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アナタが作る物語コミュの【短編】げんこつ飴

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一ヶ月に一度

お袋が入所している老人ホームに会いに行く。

前回は、黒糖を持っていったら喜んでたんで

それに類する物を、何か土産に持っていきたいと考えていた。

黒棒は前々回に持ってったしなぁ…。

年末で、正直金も無いしなぁ…。

鹿児島生まれだから、黒糖系喜ぶんだよなぁ…。

そんな折、俺は『げんこつ飴』の作り方をたまたま目にした。

三温糖に黒糖を半々に混ぜたら、これは美味しく出来る!!

そう考えた俺は、早速材料を買い込んだ。

きな粉、こうせん(麦焦がし)、胡麻はすり胡麻にアレンジした。

水飴と三温糖に黒糖+水で火にかける。

沸騰前に、素早く『きな粉、こうせん、すり胡麻』を混ぜた中に投入!!

…熱いて!! ムッチャ熱いて!!

涙目になりながら、手早くきな粉混合粉末をコーティングしていく。

ある程度まぶしたら、まな板の上で伸ばして…。

「喉につまらないように…っと。」

普通の飴より、小さめにキッチンハサミでカットして

更に、尖った部分を手の平で丸めていく。

「…ちょっとしたモンだな。」

出来立てをつまみ食いする。

…上出来に美味い♪

小さいビニール袋に小分けして、紐で縛る。

ソイツを持って、老人ホームに行き

職員の人に「皆さんで」と渡した。

痴呆専門のホームだから、各自に渡しちてしまうと

思わぬ事故に繋がりかねない。

おやつの時に、一粒づつ渡すと言っていた。

お袋にも渡し、俺とカミさん3人で笑いながら食べていた。

ノックの音と共に、オズオズと職員が入ってきた。

「すみません、あの…お婆さんの一人が、どうしてもお礼が言いたいと…。」

俺は、ちょっと席を外すと言って

そのお婆さんの所に向かった。

毛糸のチャンチャンコを着たお婆さんが

チョコンと、俺を待っていた。

その人は、俺の両手を握り

唐突に泣き出しちまった。

戸惑う俺に、そのお婆さんは

「私はね、もう頭がおかしくなってるの。」

俺、無言。

何も言えない。

頷く事も出来ない。

「でもね、この飴はね、私が小さい頃食べてた味なの。」

どうにか「はい」とだけ、言えた。

「それだけはね、どんなに頭がおかしくなっても、覚えてるの。」

「…はい。」

「ありがとうねぇ。ありがとうねぇ。」

やっとの事で「また持ってきますよ。」とだけ言うと

俺は、俺の手を掴んで離そうとしないお婆さんの所から

自分のお袋の所に戻った。

しばらくして、帰る時間になり

俺とカミさんは、お袋の部屋から出た。

そこに入所している、お爺さん、お婆さんが

全員、手を振ってくれた。

中には「お父さん!! またお土産持ってきてね!!」という人も、いた。

帰りの車中

「喜んでもらえて、良かったね。」というカミさんの言葉に

喉に何かつかえて、俺は返事出来ず

ただ、突っ伏して

しばらく、子供みたいに

泣いた。

クソ熱い想いしなけりゃならないけど

…仕方ねぇ…また、作るか。

終わり

その他の単発・短編はこちらから↓ 当コミュ内です。
【作品一覧【単発/完結】】
 http://mixi.jp/view_bbs.pl?id=39667160&comm_id=3656165

コメント(9)

再び介護の業界に戻った俺には何か縁を感じる話でした。

ありがとうございます
じゅんぺさん>

ありがとうです!!

『げんこつ飴』

この名前を目にした瞬間に

この話は出来ました。
まゆ 6号さん>

実際は、衛生面の関係で

多分、手作りのお菓子等はダメかも知れません。

現実は、ね。

でも、創作ならではの『一種の夢物語』を

俺は、書いてみたかったんですね(^ω^)
Quinnさん>

偶然と言えば、偶然ですが

何か、必然的なタイミングを感じました。

この話を、エール代わりに送ります。
レイラ・アズナブルさん>

あ、何か

ツンデレの気配がする(笑)

ありがとうですわーい(嬉しい顔)
 あったかい話しですねウッシッシ よーし、私もちょっと黒糖買って来ますわあっかんべー

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