修復腎移植を認めさせようコミュの先進医療の審議

各位へ（転載自由です）：
１.【先進医療の審議】今月の中旬以後に、厚労省の審議会で修復腎移植を「先進医療」として認めるかどうかについて、審議がおこなわれる。医療法人徳洲会が昨年10月30日に厚労省に申請・受理されたものだ。

　仮に修復腎移植が「先進医療」として承認されても、先進医療部分には保険が適用されず、患者自己負担になるので、腎移植が急激に増えるとは考えにくい。日本での末期腎不全患者は現在30万人、うち1万3000人が腎移植を希望し、臓器移植ネットワークに有料登録し年会費を払っている。16～17年待ちで、待っている間に死ぬ確率のほうが高いので、金を払うだけムダと登録しない患者も多い。

　待機患者もふくめて、透析患者（全面保険適用）が年間に使う医療費が1兆5000億円。いま問題になっている生活保護費は全部で年間に３兆円。しかも糖尿病の増加のせいで透析患者がふえ、日本の透析医療費は生活保護費よりも急速にふえている。

　透析医療は患者１人あたり年間500万円の医療費がかかる。風当たりがきつい生活保護費はその半分以下である。死体腎をふくめて日本の年間腎移植件数は約1000件。腎不全患者は毎年１万人の純増があるから、焼け石に水である。移植待ち期間はすぐに20年という、実質不可能な年数にまで伸びるだろう。移植ネットワークはサギ団体である。ウソだというなら、「待機期間中の年次死亡率」を公表すべきだ。プラス面だけを強調し、マイナス面に触れないのを世の中ではサギという。

２.【病気腎移植の倫理研究と修復腎移植学術発表】なんとか腎臓ドナー数をふやす工夫をしなければ、どうにもならない。文科省の方でも心配して、生命倫理学者高木美也子教授に、昨年度から科学研究費をつけた。研究課題名にあるように、「病腎移植」（修復腎移植）の実施を前提としている。
　http://kaken.nii.ac.jp/ja/p/23613009
　日本大学の高木教授は、「病腎移植」騒動が起きたとき、徳洲会の「外部調査委員会」の委員のひとりであった。私もそのメンバーだった。
　この研究に関して、学術団体である日本移植学会がクレームをつけたという話は聞いていない。

　その高木教授が、東映社長だった故岡田茂氏の娘であることをネットで知った。
　http://ja.wikipedia.org/wiki/高木美也子
　岡田茂氏は東広島市の出身で、私の住む町も「平成の大合併」で東広島市になったから、いわば「ご町内」である。もひとついえば「100円ショップ」のダイソーを創立した人物も、これは本当に同じ福富町の人である。世の中は狭いものだ。

　厚労省の態度は、つぎの審議会で決まる。国際的には「修復腎移植臨床研究」の論文は、全米移植学会、全米泌尿器科学会での発表が決まっており、ベルリンで開かれる国際移植学会での発表も予定されている。会長は「小径腎癌を切除後に移植しても、自然免疫系があるのでがんは移らない」とローマで私に教えてくれた、ハイデルベルグ大学のオペルツ教授（移植免疫学）だ。

　06年の「病腎移植」騒動の時、移植学会は「学会に発表せず、論文にも書かず、密室の手術だったのが悪い」と批判した。それで国際学会に発表しようとしたら、移植学会の田中紘一理事長（当時）が「警察が捜査中の事件である」と中傷し、演題却下を求める公式手紙を書いた。下手な英文にあきれた。事前に新聞に公表したのが間違いだったが、こんなえげつないまねができるとは予想もしなかった。

　それで次は正式採用まで公表しなかった。08年1月にフロリダで発表したら、いきなり「優秀論文トップテン」に選ばれた。英語論文も国際誌に発表された。そしたら阪大の高原史郞という、データを改ざんして「病腎移植の成績は悪い」という発表を厚労省で記者会見しておこなった教授（現移植学会理事長）が、今度は、「万波らの論文のデータは虚偽がある」と中傷の手紙を編集部に投書した。
　昨年の11月にブエノス・アイレスで開かれた「ドナー確保」に関する国際学会でも、「臨床研究」論文は学会表彰を受けた。国際社会は明治の日本みたいな「移植後進国」日本を支援してくれているのだ。

