前髪を下ろしていれば見えないんだけど・・・
それでもその部分は目に入るとすごく気になってしまうくらいに・・・目立つ
ファンデーションとかで誤魔化しても完全には隠せないんだよな・・・

でもこれは・・・私が生き抜いた証でもあるんだ

私は傷を何度かなでて・・・そして鏡に向かって呟いた


輝美『私は・・・生きるんだ!』


そう・・・生きていかなければならないんだ・・・絶対に



そして・・・明日はとうとうあの事件から5年・・・
そして・・・綺堂家のけじめをつけに行く・・・

私に何ができるかわかんないけど・・・
今はただ祈ろう・・・家族の幸せを・・・そして・・・テルの・・・・・
視点切り替え

輝美⇒礼


【約束の朝】



1998年 11月18日 PM9時30分


・・・もう朝か


いつもと変わらない・・・大学のある一室
周りには今は使ってない机や、無機質な金属製の棚が並んでいる
俺はその下手の片隅に置かれている簡易ベッドの上で
薄いカーテン越しに見える日差しを目を細めながら眺めていた。



俺の名前は 綺堂 礼
大学2回生で、今は心理学の勉強をしている

実家が近いので、一応そこで暮らしてはいるんやけど
勉強と仕事が忙しくて全然帰れへんから
週のほとんどはこの研究室兼物置の片隅で眠っとるってわけやけど・・・



礼『さすがにこう毎日続くと・・・身体に応えるわなぁ・・・』



俺は今、あるテーマについて研究してる

それは【夢】について・・・
【夢】っちゅうんは基本的には、人間の記憶の・・・
まぁ整理整頓みたいなもんで、夢の中で人は今まであったこととこれから起こりうることを
全部放り出して綺麗に並べなおすってわけや

夢を見るときは、人は記憶の回路を全て開いて、みんな一度ごちゃまぜになってしまう
その中のひとつひとつを繋ぎ合わせて、あらゆる可能性を導き出して、明日からに備える
また今日までに経験したことで、本当に必要な記憶だけを常に使える位置へと並べなおす

