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アナタが作る物語コミュの【ホラー・コメディ】吸血鬼ですが、何か?第1部復活編第16話

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俺達が乗ったランドクルーザーは地下駐車場から外に出た。
四郎は俺のマンションを見上げて感嘆の声を上げた。

「しかし四郎君が住んでる…マンション?は凄いな。
 まるで城塞じゃないか。」
「まぁ、購入した時はあちこち調べたからね。
 頑丈にできてるよ。」
「しかし、城門も堀も見張りの衛兵もいないから防御は今一つだがな。」
「ま、まぁそうだけど…戦闘用に作られた建物じゃ無いから…」

真鈴がおかしそうに吹き出した。

「四郎さん、日本ではここ77年は平和なんです。
 安心してください。」
「そうだと良いが…」

その後、あちこち指さして感嘆の声と質問を投げかけてくる四郎の相手をしながら車を走らせ、俺達は駅前の眼鏡屋に着いた。
車を駐車場に入れて俺と真鈴は四郎にあまり声を上げない事判らない事は小声で俺か真鈴に質問する事の念押しをした。
頷く四郎とともに道を出て歩いたが、ここでは歩行者のルール、まぁ歩道と車道の違いとか信号の見方とかを真鈴が説明していた。

店内に入ると品揃えの多さに四郎は圧倒されていた。
逆に真鈴が高揚した顔で店内を歩き回り、四郎を呼んでは選んだサングラスをとっかえひっかえ四郎に掛けさせて真剣に合うかどうか吟味していた。
女性は買い物、それは他人が身に着ける物でも選ぶ事が好きらしい。
俺は買い物を二人に任せて来客用の椅子に座りぼぉっとしていた。

やがて真鈴と四郎がやって来た。

「彩斗君、どうしてもこの二つのうちどちらかと絞り切れないのよ。
 どうする?」

真鈴はモスコット「レムトッシュ サン」のウェリントンとボストンをミックスしたような無難な形の物とポリス「アイドルマンサングラス」のラウンドシェイプのレンズとトレンドのメタルフレームでやや優し気で爽やかな感じの物を持っていた。
どちらも薄めのスモークレンズで、これなら多少暗いところで掛けていても奇妙にみられないだろう。
しかもカジュアルでもフォーマルでも早々違和感を感じない、確かに真鈴のセンスは良いものがあると思った。
真鈴の横でいささかと言うか、かなり疲れた感じの四郎が立っていた。

まぁ、そうだろうな。
真鈴、と言うか女性が買い物にかける情熱は、ましてやファッションに関する買い物情熱は半端が無い。
その情熱に付き合わされる男は消耗して焼き尽くされて酷いケースでは泡を吹いて昏倒痙攣して救急搬送されるケースさえある。
買い物のセレクトを真鈴に任せることが出来て俺は助かるが生ける着せ替え人形とされた四郎は大変だろうなと思った。
そして、四郎が身に着ける買い物はまだ始まったばかりなのだ。

「う〜ん、どっちも良いね四郎さんに合いそうだし…」
「ならば2つとも買う?」
「え?」
「だって着ている服のTPOに合わせてサングラスも変えなきゃいけないじゃん。」
「それもそうだけど…」
「決まり!両方買おう!支払いは?現金?カード?」
「ええと、カードで…」
「じゃ、こっち来て!」
「彩斗君済まんな。お金が足りなくなったらあの金貨を処分してくれ。」
「いえいえ、全然大丈夫だよ、あはは」

カウンターに行くと何故かモスコット「レムトッシュ サン」のほかにポリス「アイドルマンサングラス」が二つあった。
メンズの物とやや小ぶりなレディースの物が一つづつ。

「あ、これは私用。
 一緒に行動する時お揃いで恋人とかに偽装できるでしょ?
 用心は大切だからね。
 彩斗君、さっさと支払いして。」
「…ああ、うん…」
「今日のバイト代これでも良いわよ〜。」

………きいぃいいいいいいいいい!38700円38700円38700円!余計に38700円!

モスコットのサングラスが39600円でポリスのサングラスが38700円かける2で77400円全部合計で117000円!

……きぃいいいいいいいい!

俺は動揺を必死に隠して1回払いで書類にサインした。
言っておくが俺はケチな方では無い。
ケチでは無いが、余計な出費は嫌いなのだ。
まぁ、最悪所持金が無くなっても四郎が持っている金貨を少し売るだけで全然大丈夫だけど。
このサングラスの金額だって四郎が初めに出した数枚のコインのうちたった一枚、それも安い方の一枚で充分おつりが来る。
そう思い、俺は何とか平静を保つ事が出来た。

しかし…四郎はすっかり精気を吸い取られている様子で俺は余計に金を吸い取られているみたいだ。
真鈴だけが朗らかな顔になり、血色も良くなっている。

…本当の吸血鬼はひょっとして…真鈴?

「ささささ!次に行くわよ!次は靴ね!」

高揚した真鈴の声が響き店内の何人かがこちらを見ている。

「真鈴さん…少し落ち着いてね。目立つと、ほら。」

真鈴はハッとわれに返り黙って立てた人差し指を自分の唇に当てて頷いた。

「そうね、ところで靴もスーツ用とカジュアル用に最低2足、スニーカーみたいな物も揃えると4足はいるわよ。」
「そうだね、一式一から揃えるから大体の出費は覚悟しているよ。」
「なら大丈夫。」

真鈴がにっこり微笑み、ポリスのサングラスを掛けた。
四郎もサングラスを掛けている。
なるほど柔らかい爽やかな感じがして、真鈴はセンスがあると思った。
俺達が車に戻り、在庫が豊富な靴屋に向かった。





続く


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