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アナタが作る物語コミュの【ホラー・コメディ】吸血鬼ですが、何か?第1部復活編第15話

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俺のマンションの玄関は北側廊下に面していて、ドアを開けると5月の爽やかな風が吹き込んで、その先に穏やかな青空の下に住宅地と田園が入り混じったのどかな風景が目の前に広がっている。

四郎はその風景を見てしばし立ち止まった。

「おお、さすがにかなり時代が進んでいると言ってもさほど違和感が無いな。
 実際に見る日本の風景は久しぶりだ…どこか懐かしく感じる…しかし、われは夜目が凄くきくがあまり明るいと少し眩しく感じるな。」
「日光は大丈夫?」

真鈴が心配そうに尋ねると四郎は笑いながら少し歩き、直射日光が当たる壁の前に立った。

「ほらこの通り、日の光は問題無い。
 ただ少し眩しいだけだ。」
「それならサングラスも買わなくちゃね。」
「サングラス?何だか判らんがよろしく頼むよ。」
「それじゃ、出かけようか。
 地下駐車場俺の車があるんだ。」

3人で歩いてゆき、廊下の突き当りのエレベーターの前に立った。
エレベーターの扉が開き、四郎はおっかなびっくりと言う感じでエレベーターに乗った。

「この小部屋が上下に動くのだな?
 階段よりは楽だな。
 しかし便利になったものだ。」
「エレベーター以外にも外に行くとエスカレーターと言う、何と言うか動く階段も有るんだけど、生まれて初めて使うと乗り降りに少し戸惑うかも知れない。」
「そうね、エスカレーターとか信号や交通ルールも覚えないとね〜四郎さん覚える事一杯有るよ。」

何故か真鈴は楽し気に言った。
エレベーターが地下駐車場に着き扉が開いた。

「おお、馬車がいっぱいあるが…馬はどこかな?」

俺と真鈴は吹き出した。
やはりパソコンの一夜漬けで早々現代の事が全て判るはずなんて無いだろう。

「今の時代は馬は必要ないんです。
 車と言ってガソリンや軽油、これは油の事ですが、あと電気や水素…まぁ良いか、とにかくこれだけで動くんですよ。」
「四郎さんは現代の人から聞いたらかなり頓珍漢な事を言いそうだから外に行く時は暫くの間は私や彩斗君が付いてゆかないと駄目みたいね。
ちょっとした事から怪しむ人がいるから気を付けないとね。」
「すまんがよろしく頼むよ。」

俺は自分の車トヨタランドクルーザーの100系と呼ばれる形式の車に近寄りポケットからキーを出して車のロックを解除した。

「おお!鳴いて瞬きしたぞ!」

解除のしるしのピピッと言う電子音とライトの点滅に四郎は驚いた。
俺は苦笑いを浮かべてしまった。

「このくらいでいちいち驚いて声を上げていたら不味いわね〜」

と真鈴が顔をしかめた。
確かに現代では当たり前の事にいちいち声を上げていてはかなり目立つだろう。

「四郎さん、周りに人がいるときは何かに驚いたり疑問に思ったりしても大声を出さないで私や彩斗君に小声で質問してね。
 とりあえず今日はなるべく私と彩斗君以外の人間と話さない事。」
「判った。
 目立って悪鬼が寄って来てもかなわんからな。」

俺は四郎にドアの開け方、閉め方、シートベルトの付け方を教えて助手席に座らせ、真鈴は後部座席に座った。

「しかしこの馬車はごついな。他の馬車よりかなりでかいし…」
「四郎君、今は馬車と言わないで車とか自動車って言うんだよ。」
「なるほど、自動車だな。」

四郎は物珍しげに車内を見回し、あちこちのスイッチを触ろうとした。

「四郎君、あまり触らないでね。運転している時に事故を起こすかも知れないからね…ところでその、悪鬼はそんなにうようよといると思う?」

俺の質問に四郎はにやりとした。

「彩斗君や真鈴さんが思うよりずっといると思うぞ。
 だから、サーベルやピストルが無いと不安なのだ。」
「悪鬼かどうか四郎君には見分けつくの?」

真鈴が尋ねると四郎はおかしそうに笑った。

「真鈴さん、人間と犬、人間と猿の見分けは付くかね?」
「そりゃあ当然。
 人間の間に他の動物がいたらすぐに判るわよ。」
「そうだろうそうだろう、本来生き物は自分と別種の生き物を見たら判る。
 だが、われのいた時代からでも人間はその能力がかなり落ちていた。
 これは文明がその能力を必要としないほど発達したからなのかも知れないな。
 例えばわれのいた時代、かなり質の悪い食人鬼が出没した時、われとポール様以外に食人鬼を見分けられるのはインディアンと一部の黒人奴隷だけだった。
 当然インディアンや一部の黒人奴隷達もわれとポール様がほかの人間と違う事を知ったが、われらは彼らに害意を持っていない事もすぐに判り、騒ぎ立てずに普通に過ごしていた。
 敵意を持たない動物であるかどうかは彼らはすぐに見分けることが出来たのだ。
 しかし、当時の白人や農場で生まれた黒人奴隷達はすぐ横に質の悪い食人鬼がいて襲う機会を狙っているのに全く気が付かずにおしゃべりをしていた。
  食人鬼どもの偽りの笑顔や話し方に騙されてな。」
「それは…食人鬼がうまく変装して…」
「あはは、真鈴さん、彩斗君。
 例えば犬が人間の服を着て人間の言葉を話してもすぐにこいつは犬だと判るだろう?
 それが猿でも人間以外の者と判るはずだ。」
「確かに…」
「もしも外で悪鬼を見たら、私と彩斗君にそっと教えてね。」
「質が悪い奴ならやっつけるか?」
「それは今日はやめましょう。
 もしも危険な悪鬼を見つけても今日はそっと離れましょ。」
「向こうが気が付いて近づいてきたらどうする?」
「…その時は可能な限り逃げるわよ。」
「まぁ、奴らもこの時代では用心深くなっていると思うから、と言うか用心深い奴しか生き残っておらんと思うから大っぴらにいきなり襲ってくる事は無いだろうが…用心は必要だな。
 しかも、われ同様に奴らもわれが同類と言う事は判るはずだからな。」

俺は四郎の言葉にブルっと身震いが走った。

「それじゃ、用心しながら買い物に行こう。」

俺がそう言いエンジンをかけると四郎はまた驚きの声を上げた。

「なんだ?震えて唸っておるぞ。」
「エンジンと言う物が動いてるんだよ。」

俺がアクセルを踏みハンドルを回して走り出すと四郎は不思議な顔をした。

「これは彩斗君が自分で動かさないと駄目なのか…なんか不便だな。」



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