これが俺の師匠とも言うべき・・・先生の理論や


俺は今この理論の研究で
【夢】によって未来を予測する方法を開発しようとしている

人に話したら、何を馬鹿なことをと笑われるかもしれへんけど・・・
【俺たち】は今【予知夢】を誰にでも使える現実のものにするために日夜研究しているんや





礼『とはいっても・・・全然進展してへんのやけどなぁ・・・』


一人ぼやきつつ、俺は教室を出て、大学食堂へと向かった



1998年 11月18日 PM9時45分

【大学食堂内】


礼『うぃ〜っす。』


俺は食堂に入ると、いつも通りの挨拶を交わし、いつもの席へ向かった



おばちゃん『あら礼くん、今日はちょっと遅かったなぁ。』

礼『あぁ、ちょっと昨日はバイトでちょっと遅くなったしな、いつもの出してくれるか?』

おばちゃん『はいはい、たまご丼ならもう出来てるよ、はいどうぞ。』



さすがおばちゃんや・・・
俺が食堂に入って挨拶を交わしている間に
もう作り始めていたらしい。



礼『お、ありがと〜。ほんじゃまぁいただきまっす!』



俺はいつも通りのメニューをいつも通り一息で平らげ、空いた器をおばちゃんに返す




おばちゃん『あいかわらず早いねぇ、せっかくだからもっと味わってほしいもんだけど?』

礼【あぁすまん、でもまだ出かけるまでに見たい本もあるし堪忍な、んじゃごっそさん!】



そういって俺は、おばちゃんに代金の240円を渡して食堂を出ようとした
すると・・・


『やぁ、礼君。』

礼『あぁ・・・先生。』



食堂の出入り口からは、心理学の教授で、俺の師匠でもある
古坂 円蔵 教授が入ってくるところだった。



古坂『おっと・・・君はもう食事が終わってしまったのか、引き止めてすまなかった。』

礼『ええですよ、まだ出かけるには早いし、よかったらご一緒させてください。』

古坂『でも既に食べ終わったんじゃなかったかな?』

礼『そうですけど・・・お食事中にもしお邪魔でなければちょっと聞きたいところがあるんで・・・』

古坂『うん?授業でわからないことがあったかな?熱心なのはいいことだけど、今日明日と他にも用事はあるだろうし
また今度授業の時に質問してくれたらいいんだよ?』

礼『それはそうなんやけど・・・最近先生あんまりこっちに戻れへんみたいやから、こういう機会に
お話したいと思いまして。』

古坂『そうか、わかった。でも私も約束があるんで一時間しかとれないけどいいかな?』

礼『ありがとうございます!それでも充分・・・やないけどたとえ一時間でも嬉しいです!お願いします。』




古坂先生は、この大学で心理学を専攻している。
俺の師匠であり・・・恩人や。

俺は小さいころに、母親を亡くした。
そのこと自体はもちろんとても悲しいことやったけど
それはいつか・・・子供ながらに吹っ切れることだと思っていた。
でもあかんかった・・・やっぱり自分には負担が大きすぎたのか
俺は気がついたら心因性のチック症状で苦しんでいた。
チック症状というんは、心理的なストレスから発生するもので
そうすることによって心の平静を保とうとする働きや。
俺の場合は無意識に首を左右に振ってしまうのと
顔中の痙攣が止まらなくって、上手く言葉を発することも出来なかった。

そりゃぁ小さな子供にとっては相当負担やったんやろうなぁ・・・
そんな状態の俺を救ってくれたのが、ここにいる古坂先生やった。

最初はどうしても止まらなかったチックも、先生のおかげで意識して止めることが出来るようになった。
でも最初の一年は意識を抜くとどうしても首を振ってしまう。
顔の痙攣のせいで、このままだと表情が固まってそのまま残ってしまうんじゃないかと思った。

それでも根気よく、先生は俺の治療をしてくれた。
治療といっても、話をして、聞いて、先生の前で泣いたり、笑わされたり・・・
そんな当たり前のことやったけど・・・親父が引きこもっていた俺にとっては
先生だけが心を許せる唯一の存在となっていた。

そして、今では完全に・・・とまではいかないまでも、普段の生活では支障がないほどに
回復している。

実は、この大学に入学したのも先生に恩返し出来ることを探すためやった。
そして、今俺はそのために、先生の手伝いをしてる・・・ってわけやな。





そして話が終わった頃には、約束の時間がもうすぐに迫っていた




礼『うぁ・・・やっばいなぁ・・・・・』




ついつい話し込んでいるうちに30分もオーバーしてしまった
輝美のやつ・・・怒るかなぁ・・・





1998年 11月18日 PM12時30分


さてと・・・30分も遅刻してしまったけど・・・
輝美のやつ・・・どこにおるんやろう?

・・・もしかしてあいつも遅刻か?
だとしたら珍しいなぁ・・・?


1998年 11月18日 PM12時40分


やっぱりあいつも遅刻か・・・はぁ・・助かった!
前回も講義が長引いて待たせてもうたしなぁ・・・今日あいつより先に来てな
何か奢らされてたかもしれへんし・・・
でも・・・珍しいなぁ・・ちょっと心配なってきた・・・って?


お!あんなところにおった!



そして人ごみを縫うように歩いて行き
俺は輝美のもとへ走りよった。



礼『お〜い、てるみ〜〜〜!』


お!やっとこっちに気がつきよった。


礼『ったく・・・お前が遅刻するなんて珍しいやないかぁ?』

輝美『ごめんなさぁい・・・なんか今朝は夢みちゃって寝坊しちゃってぇ・・・』




夢?輝美が見るゆうたらあの夢しかないんちゃうかなぁ?
・・・ここはあんまり突っ込まんほうがよさそうやな。



礼『まぁええけどな・・・んで今日は平日やっていうのに急にどないしたん?』


まぁ・・・そろそろあの日やから大体わかってるけどな


輝美『うん・・・ほら・・・もうすぐみんなの命日だからさぁ、今日のうちに会って話しとこうと思って』

礼『あぁ・・・そういえばそうやったなぁ・・・もうそんな時期かぁ』


こいつの名前は
神藤 輝美 俺の幼馴染で・・・恋人やな
ちっこい頃から親同士が仲良うてよく遊びに来とった・・・
5年前のあんな事件があるまではな

事件っちゅうんは5年前、こいつの住んでたマンションが突然の火災で
火元の階がほぼ全焼・・・そしてこいつの家族が全員亡くなっとる
目の前で両親や弟を亡くして・・・助かったもんの気持ちは
少なくとも他の奴よりかはわかるつもりや
そして、入院して落ち込んでいるこいつの姿を見たとき俺は
こいつをどうしても助けてやりたい・・・あの時の自分のように救ってやりたいと
そう思うようになった