　いまの移植学会は理事長高原、理事相川厚（東邦大学医学部）の２名が、透析・移植患者から6,500万円の損害賠償を訴えられて、裁判中という、日本の医学会でも前代未聞の不名誉な状態にある。エイズ薬害事件でさえも、訴えられたのは阿部英個人で、血液学会や臨床血液学会とは関係がなかった。患者団体から訴えられている人物を、あえて理事長や理事に選ぶところに、移植学会の「裁判シフト」体制がうかがえる。これは学会ぐるみで和田寿郎をかばった、昔の移植学会とちっとも変わらない。それが「伝統」か。

　「和田心臓移植」のあやまりを公式に認め、謝罪しようとしない移植学会は、「修復腎移植」禁止の過ちを認め、軌道修正をする気がないらしい。認めれば裁判に負けると思っているのだろう。認めなくても裁判には負ける。それは間違いない。私は毎回公判に通っているからそう思う。きっと学会を牛耳るボスたちが、危機感をあおりたてているのだろう。

３.【その場しのぎの論理】　移植学会と臨床腎移植学会は、06年の主張に矛盾して、「臨床研究」についての演題発表を認めない、という態度に転じた。理由は開示していない。もはやこれは学術団体といえない。事実、相川理事は「がんの臓器を移植したらがんが移る」とか「保険医療費の返還もしないで、臨床研究をすることは許されない」とか、狂ったような文章を「Pharma Medica」という薬剤師向けの雑誌特集号「臓器移植をめぐる最近の話題」(29: 11号）に発表している。そのせいか、学会は会員数が減少して、法廷闘争費にも事欠き、他学会に援助を求めているありさまだ。
　私は病理学会が共同声明に加わることに、猛烈に反対した。病理学会は結局、移植学会からの依頼を断り、学会共同声明に参加しなかった。だから誰も被告になっていない。

　いやしくも学者のはしくれなら、「臨床研究」のデータをみて、修復腎移植の是非を論じるべきであろう。患者から訴えられたのは、その手続きを怠って予断と偏見で判断したからだ。私のような賛成意見に耳をかさなかったからだ。いわば自分で墓穴を掘ったのである。それを正当化するために、会員の学会発表まで禁止することは、学問研究の自由（発表の自由を含む）を冒涜するものだ。それを「恥の上塗り」という。
昔の法王庁がガリレオにその学説の発表を禁じたのと、どこが違うのか。いやちがう、移植学会にはローマ法王庁ほどの、権威もパワーもない。裸の王様だ。

　またぞろ、ここに来て、移植学会を中心にいくつかの関連団体が共同して、「修復腎移植の先進医療承認」反対という声明を発表する動きがあるという。臨床研究は実施施設の自己負担になるから、すでに今後も研究を継続することを表明している、徳洲会くらいの大きな医療法人でないと、資金的に実施は無理である。しかし、「先進医療」になると保険医療が適用される部分がかなり出てくるので、希望する患者もふえ、実施する病院も出て来るだろう。

　患者はちっとも困らない。多くの透析患者にとっては福音である。では誰が困るのか？まず日本透析医学会であろう。患者が減る。次に移植学会だろう。裁判で負けるのは明白だからだ。次に困るのは、07年3月31日の「４学会共同声明」に名をつらねた、日本腎臓病学会と日本臨床腎移植学会だろう。要するに自己保身、面子の問題だ。患者不在というしかない。患者不在の学会が「移植倫理」を説く。妙な話だ。

　あるアイデアなり、提案なりが行われたとき、それに反対するだけならバカにでもできる。そしてものごとは前に進まない。先送りになる。停滞する。普天間基地移設問題、東北の瓦礫処理問題、すべてそうだ。「修復腎移植」に反対するのはかまわない。しかし日本の移植医療の停滞をどう打開するのか、責任ある対案を学会は提示すべきだ。すでにアルメニアは注目すべき施策を導入して、わずか５年間で「腎移植待ち患者ゼロ」を達成している。スペインは人口100万人当たり50人という、驚異のドナー数を確保するのに成功している。

　私の著書「第三の移植」は、移植学会などの反対声明が、公表されるかどうかを見届け、出たらそれに対する手厳しい批判を加えたうえで、擱筆することにした。

--難波紘二
鹿鳴荘病理研究所
739-2303 東広島市福富町久芳685-7
TEL/FAX=082-435-2216
「病気は自然の実験である」