そして、こいつが養子としてうちに引き取られることになってから
俺は輝美の傍から出来るだけ離れへんかった
必死でこいつを笑わせようとしてた
いつの間にかその気持ちは・・・愛情に変わっていった

輝美には内緒やったけど、そのことがおかんにバレた時に
一回反対された
おかんの気持ちもわからへんでもなかったけど、当時の俺はそれに真っ向から反抗した

すぐに認めてはくれた・・・悪かったとも謝ってはくれた
でもおかんには・・・まだちゃんと理由を聞いていない
もしかしたらまだ・・・何か俺に言っていないことがあるんちゃうかなと・・・


いや・・・俺の話はどうでもよかったな


とにかく5年間で、こいつはずいぶんと強くなった思うわ・・・
最初の一年なんて、俺ですらほとんど話せなかったくらいやしな・・・
でもうちに引き取られて、一緒に生活するうちに
ちょっとしたアクシデントがあって・・・
それがきっかけで気をゆるしてくれたらしい


とにかく、今俺にとっては研究と同じくらい大事な存在やってことや

・・・研究と同じってのはこいつには口が裂けても言えへんけどな




5年か・・・あっという間やった・・・




礼『そっかぁ〜、それで今年はどないするん?』

輝美『う〜ん・・・今年はあのマンションも改装工事で今入れなくなっちゃってるからさぁ』



そうや・・・例のマンションっていうのが
今は急に買い手が見つかって改装工事で入られへんのやった



それにしてもあんな事件があったマンションを
解体もせずによく今まで放置してたよなぁ・・・




礼『今年になってなんでかなぁ・・・今まで不吉な物件だってことでどんなに安くても買い手なかったのになぁ』

輝美『なんでもアメリカかなんかのオーナーが日本での仕事に使うとかなんとか』

礼『なんやはっきりせぇへんなぁ〜、いくら調べてみてもよく教えてもらえへんかったし』

輝美『とにかく残念だけど・・・行けないものはしょうがないから今年は違うことしようと思ってさ』




まぁ輝美にとってはあそこは消えたほうがええのかもしれへんな
ところで・・・やりたいことってなんやろ?




輝美『今年はさぁ・・・家族で約束してたけど出来なかったことを、おじ様やおば様と一緒に叶えたくて』

礼『ん?そんなん初めて聞いたなぁ・・・家族旅行かなんかでも計画してたんか?』

輝美『うん・・・今年になって思い出したんだけど、実は事件の一ヶ月前に秋になったらみんなで紅葉を見に行こうって』

礼『へぇ〜、でもなんで今更?』

輝美『テルがとっても楽しみにしてたから・・・』

礼『そっかぁ〜、よし!それなら親父やおかんたちにも俺から相談してみるわ』

輝美『ありがとぉ〜、それじゃよろしくね!』


そういって俺たちは別れ
俺はちょっと遅めの昼食を済ませた後学校へと戻った

1998年 11月18日 PM13時58分

【大学内図書室】


俺は大学に戻ると、さっそく旅行関連の本を探し始めた。
輝美のやつ・・・事故から今までずっと、旅行なんかにも
行ったことあらへんやろうし・・・
今回の旅行で、未だに縛られてる家族への後悔も
うまく断ち切ってくれたらええんやけどな・・・。


古坂『おや?礼君じゃないか。』


何冊目かの旅行雑誌に目を通していたとき
先生に声をかけられた。
気がつかへんかった・・・こんな近くにいはったんや・・・



礼『あぁ、先生・・・こんなところでどうしはったんですか?』

古坂『そりゃこっちの台詞だよ、君こそ図書室なんて珍しいね。』



そういやぁ・・・図書室にある心理学関係の資料は
ほとんど同じもんが俺の部屋(といっても使われてない教室だが)
にあるんやったなぁ・・・
そりゃいつもの俺やったらこんなとこ用事ないわな。


礼『いえ、ちょっと連れと一緒に紅葉を見に行こう思いまして・・・。
ちょっと資料とかないかなぁ・・・と。』

古坂『ほう・・・この時期に紅葉か、たしかに今は見ごろだろうしねぇ。
でもいつも研究にしか興味がない君にしては尚更珍しいね。』

礼『ええまあ・・・ちょっと今回は特別でして。
それより先生はどうしてここに?』

古坂『僕だってたまには文学作品でも読みたくなるときがあるさ。
精神学の面においても、先人の文学作品に目を通すのはいい勉強になる。』

礼『あぁ・・なるほど、ほんまにさすがですねぇ!』

古坂『・・・なんてね、本当はここで待ち合わせをして
たった今相手との話が終わったところなんだよ。
まぁついでだから立ち寄ったついでに、何か借りていくとは思うけどね。』

礼『はは・・・先生も相変わらずやなぁ。』
古坂『そうそう、紅葉を見に行くという話だったね。』


先生はそう言うと、なにやら手帳を開き何かを確認した。


古坂『紅葉を見にいくって・・・どこにする気だい?』

礼『えっと・・・京都にしよう思ってます。』

古坂『京都・・・そうか・・・いやしかし・・・』


あぁ・・・そうか、先生はおかんのことも知ってるんやったなぁ・・・。


古坂『君は大丈夫なのかい?京都にはあの時の・・・』


礼『ええ・・・わかってます。
でも・・・いつまでもケジメつけないわけにもいかへんし・・・
それにこれは輝美の家族の思い出を叶えるためでもあるんです。』

古坂『そうか・・・でも他にも紅葉の綺麗なところはいくらでも・・・』

礼『ええ・・・でもあいつにもそろそろ俺の過去を話してやりたいし
俺ら家族のケジメのためにも、この機会に一回戻っとくのもええと思って。』

古坂『う〜ん・・・そうか・・・まぁ君がいいというのなら止めないが。』



古坂先生は俺ら家族の事故のことも
輝美の家族のことも知っている。
だから、紅葉と聞いてすぐに京都のことを思い出したんやろう。
それですぐに確認してくれはったんやな。
古坂『京都か・・・そういえば・・・』


古坂先生は何か思い出したように、手帳を開いて何かを確認した。



古坂『京都に旅行に行くとして、どこに宿泊するかは決まっているのかい?』

礼『いえ・・・ちょっとまだはっきりとは決まってないです。』

古坂『そうか・・・でも今の時期から宿の予約をとろうと思っても大変だろう?』

礼『ええ・・正直それが気にはなってたんやけど・・・まぁなんとななるかなぁ?って・・・』

古坂『実は私の友人が京都で民宿を経営しているんだが、よかったら今から空きがないか相談してみようか?』

礼『ええ?!いや・・・そうしていただけるとほんまありがたいんですけど
そんなご迷惑おかけして・・・ええんですか?』

古坂『いやいや、まだどうなるかわからないけどね。
でもまぁ聞くだけ聞いてみたほうがいいと思って・・・それでは
君が今日仕事から帰るまでに電話して確認しておいてあげるよ。
嵐山へはバスで行ける場所にあるから、そんなに不便でもないと思うよ。』

礼『ありがとうございます!それじゃぁよろしくおねがいします。』



そういって俺たちは別れ
俺は今日の仕事へと向かった。

1998年 11月18日 PM16時15分


俺は先生と別れてから
大学から少し離れたところにある
病院へと向かって車を飛ばしている。
病院へは車で小一時間程の距離がある。
俺は車の中で、輝美と俺たち家族のことを
これからどうしたらええんか考えていた。


礼『輝美には・・・やっぱり俺たちの本当の家族のことを
知っておいてもらったほうがいいやろうなぁ。』


輝美はまだ俺たち家族の本当の姿を知らない。
もちろんちょっと前までの輝美には
そんなこと聞かせられる余裕なんてなかったし
俺だって本当は聞かせなくて済むのであれば
今更口にしたいとは思っていないんが本音や。
でも・・・・・


そんなことを考えているうちに
病院に到着していた。
1998年 11月18日 PM16時35分
【古坂心療クリニック】


礼『おはようございます。』

看護婦『あぁ綺堂さん、おはようございます。』


俺は今日もちょっと余裕をもって
古坂心療クリニックへと到着した。

古坂心療クリニックは
開院してからもう20年以上にはなるけど
内装は未だに手入れが行き届いていて
とてもそんなに時が経過しているようには見えへん。
それにその時代の流行に合わせて
内装や小物などを取り替えているので
年寄りばかりでなく、若いうちに精神的に負担を抱えている
俺みたいな境遇の人でも、気軽にくつろげるように
色々と工夫がされていた。
ここの院長の古坂先生は
その時代に合わせた患者のスタイルに合わせて
こういう工夫を凝らすのがとても得意みたいやな。
あんまり見た目も病院らしくしないで
俺は白衣は上から着ているけど
それ以外は別に普通の服装やし
患者のタイプに合わせて白衣を着ないこともある。
ナースもいかにもな感じのナースキャップを被っておらず
上着に白い短めの白衣を羽織っているだけで
それがなかったら普通の格好と大差ないと思う。
患者の中にははっきりとした差別感を
極端に恐れる人も結構多いから
このやり方は正しいと俺も思う。

ここでは俺は
アルバイトとは言っても
わりと権限が与えられている。
といってもちゃんとした医師免許は
まだもってないんやけど・・・

先生曰く
古坂『ちゃんとした知識が伴っていて、これ以上に信頼できるパートナー
は他にはいない。免許は後からでもとれるが、それまでの間にこの才能を
使わずに眠らせておくのは君のためにも本来それで救えるはずの患者達の
ためにも良いことではないと僕は思う。』

ということらしい。
かといってこのまま無免許で手伝い続けるわけにもいかへんから
今は来年の免許取得に向けて猛勉強してるんやけど・・・
それでまぁ大学に半ば泊り込んでるってわけやな。
俺自身も先生から大きな信頼を受けているのは嬉しいことやし
俺みたいに心に傷を負った人を救えるなら黙ってないで
ちゃんと自分の力を生かしたいって思う。
といってもカウンセリング専門で
医薬品を出したりとかは、ここにいるナース(心療内科医の免許取得済み)
の許可がないと出来ないんやけどな。
だから表向きは俺がナースマンで、ナースが心療内科医という
ちょっとややこしい状態なんやけど・・・
実態は俺がカウンセリングをして、ナースが薬を処方していたりする。
看護婦『今日も院長先生は一緒じゃないんですか?』

礼『えぇ、今日は大事な会議がある言うてましたよ。』


この古坂心療クリニックでは
当の院長がいることのほうが少ない。
まぁ先生は大学で教鞭もとっていはるし
他の病院からも頻繁に呼ばれるから
(内科医・外科医としても優れた腕をもっている)
なかなか一つのところでじっとしていられへんのは
仕方ないことやとは思うけど・・・

看護婦『でも綺堂さんもここにすっかり慣れてきて
ずいぶんと頼りになるようになりましたよね。』

礼『いえそんな・・・春先さんがいはるからなんとかやっていけてます。』


この人は春先さん。
この病院で古くから(って言ってしまうと女性には失礼かもしれへんけど)
勤めてはるベテランナースや。
ペーペーな俺なんかより余程心療内科の知識があって
はっきりいってこの人一人でもやっていけるんちゃうかと思う。
俺はただただここで勉強させてもらってる・・・そう思ってる。

春先『でもたしかに確実に綺堂さんは腕が上がってますよ。
最初から人の心を見抜いて、その人の心に入り込むのがとてもお上手でしたけど、ここ一年ほどはとくに綺堂さん目当ての患者さんも増えましたし・・・
私はとても凄いことだと思いますけど。』

礼『いえ・・・そう言って頂けると俺も嬉しいですけど・・・
自分はまだまだですし、いつも勉強させてもらってますし・・・
春先さんが丁寧にアドバイスくれはったおかげですよ。
でも・・・褒めて頂いてほんま嬉しいです、ありがとうございます。』

春先『いえいえ、それじゃあ今日も患者さんのために頑張りましょう。』

礼『はい!』



そうして俺たちは、この日の仕事を開始した。
1998年 11月18日 PM25時48分


礼『ふぅ・・・今日も疲れたなぁ。』


俺は今日も診療を終えてから
一度大学のほうへと戻ってきていた。


礼『ん・・?なんか紙が置いてあるな。』


いつものベッドのある部屋に入り
時間を確認しようと机の上の置時計を見ようと視線を向けると
机の上に見慣れないメモが置いてあるのに気がついた。


礼『これは・・・先生からか。』


メモには
今日の昼間に先生が言っていた民宿の空きがとれそうなので
泊まることにするのかどうか、泊まるのであれば何人で行くのか等を
来週までに連絡するようにと書いてあった。


礼『そうなったら・・・出来るだけ早いほうがいいやろな。』


俺は明日早速、家に戻ってみんなにこの話をすることに決めた。


礼『そうと決めたら、今日はそろそろ寝て朝に備えるか・・・』
1998年 11月19日 6時30分

【大学内 礼の部屋】


礼『ふぅ・・・』


みんなに話をするのであれば
この時間には起きなきゃあかんやろう。
そう思って目覚ましをかけておいたんやけど
目覚ましがなる少し前に目が覚めてしまったみたいやな。



礼『さてと・・・この時間やと食堂もやってへんしなぁ・・・
まぁ朝飯は向こうに着いてからなんか作ってもらえばええか。』

そして俺は自宅へと戻るために駐車場へと向かった。




1998年 11月19日 6時50分

【大学内 地下駐車場】


礼『・・・・・・』


俺が駐車場へと繋がっているエレベーターから降りると
見慣れない男性が入れ替わりに乗り込んできた。



なんやねん・・・人が降りようとする前に乗ってきよって

と内心思ったけど
わざわざ揉め事を起こすのも面倒やったから
そのまま駐車場に向かおうとしたら・・・


男『あの・・・もしかして古坂先生のところの・・・』

礼『え・・・?』

急に呼び止められて振り返ったら
男がエレベーターに乗らずにこちらを向いていた。

礼『え・・ええ・・・。たしかに古坂先生の生徒ですけど。』

男『あぁ・・・いえ、そうではなくて、古坂クリニックの・・・』

礼『あぁ、あそこの患者さんかその関係者の方ですか?』

男『いえ、まだそうではないのですが・・・
近いうちに娘がお世話になるかもしれませんので。』

礼『ああ!なるほど、そうだったんですか。でも何で俺を知ってたんです?』

男『以前に建物の中に古坂先生と入って行かれるのを見ていたものですから。』

礼『なるほど、それで俺に何か・・・?』

男『いえ・・・もしかしてそうかなと思っただけなんで・・・失礼します。』


そういうと男はエレベーターに乗って行ってしまった。


礼『なんやったんやろう・・・あの人?』


まぁ娘さんがカウンセリングが必要ということやったし
もしかしたらその関係で挙動不審になってたんかもなぁ・・・。
それにしても妙な雰囲気の人やったなぁ・・・。




自分の車の近くに来て気がついた・・・


礼『あれ・・・俺の車しか止まってへんやん。』


そう、この駐車場はそんなに広くなく
全体を一目で見渡せるくらいの広さしかないけど
他に車やバイクが停まってはいないようだった。



礼『あの人・・・なんでこんなところにいたんやろう?』



この時の俺は、その理由を知る由もなかった・・・・・
1998年 11月20日 6時45分

【大学内 礼の部屋】


礼『京都・・・か・・・』


俺は今大学の自室(空教室やけど)
に戻って昨日のことを考えていた。


あの後俺が突然家に戻ると
ちょうどみんなが揃っていたので
京都行きの話を輝美と二人で提案した。
二人は了承してくれたんやけど
俺ら家族の・・・輝美が来る前の
キツい話を思い出すはめになってもうた・・・。

まぁいつかは輝美にも聞かせなあかんことやったし
これはこれでよかったのかもしれへん。
ちょっと俺が思っていたよりも早かっただけのことや。

それにしてもあの時のおかんと
・・・それとおとんの様子がちょっと変やったな。
たしかに俺は二人が結婚する時に反対されてたのは知ってた。
でも【お母さん】とおとんがそんなに反対されていたのも
【夢示歌】のマスターがその兄だったことも
俺は知らへんかったんや。

よくよく考えてみたら変やな・・・
なんで今まで隠してて
なんで今になって教えてくれはったんやろう?
おかんが話してても、おとんが止めるそぶりもなかったということは
何かしら意図的に今まで隠してきてて
今になって言うべき時が来たっちゅうことやと思うけど・・・。

まぁこの場合の言うべき時っちゅうんは
もちろん輝美を京都に連れて行ってじいちゃんやばあちゃんに
会わせるためにこの機会に言っておくべきやと
そう判断したと思えるけど・・・
問題はなんで今まで黙っていたか・・・?
それが気になって大学に戻ってきてからも
中々寝付けへんかった。
そして気がついたらこんな時間や。



礼『おかんがあんなこと言うとはなぁ・・・
まぁあの人も俺たちのために精一杯苦労してきたんやし
仕方ないかもしれへんけど・・・』


輝美に対して言った一言も気になる。
実際に自分が近い境遇の男と結婚して
裕福な生活を捨てていろいろ苦労してきたせいもあるんやろうけど
それにしてもあれはおかんらしくない言葉やった。
まぁ疲れてたせいもあるんやろうけどな・・・
あんまり気にしてばかりいても始まらんやろうけど
なんか気になるなぁ・・・。


一人呟きながら俺は昔のことを
ぼんやりと思い出していた・・・。
【おかあさん】が亡くなってから
輝美に出会うまでの数年間を・・・。

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